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キズナのキセキ

ACT1-24「武士道」




 春になって、日が昇るのが早くなったことは、今朝の俺にはありがたかった。
 早朝の花咲川公園で、俺と大城は準備をしていた。
 桜並木に囲まれた広場。ここが決闘の舞台になる。
 俺は二人の対決を見届けなければならない。この決闘の立会人に近い立場だった。
 なにしろリアルバトルの立ち会いだから、それなりの準備も必要だ。C港での大ケガみたいなことは、二度とごめんだった。

「……こんなものかな」
「……遠野よぉ……やっぱ考えなおさねぇか? 俺はどうしても納得いかねぇ」

 大城はこの期に及んで、ぶつぶつとぼやいていた。俺はあえて堅い口調で答える。

「今さら何言ってるんだ。今回の策は、どうしても必要だし、お前に嫌な思いはさせないって何度も言ってるだろ」
「けどよぉ……」
「俺が信じられないか、大城」

 俺は大城を見た。
 大城が気に病んでいることは、痛いほどに分かる。だが、それもしばらく後に分かることである。
 決戦はもう目前なのだから。
 視線をはずしたのは大城の方だった。

「……わかった。俺も覚悟を決めらぁ」
「よし」

 俺は頷く。
 俺の策にずっと協力してくれていた大城だからこそ、菜々子さんにも内緒にしているこの策を任せられるのだ。
 もうそろそろ、二人が来る。
 その時だ。
 俺たちの後ろで、何かが動く気配があった。

「誰だ」

 俺は緊張する。
 このバトルを知るのは身内のごく一部だが、『狂乱の聖女』が絡んでいるだけに、用心にしすぎるということはない。
 大城もまた身構え、気配の方に鋭い視線を投げている。リアルに修羅場をくぐり抜けているだけあって、その姿はやけに様になっていた。
 茂みががさがさと動く。
 出てきた顔は、よく見知ったものだった。

「安藤……それに君らもか」

 安藤の後ろに、ライトアーマー・シスターズの四人が揃っていた。
 安藤が少し不機嫌そうに口を開く。

「俺たちに声をかけないのは、ちょっとひどくないですか?」
「いや、今回はゲーセンでの対戦とは訳が違う。危険が伴うんだ。君らを危険にさらすわけにはいかない」
「そんなこと分かってます。でも、わたしたちには、菜々子さんのバトルを見届ける権利があるはずです」

 八重樫さんもいつになく強い口調だった。
 他の三人も頷いた。
 蓼科さんが、俺を真っ直ぐに見て、言った。

「だって、わたしたち、チームメイトじゃないですか」

 困ったものだ。
 あれほどに不信を抱いていた菜々子さんのバトルを、危険を承知で見に来るとは、変われば変わったものである。
 いや、彼女たち自身も決着をつけたいのかも知れない。揺れ動いていた心の決着を。
 俺は小さくため息をついた。

「仕方がないな。俺の後ろの茂みに隠れて、静かに見ているんだ。ケガをしても知らないぞ」
「はい!」

 嬉しそうな五人の声が重なった。
 喜ぶなというのに。
 これから始まる戦いは、バーチャルじゃない。
 神姫をぶつけ合い、壊し合う、リアルバトルなのだ。
 そして、この戦いに栄光はない。どんなバトルをしたとしても、勝利を得たとしても、人々の話題に上ることもない。
 ただ、これから戦う二人の、二人のためだけのバトルなのだ。

「来た……」

 大城の囁きに、みんなが息を飲む。
 大城を含めた六人は、俺の後ろで身を縮めながら、植え込みの隙間から広場を見ている。
 俺は桜の木の近く、植え込みの一つから立ち上がり、二人にその姿をさらしていた。

 菜々子さんが立ち止まる。
 桐島あおいが、一瞬俺を見て、そして一歩進み出た。彼女はそれで悟ったのだ。ここが決闘の舞台であることを。
 ゆっくりと歩を進め、距離を取ったところで振り向いた。
 俺の位置からは、向かい合う二人が見え、それぞれ同じ距離にいる。まるで試合の審判のようだ。
 一拍の沈黙の後、菜々子さんが宣言した。

「あなたを倒します、お姉さま。今ならはっきり言える。今のあなたは間違っている、と」

 菜々子さんは、静かに宣言する。
 すでに瞳は神姫マスターのそれだ。彼女からは微塵の油断も感じられない。
 応じる桐島あおいの口調は、あくまでも穏やかだ。

「……そうだとして、あなたにわたしが倒せるの?」
「倒します」
「……すでに二度負けていても、まだ倒せると思うの」
「……ある人が教えてくれました。わたしはもう『アイスドール』 と呼ばれていた頃のわたしではありません。
 今のわたしは『エトランゼ』。
 その名にかけて……あなたを倒す」

 菜々子さんの揺るぎない口調に、桐島あおいもまた、瞳の色を強くす る。

「わたしは、今のわたしが間違っているとは思わない。かつて、 あなたに教えたことこそが間違っていたと確信している」
「あおいお姉さま……」
「わたしはあなたを倒すわ、菜々子。そして、今のわたしが正し いことを証明しましょう」
「……ならば……勝負です、お姉さま!」

 公園の緊張が爆発的に高まった。
 空気の流れさえ止まりそうな張りつめた緊張の中、二人は同時に動き出す。
 桐島あおいは、叫ぶ。

「マグダレーナ!」

 アタッシュケースの取っ手についたスイッチを押すと、勢いよく開く。
 そして、呼びかけに応えた神姫が、アタッシュケースから飛び出してくる。
 『狂乱の聖女』マグダレーナ。
 漆黒のシスター型は、黒い閃光と化して一直線に突き進む。

 菜々子さんも、アタッシュケースの持ち手に付いた開閉スイッチに指をかける。


「ミスティ、リアルモード起動。入力コード「ETRANGER」、タイプ……ブシドーーーーッ!!」


 スイッチが押し込まれ、銀色のケースが直角に開く。
 そこにいたのはグリーンの装備をまとう神姫……『異邦人(エトランゼ)』のミスティ。

「了解!!」

 刹那、ミスティが緑の閃光となって飛び出す。
 真向かいで飛び出してきた黒き閃光と、同一線上。
 二体の神姫は、広場の中央へと突進、邂逅する。

 そして。

 次の瞬間、その場にいたすべての人間、すべての神姫が驚愕した。
 ただ一人……俺を除いて。



 当事者であるミスティ自身が驚きを隠せない。
 すべてを賭けた決戦、その初撃。
 それがこんなにもあっさりと受け止められてしまうとは。
 いや、手にした剣、エアロ・ヴァジュラの袈裟斬りが、この最凶神姫相手にそう簡単に決まるとは思っていない。
 あらゆる攻撃が当たらない。それがマグダレーナの強さではなかったか。
 初代も、以前の自分も、この神姫に一撃すら与えられずに敗れ去っている。
 にもかかわらず、今、奴はこの一撃を燭台状の槍の柄で受け止め、鍔迫り合いをしていた。
 交差した剣と槍の間、目の前に仇敵の顔がある。
 マグダレーナこそは、この場にいる誰よりも驚愕していた。
 それを知って、ミスティはむしろ落ち着いた。不適な笑みを口元に浮かべ、口走る。

「どうしたの? 『狂乱の聖女』ともあろう神姫が、余裕ないじゃない」

 その言葉に、マグダレーナははっとして、ようやく自分を取り戻した。

「……図に乗るな!」

 しわがれた声の一喝を合図に、お互い一挙動で得物を引く。
 二人の神姫は大きく後退し、身構える。
 そこでようやく、マグダレーナはミスティの全身像を確認した。

「……なんだ、その装備は」
「いいでしょう? タカキのコーディネートよ」

 武装のコンセプト自体は、イーダのミスティの武装から大きくはずれてはいない。
 しかし、よく見れば、同じ部分の方が少ないことがわかる。
 マウントされた二門の「アサルト・カービン」、手にした「エアロ・ヴァジュラ」、ホイールはオミットされているが、副腕の肩部と変形の要になる背面装備は、イーダ型を引き継いでいる。
 しかし、副腕はストラーフMK.2のものだし、それに装着された自動車のカウル状のアーマーは見たことがないものだ。
 脚部装備はストラーフのごとく大型だが、オリジナルのものと知れた。そして、足首の横に左右一つずつ、ホイールが装備されていた。

 ミスティの新装備が、マグダレーナの予測を狂わせていたのか。
 否、その程度の誤差を埋められないマグダレーナではない。
 では何だ。何が予測を狂わせている?
 マグダレーナは、疑念を浮かべながらも、次の戦闘機動へと移行する。
 ミスティもまた動く。
 距離を取った二人は、銃器を構えた。ミスティは背中から突き出るように装備された「アサルト・カービン」。マグダレーナは側面に備えた十字型の「クロス・シンフォニー」。
 マシンガンの咆吼がこだまし、射線が交錯する。
 マグダレーナの射撃は、威力も段違いだ。破壊するための違法改造も、裏バトルでは問題にならない。
 しかし、ミスティは臆することなく、威嚇射撃をしながら、滑るようにマグダレーナとの距離を詰めた。

 ミスティが仕掛ける。
 ストラーフMK.2の副腕から繰り出されるのは、抜き手。指を揃えた鋭い突きがマグダレーナに迫る。
 それを喰らうマグダレーナではない。迫り来る高速の抜き手を余裕の動きでかわす。
 その時だ。

「……なにっ!?」

 マグダレーナは咄嗟に手にしたビームトライデントの柄を引き上げ、ミスティの副腕の大きな爪を受け止め、捌く。
 予想しない軌道を描いて、ミスティの爪が襲ってきた。連続の抜き手から、いきなり斜め下からの斬り上げ。
 どうということはないコンビネーションに見えるが、マグダレーナにとっては全くの想定外だった。
 ミスティのラッシュが続く。
 マグダレーナは一度ならず、何度も予想を裏切られながら、徐々に追いつめられていく。



「出た、ミスティの武士道モード!」

 園田さんが控えめに声を上げる。
 そう、特訓場でミスティと対戦したなら、みんな知っている。
 今のミスティが起動している「リアルモード」は、デビル・タイプ、ビースト・タイプに続く第三の形態だ。
 その名も武士道・タイプ。

 マグダレーナ対策として、俺が新装備の習熟と同時に着手したのが、新たなリアルモードの修得だ。
 初代ミスティが身に付け、受け継がれたデビル・タイプ、今のミスティが苦行の中から見いだしたタイプ・ビースト、その両方ともマグダレーナに破れている。
 新たな戦闘パターンを身に付けることは、このバトルの必須事項だ。

 菜々子さんによれば、リアルモードとは「心構え」であるという。
 今までの二タイプは、勝つことだけしか考えない。デビルは冷酷無比に相手を倒すタイプであり、ビーストは獣のごとく理性を捨てて襲いかかる。
 どちらのタイプも、自分を捨てた戦い方だ。
 その「心構え」を変える。
 悪魔も獣も従えて、両方のスタイルをミックスする。そのための心構えは「戦いに勝つ」、ではなく、「戦いを制する」ということだ。
 常に冷静さを失わず、自分を見失わず、はやる気持ちを抑え、焦る気持ちを消す。相手を破壊するのではなく、相手を制する。
 それこそ、真にエトランゼが必要とする心構えだ。
 自らを制し、相手を制し、戦いを制する。
 俺はその心構えを「武士道」と呼ぶことにした。

 デビル・タイプとビースト・タイプをミックスすることで、ミスティの動きはマグダレーナの予測を上回っている。
 だから、ミスティの攻撃に対応できず、マグダレーナは苦戦しているのだ。
 ここまではミスティが優勢。
 そしてこの後、劣勢に追い込まれたマグダレーナがどう出るか。
 俺には分かっている。
 この状況を打破する手は、マグダレーナには一つしかない。
 マグダレーナがその行動をとる瞬間。
 それを俺は待ち続けている。



 ミスティの動きが読み切れないのは、戦闘パターンだけではない。
 遠野が用意したミスティの新しい装備が、マグダレーナの予測に誤差を生んでいる。
 特に、両足に装備されたホイールは、ストラーフ並の大型装備を身に付けていながらも、滑らかかつ高速な機動を可能にしている。
 初代ミスティとも、先日のミスティとも、まるで違う機動。
 以前の戦闘データは全く役に立たない。
 ならば次の手を打つのみ。
 それを悟ったマグダレーナの行動は早かった。
 背部の大型バックパックに接続された、ランプのような形状をしたユニットが唸りを上げる。
 一つ目の妖怪のような、中央のカメラが不気味に輝いた。
 接続部がはずれ、二体のランプ型サポートメカが宙に浮く。

「……行け!」

 マグダレーナが左手を振り、短く指示したのと同時。
 二体のサポートメカが動き出し、ミスティに向けて殺到した。



 ミスティは焦る。
 あのサポートメカは厄介だ。
 二体の波状攻撃は、『街頭覇王』の異名を持つファーストランカー・三冬ですら苦戦したのだ。
 二体の妖怪じみたマシンが高速で接近してくる。

「やるっきゃないわね!」

 自らを鼓舞するように小さく叫び、サポートメカを迎え撃とうと、ミスティが一歩前に出たその瞬間、

「今だ!」

 小さく鋭い叫びが聞こえた。
 刹那。
 光り輝く光芒が一筋、サポートメカの一体を貫いた。

「……え?」

 驚く暇もない。
 光の筋に貫かれた一体がどうなったのか確認する間もなく、もう一体との距離がゼロになる。
 ミスティは、サポートメカの腕に装着されたクロス・シンフォニーを払いつつ、サポートメカのメインカメラを殴りつけ、そのまま地面に思い切り押し倒した。

 さらに次の瞬間。

「あああああぁぁっ……!」

 狂おしい女性の悲鳴がほとばしる。
 声の方を見れば、頭を抱えてた桐島あおいが、いましも崩折れて膝を着こうとしているところだった。

「お姉さま!」

 心配そうな顔で菜々子が駆け寄る。
 一体どうしたというのか。
 そこでミスティは気が付いた。
 桐島あおいのやや後方、ティアが何かを抱えてバックダッシュしている。
 それは、あおいの耳に装着されていた小型ヘッドセットだった。
 ティアがいつもの華麗なトリックを決めて、桐島あおいの肩に乗り、ヘッドセットを奪った、という過程は想像に難くない。
 この数瞬の間に、何が起きたのか。何をしたのか。
 ミスティにとって確実だと言えるのは、自分が地面に押し倒したサポートメカが、行動不能になっていることだけだった。



 虎実は、いましがた引き金を引いた大型の武装……荷電粒子砲を残したまま、木の幹から飛び降りた。
 一撃放ったら、命中してもしなくても、できるだけ早く遠くに逃げろ、というのが遠野の指示である。茂みの下に隠してあった、いつものエアバイクはアイドリング状態で、虎実が飛び乗るとすぐさま起動、蹴飛ばされるように広場を後にした。
 作戦は成功した。
 木の上から、遠野の合図とともに、マグダレーナのサポートメカを狙撃する。
 エアバイクから銃器を撃ちまくるスタイルの虎実は、火器管制に優れた能力を持っている。だからこそ、この役目に選ばれた。
 しかし、虎実は納得行かない。
 成功しても、嬉しくも何ともない。

「ほんとに……本当にこれで良かったのかよ、トオノ!!」

 正々堂々の決闘に、伏兵による狙撃など、卑怯極まりないではないか。



「伏兵とはな……」

 しわがれた声が憎々しげに呟く。
 見れば、怒り心頭という顔で、マグダレーナはミスティを激しく睨んでいた。

「正々堂々の勝負だと言っておきながら、この仕打ちは何だ、『異邦人』!」
「し、しらないわ……」
「しらばっくれるな! よくも舐めてくれたものだ、このわたしを……」

 ミスティは本当に知らなかった。
 彼女も、マスターの菜々子も、こんな作戦は知らされていない。
 正々堂々、一対一の勝負だと聞かされていた。

「そうだ、言っただろう。正々堂々一対一の勝負だと」

 はっきりとした声が、横槍を入れてきた。
 マグダレーナの苛烈な視線がミスティからはずれ、声の方を向く。
 ミスティもその視線の先を追った。
 視線の先にいたのは……遠野貴樹。
 彼は、いつも通りの落ち着いた口調で、言った。

「四対一じゃ、ミスティにハンデがあり過ぎるだろ」

 それを聞いたマグダレーナの表情が一変した。
 愕然。
 激しい怒りを一瞬にして吹き飛ばし、いつもの不気味な余裕さえなくし、ただただ驚いているばかりだ。
 ミスティはいぶかしく思う。四対一? 貴樹は一体何を言っているのか? そして、マグダレーナは何をそんなに驚いている?
 その場にいた誰しもそう思っていたことだろう。
 すると、その遠野貴樹が、ゆっくりと言った。

「ミスティ、そのサポートメカの外装を引き剥がしてみろ。ティア、打ち合わせ通り、ヘッドセットのカバーをはずせ」

 ミスティは押し倒したサポートメカに目をやる。
 すでに台座の上の球体は半壊し、外装を剥がすのも難しくなさそうだ。
 ミスティは半信半疑に思いながらも、遠野の指示通り、副腕の爪をその丸い外郭に引っ掛けて、剥がしにかかる。



 マスターの合図とともに、わたしは桜の木の陰から飛び出すと、ジャンプして桐島あおいさんの肩の上に着地、すぐさまヘッドセットを奪い取って後退していた。
 わたしの行動がバトルに何で必要なのかなんて、知らない。マスターはいまだに何も言ってくれない。
 ただ、次の指示で、ヘッドセットのカバーをはずしてみんなに見せろ、と言い含められていた。
 わたしはナイフを取り出すと、ヘッドセットのカバーの継ぎ目に二度三度突き立てる。すると、意外にあっさりとカバーははずれた。
 わたしは、見た。
 ヘッドセットの内部。
 わたしは言葉を失う。
 こんな……こんなことって……!



 ミスティが剥がしたサポートメカの外装から見えた内部。
 ティアがはずしたヘッドセットのカバーの中身。

「な……なんだ、あれ……」

 そう言ったきり、大城は絶句した。
 いや、その場にいた誰もが、神姫たちでさえ、その事実に声を失っている。
 その二つは同じ形状をしていた。
 円形の小さな板の上に、三角形に配置された三つの小さなくぼみ。そこにそれぞれ宝石のように輝くチップがはめこまれている。
 神姫マスターならば、知らない者はいない。
 なぜなら、必ず目にするものだからだ。
 そう、不安と期待を入り交じらせながら、自らの神姫を立ち上げる最初の儀式……その時に。

「CSC……!?」

 蓼科さんの声はかすれていた。
 そこから導き出される信じ難い答え。

「それじゃ……あれは……あれが、神姫……!?」

 八重樫さんの口をついて出た言葉。
 正解だ。
 俺はひとつ頷いた。











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