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えむえむえす ~My marriage story~

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武装神姫のリン
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すとれい・しーぷ 001


≪unknown製、MMS-Automaiton 神姫 Type:stray sheep Mesarthim≫
≪セットアップ完了、起動します≫
≪オーナーのことは何とお呼びすればよろしいでしょうか?≫
機械的な少女の声が薄暗い部屋に響いた。
それが自分の声だと認識するのにたっぷり5秒の時間がかかった。
デスクに向かい、起動させたままのPCの逆光を受けるフードを目深にかぶった人物が、己のオーナーであることを理解するのには、先ような時間は必要にならなかった。
オーナーを挟んで向こう側に見えたのは、朝焼けを映す窓。
開け放たれたそれには、アメジストの空が張り付いていた。
そんな朝にわたしは目覚めた。

≪オーナーのことは何とお呼びすればいいでしょうか?≫
自分の意思とは関係なしにこぼれる機械的な言葉にわたしは不安になる。
繰り返す言葉に不快感を持っていなんだろうか。
再三の問いかけに目の前の人物はうんとも、すんとも言わずただ、わたしを見ているだけ。
きっと何と呼ばせるか迷っているのだろう。
わたしはただ、なにもできず、己の褐色の肌を見つめた。
窓に映る姿はおぼろげではっきりとは確認できないが、白い癖っ毛に小さな身体。
羊の角を模した髪飾りが2つ、左右対称に眉山の延長線上にあった。
弱そう。それが自分の容姿に対する感想。
人知れず落ち込んでみる。

1分おきに発せられる雑音が7回目を迎えようとしたそのとき、黒いパーカーの
フードがわずかに揺れた。
同時に空気も。
「オーナー」
至極少量の空気の振動に音が乗せられる。澄んだ声だった。
オーナーの声を心地よいと感じるのは、わたしがオーナーの神姫として起動したからだろうか?
きっとそうだ。そう自分の胸に快感を押し込めると、わたしは次なる言葉を紡いだ。
「よろしくお願いします、オーナー」
高鳴る胸、わたしの心はオーナーに名前を与えられ、支配されることを望んでいた。
目の前の人間に服従し、支配され、命令のままに動く。
考えただけで身体が疼いた。
「あ、あの・・・早速ですが、わたしに名前をください」
早く、早く、早く早く早く!わたしに名前を!!!
また、沈黙。オーナーには長考癖があるのか、また考えこんでいるようだ。
しかしわたしには、それがわたしの状況を見て楽しんでいるようにも見えた。
焦らされている。そう感じた。
それすらも、快感に繋がるなんて、思いもしなかった。
朝焼けのアメジストは既にその色を隠し、柔らかなスカイブルーに変わっていた。

静寂を守る部屋に設置された、壁掛け時計の音だけがやけに大きな音に感じる。
わたしは静かに、胸の内でその秒針の数を数えた。
1055、1056、1057・・・・・・
約18分の沈黙を破ったのは、他でもないオーナーだった。
最初にしたように、僅かに空気を揺らすような囁きで、わたしの名を紡いだ。
「 ル キ ス 」
聞きなれぬ言葉に思わず疑問符を浮かべる。
オーナーは優しくわたしの手を握り、またあの涼やかで澄んだ、囁く歌のような声を聴かせてくれた。
「プリクソスとヘレを救った黄金の羊。その向かう先の地名コルキスから」
君が迷子にならないように、君の帰る場所がいつでも君の中にあるように。

オーナーはそれっきり口を閉ざしたまま何も言ってはくれなかった。
迷い羊が迷子にならない道理なんて、ないのに。
それでもわたしは、既に少しだけオーナーのことを好きになっていた。
それが辛く苦しい道とも知らずに。







わたしが起動して一週間。いくつかわかったことがある。
まずは、わたしのこと。
どうやらわたしは正規の神姫ではなく、オーナーお手製のオリジナル神姫らしい。
らしい、というのは、オーナーから直接聞いたわけでなく、暇をもてあましている時に覗いた神姫の公式サイトに、わたしと一致する型がなかったためだ。
オーナーでない、他の方の手作り品の可能性も考えたが“オーナーのお手製”と考えた方が、愛を感じられたので、何となくそう解釈した。
タイプ:ストレイシープ メサルティム
それがわたしに割り振られた名前。
迷い羊の名を冠するためか、オーナーのお手製AIなせいか、己の意思決定や判断力がグラグラ不安定なのをよく感じる。
褐色の肌に、やや癖のある白い髪。丸い大きな金の瞳。大きめに造られた柔らかそうな胸。
正規の神姫で言えば、グラフィオスに近いだろうか?
しかし、彼女との最大の違いは、3rdsmall素体をベースに作られ、小回りが利くというところ。
顔のつくりはマオチャオやハウリンなど、幼いそれに近かった。
わたしはこの身体をすぐに気に入った。オーナーから賜った、たった一つの身体。
考えただけで胸が熱くなる。


次に、オーナーのこと。
オーナーは長考癖ではなく、単に口下手、というか、しゃべるのが苦手なようだった。
いつも目深にフードをかぶり、わたしですら、オーナーの顔を見たことがない。
極度の恥ずかしがりや、と言うと語弊があるかもしれないが、本当に顔を見せない、しゃべらないのだ。
その姿はさながら影。そうでなければ世捨て人(オーナーに失礼かもしれないが・・・)
毎日、決まった時間に起きて、フラリと部屋を出て行くと、夕方ごろ、またフラリと部屋に帰って来る。
そうして死んだようにオーナー用の巨大クレイドルに倒れこむと、動かなくなった。
きっと充電が切れてしまったのだ。ひとしきり充電が終わったあと、また部屋からフラリと出て行き、今度は頭からつま先まで、冷却液にまみれて戻ってくる。
もちろん既にフードつきの衣装を纏い顔は見えない。
そのままPCに向かって何かしらの作業をした後、ようやくわたしにかまってくれる。
かまう、といっても素体の稼動調整や、簡単な動作確認だけ。


そんな事務的なふれあいに痺れを切らしたわたしは、思い切ってオーナーにお願いした。
「オーナー、わたしを外の世界に連れて行ってください」
オーナーは僅かに驚いたようだったが、すぐに穏やかな声と、綺麗な指先でわたしの頭を撫でた。
「今日は遅いから、また。・・・日曜日にしようか」
てっきり否定の言葉が返ってくると思っていたが、すんなりとわたしの願いを聞き入れたオーナーに至上の笑みを向けると、わたしはゆるやかにスリープモードへと移行した。


約束の日、わたしはどきどきしながらも、オーナーの起床を待った。
いつもの時間、いつもの所作で、オーナーは巨大クレイドルから身を起こした。
「オーナー、おはようございます!」
感情の高ぶりからか、いつもより大きな声が出てしまい、恥ずかしさから己の口を押さえる。
そんな様子をオーナーは、くすくす、といった感じで控えめに笑った。そう、笑ったのだ。
世捨て人のように無感動だったオーナーが、ここにきて初めて笑ったのだ。
それだけで、わたしの心は満たされてしまった。オーナーの中にわたしの心が堕ちていくのを感じた。


「あまり、人ごみは好きじゃないんだ・・・」
玄関の鍵を閉めるとオーナーは、囁くように言った。
快晴の空と、照りつける太陽の熱に蒸発してしまいそうなそれは、なんとか、といった感じでわたしの耳に届いた。
「大丈夫です、オーナーの行くところなら、よろこんでお供しますから」
掌にちょこんと座るわたしをオーナーがどう思ったか。
そんなことはわからなかったが、オーナーがこくりとうなずくのを確認して、少しだけ気分がよくなった。


さわさわと風がなびく場所。
そこが公園と呼ばれる場所だということは、起動したてで知識の薄いわたしにも明白だった。
遊園地、デパート、水族館に動物園。レジャー施設の飽和により、忘れ去られた楽園。
この公園はそういった場所のように思えた。
溢れかえった娯楽施設に人を奪われた公園には、わたしとオーナー、そして遊びに連れて行ってもらえなかった子供が僅かにいるだけだった。
「・・・・・・・・・・・・」
オーナーは何も言わず、木漏れ日の落ちるベンチに腰掛けるとわたしを隣に座らせた。
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
沈黙。だが決して気まずいものではない。
一週間。長い時間がかかったが、この沈黙こそが、オーナーの愛情表現なのだ。
極度の口下手なオーナーは、なにも言わずとも、己のことをわかってくれるパートナーを欲していたのだ。故に、わたしを造った。
これがわたしの妄想でしかないことには、気づかないように、そっとそっと、ひざの横に投げ出されたオーナーの手に触れる。
同時にわたしは気づけなかった。オーナーが震えていることに。泣いていることに。


なにも知らない。オーナーのこと。自分のこと。
それが当たり前のことだなんてわたしは気づきもしないで、堕ちた心を追うように、身体ごと、オーナーの中に潜りたくて、独り、水に落ちた岩のように急速に思考の海へ沈んでいった。





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