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ウサギのナミダ
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えむえむえす ~My marriage story~

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キズナのキセキ
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The Armed Princess―武装神姫―
ウサギのナミダ
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武装神姫のリン
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武装神姫~ストライカーズ・ソウル~
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 明かりひとつ無い闇の中。
 私の声が途切れれば、そこには真っ暗な世界があるだけだった。
 今夜は新月。カーテンの向こうからも、月明かりさえ届かない。
 確かなものは、背中の柔らかなセミダブルの感触と、伸ばした右腕にかかる心地よい重みのふたつだけ。
「ね……お姉ちゃん」
 舌っ足らずな幼い声が、身じろぎをひとつ。腕にかかっていた重みが、さっきより少しだけ近くなる。
「何ですか? 花姫」
 胸元にもたれ掛かるのは、小さな頭。
 私はようやく自由になった右腕でそれを抱き寄せると、襟元までの金色の髪にそっと指を絡ませていく。
「わたし……前の花姫ちゃんの、代わりなの?」
 寂しげな呟きに、少し離れた人間用のベッドから、かすかな衣擦れの音がした。
 ……人の話を盗み聞きしないで下さいよ、静香。
「何で花姫は、そう思うんですか?」
「だって……」
 私の体に、花姫の両手がおずおずと回されて来た。私はそれを促すように、髪から指を離し、彼女の背中をぽんぽんと軽く叩いてやる。
 聞き取れないほどの小さな声がして、私の体は真っ白な細腕で、きゅ、と抱きしめられた。
「……わたしのコアユニットって、前の花姫さんのものなんでしょ?」
「そうですよ」
 砕けてしまったCSCと素体の基盤は取り替えたけど、構成そのものは全く同じ。確かに、同じ存在と言えなくもない。
「だからわたし、前の花姫さんの代わりじゃないのかなって……」
 胸元に掛かる幼い重みに、言い時を間違えたかな、とも少しだけ思ってしまう。
 でも、先代の花姫のことは、彼女には少しでも早く話しておきたかった。言いそびれて、言えずにいて、一緒に過ごした笑顔の分だけ、後から彼女を傷付けると思ったからだ。
「花姫は、前の花姫の代わりがいいんですか?」
 私と静香は仲直りできたけど、あの時みたいな悲しい思いを彼女にだけはさせたくない。
「やだよ……。わたし、代わりなんかやだ……」
 私の胸元に、ふるふると横に擦り付けられる小さな頭。
「安心していいですよ、花姫」
 泣きそうな声に、私はあやすように彼女の頭を抱いてやる。
「私は、前の花姫さんを知りませんから……私の知っている花姫は、あなた一人です」
 もし今の花姫が静香の花姫と同じだったとしても、それを確かめる術は私にはない。少なくとも私にとっての花姫は、私の腕の中にいる彼女ただ一人。
「……ほんと?」
 答える代わりに、額にそっと唇を触れさせる。
「でも、あなたと私が逢えたのは、先代の花姫さんのおかげですから。彼女のことを嫌いなんて言っちゃ、ダメですよ?」
「うん……」
 それで安心したんだろう。痛いほどに私を抱きしめていた花姫の両腕が、ふいと緩む。
「ね、お姉ちゃん。今日はこのまま、寝てもいい?」
「ええ。おやすみなさい、花姫」
 花姫が目覚めたその日、静香はエルゴでセミダブルのクレードルを買ってくれた。その時は二人用のクレードルにしては少し小さいと思ったけど、こうして抱き合って眠るにはちょうどいい大きさだ。
「ふふ……やったぁ……。おやすみなさい、マスター」
 それを内心幸いに思いながら、私も静かに眠りに就いた。


魔女っ子神姫ドキドキハウリン

エピローグ



「……イリュージョンリーグ?」
 聞いたことのない名前に、ボクは首を傾げた。
「うん。これ」
 そう言って店長さんが見せてくれたのは、一枚のプリントアウト。エルゴ宛てに来たプレスリリースのメールを、プリントアウトしたものらしい。
「ああ。バーチャルファーストの事ですか」
 ざっと目を通せば、以前からネットで噂が流れていた、バーチャルバトル専門の上位リーグの事だった。そちらでは、バーチャルファーストという仮称で通っていたんだけど……。
 年度初めの四月から、正式に現行のリーグに組み込まれるらしい。
「昇級資格は……これちょっと、甘すぎない?」
 ボクの肩口からひょいと覗き込んで、ぽそりと呟いたのは静姉だ。
「まあ、確かに……」
 リーグ昇格条件は、現状のファーストへの昇格基準よりもはるかに緩かった。多分、現状のセカンド上位のプレイヤーは半分近くが昇格できるはずだ。
「うーん。ジェリコの壁対策らしいからねぇ」
「……あぁ」
 その言葉に、ボクは納得。
 今のファーストは別名リアルリーグと言うように、リアルバトルが中心になる。経済的な面は当然として、純粋に時間の都合やリアルバトルそのものへの抵抗その他諸々の理由から、ファーストへの昇格を拒むセカンドランカーは少なくない。
 バトルはしたいけどファーストはイヤだ。
 そんなプレイヤーがどうなるかというと、話は簡単。ファーストへの昇格資格を保留にしたまま、セカンドの最上位に留まって延々とバトルそのものを楽しむ事になる。
 もちろん、バトルそのものを楽しみたいという考えは間違ってない。でも、ヘタなファーストランカーよりも強いセカンド最上位層は、いつしか『ジェリコの壁』と呼ばれ、ファースト志望ランカーの越えるべき壁のひとつとなっていた。
 イリュージョンリーグは、高くなり過ぎつつあるその壁を吸収する役割も与えられているらしい。
「去年の大規模空戦で必要な設備も整ったらしいしね。晴れて実装ってワケだ」
 ちなみにファーストランカーのバーチャルファーストへの移籍も可能と書いてある。ランキングそのものは別らしいけど、ファーストで行き詰まってるプレイヤーも結構流れるんじゃないかな。
「ジルはどう? ここなら、ココと戦えると思うよ?」
「ココとは家でも普通にやれるし、あんま、興味ねえなぁ……」
 まあ、ジルは本気で殴り合うのも平気だしね。来期用の装備も仕上がってるし、とりあえず移籍は無し……か。
「ね、静香ちゃん」
 そんなことをみんなで話していると、筐体の前に座っていた花姫がふと口を開いた。
「ん? なぁに?」
 そしてボクは思い出す。
「なんかお姉ちゃん、大変そうだよ?」
「……あら」
 ココが、バトルロイヤルの真っ最中だったことを。



 降りそそぐ弾幕の中で、私は何度目かのコールを掛けていた。
「静香、ちょっと洒落になってないんですがっ!」
 既にコートの短剣もセーラー服のマシンガンも弾切れだ。ドキドキハウリンに変身してロッドを使ってはいたけれど、それもそろそろ限界だった。
 しかも残っているのは、セカンドのトップにいながら、ファースト昇格を拒み続けている趣味全開のプレイヤー達だ。
 本気で戦うためだけに戦っている連中だから、気負いや油断は欠片もない。趣味に走った武装を思うがままに操る奔放な戦いぶりは、ヘタなファーストよりもはるかに強く……。
 そのうえ、相手の三体はチームを組んでいた。
「ココー」
「何ですかっ!」
 そんな状況でようやく返ってきた呑気な声に、私は声を荒げて叫び返す。
「あと格上三体撃破で、イリュージョンリーグに上がれるってさー」
「なんですかそれ! って、ひゃあっ!」
 カッツバルゲルが束で飛んできて、背にしていた壁を吹き飛ばす。追撃で飛んできたスティレットを撃ち落として、慌ててダッシュ。
「えっとね……」
 いや、その何とかリーグはいいですから、まずフェザーか弾倉送って下さい!
「静香ぁー!」
 とりあえず空気読んでー!



 右。
 左。
 一歩下がって……。
「ああ、そうじゃないよ、お姉ちゃん」
 爆風に巻き込まれる、ドキドキハウリンの黒い服。
 もう半歩、下がらなきゃ。
 そこは一気に突っ込んで……。
「うん。いい感じ……!」
「……姫?」
 大きな画面で戦ってるお姉ちゃんの姿を眺めていると、静香ちゃんがわたしの名前を呼んできた。
「なぁに?」
 静香ちゃんはお姉ちゃんのマスターだ。お姉ちゃんが戦うときは、静香ちゃんが助けてくれるらしい。
 でも、今日は何もしてないみたいに見えるんだけど……気のせいかな?
「あなた、見えてるの?」
 ……ん?
「見えないの?」
 飛んでくるミサイルも、打ち込まれるランチャーも、そんなに必死に避けるようなもんじゃないと思うんだけどなぁ。
「……姫さ。お姉ちゃん、助けたくない?」
 え? それって……。
「いいの!?」
 お姉ちゃんは、わたしはまだ戦っちゃダメって言っていた。でも、こんなに苦戦してるお姉ちゃんを、ここから眺めてるだけだなんて……イヤに決まってる。
 あんな、大して強くもない相手にいじめられてるお姉ちゃんを、見たいわけがない。
「あれを見切るか……。先代の経験かしらねぇ?」
「……きっと、花姫さんがわたしにくれた力なの。この力で、お姉ちゃんを助けなさいって」
 そう。だから、わたしは花姫さんの代わりじゃない。
 先代の花姫さんから、お姉ちゃんや静香ちゃんを任された、もう一人の花姫なんだ。
「そっか」
 静香ちゃんはにっこり笑って、戦闘指示を送るインカムを取り上げる。
「ココ。応援が一人行きたいって言ってるんだけど、いい?」
「何でもいいから助かります! きゃあーっ!」
 お姉ちゃんの声は、スティレットの爆風にかき消されてすぐに聞こえなくなった。
「だ、そうよ」
 でも、大事なところはちゃんと聞こえた!
「うん!」
 お姉ちゃんは嫌がってたけど、静香ちゃんがエントリーだけは済ませてくれていた。お姉ちゃんに呼ばれた今、わたしはすぐに飛んでいける。
「あたしはココを見てないといけないから、十貴子に準備を手伝ってもらいなさい。いい? 十貴子」
「うん。……ボクでいい? 花姫」
 十貴子ちゃん……十貴はお出かけするときは、こんな『とくしゅ』な格好をするみたい……は静香ちゃんからわたしの装備を受け取って、隣の席で準備を始めてくれる。
「うん!」
 お姉ちゃん、すぐに助けにいくからね!



 ロッドの弾倉を放り捨て、最後の弾倉をセットした。レバーを引いて、砲弾を砲身に送り込む。
「まだですか、静香っ!」
 何とか一人は倒したけれど、相手はまだ二体も残ってる。この状況で二人撃破は正直、かなりキツい。
「今行ったわよー」
 それと同時にNewComerのアラート。
「あと、補充弾送るわね」
「助かります」
 静香が転送してくれたおかげで、予備弾倉に少しだけ余裕が出来た。砲撃で相手を牽制しながら、味方だけにコールされた乱入者の出現位置へと移動する。
 アラートが鳴るって事は、獣王じゃないらしい。ジルか、二階に上がってきた知り合いのプレイヤーか……。
「助かります!」
 光の中から、真っ白な姿が身を躍らせる。
 アーンヴァルタイプってことは、マイティか、マスターミラーか……
「情けないわよ、ドキドキハウリン」
 ……え?
 ウソ。
 そんな……!
「し、静香っ!」
 なんで、なんで花姫を……っ!
「あら。あたし、ジルが行くとはひと言も言ってないけど……」
 そりゃ、応援としか聞いてませんけど……!
「だからって、いきなり花姫を入れる事はないでしょう!」
 サード登録を済ませたばかりの子を、こんな無茶な戦いに放り込むなんて。これなら、普通に負けた方がいくらかマシだ!
「お姉ちゃん、右っ!」
「え、あっ!」
 いきなりの声に、頭より体が反応した。
「三歩下がって!」
 言われたとおりに三歩下がれば、二歩目の位置まで衝撃波が流れ来る。
 左、バック、ターンを掛けて左右を警戒。
 ……これって。
「見えるんですか? 花姫」
 花姫の回避は、相手を完璧に読み切った動き。
 少なくとも……ファーストランカーの動きだ。
「あのね、花姫さんがくれた力なの! お姉ちゃんをお手伝いしろって!」
 確か先代の花姫は、ジルと並ぶファーストランカーだったはず。鶴畑大紀もランクだけはファーストだった。確かにそれだけの戦闘経験があれば、コアのどこかに記憶の欠片が残っていても不思議じゃない。
 でも、向けてくれた表情は、いつものとびきりの笑顔。
 無理は……してないみたい。
「……そうですか。なら、無茶だけはしないで下さいね?」
「うん!」
 いや。花姫よりも、私の方か……。
 花姫に遅れるようじゃ、彼女のマスター失格だ!
「ならお姉ちゃん、あれやろ、あれ!」
 う……。
「それも花姫さんですか?」
 そういうメモリーは、消えてるはずなんだけどなぁ。
「ううん。静香ちゃん」
 ……。
 まったく。あの人は……。
 いきなり良くなったこちらの動きを警戒してか、ミサイルが飛んでくる気配はない。
「……一回だけですよ?」
 ため息ひとつを残しておいて。私はドキドキロッドを持ち直した。
「やったぁ!」
 花姫も続いて、マジカルロッドを大きく掲げる。
 私の隣に、花姫の姿。
 肩を並べて、その名を呼んだ。
「魔女っ子神姫マジカル☆アーンヴァル!」
「魔女っ子神姫ドキドキ☆ハウリン!」
 同時に一歩を踏み出して。
 私の手の中くるりと回る、ドキドキロッドの赤い光。
「みんなの……」
 横に振られたマジカルロッドが、青い光で弧を描く。
「願いで……」
 花姫の視線で同時にジャンプ。直撃するはずだったミサイルは、私達の足元をすり抜けて。
「「はいぱぁ……」」
 紡がれるのは重なる言葉。
 二人の背中で真っ赤な炎が。
「「降臨っ!」」
 爆炎となって炸裂する!


 そして、その日の戦いで。
 私は、イリュージョンリーグへのランクアップ権を手に入れた。



 静香の机の上には、一枚のパンフレットが無造作に広げられている。
「……イリュージョンリーグ、行かないんですか?」
 私と花姫も机の上。二人でベッドに寝転んだまま、静香を見上げてそう呟いた。
 ファーストリーグとバーチャルバトルの性質を合わせたそのリーグは、リアルバトルをしない静香にぴったりだと思ったのに。
「ま、壁とか言われたくないし、一応はランクアップしとくけどね。それより、これ見てみてよ」
 上機嫌で静香が取り出したのは、雑誌の小さな切り抜きだった。
「……タッグマッチ?」
 来期に発売される、合体機能を持った神姫の特集記事だ。その特徴から、近いうちにタッグマッチや連携前提のバトルが実装されるのではないか……といった予想が書かれていた。
「姫も、ココと一緒に戦いたいわよねー?」
「うん! お姉ちゃんと一緒なら、無敵だもん!」
 マジカル☆アーンヴァルのコスチュームを胸元に抱きしめて、花姫は元気良く答えてくれる。よっぽど気に入ったのか、あのバトルロイヤルが終わってから離そうとしない。
「ちょっと静香……」
 ただ正直、花姫をあまり戦わせたくはなかった。
 静香はバーチャルバトル専門だから、以前のような事故がないのは分かってる。私だって無茶な戦い方をする事はあるし……いや、だからこそ、花姫にそんな危ないことはして欲しくなかった。
 過保護なマスターと笑いたければ笑えばいい。それくらい花姫が可愛いんだから。
「ちゃんと服も考えてあるのよー」
 そんな私の想いを知るよしもなく、静香は私達を眺めてにこにこと笑っている。
「またですか……」
「っていうかもう作ってあるから、ちょっと着てみてよ」
「ちょっ!」
 そんなもの、いつ作ったんですか! 私知りませんよ!
「ねえねえ静香ちゃん! それ、お姉ちゃんとおそろい?」
「そうよー。魔女っ子じゃイメージ違うしね。おそろいの色違いにしてみたの」
 静香が取り出したのは、ドキドキハウリンよりもシンプルなデザインのコスチュームだった。もちろん全体的なシルエットが変わっただけで、フリルの量は減っている気がしない。
「ほら、姫はキュアアーンヴァル」
 白いレースのあしらわれた方を渡され、花姫はそれの出来映えを上機嫌で確かめている。
「ココには、キュアハウリン」
 私はため息をひとつついて、イヤイヤそれを受け取った。前のよりは動きやすそうだけど……。
「……この展開だと、ユニット名も決まってるんでしょうね?」
「ふたりは神姫ュア」
 即答された。
「……どうしようもなく直球じゃないですか」
 いや、だからってマックス何とかとかスプラッシュ何とかとか付けられても困りますが。
「あら。ドキドキハウリンA'sのほうが良かった?」
「どっちも大して変わらないし……」
 しかもその名前だと、前の服の方が相性良さそうですよ?
「もぅ……ワガママなんだから」
 ため息をひとつ吐いて、静香はぼやく。
 ぼやきたいのはこっちです。
「姫はどう? 気に入った?」
 ホントに勘弁……。
「うん! この服、すっごくかわいい! 静香ちゃん、ありがとー!」
 勘弁……。
「ほらほら。ココはどうするのー?」
 ……。
 私が困ってるの見て、楽しくてたまらないんでしょうね、このダメマスターは。
 前は嫌がらせって諦めましたけど、今のはただ単に性根がSなだけじゃないですか。
 でも、静香の意見は突っぱねられても……。
「お姉ちゃん……。わたしとおそろい……いや?」
 寂しそうにこちらを見上げるその視線には、耐えられなくて。
 ええい!
「……もぅ。着ればいいんでしょ! 着れば!」
 そう叫んだ私に、私の大切なマスターと神姫は、最高の笑顔で抱き付いてくれた。


 魔女っ子神姫ドキドキ☆ハウリン
 ~おわり~





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