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 第十四話 「チョコレートケーキを追跡せよ!」



 「……会う……城ヶ崎さんと?」
 おじさまの言葉が、すぐには信じられなかった。
 「うん。夕方には帰ってくると言ってたんだけどね」
 「おじさま、今日はお休みを頂きます」
 おじさまが言い終わるのも聞かず、私は外へ出ようとしていた。
 「メリー? どうしたんだい?」
 「アキラさんを悪い女から助け出して来ます」
 「ふぁあ~。あ、なによアンタ、仕事サボる気?」
 「『アリス・トライデント』おぉっ!」
 「おふぉおっ!?」
 起きてきただるまをスキル攻撃で黙らせてから、ふっと思い直した私はお店の黒電話を取って、ダイヤルを回す。
 「げっほ、げほ……アンタ、いきなりなにすんのよ!」
 「雅さん、あなたも来て下さい。……あ、もしもしアッシュさんですか? はい、はいメリーです。ええ、実は今すぐに直也さんと来て頂きたいので……はい」
 うふ、ふふふふふ。私に黙って女性と出かけるなんて。アキラさん、神姫同士のネットワークを甘く見ない方がいいですよ?



※※※



 「はあ!? 輝のやつ、城ヶ崎と出かけたぁ!?」
 直也さんとアッシュさん、それから健五さんもお呼びして、今私たちは新宿駅へと向かっている。もちろん、アキラさんを追うために。
 「許せねえぞ……。めぐみさんというものがありながら、あの野郎!」
 「由々しき問題ですね。全く不健全極まりない。輝殿にだけは、マスター直也のような軟弱な男性にはならないで頂きたいと思ったのですが……男子たるものは(クドクド)」
 「雅、さっきからそわそわしてるけど、どうしたの?」
 「へ? ちっ、ちがっ、これは……。その、武者震いよ。そう、その城ヶ崎って有名人なんでしょ? そう、だから武者震いよ! 別にアキラなんか気になってないし」
 じろお~っと雅さんを見る。けれど、私も今は隣のだるまの気持ちが分かる。アキラさんはああ見えて意外と奥手だし、だから今までこん な……女の人とお出かけするなんて無かった。
 アキラさんに限ってそんな、そんな……あああ~っ、変な考えが頭に溜まっていく!


 ホームに着いて改札を出てから、まずは直也さんが電話をする。
 プルルル、という音が十五秒くらい続いた後、アキラさんが出た。
 『もしもし』
 「あ、輝か? 俺だよ。今どこだ?」
 『あ? 直也か。~~駅だけど。遊ぶとかナシだぞ。今日忙しいから』
 プツッと電話が切れる。歩いているところに電話をかけたのか、雑音でどこにいるのか良く聞こえなかった。
 「あいつ切りやがった! ……どうすんだ?」
 直也さんはそう言ったけど、他にやることも見当たらない。仕方なく、そのまま改札の近くで時間を潰す。
 「しかし信じらんねえな。輝ってけっこう恋愛苦手だぞ」
 「むむむ……。ですがわたくしが思うに、輝殿は……年上の女性が好みと」
 「いやあああああぁぁーっっ!」
 反射的に私は直也さんの肩に飛び乗って、アッシュさんの首をつかんで揺すっていた。
 「おおうっ!? め、メリー殿、おち、落ち着いてっ!?」
 「そうだよメリー。周りの人が」
 はっと気がつくと、通りがかった数人の人が何事かと私たちを見ていた。恥ずかしくなって、こほんと咳を一つ。
 「すみませんでした。ところで健五さん、クレアさんは……どうですか?」
 聞きにくい事を聞いてしまったかもしれない。健五さんは下を向いた。
 「うん……、昨日からずっと窓の外を見てるんだ。自分のせいで負けたんだって、みんなに謝りたいって」
 「それは! ……違います。クレアさんのせいじゃありませんよ」
 あの時、アテナさんと戦った時のことは、クレアさんに責任は無いと思う。その戦法をとると決めたのは私とアキラさんで、彼女は私たちに巻き込まれたのだから。
 そもそも私をおとりにして、クレアさんに撃たせると作戦を考えた大本はアキラさんで、今もこうしてアキラさんのために出てきているのであって……本当に手の掛かる人です! それに、お呼びしたもう一組の援軍もまだ着かないし……。

 そうして数十分くらいたったかと思った頃。

 「あ、輝さんだ!」
 健五さんが指さした十メートルくらい先、通路の向こうにはアキラさんと……。
 「城ヶ崎もいるぞ!」
 丁度着いたところらしい派手女、憎き城ヶ崎の姿が! くう~っ、アキラさんをたぶらかすとは許せません!
 「なんか話してるな」
 「あ、行っちゃうよ」
 「移動しましょう!」
 山手線のホームに歩き始めた二人を追って、私たちも動く。気付かれてはいけないから、距離を置きつつ隠れて進む。
 売店で新聞を買って、到着した外回りの電車に乗った二人に続き私たちも乗車する。離れた位置に座って、さっきの新聞で顔を隠しながら様子をうかがうと、会話が聞こえてきた。
 「この後はどうするんすか?」
 「そーねー。池袋で降りてみよっか」
 「池袋ですって」
 「よし、俺らも続くぞ」
 小声で話をしながらちらっと向こうをうかがうと、上機嫌で笑う城ヶ崎さんの肩には、相変わらず冷静なアテナさんが。
 「なあ、ありゃあもう……デートじゃね?」
 「~~~~!!」
 思わず大声を上げそうになるのを必死でこらえながら、直也さんを睨む。
 「違いますよ! だってアテナさんもいますし、神姫を連れてデートだなんて、そんな」
 「いや、やってる奴はやってるっていうし、あるんじゃ……へげぼっ!?」
 気がついたら、雅さんと息を合わせて直也さんのお腹にキックをお見舞いしていた。顔を見合わせた私たちは、すぐぷいとそっぽを向く。
 アキラさんが不審そうにこちらを見たけど、大丈夫、すぐまた何事も無かったように話をしだした。
 「二人とも止めてよ。まだ、その……デートって決まったわけじゃないんだし」
 「そ、そそそそうね。べ、別に気になんてしてないわよ? ただ、アキラのヘラヘラしたアホ面を人様に見せるのがヤなだけよ。歩く公害、景観条例違反でしかないじゃない」
 「ひどい言い方だなあ……。輝さん、そんな風に見えないけど。凄く真剣そうだよ」
 確かに健五さんの言うとおり、今のアキラさんは何故かとても真面目な顔つきで、城ヶ崎さんの話にもまるで笑うそぶりを見せない。
 「あ、池袋だ」
 「降りましょう。気付かれないように」



※※※



 池袋の駅で降りた二人は、東口から外に出て行った。
 「どこまで歩くつもりなんだ?」
 「人多いなあ」
 日曜日ということもあってかとても混んでいて、気を抜けば見失ってしまいそうになる。しかも前を行く二人は右に左にと寄り道を繰り返して、追跡がとても難しい。
 「あ、ちょっ……見えなくなったぞ」
 「探しましょう!」
 けど、辺りをいくら探しても見当たらない。ゲームセンターやショッピングセンターを探しに探して二時間後、なんと二人は映画館の近くで見つかった。
 「あ、いました!」
 「また動くぞ」
 「追いかけるのよ!」
 二人は今度は飲食店の多い方に向かっている。時間ももう二時になったし、恐らく遅めのランチにしようと……、ランチ……?
 「急ぎましょう! ええ、急いでほら!」ランチって、それじゃまるで本当にデートみたいじゃないですか~っ!



 入ったのは昔風の喫茶店で、何年も営業していそうなところを見るとなかなかの老舗なのかもしれない。ほら、この隅に溜まったほこりや古そうなガラス、窓から差し込む陽光が、大衆食堂とはまた違った、えもいわれぬレトロな空気を醸していて……と、職業柄そんなことを考えてしまったけど、今は二人の様子に集中しなければ。
 仕切りで二人からは見えない席に座って、軽く飲み物を注文する。直也さんはまたお金が無くなったと嘆いているけど、今はそれどころじゃない。
 何か会話をしているようで、静かな店内ではさっきよりもはっきりと内容が伝わってきた。

 「面白かったわねー。トリックに次ぐトリックって感じじゃなかった?」
 「そうっすね。ラストで巻き返してきたのはすげえと思ったし」
 「もうしまぴー、そんな堅っ苦しくなくていいのよ。あ、来た。いただきまーす!」

 何の話をしているのか、私たちは顔を寄せ合って考える。
 「トリックとか言ってたけどよ、なんだ?」
 「映画の話じゃない?さっき映画館の近くにいたでしょ」
 映画館で……二人で……映画鑑賞……。私を差し置いて!
 「搦め手が多かったわよねー。君も似たタイプじゃない?」
 「そうっすかね?」
 ああっ、二人の会話から変な妄想がっ。いけないいけない。頭から振り払って……。大体、アテナさんはいてもいいのに私は駄目なんて、どういうつもりですかアキラさんっ。
 「っつーか城ヶ崎さん、さっきから甘いもん食い過ぎじゃないっすか? 栄養はバランス良く取らねえと」
 「えー? そうかな。普通だと思うけど」
 「彼の言うとおりだわ、玲子。貴女普段からインスタント食品だとかカロリーの高いものばかり食べているでしょう」
 「もー、あれは時間無いからだってば。だったらしまぴーが食べてよ」
 全く、何をやってるんですかね……。ちょっと失礼して健五さんの背中に乗って、仕切りの向こうを見てみると……。



 「食べさせてあげよっか? はい、あーん」
 「いや、止めて下さいよ。俺まだオムライス残ってンすから」
 「じゃあケーキじゃなくてそっちを食べさせてあげよっかな~、なんて」



 「な……」
 チョコレートケーキを、アキラさんの口に運ぼうとしている……!
 耐えきれずとうとう叫んでしまいそうになった私の口を、後ろからアッシュさんが押さえつけた。
 「む~! む~!」
 「落ち着いて下さいメリー殿! 輝殿は食べる気は無いようですし」
 「輝の野郎……! ぶっ飛ばす!」
 「直也さん、お店で暴れちゃだめだよ」
 どうにかして落ち着いた私は、もう一度二人を見る。
 「きいぃ~っ!」一緒に食事なんかしちゃって、しかも『あ~ん』だなんてっ……! そんなに城ヶ崎さんがいいんですか、私は、私は……。あれ、私って。
 「……」
 何故か、それ以上は二人を見ていられなかった。
 陽は相も変わらずさんさんと店内を照らしている。


※※※


 その後、追跡を続けた私たちは山手線の駅を一周して、また東京駅に戻っていた。
 「はあ」
 「どうしたのです、メリー殿」
 電車の中でずっと、さっき喫茶店で思った事を頭の中で悶々と反芻していた。
 アキラさんがデートのつもりで出かけているのだとしたら(そうでは無いと信じたいけれど)、男性が人間の女性を好きになるのはむしろ自然なことであって、私が邪魔をする権利は無いんじゃないかって……。
 私は、あくまでも『神姫』ですから……。
 今は駅の近くで食品を見ている二人を尾行しているけど、それを見ている私はとても気が重かった。
 さっきまでは駅で降りたらすぐに姿を消してしまっていた二人だけど、東京駅に着いてからは買い物でもするのか、ずっと食品類をチェックしている。
 そうですかそうですか、もうすっかり夫婦気分ってわけですか。と、パスタのコーナーにいる二人を見て、調味料の棚の陰に隠れた私は思う。
 私たちの姿を見た店員らしき人が、明らかに不審なものを見る態度で横を通り過ぎて行ったけど、もうそれすら気にならない。
 「ふー」
 もう四時ですか、と思った時だった。ぱたぱたと草履の音が聞こえて、はっと私は振り返った。


 「あ、やっと見つけた。ごめんねぇみんな、遅うなってもうて」
 「初菜さん、ずいぶん時間かかりましたね」
 「ごめんね。これでも急いだんよ。けどおばあちゃんってばなかなか離してくれへんし、駅も複雑やからなぁ、すっかり迷ってもうて」
 そう、私が呼んだ援軍とは、初菜さんと牡丹さんだった。初菜さんの着物姿を見た直也さんは、口をぱくぱくさせて私に聞いた。
 「え、誰?」
 「あ、直也さんは初めてお会いするんでしたね。こちらは三条初菜さんで、アキラさんの幼なじみなんです」
 「はぁ!? 何あいつ、彼女いたの!?」
 「え!? いややもう、彼女だなんて」
 「初菜さん、恥ずかしがってる場合じゃ無いです。アキラさんが」
 初菜さんはそこでやっと話を聞いてくれた。
 「あ、そうそう。輝はんが悪い人に捕まったゆうてたね。本当なん?」
 「あそこです。あの女ですよ」
 私が指さした先を、初菜さんはじっと見る。
 「……輝はん、何してはるん?」
 「その、デート、みたいなんですよ」
 健五さんの言葉を聞いた牡丹さんは、ぽかんと小さく口を開いた後、私に目を移した。
 「……メリー、まさかこれのために主と私を呼んだのですか?」
 「うっ……。悪かったとは思ってます。けど、まさかアキラさんがその、で、デートするなんて考えられなかったので、私もどうしたらいいか分からなかったんです」
 「……まあいいでしょう。確かに主のため、放ってはおけません」
 正直私はあまり牡丹さんが得意では無いのだけど、この時はすんなり了承してくれて安心した。
 けれど、その直後に初菜さんの様子がおかしくなって、私たちは苦労する事になった。


 「輝はん……ううん」


 城ヶ崎さんとアキラさんを見ていた初菜さんが、いきなりくらっと倒れてしまったのだ。
 「あっ、初菜さん!」
 「おい!」
 慌てて直也さんと健五さんが助け起こそうとする。デートシーンを見ただけでこれだけショックだなんて、もう、初菜さんってばどれだけ純情なんですか!
 「あ、ちょっと、うわああっ!」
 そうして、その騒ぎで近くにあった唐辛子のワゴンが倒れて、大きな音を立てて……。

 「……何やってんだ、おめーら?」
 私の追跡はここで終わった。


※※※



 その後、アキラさんをその場で問い詰めることに。
 「浮気者!」と私。
 「不埒者!」と雅さん。
 「軟弱者!」とアッシュさん。
 「……けだもの」と牡丹さん。
 私たちに一斉にののしられたアキラさんはとても不服そうな顔をした。
 「何言ってんだお前らは」
 「とぼけんな輝! 彼女いるくせに城ヶ崎とデートしやがって!」
 「いやだから、デートじゃねえって言ってんだろ」
 アキラさんの隣では、城ヶ崎さんがそれは楽しそうに笑っていた。
 「そっかー、デートって思われてたのかー。それはそうと聞いてよ、パスタって色んな種類があるのね。彼ってホント良く知っててね、いっぱい教えてもらっちゃった。一人暮らしだと料理って全然しないからさー」
 「あの、二人とも何をしてたんですか?」
 健五さんがそう聞くと、アキラさんは溜息をついて答えた。
 「……あっちこっちのゲーセンでな、アテナの戦いを見せてもらってたんだよ。本当は一人でパーツを買いに行くつもりだったんだけど、昨日の夜この人から電話が来てな、丁度良いと思ったんだよ」
 「その代わりにあたしはしまぴーに料理のコトとか教えてもらったってワケよ」
 「なあ、メリー」
 「え?」
 アキラさんは真面目な顔つきになると、私を見た。
 「昨日、俺は試合の前に思ってたんだ。女神が相手じゃ勝てないってな。けどそりゃ間違いだった。今日行ってきたどのゲーセンにも、相手が強いからって勝負を初めから投げ出してかかるオーナーは一人もいなかったよ」
 しんと静まった私たちの前で、アキラさんはそう言うと、健五さんの肩に乗った私に深く頭を下げた。


 「例えファーストランカーが相手だろうと、みんな精一杯バトルしてた。アテナが相手じゃない試合の時でも、目の前の一戦を全力で……。すまねえメリー、俺はそんな当たり前の事も忘れてたんだ」
 アキラさんは短く刈った頭を私に下げたまま、動かない。
 「あ……」
 何と言ったらいいのか、すぐには声が出なかった。
 けれど、


 「ち、違います! 負けたのは私のせいです!」


 一番に口をついて出たのは、その言葉だった。
 「私が一人で先走って、冷静な判断が出来なかったのがいけないんです!」
 あの時の何も無かった私が、どこまで強くなれたのか。アテナさんと戦ったら、思い出したくない昔の私を断ち切れる気がしたけど、私は――まだ弱いままだった。
 「違う、俺が悪かったんだ! お前の力も、戦いたいっていう意思も信じてやらねえで、俺はオーナー失格だ!」
 「違います! 相手の力量を見極めないで、アキラさんにわがままを言った私こそ神姫失格です!」
 「いや俺だ!」
 「私です!」
 「俺だって!」
 「私ですっ!」
 ムキになって何度も言い合う私たちを見て、とうとう城ヶ崎さんが吹き出した。
 「……あっはは!」
 そうしてお腹を抱えると、涙をぬぐって、
 「本当面白いわね、君たちって。いろいろ神姫もオーナーも見てきたけど、なかなかのコンビよ」
 そして今度はアテナさんと、直也さん達に視線を移した。
 「それに面白くて優しい友達もね。あなたの事も知ってるわよ、『京都六華仙』の一人、三条初菜さん」
 「えっ?」
 「ええーっ!?」
 ウインクをして見せた城ヶ崎さんに、初菜さんと直也さんは口に手を当てて驚いた。
 「マジか……輝、お前どんだけだよ」
 「輝さん、それってなんなの?」
 「ん、ああ、京都で実力のあるバトロンプレイヤー六人に与えられる肩書きだよ。まあ、公式のもんじゃないから割とローカルなんだけど」
 「そうよ。それにうち、そんなに強くあらへんし」
 「もう、そんなことないでしょ。知る人ぞ知る実力者じゃない。ね? 『遊びの達人』さん?」
 その言葉を投げかけられた牡丹さんは、ぴくっと体を跳ねさせた。
 「……ご存じでしたか」
 「ええ、一度この子が会いたがってたもの」
 城ヶ崎さんが左肩に仏頂面で座っているアテナさんを見る。
 「それにしてもバレバレの尾行だったわねえ」
 「あ、気付かれてた……」
 「最初の山手線の車内からずっとね。お姉さんをなめちゃいけないわよん。……そっかー、しまぴーのトリック戦術も、『遊びの達人』がルーツならうなずけるわね」一人頷く城ヶ崎さん。
 「可愛いカノジョじゃない。大事にね」
 「いや、こいつとはそんなんじゃ」
 「……輝様、貴方様は愚かにもお忘れなのですか、この朴念仁。主は貴方様の『毎日お前の作った味噌汁が食べたい』という言葉を今も」
 「ぼたんーっ! 言わないで! 堪忍してーっ!」
 「は……。出過ぎた真似を致しました」
 ぺこりと素直に頭を下げる牡丹さん。アキラさんがそういう人なのはもう百も承知だけど、一途に思い続けていられる初菜さんは本当に偉いと思う。
 今はそうでなくても、いつか振り向いてもらえると信じているから――。
 「私も……」ひとりでに、小さく口の中で言葉が漏れた。
 いつか届くと信じていれば、アテナさんや城ヶ崎さんのように、強く――。


 「玲子、今日はそろそろ帰りましょう」
 「そーね。じゃ、楽しかったわよ、しまぴー♪今度はホントに映画見よっか?なんてね」
 そう言って去って行こうとした城ヶ崎さんとアテナさんだったけど、唐突にそれまで黙っていたアテナさんが振り返った。
 「……そこのこひるさん」
 「なによ」
 「貴女、私と同じニオイがするわ」
 「え……」
 「ふふっ。一度戦ってみたいものね。昨日戦った貴女達とも、『遊びの達人』ともね」
 アテナさんの赤い瞳が、私たちをとらえる。
 「……いずれ機会が巡れば、そうなることも有りましょう、『女神』よ。噂通り、『貴(あて)なる』人でした……アテナだけに……ぷっ、くすくす」


 ……牡丹さんの発言で、ぴゅうっと北風が吹いたような気がして、その場にいた全員が体を震わせた。


※※※



 その後はみんな、毒気を抜かれたようになってしまって、疲れたのか急いで帰ってしまった。
 他の皆さんが帰っていった後、健五さんとは桐皮町駅で別れて、三人で食堂へ向かう。
 「あんだって今日は初菜まで呼んだんだ」
 東京駅での別れ際、直也さんはアキラさんに「裏切り者が!」と言っていたけど、それでもお二人は心の中で認め合っている、いい友達なのだと思う。
 「バカアキラ! 帰ったら京介さんに謝りなさいよ!」
 「私の神姫アイが劣化しないうちはデートなんて許しませんからね! 今日はたっぷり絞ってあげますから、覚悟して下さい!」
 「へいへい。なんでもいいけどよ」
 アキラさんは面倒そうな顔だったけど、私は分かっている。この人はやっぱり、いつも誰かのことを考えている優しい人なんだ。昔、私を助けてくれたように。
 そっとアキラさんのがっしりした首筋に寄り添うと、雅さんと目が合った。私が「ふふん」と笑みをこぼすと、雅さんもむっとした顔でアキラさんにくっつく。
 「なんだよお前ら。あんまくっつかれると髪の毛がチクチクして痛えんだよ」
 「だっ……! この、バカバカバカ!」
 「いててて! 殴るなよ」
 すっかり商店街は夕日で赤く染まっていて、街行く人の元気な掛け声が聞こえる。とても綺麗だった。私が一緒にいる、この優しい人に出会わなければ、決して知る事の無かった世界。
 「アキラさん」
 「ん?」
 「……なんでも無いです」
 大好きな人の名前を呼ぶと、心が温かくなる。多分それは、人も、神姫も、変わらない。
 暮れてゆく夕焼けの街の中で、私ははっと思った。
 「……そういえば、どこまでパーツを買いに行ってきたんですか?」
 「ん? ……秘密だ」
 「えーっ? それじゃ分からないですよ」
 アキラさんはそれ以上は教えてくれなかった。




※※※




 「あー、終わった終わった」
 夜が更けてから遅めの夕食を食って、俺は部屋に戻る。
 メリーも雅もとっくに寝静まっていたから、今日買ってきたパーツの包みをそっとカバンから出して、布団の上に広げる。
 今日買ってきたのは、新しいメリーのパーツだ。昨日のアテナとの一戦で、そろそろ駆動部の部品を調節した方がいいと感じたのと、今まで とは違った武装にも挑戦してみたいと思ったからだ。
 顔を上げると、クレイドルの上ですうすう寝息を立てるメリーが目に入った。

 今日行ってきた場所は、俺とメリーにとっちゃ思い出の場所だ。
 あそこに行くのはこれで二度目になる。常連の人々も元気そうだったし、店長さんも良く話を聞いてくれた。
 冷静に考えてみれば、メリーがアテナと戦いたがったのだって、こいつの出自を考えればすぐに分かったのかもしれない。

 ……みんな、何かを背負って生きている。おやっさんも雅も、俺も。メリーだって……。


 もう一度、オーナーとして自分を見つめ直す良い機会かもしれないな。
 「……心配しなくていいんだぜ、メリー。俺たちゃパートナーだろ」
 そう独りごちて、パーツをまたもとに戻す。


 俺とメリーが出会った場所の名前は、ホビーショップエルゴ。
 今日はもう遅いから、詳しい話はまた今度にしよう。


~次回予告~
年に一度の桐皮町夏祭り。
健五と輝、そして仲間達は思い思いに祭りを楽しむ――。
「あ、そうだ健五。小遣いは百円だけは絶対に残しておけよ」
「え?どうして?」
次回、第十五話 桐皮町コーヒー・フルーツ戦争 お楽しみに!

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