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 第八幕。上幕。


 ・・・。
 彼女が大学の冬季休みを利用し、そこに足を運んだのは12月も末近くになってからだった。
 朝十時の開店。それを待っていた十と数人の人が自動ドアをくぐる。それらの客の共通点と言えば。
「神姫連れやな・・・」
「はい」
「ウチ含めて」
 当たり前っちゃぁ当たり前やねんけど・・・と苦笑気味に続けながら。
 ピアスで賑やかな耳の隣に座る、寒くは無いのだろうが、冷え性が多少はある彼女にしてみれば羨ましい限りの・・・いつもと変わらぬ様子のパートナーを見やる。
 彼女らはその流れに乗らず、人が入り口付近からいなくなるのを見届けた。
「はい・・・」
 オレンジ色のコートに身を包んだまま、吹き抜けた寒風に身を竦ませる主。

 アキが吐き出した白い息が舞い上がるのを愛しげに追うようにして。ルクスはその建物を見上げた。決して超高層という訳でもない、そして超大型の建物という訳でもない。
 だが、それが『目的地』であるとすれば。それは確かに予想を超えている。


 いらっしゃいませ、というインフォメーションからの電子音声を聞きながら寒空の下から暖房の効いた室内へ。急な寒暖の差のせいで曇ってしまった眼鏡をクリーナーで拭きつつ、そこに足を踏み入れたアキは。思わず足を止めた。
「・・・おおーっ」
 驚いた様子で洒落た赤縁の眼鏡をかけなおしながら、二階吹き抜けになっているセントラルコートの中心近くで上階を見上げる。

 正面メインゲート付近。
 陽光が、色とりどりのクリアグラスで円状に設計された外壁を透け、ホールの中にそのまま光を落としている。
 元よりこの地点で見上げることを前提としているデザインなのか、重なり合う正八角形を象った二つの階層の周縁廊下は、中央エスカレーターの中心に作られた大時計を中心に、各店舗のライティングを反射して万華鏡のように輝いていた。

 朝十時という時間的には仕方がないのか。正面の、本来はライブ中継用のグランドモニターであろう其処には、いつしかのバトルのリプレイが映されている。まだ朝方である事もあってか、そこは決して混み合っている訳ではなかった。
 無論、込み合うといっても公式大会が行われでもしない限り、通常のデパートよりも決して人の出が多い訳ではなかろうが・・・。


「よくまぁ、こんなん作ったなぁ」
「ここが全て・・・神姫の店ですか?」
 感嘆と呆れが入り混ざった声に、肩に乗るルクスも驚きを隠せずに言う。
 彼女としては出来うる限り、常どおりの冷静を装おうと努めているようであるが。その声からは驚きだけではなく、興奮も見え隠れしていた。
「そやね」
 それこそオープン当日からずっと気にはなってはいた。が。学業に趣味に、そして・・・『挑戦』にと。色々と忙しい日々を送っていたアキにしてみれば、多少神姫繋がりの仲間内では出遅れた感がある。
 色々とあって。ようやく来ることが出来た場所だ。

 今まではデフォルトの物を使っていたが、早めのクリスマスプレゼント選びという意味もあり・・・酷く恐縮するルクスを説得する形で。 新しいクレイドルを買ってあげよう・・・どうせなら、一番の品揃えのある場所で選ぼうと。
 わざわざ此処までやって来た。
(しっかしまぁ。予想以上やな)
 エスカレーター前の案内板で、クレイドルの取り扱いが三階である事を確認しながら。アキは落ち着きなさげに、しかし決して嫌そうでも無く、口元に小さく笑みさえ浮かべて周囲をキョロキョロと見回しているルクスに気付いた。
「・・・ルクス?」
「あ、はい」
「クレイドルだけやなくて・・・色々、見てまわろっか?」
 そう嬉しげに笑うアキの顔を見て、恐らくは自分が間抜けな顔を浮かべていた事に気付いたのか。
 しかし赤面しながらも、彼女はコクンと頷いた。

 神姫センター・摩耶野市店。数ある神姫センターの中でも、ここと並ぶ物はそうそうは存在しえないだろう。
 通称「神姫デパート」と呼ばれる大型ショッピングセンターである。


 たっぷり時間をかけて・・・それこそルクスの普段の姿からは余り想像しがたいと言えば失礼か。随分と可愛らしいデザインのクレイドルを選び、クリスマスに届くように予約して。
 彼女らは早めの昼食がてら、少し休憩しようとレストラン街がある五階に向かう事にした。

 エスカレーターに運ばれる形で実質的な最上階であるその階に到着した途端。
「へぇ?」
 その中央部にある装置を見て、アキは意外そうな声を上げた。
 大きなBMAのロゴが染め抜かれた数台の筐体。その上に設置された大型半球タイプの立体モニターに映し出されるグラフィックは、一般的なアミューズメントにある物とは別物と言っても良い程に高クオリティを誇る。
 が、アキは無言のまま。しかし小さく不敵な笑みを浮かべただけだった。

 一瞥だけくれて当初の目的どおり、一つの中華レストランを探し出す。
「うん。ここ、ここ」
「美味しいのですか?」
「キョウコが言ってたんなら確か・・・とは思うけど。アイツ、辛党やしなぁ」
 ケータイで受け取ったメール。それで店名を確認しながら、その暖簾をくぐった。


 多少は辛口ではあったが、存分に噂通りの昼食を堪能し。
 本格的な買い物を済ませて彼女らが一階まで戻ってきたのは午後二時近くになってからだった。学生にしてみれば冬期休暇中とはいえども平日の昼間で昼食時を過ぎている。客はそこそこといった所か。
 アキは設けられている喫茶コーナーの一角に座り、セルフサービスのカップコーヒーだけを前にして、思いのほか少ない荷物を覗き込んだ。
「ふーん、随分買い込んだつもりやけど。流石に神姫サイズとなると・・・」
 手提げの大きくも無い紙袋一つに納まった商品をガサガサと鳴らして見せる。色々買ってもらい、少々恐縮していたルクスが苦笑した。
「はい。それが人間の物なら。きっと両手で持ちきれるかどうかでしょう」
「ま、サイズがサイズやしねぇ」
 腕時計に目をやり、眉を少し顰める。
「結構にハンパな時間やなぁ。まぁ、これでルクスのは終わって、明日にでもウチの・・・。・・・」
「マスター?」
「・・・なんや?」

 耳に僅かに届く楽曲を、アキは聞き逃さなかった。
 店内に小さく流れているミュージックに、別の音楽が混ざって聞こえる。
 そしてそれは、確かに彼女が聞き慣れた『音』で奏でられていた。

「?」
 見れば、何やら向こう端のテーブルで数人の人だかりが出来ている。
 アキの視点を追いかけたルクスも首を傾げ、ちらりと肩越しに問いかけた。
「・・・行って、みますか?」
「当然」
 渡りに船の声に、面白そうな事には首を突っ込む主義である彼女は即答する。ルクスを肩に乗せて、荷物を持ってそちらにそそくさと足を進めた。
 近づくにつれて大きくなる音楽。それは・・・。
(なるほどぉ。これは・・・)
 ようやく彼女は聞きなれた音の正体が解ってきた。
 人が群がっているというレベルではないので、決して背が高くない彼女でも簡単にその人の間から、その先を見る事が出来る。ひょいと顔を覗き込むと。


 たん、たん、たたん。
 小さな小気味良いリズミカルな音と共に。明らかに周囲とは異質な光景が、視界に飛び込んできた。
「・・・っ?」
 ルクスの『視界』に。確かに光景以外の『何か』が入ってきた。それが何か解らないまま、しかし彼女はそれに目を奪われる。アキはその様子に気付いた素振りはない。
(・・・何だろう? この・・・)
 ふっと。その視線の先。ある一点に焦点は留まった。


「・・・」
 ダウンコートを椅子にかけた・・・高校生だろうか? 多少大人びた印象はあるが。しかし幼さが残る少年が座っている。
 恐らくは彼の物だろう。このような喫茶コーナーにしては珍しい木製テーブルに乗せられた黒いケータイ。見事なダンサーと飾り蝶が彫られている銀のストラップが繋がれたそれの・・・アキも着信音楽などで聞きなれている、ポータブルミュージックスピーカーから流れ出る音楽に合わせて。
(うわぁ、美人サンやなぁ)
 そう。美しい、白い神姫が。テーブル中央で舞っていた。
「ルクス、あの子。アーンヴァルかな・・・?」
 小さな声でルクスに問うが返答が返って来ない。不思議に思って見ると、バイザーを下ろしたまま口を少し開き、唖然とした感で彼女はアーンヴァルから視線を逸らそうとしなかった。
 やれやれと肩を竦める。こういう方面には全くノータッチな彼女。一種のストリートライブに流石に驚きを隠せないのだろうか。

 その丁寧美麗にコートして揃えられた髪の色は、美しい山吹色。身を翻すたびに広がり、明るい光をはらみ、見事な舞いを更に彩る。

 ダイナミックな動作、指の先にまで行き届いた意識。丁度スポットライトのように照明に照らされるテーブルの中心。木製のその天板に、リズムを外れることなく刻まれていく軽快なステップ。スピーカーから流れ出る音楽の方が彼女に調子を合わせているのではないだろうかと勘繰りたくもなる程に・・・音と一体となって周囲全てを魅惑するダンス。
 時折、空中を指でつまむような動作は、きっとロングドレスを身に纏い、その裾を直しているのだろう。
「へぇ・・・」
 嬉しげにアキは思わず漏らした。
 これほどまでに見事な神姫のダンスは中々見た事が無い。おそらくは相当の練習があったのだろうが、だが。その神姫の表情は柔らかく笑みさえ浮かべている。
 そう。きっと彼女自身が選び、歩もうと決意した道。
 舞う事が、楽しそうだ。
(・・・本人が誰よりも)
 選んだ道はルクスとは全く違う。しかし、武装神姫シリーズが主流となる中、尚も。こういう道を選ぶ神姫もいるのだと思うだけで、アキは嬉しくなった。
「・・・」
 ルクスは尚も無言のまま顔を背けない。アキ自身も顔を戻す。音楽はやがて止み、その舞姫は着てもいないドレスの裾を少し指先で引き上げるジェスチャーを交えて一礼する。イメージ通りのロングドレス・・・恐らくは、観ていた者全てが同じ思いを共有しているだろう。
 小さな拍手の輪が出来、そのテーブルを囲んでいた数人が、マスターであろう少年に一言二言声をかけ、手を振りながら自身のテーブルに戻っていく。
 中の観客の一人であった青年が絶賛しながら財布からお金を渡そうとしたが、その舞姫が慌てて断っていた。


「ありがと! 良いの見せてもらったわ」
 人がいなくなった後、アキも少年とアーンヴァルに声をかけた。
「ありがとうございます」
「見てくれて、ありがとう」
 照れ恥ずかしそうに笑う少年と。にっこりと微笑み返す神姫。
 思わずこっちもにっと笑い返して、アキは恐らく既に冷めているであろうコーヒーがある、自分のテーブルに戻ろうとした。

 たっ、と。

 それに反するように、ルクスが肩からテーブルに飛び降りた。
「・・・ルクス?」
 彼女はじっと、フォートブラッグ特有のバイザーを下ろしたまま。舞い終わったばかりのアーンヴァルに向き合う。
「え?」
 舞い終わったばかりでまだ息が荒いが・・・首を少し傾げて、きょとんとする彼女に。緊張しているのか一度深呼吸をしてから。ゆっくりと近づいて行く。
「こらこらルクス、サインはあかんで? 向こうもそんなつもりじゃないやろうし」
 冗談めかして言うアキの言葉が聞こえているのかいないのか。そのままアーンヴァルの十数センチの前に立つ。
「・・・」
「何・・・かな?」
 無言を貫くルクスに流石に怖くなったのか、身を少し引きながらの声に。
「あ、すいません。いえ、お見事でした」
 ようやく自分が威圧感を出している事に気付いたのか。慌てるようにルクスは視線を地に向ける。
「うん? ありがとう」
「いえ、その・・・」
(・・・あぁ)
 苦笑した。何か祝福の声をかけようとしたのだが、慣れてない上に、あれほどの見事な舞。どうやら声が出てこないのだろうか。
 向こうのマスターの少年も気付いたらしく、思わず吹き出しそうになるのを堪えている。
 だが・・・。

 そのアーンヴァルは、何か違う事に気付いたのか。
 きょとんとしていた表情を引き締めて、じっとルクスに視線を向ける。
「・・・何か、あるんだよね?」
 茶化すつもりもないように、彼女ははっきりと問いかけた。


 アキは、その言葉に自分の神姫に目をやった。
(ルクス・・・?)
 言われれば確かに。何か様子は変だ。言葉が出てこないという感じではない。
 ルクスはじっとして動きを止めて、ただ、アーンヴァルを見続けている。

「いえ・・・仕方無い事です」
 しばらくの後、少し悲しげに言いながら首を振り、頭に手をやると。

 ようやく自分がヘルム、それもバイザーを下ろしたそれを被っている事に気付いたのか。ルクスは慌ててそれを手をかけた。
「も、申し訳ありません。これでは解るはずも・・・」
(『解る』・・・?)
 疑問符を浮かべるアキ。そして少年。
 ルクスがヘルムを取り、その臙脂に近い茶髪が踊る。
 そのまま。明るい光を照り返す、少し上気した・・・フォートブラッグのそれとは明らかに違う、透き通る水晶を思わせるような銀色の瞳で。彼女は真っ直ぐにアーンヴァルを見つめた。
 その『瞳』を認めたアーンヴァルの目が見開かれ・・・小さく「あっ」と声を零す。
「お初にお目にかかります。その・・・」
 目を合わせたのはいいが、困ったようにそわそわして。しどろもどろにヘルムを手の中で玩んでいたが、やがて・・・。
 目に薄く涙さえ湛えて、意を決したように彼女は声を続けた。
「『姉様』ですね」

 途端。
 身を委ねるようにして、アーンヴァルがルクスに抱きついてきた。
 ぎゅっと、両手を首に回して抱擁する。
「あ・・・っ」
 手から取り落とすヘルム。抱き受ける形になりながら、慌てつつ。しかしルクスは、そのアーンヴァルのしなやかな白い肢体を受け止めた。
「うん、うん! きっと・・・そうだよ!」
 嬉しそうに言う彼女と。何かを知っているのか、驚きと喜びが混ざった表情を浮かべる少年を前に。

 一人。意味が解らないままアキは、ただ。その光景を見守るしかなかった。


 季節は冬。
 身を刺す寒風吹き抜ける時。しかしそれもまた。
 時として導きの風となる。



 第八幕。一度下幕。
 続。






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