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ウサギのナミダ

ACT 0-2


 バッテリーがフル充電になり、わたしは覚醒を促される。
 ゆっくりと開く瞳。
 目覚めたわたしは、眩しさに目を細めた。

 ……ここはどこだろう?

 お店にいたときは、こんな眩しさを感じたことはなかった。
 やがて瞳が光量を調節し、周りが認識できるようになってくる。
 眩しく感じたのは、白い壁だった。
 白い壁、白い部屋。
 実際の明るさはそれほどでもないけれど、薄暗いお店しかしらないわたしにとっては、とても明るい部屋だった。
 やわらかな光に満たされていた。

 わたしはクレイドルの上に寝かされていた。
 まだ真新しいことが肌触りでわかる。
 わたしの上には、白く清潔な布が一枚かけられている。
 白無地のように見えるが、同じ色の糸でシンプルな模様が入っている。
 男性用のハンカチのようだ。
 しわもなく、真っ白で、かすかにさわやかな香りがする。
 あたりは、しん、と静まり返っている。
 ここはどこだろう?
 わたしが身体を起こそうとすると、

「……ッ!」

 激痛が身体を走り、わたしはうめいた。
 そうだ、思い出した。
 わたしはあの夜、お客さんに無理矢理連れ出され、そして……
 よく覚えていない。
 途中からの記録が途切れている。
 痛みがするのは両脚と左腕。わたしを連れ出したお客さんの仕打ちだった。
 左腕を見ると、細い木を使って添え木がしてあり、丁寧に包帯が巻かれていた。
 布に隠れた脚を見ると、左腕同様に手当がしてあった。
 わたしをここに連れてきた誰かがしてくれたのだろうか。
 そこまで考えたとき、突然ガチャガチャという金属音がして、わたしはびくりと身をすくませる。
 左の奥には扉があるようで、そこから一人の男性が現れた。

「目が覚めたか」

 ちょっとそっけないくらいの口調で、わたしに声をかける。
 知らない人だった。
 少なくとも、わたしのお客さんにこの人はいなかったと思う。
 端整な顔立ちの男性だった。

「拾ってきたときには動きもしなくて、あせった。ただのバッテリー切れでよかった」

 その人は、わたしに呟くように話す。

「あの……」

 わたしが声を出すと、なんだか驚いたようにわたしを見た。
 その表情に、わたしは少しおびえて、ハンカチを引き寄せる。

「あの……ここはどこですか……?」
「俺のアパートだ。昨日の夜、おまえを拾ってきた」

 ぞんざいなしゃべり方だったけど、不思議と嫌な感じはしなかった。

「わたし……おきゃくさ……男の人に連れ出さたんですけど……その人は?」
「おまえを投げ捨てて逃げたよ」

 言いながら、わたしの左手にある机の上に持っていた包みをおいた。
 わたしの背後にあるPCの机とはひと続きになった長い机で、荷物のおかれた場所は何かの作業場になっているようだった。
 様々な工具がきちんと整頓されて、並べられている。

「添え木してるから身動きがとれないだろ。すまんな。さっき新しいボディを買ってきた。
 明日には、神姫に詳しい奴にボディの換装を頼んでいるから、しばらく辛抱してくれ」

「新しいボディ……?」

 たったいま机に置いた包みを示しながら、その人は言う。

「いま買ってきた」
「……わたしの、ために?」
「そうだ」
「なぜ、ですか? なんで、わたしなんかのために、こんな……」

 素体とはいえ、神姫の新品ボディは決して安くはないはずだ。

「そりゃぁ……」

 その人は、いとも簡単にこう言った。

「おまえのオーナーになりたいからだ」
「わたしの……オーナー……?」
「そうだ。だからおまえを連れてきた」

 わたしは驚いてすぐに言った。

「だ、だめです、そんなこと。わたしがあなたの神姫になったら、ご迷惑がかかってしまいます」
「なぜだ?」
「だって……」

 好き好んで、わたしのような神姫のオーナーになる人なんて、いない。なぜなら、

「わたしは、神姫風俗の神姫ですから……」



 その神姫はそう言って、悲しげにうつむいた。
 その事実が、どれだけ重荷なのか、昨夜までの俺ならわからなかったろう。
 だが、こいつをクレイドルに乗せ、PCでこいつの記録を見て……俺は思い知らされた。
 人間とはどれほど醜悪な存在なのかを。

「わ、わたしは汚れた神姫ですから……あなたのような方の神姫になる資格なんてないんです……」

 なんだ、その資格ってのは。
 少し腹立たしくなっている俺の前で、その神姫は自らの境遇を語りだした。

「PCにクレイドルをつないだのなら……わ、わたしのことなんて、もうわかってますよね……わたしは神姫として目覚めたときから、お店の中にいました。お店から出たのは、ここへ来るときが初めてです。あんなことでもなければ、出ることもなく、壊れていったんでしょう……。
 わたしは名前をつけられませんでした。店にいる神姫はみんなそうでした。ただ、番号で呼ばれていただけ……わたしたちは、お客さんといるときはお客さんの神姫だから、お客さんの呼ぶ名前を自分の名前と思え、って……。
 わたしは目覚めたその日から、お店に出ました。すぐにわたしの番号、23番が呼ばれて……わたしは人間の男性に……奉仕しました……」

 23番の神姫がそれからしたことを、俺は自分のPCで見た。
 神姫風俗というのは、人間の女性ではなく神姫を使った風俗営業のことである。
 一五cmのフィギュアの女の子を性行為に使って何がいいのかと思うが、そっち方面の男達に需要があり、それなりに繁盛しているのだそうだ。
 それに、人間を雇うよりも、神姫の方が購入代金とメンテナンス料を含めても断然安い。
 人件費の安さがそのまま料金にフィードバックし、そんなにお金が無くてもその手の人たちには楽しめる……らしい。
 存在は知っていた。
 だが、俺が知っていたのはこの程度のことだった。
 昨夜見たこの神姫の記録は、俺の想像を絶するものだった。
 男への奉仕なんてものじゃない。
 神姫専用の自慰アダプタを使用してのセックスなんてものはまだかわいい方だ。
 およそ考えうる、ありとあらゆる方法で神姫は陵辱されたいた。
 客が持ち込んだ同サイズの男性型フィギュアロボによる強姦や輪姦は言うに及ばず、多様な動物型との性交、空想上の動物……つまり触手プレイなんてものまでさせられていた。
 もちろん、神姫達にとっても理解の範疇を越えることであり、この神姫が泣き叫ぶ姿が何度も何度も記録に収められていた。
 その姿を客の男たちは、楽しそうに眺めている。
 彼女がどんなにやめてくれ、助けてくれと懇願しても、聞き入れることはない。むしろさらに悲鳴を上げさせるために、行為をエスカレートさせるほどだ。

「そ、そうすると、わたしたちは、だんだんとその行為への感情を適当に処理するようになるんです……どんな行為でも、同じように処理して負荷を少なくするんです。
 それで……反応が鈍くなってくると……感情のプログラムとデータをデリートして再インストールされるんです……」

 この神姫が語る新事実に、また頭をぶん殴られたような気持ちになった。
 神姫風俗を利用する奴もひどいが、やっている連中もひどすぎる。
 人間の醜悪さを見せつけられて、俺は正直自分が人間であることに嫌気がさしてくるくらいの気分だった。

「再インストールが繰り返されると、わたしたちの記憶素子の損耗が早くなって……復旧が難しくなるんだそうです……何度も感情プログラムを入れ替え、最後にはまともに動作しなくなって……おかしくなってしまうんです……。
 そんな神姫をお店で何度か見ました。そうなってしまうと、もう元には戻れないから……処分されしまうか、狂った神姫がほしいっていうお客さんに払い下げられて……」

 どうも人間という奴は救いようがないらしい。

「わたしも、二回、再インストールされました……わたしの常連さんで、そう、あの夜わたしを連れだそうとした人なんですけど……折るんですよ、腕とか、脚とか身体を……すごくいたくて、やめてくださいってお願いするんですけど、絶対やめてくれなくて……」
「……もういい」
「でも、それもだんだん適当に感じるようになってきて、そうするとお客さんが怒ってクレーム付けて……再インストールされると、記憶で何されるかわかってるのに、感情はリセットされてるから、こわくて泣き叫ぶんです」
「……いいから、もう」
「でも、それを見て、お客さんはまた喜んで……わたしは、こわくていたくてつらくて、でもどうしようもなくて、だんだんとおかしくなっ……」
「やめろっ、もうしゃべるなっ!!」

 机を思い切り拳でたたいた。
 びくっと身体をふるわせ、大きな瞳を見開いて俺を見つめる。

「……それでも……おまえの過去を知ってなお、俺の神姫にしたいと言ったら?」

 神姫はますます大きく目を開いて俺を見る。

「い、いけません……い、いまお話したように、わたしは……」
「おまえの過去なんて、関係あるかっ!」
「ありますっ……わたしが、神姫風俗にいたことがわかったら……あなたが悪く言われてしまいますっ……わたしのせいで、誰かに迷惑がかかるのは嫌なんです……」

 彼女はうつむき、絞り出すように言った。

「だったらいっそ、お店に帰してください……わたしは、わたしは結局、お店の中でしか生きられない神姫なんです……!」
「じゃあなんで」

 俺はそいつに、いっそ冷たい声で言ってやった。

「なんで、お前は泣いているんだ?」
「え?」

 再び顔を上げた神姫の、その大きな瞳からは、大粒の涙がぽろぽろとこぼれている。
「店に戻り、誰にも迷惑かけずに生きていけるって、自分が望んでいるのに、なぜお前は泣いている?」
「あ、あの……これは……」

 壊れていない右腕で、両方の瞳を必死に拭う。しかしそれでも、彼女の瞳からは涙が次々と溢れては落ちた。
 俺は容赦なくこいつに言葉を浴びせかける。

「ここまで聞かされて……そんな地獄みたいな場所におまえを戻して、俺にトラウマ残すつもりかよ」

 正直、今の俺ははらわたが煮えくり返っていた。
 神姫風俗の経営者や使っている客の醜悪さ、そこにとどまらざるを得ないと諦めているこの神姫、そしてなにより、そんな状況をどうすることもできず、無力さを隠していらだちを傷ついた神姫にぶつけている自分自身に。

「それで、おまえ以外の、自分が気にも入らない神姫とよろしくやれっていうのか? 無理に決まっているだろう」
「そ、そんな……」
「さっき、おまえは、俺の神姫になる資格がない、そう言ったな」
「は、はい……」
「資格ってのは何だ。俺が望む以外に、なんの資格がいる?」
「……」
「俺は店の客のようなことを、おまえに望んじゃいない。おまえには武装神姫になってほしい」

 弱った相手を追いつめておいて、逃げ道用意した上で懐柔か。最低だな、俺。

「ぶそう、しんき……」

 武装神姫。それは神姫本来の姿。
 俺は、資格がないとか言っているそいつをまっすぐに見た。
 ひどい場所でひどいことをされていたと知っても、こいつを俺の神姫にしたいという気持ちが少しも揺らぐことはない。
 むしろ見つめ続けるほどにその気持ちは強くなっていく。
 なぜなのかは、俺にもわからない。なぜなんだろうな、本当に。

「もう過去のことは言うな。おまえは生まれ変わるんだ。俺の神姫として。……そして、おまえの知らない世界を見せてやる」



「わたしの、知らない世界……」

 もうすでに、ここにいること自体に現実感がなかった。
 この人は、なぜこれほどまで、わたしのオーナーになりたがるのだろう。
 正直言えば、とても嬉しかった。
 でも、わたしの存在が、この人の幸せを奪ってしまうのだとしたら?
 そう思うと、わたしはどうしても、この人の想いに応えることができなかった。

「……まあいい。どちらにしてもおまえの身体はひどい壊れ方だからな。ボディを入れ替えなくちゃならん」

 わたしは顔を上げて、その人を見る。

「そうしたら、オーナーの登録も名前の登録もやり直すことができるんだ。おまえは本当に生まれ変われるんだぜ?」

 視線を逸らし、独り言を呟くように、わたしに告げた。
 生まれ変わって、武装神姫になる。
 夢のような、奇跡のような話だった。
 この人は、明日、その奇跡をわたしにくれると言う。
 それでも、どうしても、わたしは素直に喜べなかった。
 結局、怖かったのだ。
 そのときのわたしは知らなかったから。
 お店以外の世界を。
 そして、今まで逢ったどんな人とも違う、この人を。









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