雷帝の御剣、神殺しの槍(中編)
それはアルマにとっても、私にとっても予期していなかった奇襲。ミラの
籠手はこの為にあったのだ。即ち、蛇腹部から伸展させての遠距離打撃。
見ればミラの脚部装甲はパイルバンカーになっており、腕の反動を完全に
受け止める土台を作っている。それを確認してか、籠手が更に変形した。
神姫の細腕より一回り大きかった掌はさらに巨大化し、巨大な拳となる!
籠手はこの為にあったのだ。即ち、蛇腹部から伸展させての遠距離打撃。
見ればミラの脚部装甲はパイルバンカーになっており、腕の反動を完全に
受け止める土台を作っている。それを確認してか、籠手が更に変形した。
神姫の細腕より一回り大きかった掌はさらに巨大化し、巨大な拳となる!
「さぁ、思いっきり叩きのめしてあげるわ!私は“力”の象徴よッ!!」
「ち、力?……きゃぁああっ!?」
『アルマッ!?』
「ち、力?……きゃぁああっ!?」
『アルマッ!?』
壁に投げつけられたアルマは、すんでの所で翼をはためかせて制止した。
だが、ミラの剛腕は凄まじく躯の各所にも影響が残っている……拙いな。
ミラの方は止める筈もなく、伸びた腕を縦横無尽に振り回して薙ぎ払う!
だが、ミラの剛腕は凄まじく躯の各所にも影響が残っている……拙いな。
ミラの方は止める筈もなく、伸びた腕を縦横無尽に振り回して薙ぎ払う!
「いたたた……これ、リーチが長いのにストラーフよりも柔軟ですね」
「そうッ!姉様が精一杯の勇気を振り絞って、店で作ってもらったの!」
「くっ!?う、腕を乱暴に振り回して……きゃあぁっ!?」
『アルマ!無事か!?』
「……ど、どうにかまだ動けます!」
「そうッ!姉様が精一杯の勇気を振り絞って、店で作ってもらったの!」
「くっ!?う、腕を乱暴に振り回して……きゃあぁっ!?」
『アルマ!無事か!?』
「……ど、どうにかまだ動けます!」
フィールドアーマーと“ソニック・ブランド”、更にスラスターをフルに
活かし、アルマは腹に打ち込まれたラリアットの衝撃を殺す。さもなくば
“アルファル”は一瞬で砕け散っていただろう……と言ってもこれ以上は
恐らく凌ぎきれまい。要はミラがあの姿勢を維持出来なければいいのだ。
活かし、アルマは腹に打ち込まれたラリアットの衝撃を殺す。さもなくば
“アルファル”は一瞬で砕け散っていただろう……と言ってもこれ以上は
恐らく凌ぎきれまい。要はミラがあの姿勢を維持出来なければいいのだ。
『よし……アルマ、雪崩れに呑み込まれそうな時はどう逃げる?』
「ふぇ?え、えっとそれは……あ、はい!わかりましたっ!!」
「無駄よっ!一気に止めを刺してあげるッ!!えやああああっ!!」
「ふぇ?え、えっとそれは……あ、はい!わかりましたっ!!」
「無駄よっ!一気に止めを刺してあげるッ!!えやああああっ!!」
優勢と見たミラが、得意の白兵能力をフルに活かして叩き潰しに掛かる。
しかし、その為に両腕で挟み込む様な動きをする……これが勝機だった。
普通なら飛び上がる所だが、アルマは銀の翼をはためかせて突撃するッ!
手にはエルテリア……鋭き魔剣が、真一文字に鋼の雪崩れを潜り抜ける。
しかし、その為に両腕で挟み込む様な動きをする……これが勝機だった。
普通なら飛び上がる所だが、アルマは銀の翼をはためかせて突撃するッ!
手にはエルテリア……鋭き魔剣が、真一文字に鋼の雪崩れを潜り抜ける。
「雪崩れに立ち向かうには……垂直に、動くんですっ!」
「え──────きゃ、あああうぅっ!?」
『ミラ、脱落!“黒翼の戦姫”、残り二体!!』
「え──────きゃ、あああうぅっ!?」
『ミラ、脱落!“黒翼の戦姫”、残り二体!!』
そう、左右より迫る力から水平に逃げてもジリ貧。横に、逃げ道はある!
それを見抜いたアルマは、迫る剛腕から垂直に……つまり、ミラの懐へと
飛び込んで、魔剣の刃を腹へ突き立てた!装甲を砕かれた“力”の使徒は
壁に叩き付けられ、操られた無数の刃にて全身を貫かれる。勝負有りだ。
それを見抜いたアルマは、迫る剛腕から垂直に……つまり、ミラの懐へと
飛び込んで、魔剣の刃を腹へ突き立てた!装甲を砕かれた“力”の使徒は
壁に叩き付けられ、操られた無数の刃にて全身を貫かれる。勝負有りだ。
「まずは一人……あれ、パーツが残ってますね。って、それより今は!」
「さぁほらほら、どうしたのよ!ずっと逃げ回るだけっ!?」
「くッ……そう言っても太刀筋は早い。隙を見せたら一刀両断だもん」
「今の私は“フリーハンド”ティニア、疾き“心”の使徒よッ!」
『Nein(若干劣勢です、お気を付けて)』
「さぁほらほら、どうしたのよ!ずっと逃げ回るだけっ!?」
「くッ……そう言っても太刀筋は早い。隙を見せたら一刀両断だもん」
「今の私は“フリーハンド”ティニア、疾き“心”の使徒よッ!」
『Nein(若干劣勢です、お気を付けて)』
私の意識は、アルマが気付いた異変よりもクララの戦いに向いていた。
相手をしているティニアは、床に弾ませている無数のボールを隠れ蓑に
死角からの奇襲攻撃を連発していた。その得物は……トンファーの様な
両下腕部のブレードと、神姫には巨大な“人間用”バタフライナイフ。
それらを操るテクニック自体は未熟だが、異様な走行速度が脅威だな。
相手をしているティニアは、床に弾ませている無数のボールを隠れ蓑に
死角からの奇襲攻撃を連発していた。その得物は……トンファーの様な
両下腕部のブレードと、神姫には巨大な“人間用”バタフライナイフ。
それらを操るテクニック自体は未熟だが、異様な走行速度が脅威だな。
「ほら、背中がら空き……ってまた機械人形が邪魔するッ!?」
『Ja(主君を守る者が騎士なのです)』
「……後一手、これで決まる。もう大丈夫だよアルサス」
『Ja(了解です)』
『Ja(主君を守る者が騎士なのです)』
「……後一手、これで決まる。もう大丈夫だよアルサス」
『Ja(了解です)』
クララは全身に傷を負って、疲労の色……厳密には躯の駆動率低下……を
濃くしている。“アルファル”のアルサスが良く護っているにも関わらず
この傷と言う事は、守りが突破されれば恐らく一溜まりもない。しかし、
あくまでクララは冷静且つ大胆に行動した……ティニアの前に出たのだ!
魔杖・コライセルより、光の刃を産み出し真っ直ぐ構える。勝負の時だ。
濃くしている。“アルファル”のアルサスが良く護っているにも関わらず
この傷と言う事は、守りが突破されれば恐らく一溜まりもない。しかし、
あくまでクララは冷静且つ大胆に行動した……ティニアの前に出たのだ!
魔杖・コライセルより、光の刃を産み出し真っ直ぐ構える。勝負の時だ。
「直線距離が一番得意だって、さっきまでの攻撃で分からない?!」
「……分かってるもん。だからこそ、この一撃に賭けるんだよ」
「なら……終わらせてあげるわよ──────ッ!?」
「……分かってるもん。だからこそ、この一撃に賭けるんだよ」
「なら……終わらせてあげるわよ──────ッ!?」
それを見たティニアの声は、最後まで言い切る前に止まった。爆音と共に
駆け出した彼女の上半身へ、鋼の糸が食い込んでいたのだ。そのリールは
クララから離れた所にいるアルサスと、クララ自身の手に握られていた。
駆け出した彼女の上半身へ、鋼の糸が食い込んでいたのだ。そのリールは
クララから離れた所にいるアルサスと、クララ自身の手に握られていた。
「ぐ、ぁ……何よ、これ……!?あの時の、ワイヤー……!?」
「貴方の軌道を読むのが間に合って、助かったんだよ……ごめんね?」
「この一撃の為に……相変わらず切れるわね、クララは……ぐッ!」
『ティニア、脱落!“黒翼の戦姫”、残り一体!!』
「貴方の軌道を読むのが間に合って、助かったんだよ……ごめんね?」
「この一撃の為に……相変わらず切れるわね、クララは……ぐッ!」
『ティニア、脱落!“黒翼の戦姫”、残り一体!!』
斯くてティニアの躯は、クララの慈悲の一刀によりデータに還元される。
だが……やはり同じ異変が残った。彼女が装着していた装甲スカートが、
脚部のブーツ諸共一体化したモジュールの形で、まるごと残されたのだ。
──即ち、このパーツの管理者は……生き残ったイリンという事になる!
だが……やはり同じ異変が残った。彼女が装着していた装甲スカートが、
脚部のブーツ諸共一体化したモジュールの形で、まるごと残されたのだ。
──即ち、このパーツの管理者は……生き残ったイリンという事になる!
『どういう事だ?……ロッテの加勢に向かえ!中央で戦っている!!』
「わかりましたマイスター!クララちゃん、そっちも来てっ!」
「……分かったんだよ。でも、これ……嫌な予感がするもん」
「わかりましたマイスター!クララちゃん、そっちも来てっ!」
「……分かったんだよ。でも、これ……嫌な予感がするもん」
そして全員の注目が、体育館中央のロッテとイリンに向かう。イリンは、
実に異様な姿で戦っていた。腰にあった拳銃らしき物と両肩のコートが、
分離・再合体して一挺のガンランスとなっていたのだ!周囲の床面には、
それを突き立てたと思しきクレーターが幾つも出来ていた。しかも彼女の
両腕には恐るべき物が嵌め込まれていた……発電用の、小型ダイナモだ!
その電力を受けて、銃は半ばリニアレールガンと化しているのだろうな。
実に異様な姿で戦っていた。腰にあった拳銃らしき物と両肩のコートが、
分離・再合体して一挺のガンランスとなっていたのだ!周囲の床面には、
それを突き立てたと思しきクレーターが幾つも出来ていた。しかも彼女の
両腕には恐るべき物が嵌め込まれていた……発電用の、小型ダイナモだ!
その電力を受けて、銃は半ばリニアレールガンと化しているのだろうな。
「ふぅ、ふぅ……流石じゃない、前より強いわよロッテちゃん」
「はぁ……そういうイリンさんだって、個性を活かしてますの!」
「私は“技”の“トゥーハンド”イリン、そして“トゥルーハンド”よ」
「“トゥルーハンド”……ですの?」
「はぁ……そういうイリンさんだって、個性を活かしてますの!」
「私は“技”の“トゥーハンド”イリン、そして“トゥルーハンド”よ」
「“トゥルーハンド”……ですの?」
しかしブルームキャリバー“カラドボルグ”を構えて相対するロッテも、
周囲の床や機材を穿ちつつ、無限の雷を解き放って戦っている。従って、
彼女らの周囲には電磁嵐とも言うべき、一種の結界が出来上がっていた。
周囲の床や機材を穿ちつつ、無限の雷を解き放って戦っている。従って、
彼女らの周囲には電磁嵐とも言うべき、一種の結界が出来上がっていた。
「……ロッテお姉ちゃん、大丈夫かな?」
「今加勢しますからね、ロッテちゃんッ!!」
「アルマお姉ちゃん、クララちゃん……無事で何よりですの!」
「今加勢しますからね、ロッテちゃんッ!!」
「アルマお姉ちゃん、クララちゃん……無事で何よりですの!」
そこへ、ミラとティニアを倒したアルマとクララが駆けつける。勝負は、
これで半ば決した様な物だった……だが、灯の一言がそれを覆したのだ!
これで半ば決した様な物だった……だが、灯の一言がそれを覆したのだ!
『イリン、負けないで下さいです……“雷帝の御剣”を見せてッ!!』
「了解、姉様!……私は姉様が好きだから、貴方達に勝つのッ!!」
「ッ!?ガンランスをロケット代わりにして、飛びましたの!?」
「了解、姉様!……私は姉様が好きだから、貴方達に勝つのッ!!」
「ッ!?ガンランスをロケット代わりにして、飛びましたの!?」
──────灯の本心、純心。それは、どこまでも強かったんだね。