「白の女王」(2007/05/13 (日) 23:19:33) の最新版変更点
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白。
純粋を表す白。
純潔を表す白。
白。
無邪気を表す白。
無慈悲を表す白。
白。
高潔を表す白。
虚無を表す白。
白。
それは雪の色。
それは無の色。
白。
それは始りの色。
それは終りの色。
白。
それは限り無い光。
それは終り無い闇。
白。
白。
白。
純粋故に残酷。
無邪気故に残虐。
高潔故に孤高。
雪と共に始まり。
無と共に終わる。
それは白。
黒にして、白。
ここは、空に包まれた世界。
青に包まれた世界。
青が満ちる世界。
何所までも何処までも青く、ただ青い空。
其処には雲も無く、風も無く、太陽も無く。
在るのは無限の青。
不気味な程の、蒼。
青の下の世界もまた、青。
それは青い大地。
堕ちた太陽に焼け熔かされた硝子の大地。
空の青を映し出す硝子の大地。
本来の姿を忘れた大地。
本質を捻じ曲げられた哀しい大地。
触れれば割れる脆い大地。
バトルフィールド「ソラーステド・ヒース」又の名を、焼野。
空の青と硝子の青に包まれた戦場。
青い戦場。
二つの青を引き裂いて二つの白い影が舞う。
一つは天使。
純白の身体と純白の翼を持つ天使。
白馬の名を持つ白い神姫、アーンヴァル。
一つは悪魔。
純白の体と純白の腕と純白の脚を持つ悪魔。
白刃で武装する白い神姫、ストラーフ。
煌―――。
白いストラーフの持つ白い刃、アンクルブレードが空中に白い軌跡を残す。
その一寸先にいるアーンヴァル、その喉元を狙う白い斬撃。
アンクルブレードは斬突両用武装であるが、その威力は特筆するまでも無い。
軽装のアーンヴァルと言えど、腕に付いた防御用装備であらば貫く事は叶わない。
しかし、その切っ先が素っ首に向いているのなら話は別だ。
アンクルブレードの細い刀身はアーンヴァルの細い首を難無く刎ねるだろう。
現につい先刻、アーンヴァルは首を刎ねられかけた。
アーンヴァルは二対の白翼をはためかせると急速に高度を上げる。
地上戦主体のストラーフから距離を取り体制を立て直す考えだ。
「首を刎ねよ」
声が響く。
戦場に置いて不相応な声音で、戦場に相応しい言葉で。
首を刎ねよ、と。
高く甘い声で。
冷たく無慈悲な声で。
その声を搔き消すように硝子の大地が粉砕される。
ストラーフが大地へと落下したのだ。
「首を刎ねよ」
声を搔き消すように硝子の大地が悲鳴を上げる。
ストラーフが純粋な脚力のみで大地を蹴った、その結果だ。
そして、その反動でストラーフの身体は中空へと向かう。
硝子の破片を撒き散らしながら、無窮の空へと挑むように。
白い身体は突撃槍の様に、真っ直ぐアーンヴァルへと向かう。
「首を刎ねよ」
その声に従い、ストラーフは背中のフルストゥ・グフロートゥを投擲する。
二つの刃は凄まじい速度で回転し、大きな弧を描きながら飛んだ。
それは左右からアーンヴァルへ迫り、そして虚空を切り裂く。
アーンヴァルは迫るフルストゥ・グフロートゥを上昇する事で回避した。
飛行能力の無いストラーフに対し、上昇するというのは理に叶ってると言えた。
「首を刎ねよ」
アーンヴァルの考えは甘かった。
上昇した先にあったのは投擲されたフルストゥ・クレイン。
白い片翼は無残にも引き千切られた。
そして、堕ちる。
しかし、千切れたのは片翼のみ。格好は悪いが飛べない事は無い。
そう思考し、体勢を整えようとしたその先にあるのは、もう一振りのフルストゥ・クレイン。
アーンヴァルのもう片翼もまた、引き千切られた。
完全に翼を捥がれた天使は、堕ちる。
蒼天から大地へと。
「首を刎ねよ」
否。
堕とされる。
「―――ぁ」
アーンヴァルの首に白い刃が貫き生えた。
その袂にいるのはストラーフ。
白馬に跨る騎士の様に。
そして、堕ちる。
白い尾を引く流星の様に。
硝子に映る自分へ向かい、まるで引き寄せられるように。
堕ちた。
大量の硝子の破片が巻き上げられる。
それは一瞬の後に雨の如く舞い降りる。
がしゃり、がしゃりという音の連鎖。
「首を刎ねよ」
アーンヴァルの首にもう一つの白い刃が生えた。
「首を刎ねよ」
ストラーフは両の手に握ったアンクルブレードに力を込める。
「首を刎ねよ」
そして、左右に薙ぎ払う。
血飛沫の代わりに白いデータの飛沫が飛ぶ。
さながら雪が舞うように、それは飛んだ。
罅割れた硝子の大地に姿が映った。
二対の翼を持つ天使。
二対の腕を持つ悪魔
地に臥す白い天使。
地に立つ白い悪魔。
堕ちた白い天使。
反逆の白い悪魔
白。
それは自由の色。
白。
それは自我の色。
白。
それは狂気の色。
白。
それは反逆の色。
白。
白。
白。
それは白の女王
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