翠の月を越え、天翔る者(前編)
ロッテとアルマ、二人のお姉ちゃんは苦戦しながらもセカンドへの切符を
見事に掴んだ……後はボクだけ。ボクさえ勝機をもぎ取れば、上がれる。
そんな重責を背負った戦いを控えて、つい緊張してきちゃうんだよ……。
あ、ボクの名前はクララ。“マイスター(職人)”達・最後の妹なんだよ。
見事に掴んだ……後はボクだけ。ボクさえ勝機をもぎ取れば、上がれる。
そんな重責を背負った戦いを控えて、つい緊張してきちゃうんだよ……。
あ、ボクの名前はクララ。“マイスター(職人)”達・最後の妹なんだよ。
「さぁクララよ。後はお前一人だ……だがな、気負う事はないのだぞ?」
「マイスター?……そうだね、今日だけがチャンスじゃないもん。でも」
「マイスター?……そうだね、今日だけがチャンスじゃないもん。でも」
今日掴めたのに、ボクの所為でお預け。これはちょっと頂けないもん。
だからこそ、信じる人の喜びを失いたくないからこそ……ボクは戦う。
そして、抱き合うんだよ。お姉ちゃん達と……マイスターと一緒にね?
だからこそ、信じる人の喜びを失いたくないからこそ……ボクは戦う。
そして、抱き合うんだよ。お姉ちゃん達と……マイスターと一緒にね?
「……頑張ってくるんだよ、皆。必ず、この喜びを完全にするもん!」
「クララちゃん、頑張って下さいですの♪大丈夫、きっと行けます!」
「フィールドは“宮廷”だそうです、遮蔽物に気を付けてくださいね」
「クララちゃん、頑張って下さいですの♪大丈夫、きっと行けます!」
「フィールドは“宮廷”だそうです、遮蔽物に気を付けてくださいね」
三人に見送られてヴァーチャルフィールドへのゲートを降下し、意識を
虚数空間に飛ばす……うん、順調だよ。掌を見つめて、緊張……つまり
超AIのノイズを除去し、準備はOK。“宮廷”に相応しい優美な衣と
好みの帽子に全身を包んだボクは、開いたゲートを歩いていくんだよ。
虚数空間に飛ばす……うん、順調だよ。掌を見つめて、緊張……つまり
超AIのノイズを除去し、準備はOK。“宮廷”に相応しい優美な衣と
好みの帽子に全身を包んだボクは、開いたゲートを歩いていくんだよ。
『クララvsリュミエール、本日のサードリーグ第20戦闘、開始します!』
「リュミエール……フランス語で“光”。貴女の話はそこそこ有名だよ」
「その通り。光の様に疾く、敵を倒す騎士たる神姫……それが私です」
「リュミエール……フランス語で“光”。貴女の話はそこそこ有名だよ」
「その通り。光の様に疾く、敵を倒す騎士たる神姫……それが私です」
ボクが“宮廷”を思わせる室内の中央まで来た時、柱の影からその神姫は
出てきたんだよ。サイフォスタイプだけど、その鎧は軽装・重装の折衷。
そのペイントも白黒が入り交じっていて、更にその背には……大きな翼。
何処かの鰻を思い浮かべるその異形と共に目を引くのは、漆黒の両手剣。
それがここ暫く、サードリーグの首座にいる“光と闇の騎士”なんだよ。
出てきたんだよ。サイフォスタイプだけど、その鎧は軽装・重装の折衷。
そのペイントも白黒が入り交じっていて、更にその背には……大きな翼。
何処かの鰻を思い浮かべるその異形と共に目を引くのは、漆黒の両手剣。
それがここ暫く、サードリーグの首座にいる“光と闇の騎士”なんだよ。
「……貴女の話も聞いています。不可思議な異能を扱うとか?」
「ううん、理論と超然に基づいて行われるメソッドだよ……さぁ」
「ええ。語り合うのは、決した後でも出来ましょう……行きます!」
「ううん、理論と超然に基づいて行われるメソッドだよ……さぁ」
「ええ。語り合うのは、決した後でも出来ましょう……行きます!」
素体も白黒……より厳密には、白銀の髪と漆黒の瞳……に彩られた彼女は
異名に違わず、脚部装甲に仕込んだブースターで急接近してきたんだよ!
それだけなら普通だった……けど、ボクは見逃さなかったよ。彼女の剣が
陽炎の様に揺らめいて、周囲の光を吸収していく光景を。これは……!?
慌ててボクは腰のロッドを抜き光の刃を形成、その一撃を受けるんだよ。
異名に違わず、脚部装甲に仕込んだブースターで急接近してきたんだよ!
それだけなら普通だった……けど、ボクは見逃さなかったよ。彼女の剣が
陽炎の様に揺らめいて、周囲の光を吸収していく光景を。これは……!?
慌ててボクは腰のロッドを抜き光の刃を形成、その一撃を受けるんだよ。
「く……コライセルッ!う、うぅ……!外見の容積より、重いんだよ」
「……理論に基づいた推測で早速見抜きましたか。この“剣”を?」
「“光”は、機動性……“闇”は、重力操作にも似たエネルギー制御」
「御明察。ですが、普通の犬型より非力な貴女……どう出ますか?」
「……理論に基づいた推測で早速見抜きましたか。この“剣”を?」
「“光”は、機動性……“闇”は、重力操作にも似たエネルギー制御」
「御明察。ですが、普通の犬型より非力な貴女……どう出ますか?」
即ち、莫大なエネルギーを凝集・解放させる事でその鋭さを増す機械の
魔剣……その能力が彼女のスピードと統合される事で、凄まじい威力を
発揮しているんだよ。対するボクは本当の魔剣だけど、彼女の言う通り
異能による非力な存在。このまま鍔迫り合いをするのは不利なんだよ!
魔剣……その能力が彼女のスピードと統合される事で、凄まじい威力を
発揮しているんだよ。対するボクは本当の魔剣だけど、彼女の言う通り
異能による非力な存在。このまま鍔迫り合いをするのは不利なんだよ!
「生憎だけど、ボクは“魔女”だよ……“ヴァニッシュ・アクティブ”」
「──────ッ!?く、ぁぁ!……目が、目がッ!?」
「だから斬り結ぶのは専門じゃないんだよ……アルサス、出ておいで」
『Ja(了解しました)』
『“W.I.N.G.S.”……Execution!』
「……ッ、距離を取られたみたいですね……」
「──────ッ!?く、ぁぁ!……目が、目がッ!?」
「だから斬り結ぶのは専門じゃないんだよ……アルサス、出ておいで」
『Ja(了解しました)』
『“W.I.N.G.S.”……Execution!』
「……ッ、距離を取られたみたいですね……」
だから、ボクは目眩ましの閃光魔術を使用して彼女を怯ませて、その間に
“レーラズ”の装備、“アルファル”の招喚等を行ったんだよ。そして、
“コライセル”を伸ばし構えて……先端にレーザー光を編み出すんだよ!
それは反撃の狼煙にして、出方を伺う為の技だもん。でも、威力は上々。
“レーラズ”の装備、“アルファル”の招喚等を行ったんだよ。そして、
“コライセル”を伸ばし構えて……先端にレーザー光を編み出すんだよ!
それは反撃の狼煙にして、出方を伺う為の技だもん。でも、威力は上々。
「貴女の実力、見せてほしいんだよ。“スターライト・ブレイカー”!」
「……いいでしょう。小手調べの為とは言え、私にレーザーですか?」
「避けない?……剣が、また揺らめいてエネルギーを……まさか!」
「そのまさかです。この程度なら、避けるまでも……無いッ!!」
「……いいでしょう。小手調べの為とは言え、私にレーザーですか?」
「避けない?……剣が、また揺らめいてエネルギーを……まさか!」
「そのまさかです。この程度なら、避けるまでも……無いッ!!」
だけど真正面から撃ったそれは、リュミエールさんには十分対応できた。
つまり『重力制御にも似た』エネルギー集積によって、レーザーの圧力を
無理矢理ねじ曲げて、剣で閃光を弾き飛ばすという荒技だったんだよ!!
……でもボクだって手を抜いて撃った訳じゃないし、他にも手はあるよ。
つまり『重力制御にも似た』エネルギー集積によって、レーザーの圧力を
無理矢理ねじ曲げて、剣で閃光を弾き飛ばすという荒技だったんだよ!!
……でもボクだって手を抜いて撃った訳じゃないし、他にも手はあるよ。
「……流石だよ。でも貴女に“大振りをさせた”もん……アルサス!」
『Ja(突貫します)』
「ッ!?しま、った!ぷちの騎士が……く、ぁぁぅっ!?」
『Ja(突貫します)』
「ッ!?しま、った!ぷちの騎士が……く、ぁぁぅっ!?」
元々先程の砲撃は小手調べ。本当は、既に迂回して接近した人型形態の
アルサスを突撃させるのが、狙いだったんだよ。その狙いは当たって、
逆手に構えた双振りのレーザー・ダガー“フォトン・レイヤード”が、
十字に彼女の鎧を切り裂く。ここが、攻め込むチャンスなんだもんっ!
アルサスを突撃させるのが、狙いだったんだよ。その狙いは当たって、
逆手に構えた双振りのレーザー・ダガー“フォトン・レイヤード”が、
十字に彼女の鎧を切り裂く。ここが、攻め込むチャンスなんだもんっ!
「アルサス、そのまま連撃を叩き込んで。ボクが達するまでに」
『Ja(問題有りません)』
「ぐあうっ!は、白熱した角!?……ですが、翼を持つ私に……」
『Nein(逃がしません)』
「な──────う、あぁあああっ!?」
『Ja(問題有りません)』
「ぐあうっ!は、白熱した角!?……ですが、翼を持つ私に……」
『Nein(逃がしません)』
「な──────う、あぁあああっ!?」
ボクの意を受けたアルサスは、頭部の角“メタル・ストライド”で彼女を
浮かせ、そのまま両肩のシャッターを開いたんだよ。ここには対ビーム用
防御装置があるんだけど……その出力を反転させれば、強力なスパークで
敵を砕く積極防御装置にも出来るんだよ!その電撃を以て、騎士は完全に
足止めされた……ボク自身が一撃を撃ち込むとしたら、ここなんだよッ!
コライセルから再度光刃を産み出したボクは、跳躍してそれを叩き込む。
浮かせ、そのまま両肩のシャッターを開いたんだよ。ここには対ビーム用
防御装置があるんだけど……その出力を反転させれば、強力なスパークで
敵を砕く積極防御装置にも出来るんだよ!その電撃を以て、騎士は完全に
足止めされた……ボク自身が一撃を撃ち込むとしたら、ここなんだよッ!
コライセルから再度光刃を産み出したボクは、跳躍してそれを叩き込む。
「非力なボクが斬るチャンスは、そう多くないもんね……せぁっ!」
「きゃううっ!!?」
「──手応え、有りっ」
「きゃううっ!!?」
「──手応え、有りっ」
──────でもこれは序の口。勝つには、まだ遠いんだよ。