次女の生い立ち、遠くて近き過去
暑苦しい夜が訪れる。地下は常に快適な物、と思いきや気を抜くとすぐに
湿っぽくなるので、この時期は空調をしっかりしないと寝苦しいのだな。
とは言え過度に湿気を取り去ると、今度は肌や髪によろしくない。神姫の
人工毛髪も、その影響を受けてしまう。私・槇野晶は勿論、“妹達”にも
気を遣い設定は厳密にしてある……だが、日々のコンディションもある。
湿っぽくなるので、この時期は空調をしっかりしないと寝苦しいのだな。
とは言え過度に湿気を取り去ると、今度は肌や髪によろしくない。神姫の
人工毛髪も、その影響を受けてしまう。私・槇野晶は勿論、“妹達”にも
気を遣い設定は厳密にしてある……だが、日々のコンディションもある。
「今晩は、こうか……よし、エアコンの設定終わりッ!寝るか……」
「──────なら、ロッテお姉ちゃんが神姫として産まれたのは」
「ええ、その暫く後なんですの。リーグ登録は昨年末ですけどね?」
「意外と昔から、なんですね……あたし達の中にある“コレ”って」
「──────なら、ロッテお姉ちゃんが神姫として産まれたのは」
「ええ、その暫く後なんですの。リーグ登録は昨年末ですけどね?」
「意外と昔から、なんですね……あたし達の中にある“コレ”って」
……部屋に入ろうとした所で、何やらロッテ達の会話が聞こえてくる。
否、それは寝物語という感覚の物であり……ロッテがアルマとクララに
語り聞かせている所の様だ。にしても“あの事”を人に語るとは……。
ロッテも心の底からアルマとクララを信頼するに至った、という事か。
否、それは寝物語という感覚の物であり……ロッテがアルマとクララに
語り聞かせている所の様だ。にしても“あの事”を人に語るとは……。
ロッテも心の底からアルマとクララを信頼するに至った、という事か。
「はい。プロトタイプCSCは“その人”から、マイスターの手へ」
「そしてその一つが、ボクの場合は納品時在庫不足の代替品として」
「あたしには二つ……“手術”を受けた時に、修理用部品として?」
「そうですの。そしてわたしは、マイスターの意志で残りの三つが」
「これも奇跡、かもしれませんね……マイスターの願い通りですし」
「そしてその一つが、ボクの場合は納品時在庫不足の代替品として」
「あたしには二つ……“手術”を受けた時に、修理用部品として?」
「そうですの。そしてわたしは、マイスターの意志で残りの三つが」
「これも奇跡、かもしれませんね……マイスターの願い通りですし」
そう。彼女らの一部または全部のCSCは、バージョンが僅かに古い。
六つの宝石名を冠する現在の普及型CSC……それの最終期試作品だ。
それを得た理由か……すまんな、まだ話したくはない。だが、使用した
理由は先程彼女ら自身が復唱した通り。特に彼女らを強化しようとか、
邪な企みが有る訳ではない。CSCの性能だけなら、むしろ弱い位だ。
唯一部品としての目立つ特徴を上げれば、無色透明である事ぐらいか?
六つの宝石名を冠する現在の普及型CSC……それの最終期試作品だ。
それを得た理由か……すまんな、まだ話したくはない。だが、使用した
理由は先程彼女ら自身が復唱した通り。特に彼女らを強化しようとか、
邪な企みが有る訳ではない。CSCの性能だけなら、むしろ弱い位だ。
唯一部品としての目立つ特徴を上げれば、無色透明である事ぐらいか?
「うん。人の良き友、マイスターの良き妹……ボクらの本懐だもん」
「マイスターは照れ屋ですから、まだ人に話せないと思いますの♪」
「でも、何時か知らなきゃいけない事ですしねぇ……良かったです」
「……ふふ。すまんなアルマ、まだ事の全てを語り尽せぬ弱い姉で」
「マイスターは照れ屋ですから、まだ人に話せないと思いますの♪」
「でも、何時か知らなきゃいけない事ですしねぇ……良かったです」
「……ふふ。すまんなアルマ、まだ事の全てを語り尽せぬ弱い姉で」
皆が『マイスター!?』と驚く。私が聞いていると、思わなかった様だ。
声を掛けた事で堂々と出られる様になった私は、皆の側……私のベッドに
腰掛けて、ロッテに続きを促す。柔らかく微笑んで、彼女は一つ肯いた。
声を掛けた事で堂々と出られる様になった私は、皆の側……私のベッドに
腰掛けて、ロッテに続きを促す。柔らかく微笑んで、彼女は一つ肯いた。
「そのCSCを得たマイスターは、神姫と人の共存を願っていたですの」
「そう。それを立証せんが為、体現せんが為に……ロッテに用いたのだ」
「じゃああの……マイスター?もしも、ロッテちゃんの姉妹が別の……」
「ボクらじゃない別の新しい神姫でも、残りのCSCは使ったのかな?」
「そうだな。だからこそ、お前達に継承できた事は幸運だったと思うぞ」
「そう。それを立証せんが為、体現せんが為に……ロッテに用いたのだ」
「じゃああの……マイスター?もしも、ロッテちゃんの姉妹が別の……」
「ボクらじゃない別の新しい神姫でも、残りのCSCは使ったのかな?」
「そうだな。だからこそ、お前達に継承できた事は幸運だったと思うぞ」
そう。仮に居たとしたならば……だが、当初その予定は無かった。この
CSCを以て人との友好が体現できれば、それで十分だと思っていた。
だからこそ残り三つがアルマとクララに継承された事は、幸運なのだ。
ある種の“運命”であり……結ばれるべき“紅い糸”だったのだろう。
既にアルマとクララの二人以外に、ロッテと私の姉妹は考えられない。
CSCを以て人との友好が体現できれば、それで十分だと思っていた。
だからこそ残り三つがアルマとクララに継承された事は、幸運なのだ。
ある種の“運命”であり……結ばれるべき“紅い糸”だったのだろう。
既にアルマとクララの二人以外に、ロッテと私の姉妹は考えられない。
「時はまださして流れていないが、それでもお前達は立派な“妹”だ」
「……あ、有り難うございますマイスター……あれ、目がぼやけてる」
「アルマお姉ちゃん、泣いてるのかな。でも、本当に嬉しいもんね?」
「もう、二人ってばしょうがないですの~♪……それなら、えいっ♪」
「……あ、有り難うございますマイスター……あれ、目がぼやけてる」
「アルマお姉ちゃん、泣いてるのかな。でも、本当に嬉しいもんね?」
「もう、二人ってばしょうがないですの~♪……それなら、えいっ♪」
ロッテに抱きしめられ、慌てる二人を見つつ思う。何時か、全ての過去を
話せる時が来たら、すぐに話そう……とな。私自身も彼女らにも、若干の
痛みを伴う事件なのだがな……だが、知らぬ方がいい事実とは思えない。
真に“姉妹”ならば、時間は掛かってもお互いの全てを晒け出すべきだ。
今すぐ言えぬ己の弱さを痛感しつつ、私は服を脱ぎ……こら、見るな!?
話せる時が来たら、すぐに話そう……とな。私自身も彼女らにも、若干の
痛みを伴う事件なのだがな……だが、知らぬ方がいい事実とは思えない。
真に“姉妹”ならば、時間は掛かってもお互いの全てを晒け出すべきだ。
今すぐ言えぬ己の弱さを痛感しつつ、私は服を脱ぎ……こら、見るな!?
「あ、マイスター……もう寝ちゃうんですか?いつもより、早いですよ」
「有無。今日の作業は終了したし、明日はアルマのバトル予定だろう?」
「あっ、そうでした!?……あたしの“魔剣”を成長させるんでしたね」
「にしても、アルマお姉ちゃんの剣は……どんな能力持ってるのかな?」
「有無。今日の作業は終了したし、明日はアルマのバトル予定だろう?」
「あっ、そうでした!?……あたしの“魔剣”を成長させるんでしたね」
「にしても、アルマお姉ちゃんの剣は……どんな能力持ってるのかな?」
そう言い、クララがアルマの“和室”を見る。床の間モドキの台座には、
未だ一度も鞘から抜けぬ魔剣・エルテリアが静かに佇んでいた。意外にも
自分だけ使えぬ事実に、アルマは凹んでいない。曰く『魔剣の主張』故。
どうやらロッテのライナスト・クララのコライセル以上に、エルテリアは
明確な“自意識”を備えているらしいのだ。琥珀め、なかなかやる物だ。
そう言えば、コネを頼り解析に出した“四本目”……アレは何だろうな。
未だ一度も鞘から抜けぬ魔剣・エルテリアが静かに佇んでいた。意外にも
自分だけ使えぬ事実に、アルマは凹んでいない。曰く『魔剣の主張』故。
どうやらロッテのライナスト・クララのコライセル以上に、エルテリアは
明確な“自意識”を備えているらしいのだ。琥珀め、なかなかやる物だ。
そう言えば、コネを頼り解析に出した“四本目”……アレは何だろうな。
「それは……まだ言えません。認めるまで使わせない、って話ですし」
「なら、一刻も早く認めてもらえる様に頑張ってみるといいですの♪」
「もちろんそのつもりですッ。明日は勝ちますよ、CSCに誓って!」
「誇らしき水晶の魂、“プロト・クリスタル”に誓って……なんだよ」
「その意気だぞ皆!さぁ、寝ようか。明日は朝から気合を入れようぞ」
「なら、一刻も早く認めてもらえる様に頑張ってみるといいですの♪」
「もちろんそのつもりですッ。明日は勝ちますよ、CSCに誓って!」
「誇らしき水晶の魂、“プロト・クリスタル”に誓って……なんだよ」
「その意気だぞ皆!さぁ、寝ようか。明日は朝から気合を入れようぞ」
……会話の隙に、お気に入りのパジャマへ着替えた私がブランケットを
羽織る。それと並行し、お揃いの寝間着を着た三人も、東杜田技研製の
“ふたごのおひめさま”と特製の増設クレイドルに入り、眠りに就く。
和室で寝る時も有れば、こちらで寝る時もある。要はその日の気分だ。
羽織る。それと並行し、お揃いの寝間着を着た三人も、東杜田技研製の
“ふたごのおひめさま”と特製の増設クレイドルに入り、眠りに就く。
和室で寝る時も有れば、こちらで寝る時もある。要はその日の気分だ。
「こうして、何時までも一緒に寝られるといいな……じゃあ、おやすみ」
「はい……♪おやすみなさいですの。アルマお姉ちゃん、クララちゃん」
「そうだよね、可能な限りずっと一緒に……おやすみなさい、なんだよ」
「おやすみなさいっ……ずっとずっと、行ける所まで生きたいですね♪」
「はい……♪おやすみなさいですの。アルマお姉ちゃん、クララちゃん」
「そうだよね、可能な限りずっと一緒に……おやすみなさい、なんだよ」
「おやすみなさいっ……ずっとずっと、行ける所まで生きたいですね♪」
──────もう二度と失いたくないから、だから一緒だよ。