2035/11/23
17:42
アフガニスタン南部 合衆国陸軍104前線基地
“合衆国陸軍デルタ作戦分遣隊 ジョシア・ラミレスニ等軍曹”
17:42
アフガニスタン南部 合衆国陸軍104前線基地
“合衆国陸軍デルタ作戦分遣隊 ジョシア・ラミレスニ等軍曹”
上官。いや、上官も上官。
目の前に座っているのはアフガン派遣軍の最高指揮官であるマイケル・D・E少将、そしてここは彼のオフィス。
俺は緊張で押し黙り、少将がゆっくりと書類に目を通すのを見つめていた。
「画像の精度が粗いな……航空映像はプレデター2で充分だろう」
あれから約一ヶ月。天使型がモンタナ、悪魔型のテキサスと命名された二体の玩具はキルハウスでの演習で、民需用の玩具のプロトタイプとは思えないほど優秀な成果を上げている。
問題は……
「サイズ的にプレデター2ほどの超望遠高精度カメラは搭載できませんからね、やはり地上での運用を前提に使用した方がいいと思います」
そう、モンタナの飛行機能が軍の要求水準に満たないのだ。
小さく軽いためか高高度での安定性が低く、特に強い横風に弱い。さらには飛行中の通信性能さえなきに等しい。それだけでなく、専用に開発された彼女の先輩であるプレデター2ほどの大きさも強度もないため、そもそも軍用として評価可能な戦闘力を有していない。(実際、モンタナはテストフライトで何度も墜落している。実際の任務中に墜落すれば回収は望むべくもないだろうし、そもそもトランシーバー以下の通信性能では現在の無人偵察機のスペックを大きく下回る。)
とはいえ……。
「地上で使用する分には稼動音もほぼなく、長距離通信機併用時のバッテリー消耗度を考慮しても充分実用に耐える、と判断します」
少将閣下がコーヒーを机に置き、机の上で俺の真似をして休めの姿勢で立っている二人、いや、二体を見つめた。
「時代は変わったな、軍曹。40年前に私がウエストポイント(陸軍士官学校)に入学した時には、初期型の無人機やGPSでさえハイテク兵器ともてはやされていたのに、今やこの子らは自分の判断で行動し、目標を追う」
眼下で「褒められたの?」「しっ! 静かにしなさい!」と無駄口を叩く玩具に冷や汗を流しながら、黙って少将の話に耳を傾ける。
「再来月の頭の民需用の生産開始に合わせ、レイセオンがオールドアイアンサイズ(米第1機甲師団)と75レンジャーに本格的に納入を開始する予定というのは聞いているな?」
「聞いております」
噂程度ではあったがその話は聞いていた。
既に、警察とレスキューでは人が通れない場所への侵入と要救助者の応急救護という名目でプロトタイプの配備が始まっていると聞いているし、トライアルでも今回の試用でも優秀な結果を残しているのだ。むしろ遅すぎるといってもいい。
「今回の試用も軍用データのフィードバックが目的で、先日行われた海軍でのトライアルの一巻ということだ、近いうちに実戦にも投入される」
「我々はいつでも支障ありません」
『実戦』という言葉に二体がビクッと反応するが、玩具とはいえ兵器だ。まさか後方での慰安用というわけでもなし、運用チームの転換訓練も今までの無人機のオペレーティングシステムから操縦系統を取っ払っただけのものでは……はっきり言って逆に仕事が減ったのだ。
「早い方がいい、クリスマス休暇はとりたいだろう?」
目の前に座っているのはアフガン派遣軍の最高指揮官であるマイケル・D・E少将、そしてここは彼のオフィス。
俺は緊張で押し黙り、少将がゆっくりと書類に目を通すのを見つめていた。
「画像の精度が粗いな……航空映像はプレデター2で充分だろう」
あれから約一ヶ月。天使型がモンタナ、悪魔型のテキサスと命名された二体の玩具はキルハウスでの演習で、民需用の玩具のプロトタイプとは思えないほど優秀な成果を上げている。
問題は……
「サイズ的にプレデター2ほどの超望遠高精度カメラは搭載できませんからね、やはり地上での運用を前提に使用した方がいいと思います」
そう、モンタナの飛行機能が軍の要求水準に満たないのだ。
小さく軽いためか高高度での安定性が低く、特に強い横風に弱い。さらには飛行中の通信性能さえなきに等しい。それだけでなく、専用に開発された彼女の先輩であるプレデター2ほどの大きさも強度もないため、そもそも軍用として評価可能な戦闘力を有していない。(実際、モンタナはテストフライトで何度も墜落している。実際の任務中に墜落すれば回収は望むべくもないだろうし、そもそもトランシーバー以下の通信性能では現在の無人偵察機のスペックを大きく下回る。)
とはいえ……。
「地上で使用する分には稼動音もほぼなく、長距離通信機併用時のバッテリー消耗度を考慮しても充分実用に耐える、と判断します」
少将閣下がコーヒーを机に置き、机の上で俺の真似をして休めの姿勢で立っている二人、いや、二体を見つめた。
「時代は変わったな、軍曹。40年前に私がウエストポイント(陸軍士官学校)に入学した時には、初期型の無人機やGPSでさえハイテク兵器ともてはやされていたのに、今やこの子らは自分の判断で行動し、目標を追う」
眼下で「褒められたの?」「しっ! 静かにしなさい!」と無駄口を叩く玩具に冷や汗を流しながら、黙って少将の話に耳を傾ける。
「再来月の頭の民需用の生産開始に合わせ、レイセオンがオールドアイアンサイズ(米第1機甲師団)と75レンジャーに本格的に納入を開始する予定というのは聞いているな?」
「聞いております」
噂程度ではあったがその話は聞いていた。
既に、警察とレスキューでは人が通れない場所への侵入と要救助者の応急救護という名目でプロトタイプの配備が始まっていると聞いているし、トライアルでも今回の試用でも優秀な結果を残しているのだ。むしろ遅すぎるといってもいい。
「今回の試用も軍用データのフィードバックが目的で、先日行われた海軍でのトライアルの一巻ということだ、近いうちに実戦にも投入される」
「我々はいつでも支障ありません」
『実戦』という言葉に二体がビクッと反応するが、玩具とはいえ兵器だ。まさか後方での慰安用というわけでもなし、運用チームの転換訓練も今までの無人機のオペレーティングシステムから操縦系統を取っ払っただけのものでは……はっきり言って逆に仕事が減ったのだ。
「早い方がいい、クリスマス休暇はとりたいだろう?」