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サプライズと美咲さん



皆さんこんにちは、美咲です。本日はテーブルの清掃もしっかり終え、今は戦闘機動の特訓をさせて頂いています。神姫といえども、こうしてたまに体を動かしてやらないと、感覚が鈍ってしまうのです。ちなみに、現在は午後八時ちょうどです。非常に珍しいことに先生は今日、帰ってきません。どうやら仕事がお忙しいらしく、先ほど『すみません美咲さん、本日は帰れません。本っ当にすみません』と連絡が入りました。何でも、先日の神姫用アーケードゲームのプログラムに不具合が生じたらしく、明後日の出荷までに全て修繕するらしいです。となると、恐らく明日もご帰宅なされないでしょう。なんで、こういう時に限ってそういった不都合が重なるんでしょうか。
……凄く、寂しいです……。この戦闘機動訓練も、その寂しさを紛らわせるための口実のようなものです。

ピンポピンポピンポピンポピンピンピンピンピンピンポーン!

……どうやらお客様のようです。まあ、あんなチャイムの押し方をするのは、タチバナさんくらいですが。先生不在はご存知だと思われるので、今回は私個人に用事があるのでしょうか。

「はーい、どちら様ですか?」

憶測での行動は危険なので、念のため確認します。

「あー、私だよ私。私だ。ほら、あなたの大事な人と同じ会社にいる……」

やはりタチバナさんでした。しかし何ですかそのなんちゃら詐欺みたいな説明は。

「何のご用ですか? タチバナさん」

「いやー、竹田君が会社に缶詰めだって聞いてね。さぞや美咲さんは寂しい思いをしているだろうと思って、差し入れ持ってきたのさ」

玄関のドアに打ち付けられた梯子を登り、のぞき穴から外を確認すると、お菓子屋さんの袋を得意げに掲げてウインクするタチバナさんが見えました。

「あの……お気遣い感謝します」

「まあ、歳は違えどそこそこ仲のいい同僚だしね。たまには貸し借り無しでいい事してやらなきゃバチの一つも当たるってものよ」

どうやら今回は貸し借り無しのようです。先生がほっと胸を撫で下ろすのが幻視できます。

「では、お開けしますね。御上がり下さい」

私は梯子から飛び降りがてら、ツマミ式の鍵に飛び掛かり、体重と反動で回転させます。カチャリという音と共に、鍵が開くのを確認しました。

「やあ、美咲」

「お久しぶりなので・あーる、我が愛しの美咲嬢! ご機嫌麗しいようでなによりで・あーる」

「げぇ、ホムンクルスさん!?」

しまった、思わず酷い言葉がもれてしまいました。いやしかし、あのホムンクルスさんに対してなら、致し方ないのです。私、ホムンクルスさんはどうにも苦手で……。
ホムンクルスさんは以前ご説明した通り、ジュビジータイプの神姫です。愛らしい顔つきでありながら、騎士を気取ったつもりのトンデモな口調で話すので違和感バリバリです。そして、私の知る神姫の中で一番変わった神姫と言えます。

「げぇ、とはまた随分なご挨拶なので・あーる。しかし、我が愛しの美咲嬢ならば全て許されるので・あーる。という訳で我と契りを交わそうで・あーる」

「嫌ですよ。なんでそう繋がるんですか」

このホムンクルスさん、なにかに付けては契りを交わすだの婚姻だの、私と結ばれようと必死です。

「まあまあ、玄関先で話すのも難だし、とりあえず上がろうか」

「それ、私の台詞ですが」

タチバナさんはタチバナさんでいつもどうりマイペースです。

「む、相変わらず綺麗に片付いた家だな。生活感をまるで感じない」

「先生は綺麗好きですから」

ホコリ一つ無い居間に私たちはいます。先生は本当に綺麗好きで、私の知らぬ間に掃除を済ませてしまいます。……本当にいつ掃除しているんでしょうか。

「さあ、私特製のココアができたぞー」

タチバナさんが台所から、人用のマグカップ一つと神姫用のマグカップを二つ、お盆に乗せてきました。それを見たホムンクルスさんはもの憂げに表情を沈めました。

「あー、我はパスで・あーる」

「なんだ、これっぽっちじゃ足りないか? なんなら鍋いっぱいに作って付け込んでやろうか? どっちがいい?」

「や、やはり頂くで・あーる!」

はしっとマグカップを掴み、一呼吸置いてから覚悟を決めたように煽るホムンクルスさん。途端、口を押さえて悶絶しはじめました……。

「さあ、美咲さんもどうぞ」

目の前に置かれたマグカップに、恐慌せざるを得ません。ホムンクルスさんをちらりと見やれば、未だ悶絶しています。一体、これには何が入っているのやら。

「コラホムンクルス。お前が変なオーバーリアクションするから美咲さん怯えてるじゃないか。めっ☆」

「ひでぶ! で・あー…る……」

表情は満面の笑顔、かなり軽いノリで、タチバナさんはホムンクルスさんを本気で平手打ちしました。壁に貼りつくホムンクルスさん。ゆっくりズリズリ落ちていきます。

「さ、美咲さん、美味しいから、飲もうか」

今はその笑顔が怖いです……。

仕方なく、覚悟を決めてマグカップを持ち、口にします。

甘い!


いや、美味しい甘さのあまりに大声になったわけではなく、甘過ぎとか、甘すぎるとか、そういう領域から次元跳躍した甘さを感じました。一体何をどうしたら、こんな甘さになるのか。砂糖の何十倍甘いのか。舌が狂いそうです。

「美味しいだろう?」

首を横に振りたいですが、そんなことしたらこの人、他人の神姫でも構わず張り飛ばしそうです。仕方なく首を縦に振ります。ホムンクルスさんの二の舞はご免です。

「そうかそうか、やっぱり私の見込んだ通りだ。竹田君もこのココアが好きだから、その神姫もそうだろうと思ったんだ」

先生もこれをお召し上がりに……あー、そうか。それで、飲めないはずのブラックコーヒーを会社に持って行ってるんですね。それで甘味を薄めて飲んでいるわけですか。流石です先生。私も見習います。
私がココアと言う名の甘味地獄をどう処理したものかと頭を悩ませていると、タチバナさんは何やらカーテンを捲って外を確認していました。犬でも居たんでしょうか。

「美咲嬢、今のうち、今のうちで・あーる」

多分人には聞き取れない超高周波音でホムンクルスさんが話し掛けてきました。振り返ると、随分ボロッとした姿で、マグカップの中身を排水溝に流し込んでいました。

「美咲嬢のも早く渡すで・あーる。それとも飲み干すで・あーる?」

言葉の意味を光の早さで理解した私は、急いで台所に飛び移り、マグカップを手渡します。ホムンクルスさんはそれを受け取ると、空になったほうを私に渡しました。
まさにその次の瞬間だったんです。

「ホームンクルスさぁん。一体なにをなさっておられるんですか?」

背筋が凍り付くかと思うほど、朗らかで冷ややかな声が聞こえました。二人揃って振り返ると、タチバナさんが笑顔で立っていました。

「ホムンクルスはもはや現行犯だが、まさか、美咲さんもか?」

ちら、とホムンクルスさんを盗み見ると、全てを諦め捨て去りながらも、大切なものを守り切った英雄のような笑顔で吐血(オイル)していました。

「私は飲みました。とてもおいしゅうございました」

「大変よろしい。さて、ホムンクルス」

「で・あーる」




──地獄から沸き上がる声──

──金切り声──

──怪鳥の鳴き声──

──壊れたラジカセの音──

──みぎぃ──

──そして何も聞こえなくなった──




「よければまた今度作ってあげるよ。材料が揃ったらね」

「ええ、是非」

命惜しさにイエスマンと化す私を誰が責められましょう。だって、目の前でスパイス・ミルよろしく素手で捻って神姫をブラックペッパーみたいに変えるなんて離れ業をやられたら、命乞いだってしたくなりますよ!
まあ、ホムンクルスさんの場合、こういう日常パートで酷い目にあっても、次の瞬間には何事もなかったかのように復活するギャグ補正が掛かっているので大丈夫です。
……私は、なんてメタな発言を……。
と、私がブラックコーヒーの調達方法に頭を悩ませていると、玄関のチャイムがなりました。私とホムンクルスさん(もう復活した)を肩に乗せて、タチバナさんが出迎えに行きます。

「いいですかタチバナさん、お客様にはくれぐれも失礼のないようにお願いします」

「わかってるわかってる。私にだって常識くらい備わってるよ」

不安になりながら、タチバナさんと共にお客様を迎えます。
玄関を開けてみると、お客様は意外な方でした。

「あ、あn「お姉様!」

飛び掛かってきた白い神姫は、ホムンクルスさんの空中捕縛式いずな落としにより土に埋没しました。落下地点が植木鉢で本当に良かったです。

「……あの、私、ほら、その、終電逃しまして、あの、初めまして、先生の奥様、ですか? その、あ、終電、終電逃して、その、今日だけ泊めてもらえたら、先生なら信用できますし、と思いまして、え? は? ん?」

何事もなかったかのようにしどろもどろと話し始めたのは、カエデさんでした。どうやらテンプレートを用意していたようですが、本番と想定外にはめっぽう弱い方のようです。というか、まだ終電の時間ではないのですが。

「ああ、竹田君なら帰らないが、泊まっていくならどうぞ。ああ、私は竹田君の同僚であって、奥さんではないよ。結婚するにしたってあんな中年ご免だよ」

神姫流奥義、指ペンチ。耳たぶを挟んでみたところ相当痛かったらしく、耳を押さえて蹲りました。私の先生を貶した罰です。

「えっと、その、オジャマシマス」

「はい、どうぞ」

私は、うずくまるタチバナさんの頭に立ってカエデさんをお迎えします。植木鉢の中では、アーンヴァルMk-2タイプとジュビジータイプがプロレスを敢行していました。




「まあ、ココアでも飲んでゆっくりするといいよ」

テーブルについたカエデさんの前に、例のココアが入ったカップが置かれました。大変危険です。このままでは、カエデさんもあの酷濃甘ココアの餌食になってしまいます。しかし、下手に止めに入れば、それこそタチバナさんに何をされるかわかりません。
タチバナさんを怒らせず、カエデさんもココアを口にする事なく、私にも被害が及ばないベストなフォロー……思い浮かびません。
そうこうしているうちに、カエデさんがカップに口をつけてしまいました。

「「待った!」」

それは、全くの偶然でした。カップから口を離したカエデさんとキョトンとしたタチバナさんが、私と、もう一体の神姫を見つめます。

「そのココア、飲んではいけない、で・あーる」

「そうです」

私の他に声を上げたのは、やはりホムンクルスさんでした。

「……どーいう訳かな、美咲さん、ホムンクルス君?」

タチバナさんの笑顔が、怖いです……。

「それはその、えーとえーとえーと……そう、我が間違えてココアに毒を盛ってしまったからなので・あーる!」

「ソウナンデス。私ミマシタ」

とりあえずホムンクルスさんに話を合わせます。色々な感情の混じったよくわからない表情でホムンクルスさんが私を振り向きましたが、目を合わせないよう努めます。

「ホムンクルス」

「で・あーる」






──ホムンクルスさんのお墓があります。バラバラの粉々にされた元ホムンクルスさんの山に、両腕だけが天高く突き立てられて、それはまるで、天を突く角のようでした──






カエデさんを迎えた私たちは、女の子だけに許された女の子雑談を展開しています。さっきまで寂しかったのが嘘のように、今はとても楽しいです。

「それでさあ、こっちは別にどうとも思ってないって断ってんのに、必死にアピールしてくるんだよね。全く、引き際を弁えない男は惨めにしかならないってのがわかってないのかね」

「羨ましいですね、立花さん。私なんかそういうの、一回もないですよ。やっぱり美人は違いますね」

「ははは、何を言う。一条君だって元は悪くないんだ。もっと自分を磨けば、生活に支障が出るくらいお声がかかるぞ」

「そうですね。カエデさん、色白ですし。下手に化粧をするより、薄く施す程度に押さえてみたら、もっと魅力が増しますよ」

「そ、そうかなー♪」

つい今し方顔を合わせたばかりですが、タチバナさんとカエデさんはもう打ち解けているようです。一方、ホムンクルスさんとエルスさんは仲が悪いようです。

「よいで・あーるか? 美咲嬢は我がキサキで・あーる。故に主の出る幕ではない、で・あーる。主のような平々凡々な神姫では不釣り合いで・あーる」

「何を言いますか。お姉様は私のお姉様であって、あなたのお嫁さんではないんです。ファーストリーガーだか何だか知りませんが、私は一歩も引きませんよ」

お二人とも誠に身勝手な主張をなさっていますね。私は先生の神姫であって、あなたたちの特別ではないんですが……。
そしてなんでカバディをしてるんですか……。
と、そんな折、三度玄関のチャイムがなります。今日は妙にお客様が多いです。

「だれか来たようだね。私が出よう」

「くれぐれも失礼のないようにお願いします」

「……私ってそんなに信用ないのかね」

少し落ち込んだ様子のタチバナさんの肩に乗り、玄関にお客様を迎えに行きます。

「こんばんは。近くまで来たので、遊びに来ましたー。……あれ、先生はお留守ですか?」

玄関先には、買い物袋(布製マイバック)を下げたエンドウくんがいました。頭の上では素体姿のフェフィーちゃんがぺこりと頭を下げました。



「美咲嬢は我がキサキで・あーる。故に主らがいくら吠えたてようとも無駄で・あーる」

「ですからお姉様は私のお姉様なんです。引っ込むのはそっちのほうですよ」

「馬鹿を言わないで下さい。BLを理解しないあなたたちのような変人奇人に美咲さんは似合いませんよ」

「「貴女には言われたくない」で・あーる」

三体の神姫がトランプに興じながら口論しています。今しているのはババ抜きのようです。なんだかんだと言っていても、やはり仲は悪くはないようです。よかった。

「あ、私も混ぜてもらおうかなー」

「ふむ、私も久しぶりにそういった遊びでもしようかね」

カエデさんとタチバナさんがそういうと、三人の側に座り直しました。

「おおっと、主君、貴女はダメで・あーる」

「ほぅ、何故だホムンクルス」

「これは“ババ抜き”だから、で、あーる」

「……で? っていう」

「……まあ、ただのお約束ジョークで・あーる」

「そうかそうか言いたいことは分かった*死ねぇ!!」

「あべしぃ! で・あー……(ガク)」

そんなお約束のために、命を懸けるなんて……馬鹿ですか。馬鹿でした。これだからホムンクルスさんは。

「そういえば、先生はどこに?」

エンドウくんが持ってきた買い物袋から取り出した炭酸飲料を開けながら私に尋ねました。

「先生は急なお仕事でお留守です」

「言い出しっぺなのに……」

「え、なんですか?」

「いや、なんでもないですよ」

エンドウくんの言い掛けたことが気になりますが、聞いても話してくれそうにありません。そういえば、カエデさんも嘘をついてまで何故先生のお宅にいらしたんでしょうか。タチバナさんも隙があれば外をちらちら。うーん、謎です。

「外に何かいます?」

覗くタチバナさんの足元で、私もカーテンを捲ろうとしたその時。

「お姉様ぁぁぁ! あそこので・あーるが私を殴りましたー!」

「先に手を出してきたのはそっちで・あーる!」

エルスさんが涙ながらに私に抱きついて来ました。ホムンクルスさんと何やら喧嘩になった模様です。

「こら、ホムンクルスさん。あなたのほうがお姉さんなんだからしっかりしなさい!」

「美咲嬢、まるでお母さんのようで・あーる。我に授乳してほしいで・あーる」

「蹴飛ばしますよ?」

「お、お姉様の授乳!? ('Д`;)ハァハァ」

「チェストォォォ!」

思わずエルスさんをホムンクルスさんごと蹴り飛ばしてしまいました。しかし、私は悪くない。悪くない。






「(ナイスフォローだ、エルス、ホムンクルス。危うくバレるところだった)」

「(気になるのはわかりますが、あまり見すぎると感付かれますよ)」

「(我が主ながら、アホで・あーる)」




とても賑やかな室内で、時計は十一時を示しました。先生がご帰宅なさっていないのにこの時間に寂しくない日は、初めてです。
まあ、先生が居られない日自体がそうそうありませんが。

「フッ、我の勝ちで・あーるな。スペードのキングとハートの8によるフルハウス!」

ホムンクルスさんが自信満々に手札を公開します。確かになかなかの手ですが、まだまだです。

「私は、ハートのクイーンのフォーカードです」

私も自信を持って手札を公開します。ホムンクルスさんより倍数の高い手です。

「あ、僕はジャックとジョーカーでファイブカードです」

エンドウくんの手札が公開され、私の一位の座は一瞬で終わりました。

「な、なんでですかこれは……」

エルスさんは十二回目のブタです。……ポーカー始めてから十二ゲームしているんですが。

「私はエースのスリーカードです」

フェフィーちゃんもなかなかの役です。

「私は……ロイヤルストレートフラッシュだ!」

タチバナさん、明らかにイカサマじゃないですか……。
そんなこんなでおもしろおかしく過ごしていると、突然外からロケット花火を打ち上げる甲高い音が聞こえました。結構な音量だったので、比較的近所のようです。

「もう夜分遅くだというのに、一体どこの誰なんでしょうか」

無駄と知りつつも、ついつい窓へ確認に向かってしまいます。染み付いた生活感。カーテンまであと数十センチといったところで、タチバナさんとエンドウくんが颯爽と側に立ち、カーテンの端を掴みました。

「さあさあ!」

「いざいざ」

二人はよく分からない掛け声と共に、カーテンを勢いよく引きました。遮るものが無くなった窓は、なぜか全開になっていました。そして……。

「「「美咲さん、お誕生日おめでとう!(パパパパンッ!)」」」

大きく『美咲さんお誕生日おめでとう』と書かれたプラカードと、多数の人と神姫。カラフルなカラーテープが、クラッカーから四方に伸びています。私は思わず尻餅をつきました。

「ったく、準備に手間取りすぎた……」

「だってこの[ピー]猫が」

「だってこのピーピー女が」

言い合う次女と三女を、ケイイチさんが両成敗といった様子でデコピンで弾きました。
プラカードの上には、触手マイスター殿ーと手を振るシルヴィアさん。その背後には、ハンディカムを構えるケンゴさん。
その脇には、神姫センターで見たことのある顔触れが並んでいました。常連客たちです。

「あのフブキの誕生日と聞いて」「先生直々のお願いで来ました」「美咲さん、俺だ! 結婚してくれ!」「美咲さんのM字開脚……ハァハァ」

なんといいますか、これは一体……。

「まあ、竹田君から美咲さんへのささやかなる誕生日プレゼントといったところだね」

先生……あなたという人は。

「まあ、本当なら竹田君も一緒のはずだったんだが、ねぇ。……おや、美咲さん?」

目の前が滲んでしまいます。拭ってみましたが、すぐにまた元に戻ります。いつぶりでしょうか、泣いたのなんて。ましてや、嬉し泣きなんて。
私は泣きました。神姫の皆さんが賛辞の言葉と共に私を支えてくれます。私の涙はしばらく止まりそうにありません。
と、そんな時。閑静な住宅街に甲高いエンジン音と、時々タイヤが摩擦する甲高い音が聞こえ始めました。それは凄まじい勢いで近づいてきます。全開まで吹かしてはいますが、あのエンジン音、聞き間違えるはずがありません。
その音は、家の直ぐ近くで一層大きな摩擦音を響かせ、止まりました。こうしてはいられません。失礼しますと断ってから、私を取り囲んでいた神姫達を押し退け玄関まで駆け出します。
私が玄関につくのと同時、扉が凄い勢いで開きました。

「美咲さんただいま帰りました!」

「先生ぇ!」

私は全ての力を使い跳躍、壁を蹴ってさらに上昇し、先生の胸に飛び込みます。

「会いたかったです、先生!」

「私もですよ! 我が愛しの美咲さん!」

私は全力で先生に抱きつきます。先生も手のひらで優しく包んでくれています。

「全く、見せ付けてくれるね、竹田君」

気が付くと、リビングの入り口から皆さんが見ていました。先生はそれを見て、ふと微笑みました。

「おやおや、この様子だとサプライズは終わったみたいですね。では、改めまして」

んん、と軽く喉を鳴らし、先生は私を見つめます。

「お誕生日、おめでとうございます」

「はい、ありがとうございます、先生!」




それから、先生が購入なされたケーキと、皆で持ち寄った飲み物やお菓子で盛大なパーティーを行いました。










「竹田君、これからまた仕事かい」

「ええ、まあ。途中で抜け出して来たもので。まあ、大体の目処はついているので、出荷には間に合いますよ」

やれやれ、みんな寝静まったと思ったんですが、タチバナさんはさすがですね。かなりの量のお酒を召し上がっていたと思うんですが。

「全く、神姫の為に仕事を放り出すとは。君の神姫愛には感服するよ」

「いえいえ、それほどでも。っと、あまり時間もないので、この辺で失礼しますよ」

そうして私は、会社に再び向かうのでした。
会社に戻ったら、社長にこってり絞られましたがね。




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