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キズナのキセキ

ACT1-29「死闘の果て」




 美しい、などと……。
 マグダレーナはぎりり、と歯噛みする。
 目の前の敵に対し、そんな気持ちを抱いた自分に猛省を促す。
 今は戦闘中だ。そんな呑気な感情など持っている場合ではない。

 思考を切り替えたマグダレーナは状況を分析する。
 ミスティと久住菜々子の会話は意味不明だ。
 だが、次に仕掛けてくるのは間違いなく接近戦。ブラックライオンによる攻撃以外はない。それしかミスティには残されていないのだ。
 あるいは、白いストラーフのミスティのように、彼女を一撃の下に倒す技があるのかも知れない。
 『花霞』の一手はマグダレーナとの一戦で、ミスティが最後に使った技だった。完成していれば、あるいはマグダレーナは倒されていたかも知れない。『アカシック・レコード』の検索結果が技の正体を導き出し、『スターゲイザー』が攻撃予測を割り出していた結果、先代ミスティの必殺技は不発に終わった。あの時も、自分に近づけさせないことで技を封じた。
 そう、今度も奴を近づけさせなければいい。
 ソリッドスネークを手にした今、先代との戦いよりもたやすいことだ。
 この蛇腹剣の防御陣形がある限り、奴は間合いに踏み込んでくることはできないのだから。

 マグダレーナは勝利を確信する。
 次は容赦なく奴を引き裂く。そして、何のメリットもない、この無意味な戦いを終わりにする。
 マグダレーナは剣の柄を持ち上げ、じゃらりと音を鳴らして構えた。地擦りの下段。

 対するミスティも構えたまま、マグダレーナを見据えている。
 ミスティの方は、剣の峰に手を添えて目線の高さで構えている。
 二人は理解していた。次の攻防で勝負が決まる。

 空気が緊張で張りつめる。
 静寂。
 二人の緊張が、すべての音を停止させたかのような静けさ。
 睨み合うミスティとマグダレーナ。
 すべてが静止した空間で、無数の桜の花びらがはらはらと舞う。

 一枚の花びらが、ミスティが手にした黒剣の上に舞い降りる。
 刃の上に落ちた薄い色の花びらは、しかしその上に乗ることなく、音も立てずに二つに割れた。

 それが合図。
 ミスティとマグダレーナは同時に地を蹴った。
 被我の距離は瞬く間に埋まる。

「シャアアアァァッ!」

 先に動いたのはマグダレーナだった。
 地を滑りながら、鋼鉄の蛇をうねらせながら、切っ先を突き込んでくる。
 ミスティはそのまま真っ直ぐに滑走していく。
 このままではソリッドスネークの餌食になる。
 しかし、ミスティはスピードを落とさない。
 誰もが彼女の無謀に声を失ったその時、

「ティア! あなたの技、借りるわよ!!」
「え!?」

 ミスティの叫びに、ティアは目を見張る。
 迫る蛇腹剣の切っ先、飛び込んでいくミスティ。
 蛇の牙が襲いかからんとした、その瞬間。
 ミスティはステップを踏むと、ショートターンで切っ先をひらりとかわした。
 しかし、意志を持った剣・ソリッドスネークはその動きを感知し、追尾しようと身を踊らせる。
 刹那。
 ミスティは手にした黒剣を迅らせた。
 狙いは連結された刃と刃の間。
 閃いたブラックライオンは、ソリッドスネークの蛇腹の隙間を正確に走り抜け、鋼の切っ先を切り離した。
 勢いで飛んでいく、ソリッドスネークの頭。
 しかし、蛇はさらにミスティを捉えようとうねり、蛇腹を鳴らしながら、横薙ぎに襲い来る。
 ミスティは脚を交差させてステップ。
 身体を回転させながら、またしてもソリッドスネークの先端をショートターンで回り込むようにかわした。
 踊るように。

「……ファントム・ステップ!?」

 ティアが驚愕に叫ぶ。
 ミスティの今の機動は、ティアの技『ファントム・ステップ』に間違いなかった。



 ミスティ恐るべし。そう言わざるを得ない。
 ティアの『ファントム・ステップ』は真似しようとして出来る類のものではない。
 『ファントム・ステップ』という技は、ティアが身につけている滑走の技術を駆使し、攻撃を紙一重でかわし続けながら一定距離を保つこと、である。
 滑走に特化したティアの技すべてを駆使して初めて成り立つ機動のことだ。脚部にホイールを付けただけで真似できるものではない。
 しかしミスティは、あの装備を装着して二ヶ月で、『ファントム・ステップ』を実現している。

 対戦した神姫の特徴や技を吸収する能力に長けているのか。そうした能力がずっと続けてきた遠征で培われたのか、それともミスティ自身の特性なのか。
 それとも……

「……天才か」

 もはやそう言う他はなかった。



 ずっと見てきた。
 ミスティはその神姫のことをずっと気にかけていた。
 出会ったときから、今まで、ずっと。
 過酷な境遇、容赦ない運命。
 何度も膝を折り、涙を流した、その姿。
 それでも彼女は、マスターと二人で絶望に立ち向かった。
 二人の絆は、最後には運命を覆し、世界すらも変えた。
 彼女の姿はミスティには眩しかった。
 いつかわたしも、菜々子とともに運命を覆すことが出来るかもしれない。彼女を見ていると、そう信じられた。
 だから、ミスティはティアが好きだったし、心から尊敬していた。
 新装備を得て、滑走が可能になった時から、ミスティと菜々子は密かに練習を始めた。
 今まで見続けてきたティアのデータと自分の機動データをすりあわせ、ティアのようなステップを実現する。
 技が絆というならば、『ファントム・ステップ』は、ミスティとティアをつなぐ絆だ。
 ミスティからティアへのリスペクトの形なのだ。



 ミスティは連続ターンしながら、蛇腹剣の連結部を切断し続ける。
 ソリッドスネークの全長が縮まるにつれて、マグダレーナとの距離も縮まってゆく。
 マグダレーナが、その手元にほとんど柄だけしか残っていないことに気づいた時、ミスティは目前に達していた。

「くっ……!!」

 マグダレーナは、叩きつけるように、残った刃を振り下ろす。
 ミスティは、副腕を交差させて防御。残っていた右副腕のアーマーがその一撃で破砕する。
 返す刀で斬り上げる。狙いは副腕の交差部分。
 すでに無数の傷が付けられた左右の機械腕が跳ね上がる。隠れていた腕の奥、ミスティの本体が露わになる。

「……!?」

 はたして、そこにミスティはいなかった。
 パージされた背面装備がスラスターの噴射で浮いているだけだ。
 マグダレーナが思考を走らせる。奴はどこだ。
 が、その予測を出すより早く、浮いている右副腕が、マグダレーナの左側を襲う。
 その程度の奇襲に対応できないマグダレーナではない。
 身体を右側に傾けながら、短くなったソリッドスネークで攻撃をはじく。
 攻撃は、はじいた。右副腕の手のひらが砕け散る。浮いていたミスティの装備がバランスを失い、地に落ちる。
 それと同時、マグダレーナもぐらりと身体のバランスを崩していた。

「……なっ……!?」

 右足の踏ん張りがきかない。
 あわててバランスをとり、何とか転倒を防ぐ。
 同時に各部をチェック。
 右太腿と「ブルーライン」の右側面の装甲がスラスターごと斬り裂かれていた。
 いつの間に。
 ……ミスティがすれ違った時に。
 ならば、いつすれ違った?
 ……奴が副腕で防御した次の瞬間に、姿勢を低くして脇を抜けていった。
 奴は今どこにいる?
 ……背面。

 マグダレーナが思い至ったのと同時、頭の中に警報が鳴り響く。
 スキル『アカシック・レコード』は、この日初めて、有用な検索結果をはじき出した。

 しまった、反転攻撃は奴の得意技……!

 マグダレーナが振り向く。
 ようやく背後を見た視線の先。
 奴はすでに反転を終えていた。必殺技『リバーサル・スクラッチ』。
 肉薄する。
 しかしマグダレーナはまだ半身すら振り向いていない。
 奴が速い。
 振りかざしたソリッドスネークよりも速い。
 スキル『スターゲイザー』が正確な行動予測を行った。
 一瞬後に来る斬撃の軌跡が赤い光線で表示される。
 桜の花にも似た軌跡が、全方位から襲い来る。
 先代ミスティの必殺技『花霞』の攻撃予測と一致する。
 かわすすべは、ない。

「ミスティィィイイイイーーーーーッ!!!」

 マグダレーナは、初めて、その神姫の名を呼んだ。
 ミスティが吼える。

「おおおおぉぉっ!!」

 刹那。
 ミスティのブラックライオンが迅る。
 それは、風に舞う桜の花びらを斬り裂くほどの、神速の斬撃。
 黒剣が描き出す斬撃の軌跡は、一筆書きの桜の花のようだった。
 上下左右、五枚の花弁を持つ斬撃の桜花。
 来るとわかっていても回避できない。
 それが『花霞』。

 二人の陰が交差する。
 すれ違い、二人の位置が入れ替わった。
 刀を振り抜いた姿勢のミスティ。ゆっくりと身体を起こす。刀身を下げ、剣先が地を指す。
 それと同時。
 マグダレーナの影が崩れる。
 装備も四肢もばらばらとまき散らしながら砕けてゆく。
 狂乱の聖女は、ついに地に伏した。



 視界には、見上げる空と舞い散る花びらだけが映っている。
 不敗を誇った自分が負けた。
 四肢は断たれ、装備は砕かれ、マグダレーナを構成するのは、頭部と胸部のみだった。
 いまやマグダレーナは身動きすることも出来ない。
 負けたことがショックではないと言えば嘘になる。
 だが、マグダレーナはそのことよりもむしろ、一つの疑念の方が大きく胸を占めていた。

 光に満ちた視界に、一つ影が射す。
 黒い剣先。
 ブラックライオンで牽制しながら近づいてきた、ミスティだった。

「……わたしの勝ちよ」

 言うまでもないことだ。
 もはや話すことしかできないマグダレーナにしてみれば、今更そんなことを確認するミスティがおかしくすらあった。
 マグダレーナは弱々しく口を開いた。

「……わたしは、どこで間違った……?」

 独り言のような問い。
 それこそが、今のマグダレーナの頭を占める最大の疑問だった。
 ミスティが静かに答える。

「最初から」
「……なに?」
「あんたは最初から間違ってた。人を操って復讐を果たそうなんて、そんなことを考えたところから、すでに神姫として間違ってた」
「……」
「そして、桐島アオイという希有なマスターに出会っておきながら……人と神姫の絆を否定した。復讐を理由に、ずっと孤独なままでいた」
「はっ……絆など……」
「だったら、アオイから指示が出たときの動きは何? ぴったりと息の合ったコンビネーションは何だったの?」
「……それは」
「それこそが、あんたと、桐島アオイの絆なのよ」
「……」
「あんたはアオイに出会って、普通に神姫になりたいと言えば良かった。事情を話し、どうすればいいか相談をすれば良かった。そうすれば、きっと、彼女は応えてくれて……きっともっと別の、もっと幸せな結末が待っていたはずよ」
「……なんでそんなことが言い切れる」
「当たり前でしょ。アオイはナナコのお姉さんなんだから。ナナコがずっと追いかけてきた人なんだから。そうなるに決まってるのよ」
「……」
「だけど、あんたはそうしなかった。
 強力なスキルと性能に頼って、勝利だけを求めて……今だってあんたは、アオイを、目的を果たすための道具くらいにしか思っていないんでしょう?
 あんたの境遇には同情するわ。でも、あんたに共感は出来ない」
「……そうか……」

 マグダレーナの表情は意外にも静かだった。安らいでいるようにさえ見える。
 事実、彼女の心は静かだった。
 なぜミスティに負けたのか。
 彼女にあって自分にないもの、それが原因なのだとすれば、彼女の言うとおり、それは絆に違いなかった。
 人と神姫の絆はもっと脆弱なものだと思っていた。そう侮っていたことが間違いだったのだ。

 影が視界から消える。
 ミスティはマグダレーナに背を向けていた。
 聖女の瞳に映るのは、再び青い空と桜吹雪だけになった。



 二人は、お互いを見つめながら、無言で佇んでいる。
 勝敗は決した。
 しかし、菜々子は言うべき言葉が見つからずにいる。
 やがて、小さく吐息をついて、あおいが口を開いた。

「……負けたわ」
「お姉さま……」

 話したいことがたくさんあった。
 だけど、どれも言葉にならない。何から話していいのか、わからない。
 菜々子の胸には、この二年間にため込んだ万感の思いが押し寄せている。怒りも悲しみも憎しみも、あった。だけど、憧れも希望も嬉しさもある。
 あらゆる感情がないまぜになった心が現したのは、ただの無表情だった。

 そもそも、目の前の桐島あおいは、本当に菜々子のお姉さまなのか?
 いまだマグダレーナの意志を実行する、『狂乱の聖女』の一人ではないのか。
 だとしたら、戦いに勝った今も、言葉は届かないかも知れない。
 疑念と失望。それもまた、菜々子を竦ませる。
 菜々子はあおいを見た。かすかな微笑。
 菜々子は微笑みを返せない。お姉さまの微笑みは、果たして心からのものだろうか?

 菜々子が逡巡を続ける、その時のことだった。
 突然。
 不躾なざわめきと共に、広場に数人の男たちが侵入してきた。

「え?」

 菜々子がぼうっとしている間に、男たちはてきぱきと行動を開始する。
 男たちはスーツ姿の大人で、この場にはあまりにも不釣り合いだった。
 彼らは、破壊されたマグダレーナの残骸を回収していく。
 そして、大人たちの二人が近づいてくると、あおいの両側に立った。

「桐島あおい、かね?」
「はい」

 素直に返事をしたあおいに、男の一人が懐から取り出したものを開いて見せた。

「警視庁MMS犯罪捜査課だ。君には裏バトルに参加し、賭博の協力をした疑いがかかっている」
「……」
「話が聞きたい。署まで同行願えるかな? もちろん任意だが」
「そんな……!」

 菜々子は思わず口走っていた。
 確かに、あおいは裏バトルに参加していた。だがそれがどれほどの罪になるというのだろう。
 それに、警察が来るタイミングが異常に早い。まるでバトルが終わるのを待っていたかのようなタイミングだ。
 つまり、誰かが『狂乱の聖女』を捕まえさせるために、ここでのバトルを警察に知らせた、ということだ。
 誰が。
 菜々子の勘が、彼女を振り向かせた。

「遠野くん!?」

 振り返った菜々子の視線の先。
 遠野のそばには、一人の刑事がいた。
 菜々子は悟った。遠野は警察が踏み込んでくることを事前に知っていた。……もしかすると、警察を呼んだことさえ、彼の仕業かも知れない。
 菜々子は首を振り、その考えを追い払おうとする。
 嘘だ。
 そんなことあるはずない。
 今まで必死で支えてくれた、遠野の心情は本物だった。本物だった、はずだ。
 菜々子は懇願するように遠野を見る。
 しかし、遠野は視線を逸らすようにうつむくと、苦渋の表情のまま、ゆっくりと頭を振った。
 その様子に菜々子は愕然とする。
 信じられない。
 このバトルは、最初から仕組まれていた。『狂乱の聖女』を警察に引き渡すための足止めとして。

 わたしは……そんなことをするために、戦ってきたんじゃない!

「お姉さまっ……!!」

 二人の刑事に連れられたあおいは、そこで足を止めてゆっくりと振り向いた。
 どこか寂しげな微笑を浮かべ、言った。

「さようなら、菜々子」

 それだけ言って、あおいは踵を返す。
 公園の外に停まっている車には、着脱式のパトランプが載っている。覆面パトカーだ。
 車に乗り込むまで、あおいはついに振り返ることはなかった。

 警察官たちは撤収していく。
 先ほどの刑事と遠野は何事か話していたようだったが、それも束の間、他の警察官と一緒にパトカーに乗り込む。
 ものの一〇分とせずに撤収は完了していた。
 あっという間の出来事だった。

 菜々子は立ち尽くす。
 車が立ち去るのを、ただ呆然と見送る他なかった。

 こんなことにならないように、頑張ってきたはずなのに。

 わたしは何のために戦ってきたの……?












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