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ウサギのナミダ

ACT 1-1



 廃墟の街に砂塵が吹き抜ける。
 裏通りの路地にも、砂埃がたまっており、黒い影が高速で走り抜けると、砂煙で路地はいっぱいになる。
 駆け抜ける黒い影は、少女。
 愛らしい顔立ちに、バニーガールを思わせるボディカラー。さらに黒光りする、ごつい機械の両足が不釣り合いだ。
 彼女は、俺の武装神姫。
 廃墟の路地を、機械の両足首に装備されたランドスピナーで疾駆する。
 これが彼女のメイン武装。陸上での機動性に特化した脚部パーツである。
 彼女は細い路地裏を駆け抜けながら、メインストリートをうかがう。
 朱色のエアバイクが一台、爆走を続けている。

「よくアレを振り回すな」

 半分感心、半分あきれた口調で、俺はつぶやいた。
 あのエアバイク「ファスト・オーガ」は公式装備であるが、バトルで好んで使用する神姫はあまりいない。
 地上での高速機動には適しているが、取り回しがしづらく、接近戦には向かない。空中戦も、飛行タイプの装備と比べると能力は数段劣る。
 戦闘機動においては中途半端なのだ。特に武装神姫のバトルにおいては。
 しかも、高速域に達するようなレーシングタイプに組み替えてある。
 あれでは操作系も相当にじゃじゃ馬なはずだ。
 それでも、ファスト・オーガを使いこなそうというのは、よほどの物好きなのか……。
 俺は、対戦筐体の向こう側でエキサイトしている、相手のマスターを見た。
 派手に染めた髪に、革ジャン、銀のアクセサリーをこれでもかと身につけた、いかにもヤンキーと言った感じのあんちゃんである。
 きっとバイクが好きなのだろう。
 そういえば、この店の外にも派手なバイクが止まっていた。いかにも相手のマスターが乗り回してそうなやつだ。
 そんなことを考えながら、エアバイクに仕掛けるタイミングを探る。
 少し耳からずれた、片耳用ワイヤレスヘッドセットをつまんで、位置をなおしながら、俺は指示を出した。

「ティア、次のT字路。ビルの上からジャンプして、直上から撃て。そのあとは背後から追撃」

『はいっ!』 

 はきはきとした声が短く応答する。
 ティアは直後に軽く地を蹴ると、そのまま朽ちたビルの壁面を斜め上に走る。
 そのまま、交差点の角にあるビルの屋上に躍り出る。



「やべえ、やべえ、やべえやべえっ!!」

 エアバイク「ファスト・オーガ」に乗る、ティグリース・タイプの神姫は、悪態を風に流しながら逃走していた。
 こんなのは想定外だ。
 バトルを始めてこれまでに五戦五勝。
 いずれも、相手の神姫を追いかけ回し、背後から重火器で撃ちまくって勝利してきた。
 図体の大きなファスト・オーガであるが、マスターの教えてくれたライディングを駆使すれば、思った以上の小回りを発揮できる。
 巨体に目を奪われて、動きが鈍いと判断した浅はかな相手こそは格好の獲物だった。
 彼女に言わせれば、飛行型のアーンヴァルやエウクランテの方が、ターンするのが鈍い。大きな弧を描いてターンしてくる相手を、様々なバイクのターン技でかわして背後をとる。
 そして、重くなるのもかまわずに「これでもか」と積んだ武装を撃ちまくる。
 あなどった相手を手玉に取る、最高に気分がいい必勝パターンだった。
 接近戦メインの猫型や武士型はもっと簡単だ。全開で走り回って撃ちまくれば、それだけで勝てる。
 今日の相手も、そういう楽でおいしい相手だと思っていた。

『虎実』
「アニキ!」

 彼女は自分マスターをこう呼んでいる。

「アニキ、話が違うじゃねぇか! 今回もラクショーとか言ってなかったか!?」
『文句垂れてんじゃねーよ。武装じゃこっちが勝ってるんだ。文句言う前にあのバニーガールに当ててみやがれ』

 バニーガールのところで声が甘くなった。
 アタシというものがありながら、ケシカランことを考えていたに違いない。
 虎実は不機嫌をさらにまき散らす。

「マトが小さくて、あったんねーんだよ! なんかいい手はねーのか、バカアニキ!!」
『ふむ……なら、誘い込んでやるか』
「なんか手があるのか?」
『こういうのはどうだ……』

 虎実のマスターは、声を潜めて策を授けた。
 それを聞いて、虎実はニヤリと笑う。
 アニキはバカでエロで喧嘩っ早いが、ことバイクを使っての勝負になると悪知恵が働く。
 虎実がアニキを一番気に入っているところだ。

「いい手だね」
『あのちょろちょろうるさいウサギちゃんに一発かましてやれ』 
「よっしゃぁ!」

 虎実はさらにアクセルを踏み込んだ。
 先はT字路。
 狂ったようなスピードで、朽ちたビルの壁が迫り来る。
 虎実は、最小限のブレーキングをかけると、エアバイクの左舷から身を乗り出した。
 ハングオンで美しい弧を描き、ハイスピードのまま左折した。
 瞬間、左手のビルの上から、小さな影が虎実の上に出現した。

「来たな……」

 小さな敵影を確認すると、虎実は猛然とアクセルをふかす。


 わたしがビルの屋上から飛び出したとき、エアバイクはちょうど左折したところで、真下に来ていた。
 対戦相手の神姫は、虎実さん、という名前だったか……が見上げていたところから、ある程度奇襲を予測していたようだ。
 わたしは空中で狙いをつけ、両手に持ったサブマシンガンの引き金を絞る。
 サブマシンガンが火を噴くのと同時、エアバイクがさらに加速する。
 はたして地面に弾着し、小さな砂埃を上げた。
 その砂埃を踏みしめるように、着地。膝のクッションで衝撃を殺して、その反発を利用して、上体を前に出す。
 一気に加速、虎実さんの追跡を開始する。
 エアバイクは、道幅の広いメインストリートを猛スピードで駈けてゆく。
 次第に小さくなるエアバイクに追いすがるため、わたしは全力滑走した。
 重心を身体の前に出した軸足に乗せ、反対のけり足で自分の後方の地面を蹴る。上体は前傾姿勢。腕は左右に大きく振る。 
 スピードスケートの選手と同様のフォームだ。
 左右の足が地面を蹴る度に、軸足のホイールが回転数を上げ、加速する。
 エアバイクとの差は徐々に詰まってきた。
 ライダーの虎実さんが、ちらりとこちらを振り返る。
 さらに差が詰まった。
 サブマシンガンの射程には十分な距離。
 わたしは走りながら、右手のマシンガンを構え、撃った。
 ファスト・オーガがひらりと横滑りして、銃撃を回避。車体をストリートの右側に寄せる。
 相手の左翼にスペースが出来る。一気に追いつくチャンス。
 わたしはさらに加速し、そのスペースへと飛び込もうとした。
 その時。
 わたしの瞳に、不適に笑う虎実さんの顔が映った。 
 確信のある笑い。
 虎実さんがファスト・オーガを一瞬だけ加速した。
 少し前に出ると、なんと機首を持ち上げ、後方のフローティングユニットを中心にして、駒のように回転する!

「ふきとべええええええええ!!」

 ファスト・オーガの機首部分が金属バットのごとく振り出されてくる。
 虎実さんに並ぼうと加速していたわたしは、進路を変えることができない。
 ファスト・オーガの大きな機首部分が、ものすごい勢いで、わたしの眼前に迫った。


 まったくもって、無理矢理な力技である。
 まさか、エアバイクをウィリーさせて、前方部分で吹っ飛ばそうとは。
 思いもかけない接近戦の奇襲に、俺も肝を冷やした。
 ティアは速度を落とすも、勢い余ってエアバイクの攻撃に吸い込まれていく。
 二つの影が交差する。
 しかし、ティアは、虎実の一撃をすり抜けた。
 接地しているホイールをグリップさせながら、身体を地面すれすれまで倒しこむ。
 スキーで言うビッテリーターンの要領だ。
 ウィリーしていたファスト・オーガは、ティアの身体の上を通り過ぎる。

「ちょ……まっ!」

 相手の神姫、ティグリースの虎実があわてた声を出す。
 彼女にとっては起死回生、必中の一撃だったのだろう。
 エアバイクの前部を持ち上げたまま、その場で勢いよく駒のように回りだした。
 チャンスである。
 指先はサイドボードのコントロールパネルを操作し、俺が望んだ武器を、バーチャル空間内のティアの手元に送り込む。

 「ティア」
 『はいっ』

 同時に短く指示を下す。

 「そいつをエアバイクの底面に向けて撃て」

 ティアは即座に指示を実行する。
 ティアの右手には、大きなハンドガンが握られている。
 ただのハンドガンではない。先端に大きな弾頭があり、グリップからはストックも延びている。
 ロケットランチャーガン。
 装弾数は一発きりだが、威力は破格である。
 機動性重視のティアにとっては、虎の子の一発だ。
 ティアはランチャーガンを構えると、数瞬を待たずに引き金を絞った。
 ファスト・オーガがウィリーターンしていたのも、ほんの数回転だったろう。
 虎実がファスト・オーガを押さえ込むよりも早く、まっすぐな白煙を描いた弾頭は、その前方部の底面に直撃した。

『うわ、うわわわわぁっ!!』

 虎実が素っ頓狂な声を上げる。
 前方部をはじかれたエアバイクは、後部を支点に反転。
 そのままひっくりかえった。
 俺が思い描いたとおり。作戦は成功した。
 命中を確認したティアは、実弾のなくなったロケットランチャーガンを捨てる。
 俺はすぐに新しい武器をティアに送り込んでやる。
 ティアはランドスピナーでゆっくりと滑走すると、転覆しているファスト・オーガの反対側に回り込んだ。


 ひっくりかえったファスト・オーガから、いままさに虎実が這いだしてこようとしていた。

 「くっそ……」

 まさか、あの一撃をかわされるとは思わなかった。
 奴の速度も乗っていたし、コースも予想通り。ファスト・オーガを回転させたときに視認したティアは、間違いなく直撃コースだった。
 しかし、姿がかき消え、予想していた衝撃は来なかった。
 ティアを吹き飛ばした衝撃を利用してブレーキをかけるつもりだったために、勢い余って駒のように回ってしまったのだ。
 そして、その隙をつかれ、このありさまだった。
 虎実はバイクから這い出そうと力を込める。
 バイクはもう使い物にならないだろう。だが武装は健在だ。ありったけの武装を引っ張りだして、それから……
 考えている最中の虎実の前で、甲高いホイール音が停止する。
 虎実は顔を上げる。
 目の前に、ちょっとすまなそうな顔をした、黒い兎がいた。

「チェックメイトです……」

 ちょっと申し訳なさそうに、バニーガールの格好をした神姫が告げる。
 虎実は不機嫌になりながら思う。
 なんでこいつは、こんなに自信なさげなんだ?
 両手でサブマシンガン構えながら言う口調じゃねぇだろ。
 虎実はティアを侮ることにした。
 無駄なあがきとわかっちゃいるが、こんな奴に素直に降参するほど、虎実はおとなしくもない。

「そうか……」

 虎実はちょっとうつむいて表情を隠す。
 端からは、さもギブアップしそうに見えるだろう。

「しかたがない……なっ!!」

 車体の下に差し入れていた右手。
 最後の一文字を口から発すると同時、掴んでいた剣を地面スレスレに滑らせた。
 自慢のレッグパーツをねらう。
 しかし。
 虎実の剣が届くより早く、ティアの両手のマシンガンが火を噴いた。
 虎実の繰り出した剣は、柄の根本から破壊された。
 地面に穴をうがち、バイクに風穴をあけ、弾着が点線を描き出す。
 虎実は小さな悲鳴を上げて、頭を抱えた。
 弾着の点線は虎実の身体を囲うように円を描いていた。
 ティアが静かに告げる。

「降参してください……」

 またしても申し訳なさそうな顔をしている。
 それが虎実には無性に気に食わなかった。
 でも、それをどうにかする術はない。
 ティアの銃口はぴたりと虎実向けられている。

「ちくしょ……ちくしょう、ちくしょーーーーーっ!!」

 虎実の叫びが廃墟の彼方に消えていく。
 やがて、ファンファーレとともに、フィールド上に巨大な立体文字の列が浮かび上がった。

『WINNER:ティア』


 バーチャルバトルが終了し、周囲の廃墟が消えていく。
 わたしの認識はリアルに戻され、ゆっくりと目を開く。
 暗く、狭いポッドの中。
 こわい、と認識するまもなく、目の前の壁に一筋の光の線が引かれ、やがて大きく開いた。
 溢れてくる光。現実の光。
 わたしは目を細めながら、ゆっくりとポッドから身を乗り出して振り向く。

「か、勝ちました。マスター」

 わたしは自らの主の姿を見上げた。
 どんな表情をしているのか、とてもとても気になる。
 彼は、やっぱりいつものように事務的な無表情で、自分のモバイルPCのキーを叩いている。
 わたしはちょっとだけ落胆する。
 でも、

「うん。よくやった」

 マスターがわたしを見て、かすかに笑ってくれたから。
 わたしは嬉しくなって、思わず笑みを返した。
 わたしのマスターは、あまり表情を変えない人だ。
 だから、時々見せてくれる笑顔は、わたしの大切な宝物だった。
 その時だ。

「おいおいっ! 今のは反則じゃねえのか!?」

 大きな声でマスターに近づいて来る人がいる。
 バトルの相手、ティグリース・タイプのマスターだ。

「なにがだ」

 マスターの声は至って冷静……それどころか、わたしが身をすくませたほどに冷たい声。

「だってそうだろ! そっちのバニーちゃんの装備なんざ、見たことも聞いたこともねぇ!
 しかも、バトル前にフィールドまで指定しやがって……。
 勝つためには何をしてもいいってのか!? あぁ!?」
「はじめに確認を取ったはずだ。君はそれを了承しただろ」

 確かにマスターは、バトル前に確認をしている。
 わたしは武装の特性上、市街地や廃墟のステージでしかバトルしない。
 それは有利になるからというよりも、他のステージではパフォーマンスを発揮出来ないからだった。

「だけど、てめえの神姫の武装は公式じゃねえだろが!」
「確かに、ティアの武装はオリジナルだ。
 だが、君の神姫の武装に勝っているとは思えない。
 こっちはライトアーマー並みの軽量武装で、装備は手持ち武器をサイドボードから送り込んでいるだけだ。
 単純な火力は君達の方が圧倒的だと思うけどね」
「ぐっ……」

 マスターは冷たい視線で相手を見る。
 体の大きな相手のマスターがあきらかにひるんでいる。
 マスターは淡々と言葉を紡ぐ。

「それに、ここは公式の神姫センターじゃない。
 ゲームセンターの非公式の草バトルだ。
 パーツがオリジナルだろうが、武装が非公式だろうが、どんな相手が出てきたって文句は言えない。
 ここにはそういう神姫が集まっている。
 公式装備のバトルがしたければ、神姫センターに行けばいい」

 マスターの言葉は冷たく、事務的で、しかも正論だった。
 会話を聞いていた、周りの神姫マスターのみなさんも、口々に言う。

「そうだそうだ! ここじゃ武装は何でもありだ!」
「公式武装バトルがお望みなら、他へ行け!」
「負けたからって見苦しいぞ!」
「だいたい、火力で勝っているのに、いいわけがましいったらないよな」
「文句言うより、装備見直す方が先なんじゃね?」

 そして、マスターがとどめの一言。

「それに、いまのバトルは、君から申し込んできたんだろ」

 その一言に、周りがどよめいた。
 相手のマスターは反論も出来ずに、うつむいている。
 けれど、いきなり顔を上げると、びしっとわたしのマスターに人差し指を突きつけた。
 肩の上のティグリースも一緒に。

「こ、これで勝ったと思うなよ! おぼえてろおおおおおぉぉ!!」

 そう言い捨てて、相手のマスターは駆け足でお店を出ていった。
 マスターを見上げると、彼は肩をすくめて軽くため息をついた。

「まったく、うるさいやつだったな……心配するな」

 最後の一言でわたしを見て、マスターは右手を差し出した。
 後かたづけが終わった証拠。
 わたしはマスターの右手の甲に乗る。
 すると、マスターの右手はわたしを乗せて、左胸のシャツのポケットに到着する。
 わたしは右手から降りて、マスターの胸ポケットに滑り込んだ。
 ここはわたしの定位置。

「よし、帰ろう」

 ゲームセンターの、武装神姫コーナーの周りは、さっきの騒ぎの名残で、まだざわめいていた。
 マスターはそれが気に入らないのだと思う。
 他のバトルを観戦もせず、すり抜けるようにコーナーを離れ、店を後にした。





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