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ウサギのナミダ
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「どうしてこんな事に……」
 武井峡次は呆然とコンソールに着いたまま、呆然とそう呟いていた。
 朝から大企業の研究所に来て。
 そこのスタッフに会わされて。
 自分の神姫の意外な魅力に気付かされた挙げ句……。
 気が付いたら、自分の神姫『と』初バトルである。
「ドレスコードの指示、静香ちゃんしか出来ないしねぇ……」
 で、ではない。
 と、である。
「ええ。今日のメインはあくまでも、ノリコさんと静香ですから」
 峡次の着くコンソールに表示されているのは、自らの神姫であるフォートブラッグのステータスではない。
 犬型のハウリンタイプと、天使型のアーンヴァルタイプ。
 しかも、ステータスに表示されたランクは、どちらもセカンド以上。殊にハウリンに付けられたイリュージョンの格付けは、バーチャル限定ながらファーストとほぼ同等のものだ。
「花姫への指示は私が行います。峡次さんは、コンソールからの情報のフォローをお願いします」
「あ、ああ……」
 初めて座るコンソールの座り心地に落ち着かない峡次とは対照的に、バーチャルフィールドに立つ彼女達は慣れたもの。
「じゃ、頑張ろうね。お姉ちゃん!」
 くるりと回るアーンヴァルの白いコートが優雅にひらりと舞い上がり。
「ええ。花姫も、油断しないで」
 黒いコートのハウリンは、手際よく手持ちの武装と残弾を確認し、ホルスターへと叩き込む。
 対照的な二人だが、向けた視線はぴたりと揃う。
 はるか彼方、対戦相手の神姫と……彼女を指揮しているであろう、彼女達の本当のマスターのもとへ。
「それじゃ、よろしくお願いします。ココさん」
「いや、さんは要らないですから」
 そして、苦笑と同時。
 戦闘開始のアラートが、電脳世界に響き渡った。


マイナスから始める初めての武装神姫

その9 後編



 森の中を、ココと花姫は全力で駆けている。
 戦いの場は森林エリア。
 小回りの利く運動性が必要とされる、ハウリン向けの戦場だ。反面、遮蔽物が多いから、空戦機体のアーンヴァルや砲撃重視のフォートブラッグにはかなり相性が悪い。
 まあ、今日の花姫はフライトユニットを装備していないから、この相性の悪さは帳消しだろうけど。
「峡次さん。周囲に敵は?」
 神姫のセンサーが捉えた情報が反映されるコンソールには、相手の反応はまだ来ない。
 普段なら、センサーの情報は神姫が自分で判断するんだけど……高速移動中や戦闘中には、センサーの情報を解析する余裕なんかない。だからこうして外部に出力して、マスターが神姫のもう一つの目を引き受けることになる。
「花姫のセンサーにもまだ来てないよ。ロックオンもされてない」
 高機動戦と砲撃戦を得意とするアーンヴァルのセンサー有効径は、汎用型のハウリンのそれよりも広く取られていた。そして、砲戦特化のフォートブラッグのセンサー有効径は……そのアーンヴァルよりもはるかに広い。
 けどアーンヴァルのそのセンサーも、遮蔽物のおかげで有効に機能していないように見えた。ということは、フォートブラッグのセンサーも同じ事が言えるだろう。
「けど二人とも。いくらノリが相手とはいえ、その軽装で大丈夫なの?」
 それよりも心配なのは、ココ達の武装だった。
 それぞれ、腰のホルスターに突っ込まれたハンドガンが二丁ずつ。それだけだ。
「ライフ満タンのゼオの前にライトセイバー一本で出たこともありますよ」
 ゼオってあれだよな。ウェスペリオーとグラフィオスの武装が合体して出来る、ドラゴンみたいな奴だよな。
「……それ、勝ったの?」
「まあ、何とか」
 ……どうやって勝ったんだろう。
「……なら、余裕か」
 まあ、いずれにしてもそれだけの戦闘経験があれば……。
「余裕? 怖くてたまりませんよ」
 ……そうなのか?
「でも、ココはイリュージョンで……花姫はセカンドだろ? ノリコなんか、バトル一回もしたこと無いんだぜ?」
 その上、歩いてたら転ぶし、車には酔うし、今日だって自転車に乗っただけでヘロヘロになってたし。
 もちろんそれでもノリは可愛くて大切だけど……ちょっと頼りないのもまた事実なわけで。
「ランクなんか気休めにもなりませんよ。強い神姫は、どこにでもいますから」
 ココはぽそりとそう呟いて、ちらりと横に視線を送る。
 いや、ニコニコと笑顔で走ってる花姫がそんなに強いようには……強いんだろうか。
「どこにでもいる……か」
 まあ、十貴さんとこのジルが戦ってるの見たことあるけど、あの子もサードとは思えないくらい強いしな。ファーストの奴がランク誤魔化して来てるんじゃないかって、時々思うほどだ。
「……峡次さん! ロックオンだよ!」
 って、ぼうっとし過ぎた!
 花姫のセンサーの隅に、光点が映ってる。
 高度は木立よりさらに上。どうやら森の影響がない上方から攻めてくる気らしい。
「すまん、ミサイル来る! スティレット、数十六! ……って、十六!?」
 あのドレス姿で、ミサイルコンテナでも背負ってるっていうのか!?
「花姫、迎撃用意! 半分ずつ、いいですか?」
「うんっ!」
 けど、慌てた俺が指示を送るまでもない。ココは走りながら花姫に指示を送り、自らもハンドガンを引き抜いている。
 光点は、ハウリンのセンサー径内に突入。それと同時に、ココのハンドガンが火を吹いた。
 ど、というハンドガンにしては重めの音が二発響き、同時に彼方で爆光が二つ咲く。
「わたしもっ!」
 続く花姫もハンドガンを連射する。ココはパワー型、花姫は速射型のセレクトなんだろう。だだ、といういくらか軽い射撃音が四発響き、やはり爆光が二つ咲く。
「ありゃ、外れちゃった」
 残るミサイルは十二発。四発分の爆煙を貫いて、こちらへ一直線に飛翔する。
「花姫。次、行きますよ! 接敵するまでに、半分くらいには……」
「はーい!」
 今度の射撃は全く同時。
 双方四発の銃弾が、まっすぐ迫るミサイルに容赦なく牙を剥き。
「……え?」
 爆光は、咲くことがない。
「……曲がっ……た?」
 そう。
 コンソールの上を直進していた光の点は、着弾の瞬間、ぐにゃりと進路を変えたのだ。
「峡次さん! 高度は!」
「高度ゼロ……地表スレスレかよ!」
 先程までの直線軌道はどこにもない。速度はそのままだが、一瞬として直線を描くことのない不規則な曲線は、ミサイルの群れが木立の間を全速で駆け抜けている事を示している。
 それにしても静香さん、こんな無茶苦茶な制御の出来るミサイルをどうやって乗せてるんだ。
「高機動型のマスィーンズかな……?」
 その割には、十六基とか多すぎる気がするが。
「その割には数が多い気がしますが……」
 花姫と背中を合わせつつ、ココは律儀に答えてくれる。
「だよなぁ……」
 ダミーが混じっているかとも思ったけど、今飛んでいる十二発は全て同じだけの高機動を見せている。マスィーンズ制御に優れたハウリンやマオチャオですら、初期設定で四体。その三倍以上の制御が出来る装備があるってのは、にわかには信じづらい。
「まあいいや。来るぞ!」
 木立を抜けて現れたのは、やっぱりスティレット!
「了解!」
 天を仰いで一発、二発。
「お姉ちゃん!」
 誘爆を抜けた二発を、花姫の至近弾が叩き落とす。
「散りますよ、花姫!」
「うん!」
 集中砲火を浴びるのは不利だと悟ったんだろう。短い掛け声だけで、二人は散開。
 五発目と六発目までを花姫が撃ち落とし。ココを狙った七発目を、ココは着弾と同時に木の幹を蹴りつけ、強引な方向転換で避けてみせる。続けざまの八発目が過ぎるのは、宙舞うココの背の向こう。
 着弾。
 爆発。
「……くっ!」
 爆風にあおられてくるくると回る無防備なココを狙う九発目を、姿勢を低くした花姫が速さ任せの高速連射で撃ち落とし。
「……花姫っ!」
 不安定な空中で放ったココの弾丸が、花姫に迫る最後の三発を直撃して。
「きゃあああああっ!」
 至近距離での爆風に、花姫の小さな体は軽々と吹き飛ばされた。
「二人とも! 次弾来るぞ! またスティレット、十六発!」
 だが、大地に激しく打ち付けられた花姫を心配する暇は……まだもらえそうにない。



 ふわりと舞い上がったスカートを下ろしながら、私は正直、困ってました。
「静香さん。容赦ないですね……」
 ミニスカートの中に六発、ロングスカートの中に十発のスティレット。正確に言えば、ロングスカートの十発は、脚部スペーサーのパイロンキットに提がってるんですけど……。
 とにかく、十六発の全力斉射を二連発。
 バトルしたことのない私でも、それが力任せの飽和攻撃だって事くらい分かります。
「あのくらいでちょうど良いのよ。ちょっとは目も醒めたでしょ」
「……はぁ」
 お二人とも、普通に起動してましたけど……? 言い回し、って奴でしょうか。静香さんの言葉は峡次さんと違って、ライブラリにない言葉ばかりで難しいです。
「それよりさ。スティレットの十六発同時誘導って、フォートブラッグって凄いのねー」
「そうなんですか?」
 最初から組み込んであるドライバで、普通に使えるので……何がすごいのか、良く分かりません。
 私としては、ネギを千六本より細く斬れるベルさんの斬撃パターンや、トーストの焼き加減やご飯の炊け具合を判断できるプシュケさんの嗅覚センサーのほうがうらやましいですけど。
「……最大で、どのくらい行けるの?」
 静香さんのコンソールから、指示が来ました。二射目のスティレットの割振り指示……?
 バイザーを下ろして、軽く集中。
 センサーから届く情報を元にして、二人を取り囲むようにイメージ。
 誘導開始。
「えーと、やった事ないから分かりませんが……精密誘導しなくていいなら、この倍くらいまでなら大丈夫だと思います」
 六発でココさんを足止めして、十発でまず花姫さん……。ファーストランカーのココさんを、六発で何とか出来るのかなぁ?
「先に姫を落として、余ったミサイルでココを叩けばいいわよ」
「あ、そうなんですね」
 ココさんの射撃モーションに合わせて、ミサイルの軌道を制御します。ハンドガンは弾が直線だから、まだ何とかなるかな……。
 あ、落とされた。自分の周りのミサイルじゃなくて、花姫さんを狙ってるミサイルを狙ってたんだ。やっぱり先読みがすごいなぁ。
「あの、静香さん? スティレット、全部落とされちゃいましたけど……どうしましょう」
 私のミサイルを全部撃ち落としたココさん達は移動を再開。こちらの位置も特定できたのか、ほとんどまっすぐのコースで来ています。
「……峡次君はミサイル、使ってないの?」
 静香さんのその言葉と同時に、私のスカートと足のハードポイントに、ぼぅっという淡い光が灯りました。
「バトル、今日が初めてですから……。まだデフォルト装備しか」
 ポリゴンが一瞬で形を作り上げて、光をかき消すようにテクスチャが貼られていって……。
「あー。そうなんだ」
 わずかな重みと一緒に姿を見せたのは、合計十六発のスティレット。
「ターゲットと割振りはさっきと同じ。十六発同時制御、まだ行けるわね?」
「はいっ!」
 静香さんの発射指示と同時に、私はくるりと一回転。ふわりと広がったスカートの下から、軽いガスの抜ける音と一緒に十六発のミサイルが放射状に飛んでいきます。
 私の脚を燃やさない距離まで離れたところで、バーナー点火。起動したモーター類が私の支配に入ったところで、一旦大きく急上昇。
 少しずつ燃焼時間をずらしながら、時間差で接敵するように設定してっと。
「さて。それじゃ、ぼちぼち本番と行きましょうか」
 そして、私の右手に現れた淡い光は……。

 やっぱり静香さん、容赦ありません。



「峡次さん!」
 ようやく森の端が見えてきたところで鳴り響くアラートに、私は思わず悲鳴を上げていた。
「また来た! っつーか、何発来るんだよ!」
 こっちが聞きたいです! ノリコさん、あんなトリガーハッピーには見えなかったんですけど!
「ココ、その……キュアハウリンってやつ、なんかすごい魔法の一つくらい……」
「こんなもの役に立ちませんよ!」
 みんな誤解してるけど、変身したからって私の性能が上がるワケじゃない。姫は気分で調子は良くなるみたいだけど……あくまでも、その程度だ。
 空になった弾倉を放り捨て、新しい弾倉をマガジンに叩き込む。
「とにかく、近寄らないと……」
 近距離戦に持ち込めば、あのミサイルの雨は何とか出来るはず。
 まずは、森を抜けて……。
「お姉ちゃんっ!」
 そう思った瞬間、私の顔の横を拳ほどの弾頭が駆け抜けていった。
「ココ! 大丈夫か!?」
「は、はい……何とか」
 ……判断ミスだ。
 あの山のようなミサイルですっかり誤魔化されていたけど、相手はあくまでも砲台型神姫。視界の広い空間に出れば、砲撃や狙撃が来るのは当たり前じゃないですか!
「花姫!」
「うん!」
 慌てて森に引き返し、回り込めるコースに経路変更。
「峡次さんはコンソールに集中してください! こちらは何とか回避して、視認可能な距離まで近付きます!」
「あ、ああ!」



「……すいません、外しました!」
 シリンダーを回転させて、次弾装填。リボルバー内の超伝導コンデンサがその電力を砲身に流し込むまで、ジャスト二秒。
「大丈夫よ。ノリコ、次はフルオート!」
「はいっ!」
 トリガーを引けば、軽い風切り音と共に電磁加速された弾丸が続けて四発飛んでいく。
 砲の反動は少ないけど、こちらの動作予測の精度はまだ三割くらい。続けざまに着弾する電磁加速弾も、ココさんの動きには追いつけません。
「動作予測値補正……プラス3」
 マイクロコンデンサ残電力ゼロ、カートリッジリロード。
 がき、という音を立てて、コンデンサを詰め込んだシリンダーが六分の一回転。
「次は、軌道予測の5000後方に三点バースト!」
「え? 三発……?」
 さっきの四連射でも当たらなかったのに?
「補正が終わり次第、シュート!」
「は、はいっ!」
 とりあえずモードを三点バーストに切り替えて、フルパワー。フルオートより短い間隔で三発の弾体が砲身から飛んでいって……。
 ココさんもそれに気付いたのか、着弾を避けようとバックステップ。三歩退がる間に、少しずつ弾道のズレていた三発の弾丸は、一発、二発……。
 三発目が、ココさんの右脚にヒット!
「当たった……!」
 思わずバイザーを跳ね上げて、目視で確認しようとして……バイザー越しの視界が望遠モードになっていたことに気が付きました。
「油断しないで。カートリッジを通常弾からバードショットへ。花姫のトレースも忘れないでね、そろそろ接敵されるわよ?」
 リボルバーシリンダー内に残りコンデンサは三発。セレクトレバーで弾丸を射撃から近接仕様へ。
「はい! 峡次さんにカッコ悪い戦い、見せられませんから!」
 バイザーは上げたけど、ココさんと花姫さんへのロックは解除してません。
「ふふっ。峡次くんの事、大好きなのね」
 …………ふみゅぅ。
 いえ、大好きですけど、ね。もぅ、言われたら気になっちゃうじゃないですか。
 集中集中。
 短い深呼吸をひとつして、バイザーを引き下げます。
「それじゃ、接敵させて本当の貴女のお披露目と行きましょうか! ミサイル、使い切っちゃって!」
「はいっ!」
 今のココさん達はスティレットの最有効射程圏内。リロードされていた十六発のミサイルに同時リンクして、私はくるりと一回転。
 ふわりと持ち上がったロングスカートの中から、一斉に放出する。



 もう何セット目だろう。
 本当に雨のように降り注ぐスティレットの弾幕をかいくぐり……。
「見えました!」
 私はようやく、ノリコの姿を目視した。
「あれが……ノリ?」
 ごくり、と息を飲む声が聞こえてくる。
 私の視界は峡次さんのコンソールと繋がっているから、目視したノリコの姿は峡次さんも見ているわけだけれど。
「うわぁ。ノリコちゃん、かわいいー」
 黒いドレスは、先ほど見たとおりだ。両腕で支えた身長ほどあるガンランスも、まあ、想定の範囲内。
 けれど、足元に伸び広がるたっぷりとした後ろ髪と、目元まで覆う艶やかな黒髪は……峡次さんの予想を超えていたらしい。
「どうしました? 峡次さん」
 心許ないハンドガンの弾倉を取り替えつつ、峡次さんに声を掛ける。
「……ああ、悪い」
 相手の動きはない。
 静香は多分、峡次さんがフリーズすることが分かってたんだろう。だからその間に手を出す気はないはずだ。
 こういう時の空気を読むのだけは妙に上手いんだから。あの人は。
「ふふっ。見とれてましたか?」
 遊底を引いて、初弾を薬室へ。
「……」
 照れているのか、返事はない。
 自分の神姫なんだから、素直に可愛いって言ってあげればいいのに。
「勝負が終わったら、本人にちゃんと言ってあげてくださいね。あの子、喜ぶと思います」
 マスターに可愛いって言われて喜ばない神姫はいない。
 ……まあ、ウチのマスターに限っては、私を可愛いって言うときは素直に喜べない場面が多い気がするけれど。
「……ああ」
 こちらに戦意が戻ったことを感知したらしい。
 ノリコはガンランスを大きく振り、正面に構え直す。
 大きな動作にふわりと広がるスカートと黒髪が、銀の砲身と凶悪なコントラストを作り出した。
「では花姫、峡次さん! 行きますよ!」



「どうだ? 新作のお披露目は」
 制御室からノリコちゃん達の戦闘を見守っていると、後ろから声を掛けられた。
「ま、見てみろよ」
 戦闘は遠距離戦から一転、近接戦へと移っている。砲撃特化型のフォートブラッグのノリコには厳しい間合な上、一対二というさらに不利な構図だが……。
 バックスからの指示が的確なのか、思ったよりは持ちこたえているように見えた。
「……誰の趣味? 部長?」
「……一応、違うぞ」
 まあ、そう思うのも無理はないか。
 何せ足元まである長い黒髪を持った神姫が、真っ黒なドレスを着てバカでかいガンランスを振り回してるんだから。
 しかもガンランスの先から放たれるのは電磁加速された高速弾丸ではなく、電磁加速された散弾だ。味方のいない状況だから出来る戦い方ではあるが、それにしても凶悪すぎる。
「あれはお前の趣味だろ」
 違うっつの!
「………まあいいや。そろそろ、決着かな」
 そう呟いた瞬間、相手側のハウリンのハンドガンが火を吹いて……。
「……む」
 それを受け止めたのは、ノリコとココの間に張られた電磁障壁だった。
 同時、反対側から斬りかかったアーンヴァルの花姫を、件の散弾で牽制する。
「服にシールドが入ってたんですね……」
 ひらひらと舞うのは、ノリコの黒服の一部、ロングスカートの上に重ねられていたミニスカートだ。スティレット懸架用のカバーかと思っていたが、それ単体でも非常用のシールドとして使えるらしい。
 電磁障壁と散弾に阻まれて、三人の戦いは仕切り直し。
「……なあ。あれって、どう見ても……」
 ガンランスを引き、その動きに黒髪が追従する。
 それはいい。
 だが、真っ黒だったはずのドレスは胸元だけが白く染まり、ミニスカートの重ねられていた場所にあるのは……なぜか真っ白なエプロンだった。
「……メイドさんか?」
「メイドさんだな」
 そういえば、神姫の素体と同じように、表層のパターンで模様が変えられる布ってのが、静香さんに渡したサンプルの中にあったっけ。使い道なんか考えなかったけど、胸部パーツにだけ使って、服全体のイメージを変えてるのか。
「やっぱりあれ、部長の趣味じゃないのか?」



 流れる黒髪から、視線が離れない。
 射撃モーションを的確な砲撃で牽制し、間合を開けようとすればわざと距離を詰めてくる。重さと大きさで先読みが必須なガンランスを力強く振り回し、決定打こそないものの、格上の相手に的確な打撃を与えていた。
「ノリコ……あんなに強いのか」
 フォートブラッグだから近接戦は苦手なはずなのに……。その奇手としか言えない無軌道な戦い方は、歴戦のココと花姫も攻めあぐねているようだった。
「みたいですね」
 その上、格好はメイドさん。
 何が出てくるか分からないのは、静香さんの性格から予想済みだったけど……それを予想できたところで、実際に何が出てくるかなんか結局分からないわけで。
「……っ!」
 着弾と同時に、黒と銀の嵐が襲い来る。横殴りの暴風が吹き荒れる中、ココは大きくバックジャンプで距離を取り。
「今だっ!」
 振り抜き止まった隙を突き、一気にトリガーを引き絞る。
 射撃音は、二つ。
 ココのハンドガンと。
 動きを止めたノリのガンランス。
「きゃああっ!」
 ランスの先端にいたのは、回り込もうとしていた花姫だ。
「花姫っ!」
 小径の弾を撒き散らすバードショットとはいえ、数も多いし何より至近距離過ぎた。鋼の弾幕の直撃を受け、花姫はポリゴンの欠片と消え……。
 ココの射線上にさらされていたはずのノリは、ダメージを受けていない。
「……これにもバリアかよ!」
 ココの弾丸を受け止めたのは、いつの間にか外されていた真っ白なエプロンだった。
 けど、ミニスカートのバリアはそれほど長く保たなかった。予想通り、エプロンから放たれるフィールドの燐光がゆらりと揺らぎ、受け止められていた弾丸がポロポロとこぼれ落ち始める。
「……ちぃっ!」
 サイドステップでエプロンのフィールドを抜ければ、ココの前にいたのは真っ黒なカクテルドレスをまとうノリコの姿。
 ムチャクチャ可愛かったけど、その感想は後回し!
「これで……!」
 瞬間、ココの前に広がるのは大きな布のフィールドだ。どうやらロングスカートにもバリアが仕込んであったみたいだけど……。
「さっきと同じ目くらましだ! 一気に……」
 決めろ、というより一秒早く。
 ココとバリアをまとめて貫いたのは、研ぎ澄まされたガンランスの穂先と……。

 そこから零距離で放たれた、竜撃砲の一撃だった。



 ココさんの姿が、ポリゴンになって消えていきます。
「あの……静香、さん?」
 私はガンランスを呆然と構えたまま。竜撃砲の冷却口からゆっくりと立ちのぼる煙だけが、時間が過ぎている事を教えてくれています。
「なぁに?」
「えと……勝っちゃい、ました」
 ロングスカートを目隠しにして、ココさん目掛けて一気に移動。有効な攻撃モーションは登録されていなかったので、武器を正面に構えただけの全力移動です。
 その動作を指示したのはもちろん静香さんだけど……まだ手の中には、竜撃砲のトリガーを引き絞ったときの感覚が残ったまま。
「そうね。ココは後で、おしおきかなぁ」
「え? あの、その……」
 静香さんの楽しそうなひと言に、ガンランスががらりと転がって。
「あんまりひどい事、しないであげて下さいね」
 私の言葉に静香さんはくすくすと笑ってる。
「ココはそういうの好きだから、平気よ」
 やっぱり良く分からないな、静香さんは。
 とりあえず、戦闘はおしまい。前髪の形になっているバイザーを引き上げて、空を見上げてみる。
 峡次さんに、良いところ……見てもらえた、かな?
「じゃ、戻ってきて。マスターにその服、お披露目しないとね」
「え……?」
 カクテルドレスからさらに切り替わった、今の私の格好は……。
「いや、あの、ちょっと、静香さんっ!?」
 ライブラリには、バニーガールってあるんですけど!?



「負けちゃい……ましたね」
 ココの言葉に、返す言葉が見つからない。
 負けた。
 ファーストのココとセカンドの花姫が、二人がかりでバトルド素人のノリに。
 装備差のあるハンディキャップマッチだったとは言え……彼女達ほどの戦闘経験とコンビネーションがあれば、その差を埋めることは簡単だったはず。
「……だな」
 最後のあの一瞬、もう一秒早く判断を下せていれば。
 それ以前に、花姫の動きをもう少し気にしていれば。
 神姫の戦いを生かすも殺すもマスター次第。マスターの指揮次第で、素人のノリだって、ファーストのココに勝てる可能性は……出てくるって事だ。
「お疲れさま」
 コンソールに掛けたまま呆然としていると、筐体の向こうから静香さんがやって来た。
「あの……静香」
 不安そうに静香さんを見上げたココに、静香さんはこの上なく幸せそうな笑顔を向けて……。
「ココ、帰ったらおしおきだからねー」
 あ、ココがうなだれてる。
「ねえねえ、静香ちゃん。わたしにはー?」
「ふふっ。姫にも、おんなじ事してあげるからねー」
「ちょっと静香っ! 花姫にそんな事しないでくださいっ!」
 ココは妹が可愛いくてたまらないんだろうな。俺も実力が付いてお金が貯まったら、ノリの妹を引き取るのも悪くない……かもな。
「静香さん。今日のアレは、俺の指揮力不足なんで……。だから、あんまりひどい事……しないであげてください」
 特に花姫は何か良く分かってないみたいだし。
「ふふっ。ノリコちゃんにも同じ事言われたわ」
 ココを拾い上げてスーツの胸ポケットに収めながら、やっぱり静香さんは笑顔のまま。それはココにおしおき出来る事が嬉しいのか、俺とノリが同じ事を言ったのが可笑しいのか……それとも。
「ほら、ノリコ。いらっしゃいな」
 その向こうに立つノリコの姿を見た、俺の顔が変だったからか。
「あの……峡次、さん」
 長い黒髪とドレスの裾をゆらりと曳いて。
 黒髪のノリコは、恥ずかしそうに前髪を上げてみせる。
「戸田さん」
「はい。パターンも持ってきましたから、話は向こうで」
 そして静香さんとスタッフの人たちが、部屋の向こうに姿を消して……。


 ノリは、コンソールにちょこんと腰掛けて黙ったまま。
「…………」
 俺も正直、言葉が出ない。
「…………」
 普段静かなのは気にならないのに、何でこういう時の沈黙は気になって仕方ないんだろう。
 えーと、まずは……その、なんだ。
「…………似合ってるな、それ」
「ありがとう……ございます」
 蚊の鳴くような、ノリの声。
 目深に下ろした前髪の隙間から。ちらりとこちらを見上げる視線が、びっくりするほど可愛くて……。
「……それ、バイザーも兼ねてるんだ」
 いや、褒めろよ、俺。
「はい。静香さんが、いつものバイザーよりもこっちのほうが似合うだろうって……。準備してくれてたみたいです」
 静香さん。あなたのセンスは間違ってません。思いっきりストライクです。それどころかホームランです。ハンバーグです。
「基本的な機能は同じですけど、センサーの感知半径は三割くらい上がってるんですよ」
「そうなんだ……」
 そうなんだじゃねえ!
 ノリの可愛さは百倍になってるんだから、その辺りを言ってだな!
「あと……何だ。お前、あんなに強かったんだな」
 うう……。自分の神姫も褒められない不甲斐ないマスターですまん、ノリ。
「そんなこと、ないです。あれは静香さんの指示が……あ」
「……いや、分かってるからいいけどな」
 神姫を生かすも殺すもマスター次第。
 たぶん今の俺じゃ、静香さんみたいにノリの力を完全に引き出すことは出来ないだろう。
「……ごめんなさい」
 言葉に、ならない。
 謝るのはむしろ、こっちの方だ。
「……峡次さん?」
 もう洒落たことを言うのは諦めて、ノリの頭を軽く撫でてやる事にする。
「……頑張ったな。その格好もすごく似合ってる。可愛いよ……ノリ」
 …………。
 ノリの小さな頭に触れているだけで、思っていた言葉がすっと出た。
「俺……頑張るから。俺の指揮でも、ノリがあれくらい戦えるように」
 なんだ。初めからこうすれば良かったのか。
「……はい。私も、峡次さんの指揮で戦いたいです」
 手の平に預けられる、小さな体の大きな重み。
 この子を受け止められるくらいには、立派なマスターにならないとな。
「あと、私の服も何とかなったんですから……ご飯、ちゃんと食べてください」
「……そうする。ネギばっかりももう飽きたし」
 その前に、神姫に心配されないマスターになるのが先か……。まだまだ遠いなぁ。
「そうですよ。心配するこっちの身にもなって下さい」
 バイザーを上げて拗ねてみせるノリに、思わず笑顔が浮かんでしまう。
「そこ、笑うところじゃないですよー」
 それでも笑っていると、静香さん達が戻ってきた。
「だいたい話はまとまったわ。今日は助かったわ、ありがとね」
 香田瀬さん達も明るい表情なあたり、話し合いは上手くまとまったらしい。
「いえ、こちらこそ良い勉強させてもらいました。でもホントにこの服……もらっちゃっていいんですか?」
 確かにそういう条件だったし、俺もノリコの服は喉から手が出るほど欲しいけど。
 俺もノリもこんな戦いを経験させてもらって、そのうえ静香さんのこれだけ気合の入った服までもらっては……割に合わない気がする。
「そういう約束だったし、ココはこの手の服着ないしね」
「ですね」
「……私は着るよ?」
 ぽろりと出て来た花姫の本音に、思わずみんなが吹き出してしまう。
「それに、それだけ似合ってるんだもの。もともと試作品だし、いまさら返せなんて言わないわよ」
 ひとしきり笑った後、静香さんは目尻の涙を拭いつつ。
「とはいえ、それってサードのレギュレーションに合わないんだけどね」
「…………え」
 言われてみれば、確かにそうだ。
 あれだけのスティレットに電磁バリア、強化型センサーにガンランス。その他諸々のギミックも込みなら、ヘタしたらその辺のフル装備神姫よりも重武装になってしまうわけで。
「冗談よ。いや、サードに合わないのはホントだけど……峡次くんへの報酬は、こっち」
 そう言って差し出してくれたのは、鞄に入っていた小さな袋だった。
 中を見てみれば……。
「試作品ばっかりで悪いけど。全部バトル対応だから、少しは似合うのもあるでしょ」
 ぎっしりと詰まった、布服やスカートの束だった。
「いいんすか!?」
 むしろ、ノリのドレスよりもはるかにありがたい物だ。
 けど……。
「どうしたの?」
 首を傾げる静香さんに、俺はその服の束をそっと差し出した。
「やっぱり、これじゃなくって……ドレス、ください」
「峡次さん……?」
「ノリに似合ってるんで。バトル用の服は、俺が金貯めて何とかします」
 多分、この服が商品化されても……ノリとの思い出の服とは違ってしまうはずだ。
 だったら、今しか手に入らない……そして、短いながらもノリとも大切な思い出になったこの服を手に入れる方が良い。
 サードでは着られなくても、やがて辿り着く、ファーストリーグで使うために。
「峡次さん……」
「あー。ええっと……ね」
 そんな俺の言葉に、静香さんは何とも言えない微妙な表情をしてみせる。
「……何すか?」
 うぅ……クサい台詞なのは、言った後で気付いたんですから勘弁してください。
 自覚してますから。
「凄く良い台詞なんだけど……さっきの余り物の服は、あたしからのお礼ね」
 ですよね。
 分かってます。
「で、その試作品は、ウチからの謝礼代わりなんだけど」
 ……は?
「バイト代出せなくて、ゴメンな」
「いや、それはいいんですけど……」
 じゃあ、さっきの俺の台詞って……。
「あと、なんか良い台詞の後に言う感じになっちゃって、ゴメンね」

 クサい台詞言い損じゃないですかーっ!





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