「現在、目標直下! マークして!」
泥だらけで、傷にまみれた体で椅子の下に滑り込む。
《こちらでも確認した。目標をマーキング完了。お疲れ様、よくやった!》
「回収地点に向かいます、もう少しだよ! 頑張って……」
担いでいる相棒に声をかけると彼女が力なく、それでも精一杯の力でボクにしがみついているのを感じる。
《待ってください! まだ友軍が……》
泥だらけで、傷にまみれた体で椅子の下に滑り込む。
《こちらでも確認した。目標をマーキング完了。お疲れ様、よくやった!》
「回収地点に向かいます、もう少しだよ! 頑張って……」
担いでいる相棒に声をかけると彼女が力なく、それでも精一杯の力でボクにしがみついているのを感じる。
《待ってください! まだ友軍が……》
2035/10/16
16:32
アフガニスタン南部 合衆国陸軍104前線基地
“1st SFOD-D アメリカ合衆国陸軍第1特殊作戦部隊デルタ作戦分遣隊 ジョシア・ラミレスニ等軍曹”
16:32
アフガニスタン南部 合衆国陸軍104前線基地
“1st SFOD-D アメリカ合衆国陸軍第1特殊作戦部隊デルタ作戦分遣隊 ジョシア・ラミレスニ等軍曹”
「玩具か……」
その日、俺はベッドで頭を抱えていた。
「「あなたが私・ボクのマスターですか?」」
もう30年以上も派遣を続けている癖に新設しない仮設兵舎の、お世辞にも上等とは言えないパイプベッドの枕元に、どこぞのトイメーカーが開発したという全長15cm足らずの二体のお人形が座ってこちらを見上げている。
「そうだ、不本意ながら」
「「声紋を登録します、お名前を発声して下さい」」
サブカルチャーのファン層向けに発売されているという二体は確かに可愛らしかったが、今は自分が戦闘任務から外された、という絶望感しか沸いてこない。
だというのに、二体の玩具は無垢な瞳で、悪態に反応するでもなくこちらを見据えていた。
「「お名前を発声して下さい」」
「……アメリカ合衆国陸軍特殊作戦軍 第1特殊作戦部隊 デルタ作戦分遣隊所属 ジョシア・ラミレスニ等軍曹」
先ほどから、何度も名前を尋ねてくる人形に、答える。
「「声紋を登録中……アメリカ合衆国陸軍特殊作戦軍 第1特殊作戦部隊 デルタ作戦分遣隊所属 ジョシア・ラミレスニ等軍曹 さんでよろしいでしょうか?」」
どうやら、長い名前として認識したようだ。
「前半は所属だ。ジョシア・ラミレスニ等軍曹でいい」
しつこく最終確認を迫る人形に、鬱陶しいながらも答える。
この手の電子機器は確認が取れるまで同じことを繰り返すのが常だ。放っておいても壊れるまで喋り続けるだけだろう。
「では、ジョシア・ラミレスニ等軍曹さんでマスター登録を行います」
最終登録をしているらしき人形は放っておいてベッドに横になると、メガネが滑り落ち、思わず「畜生」と悪態をつく。……戦闘で負傷して視力が著しく低下した俺が特殊作戦軍に残っているのもおかしな話だが、今回のはいわゆる戦力外通知というヤツだろう。
「クビにならなかっただけでも、よかったと考えるべきか」
「ミスター二等軍曹 クビになるの?」
枕元から声がかかり、「こら! 失礼でしょ!」という別の小さな声が続く。
「聞いてたのか? それと階級にミスターはいらない。そして軍曹でいい」
「はい軍曹! ボク達耳がいいんだよ?」
コイツは悪魔型ストラーフ、確かそう聞いていたがBokuという単語の意味がわからない。
「クビにならない代わりに君らを押し付けられたんだ それとボクってのは?」
「あ、えっと彼女の一人称です。私は天使型アーンヴァルです。マスター」
そう自己紹介する彼女に頷いてから、彼女達にマスターは合衆国大統領であり、自分のことは階級で呼んでくれればいいと伝えたが微妙な顔で「マスターはマスターでマスターのマスターが…」とわかるようなわからないような事を呟いていただけだった。
その日、俺はベッドで頭を抱えていた。
「「あなたが私・ボクのマスターですか?」」
もう30年以上も派遣を続けている癖に新設しない仮設兵舎の、お世辞にも上等とは言えないパイプベッドの枕元に、どこぞのトイメーカーが開発したという全長15cm足らずの二体のお人形が座ってこちらを見上げている。
「そうだ、不本意ながら」
「「声紋を登録します、お名前を発声して下さい」」
サブカルチャーのファン層向けに発売されているという二体は確かに可愛らしかったが、今は自分が戦闘任務から外された、という絶望感しか沸いてこない。
だというのに、二体の玩具は無垢な瞳で、悪態に反応するでもなくこちらを見据えていた。
「「お名前を発声して下さい」」
「……アメリカ合衆国陸軍特殊作戦軍 第1特殊作戦部隊 デルタ作戦分遣隊所属 ジョシア・ラミレスニ等軍曹」
先ほどから、何度も名前を尋ねてくる人形に、答える。
「「声紋を登録中……アメリカ合衆国陸軍特殊作戦軍 第1特殊作戦部隊 デルタ作戦分遣隊所属 ジョシア・ラミレスニ等軍曹 さんでよろしいでしょうか?」」
どうやら、長い名前として認識したようだ。
「前半は所属だ。ジョシア・ラミレスニ等軍曹でいい」
しつこく最終確認を迫る人形に、鬱陶しいながらも答える。
この手の電子機器は確認が取れるまで同じことを繰り返すのが常だ。放っておいても壊れるまで喋り続けるだけだろう。
「では、ジョシア・ラミレスニ等軍曹さんでマスター登録を行います」
最終登録をしているらしき人形は放っておいてベッドに横になると、メガネが滑り落ち、思わず「畜生」と悪態をつく。……戦闘で負傷して視力が著しく低下した俺が特殊作戦軍に残っているのもおかしな話だが、今回のはいわゆる戦力外通知というヤツだろう。
「クビにならなかっただけでも、よかったと考えるべきか」
「ミスター二等軍曹 クビになるの?」
枕元から声がかかり、「こら! 失礼でしょ!」という別の小さな声が続く。
「聞いてたのか? それと階級にミスターはいらない。そして軍曹でいい」
「はい軍曹! ボク達耳がいいんだよ?」
コイツは悪魔型ストラーフ、確かそう聞いていたがBokuという単語の意味がわからない。
「クビにならない代わりに君らを押し付けられたんだ それとボクってのは?」
「あ、えっと彼女の一人称です。私は天使型アーンヴァルです。マスター」
そう自己紹介する彼女に頷いてから、彼女達にマスターは合衆国大統領であり、自分のことは階級で呼んでくれればいいと伝えたが微妙な顔で「マスターはマスターでマスターのマスターが…」とわかるようなわからないような事を呟いていただけだった。