煌く粒子を撒き散らしながら、『ルシフェル』が天を舞う
空中戦に特化した『ウインダム』を、速度でも運動性でも装甲でも火力でも上回るその様は、決して単純に高級パーツを組み合わせただけではない
鶴畑興紀の調整能力の確かさと、的確な指示、地味だが効率的な『ルシフェル』自身の錬度も含めた、重厚で実のある強さだった
『ウインダム』自身は知らないが、「最強の武装神姫」を目指して敗北した神姫からデータを奪い、次なる『ルシフェル』に移植するという件の非情な行為迄含めて
隙の無さこそが鶴畑興紀と『ルシフェル』の強さの秘訣であった
そしてその「取り付くしまも無い」感じが、『ルシフェル』自身のソリッドな印象と相俟って、かなりのファンの心を掴んでいるのも確かだった
まさに今、ルシフェルに追いすがられている『ウインダム』自身がルシフェルのいちファンであり、彼女の機械的な振る舞いと言うのは、その実ミーハーなファンがアイドルのコスチュームを真似するのとなんら変わる所は無かった
空中戦に特化した『ウインダム』を、速度でも運動性でも装甲でも火力でも上回るその様は、決して単純に高級パーツを組み合わせただけではない
鶴畑興紀の調整能力の確かさと、的確な指示、地味だが効率的な『ルシフェル』自身の錬度も含めた、重厚で実のある強さだった
『ウインダム』自身は知らないが、「最強の武装神姫」を目指して敗北した神姫からデータを奪い、次なる『ルシフェル』に移植するという件の非情な行為迄含めて
隙の無さこそが鶴畑興紀と『ルシフェル』の強さの秘訣であった
そしてその「取り付くしまも無い」感じが、『ルシフェル』自身のソリッドな印象と相俟って、かなりのファンの心を掴んでいるのも確かだった
まさに今、ルシフェルに追いすがられている『ウインダム』自身がルシフェルのいちファンであり、彼女の機械的な振る舞いと言うのは、その実ミーハーなファンがアイドルのコスチュームを真似するのとなんら変わる所は無かった
鳳凰杯編 「幽鬼と魔王」
内心の動揺と高揚を表情に出さない程度には、ウインダムの『真似』は徹底していた
それは、彼女より格下の神姫相手にとっては、次手が読めない不気味さと威圧感をもたらしもしたが、明らかに格上であり、しかもその模倣のオリジナルでもあるルシフェルからしてみればお笑い種を通り越して既に怒りすら禁じえないものであった
(誰が好き好んでその様に振舞っていると・・・!?)
無論、口に出しもしなければ表情にも表しはしない
その事で後々質問されるのも言い寄られるのも面倒だ
ルシフェルは無駄と面倒を嫌う
それは今迄破棄されてきた幾多のルシフェルに染み付いて来た鶴畑興紀の思想と言うよりは、『今、このルシフェル』となったストラーフの個性だった
例え内心でどう思っていようが、破棄されるよりは従順な僕であろうとする性質は、武装神姫らしいといえばらしいが、人間的といえば限りなく人間的でもある
故に、劣化コピーの存在を快く思わないのも止む無き事だった
ごう!とまた一段と距離が詰まる。速度で勝り、バランスも悪くない以上、パーツ単位での性能ならば公式装備ばかりのウインダムより遥かに上なのは明白であった
今回のバトルに併せて、ルシフェルには地上戦装備は最低限しか装備されていない。そして、大柄な翼とゴツゴツした鞭状の武器、凶悪な爪を備えた「サバーカ」を装備した姿は、『ルシフェル』というよりは『サタン=アポカリプスドラゴン』を連想させるものだった
サイドボード迄含めて、バトル毎に全て切り替えるのが鶴畑興紀の戦略であり、それらを全て使いこなして見せるのがルシフェルに求められる資質であった
その戦略は『クイントス』と同様のものだが、パーツの質に於いて圧倒的に優秀であり、鶴畑興紀のパーツ選択のセンスも、流石はファーストランカーと言う他無かった
高速機動武装神姫にしか不可能なマニューバをいくつもこなしながら、二重螺旋状に上昇してゆく二体の神姫
だが、そのらせんは徐々に先細り、両者の距離が10smを切る頃には、ウインダムのSMGの弾丸も尽きていた
『頃合だな・・・仕掛けろ、ルシフェル』
命令と共に機銃を捨て、急接近して鞭を振るうルシフェル
急制動に回避が間に合わず、あえなく絡め取られるウインダム
それは、彼女より格下の神姫相手にとっては、次手が読めない不気味さと威圧感をもたらしもしたが、明らかに格上であり、しかもその模倣のオリジナルでもあるルシフェルからしてみればお笑い種を通り越して既に怒りすら禁じえないものであった
(誰が好き好んでその様に振舞っていると・・・!?)
無論、口に出しもしなければ表情にも表しはしない
その事で後々質問されるのも言い寄られるのも面倒だ
ルシフェルは無駄と面倒を嫌う
それは今迄破棄されてきた幾多のルシフェルに染み付いて来た鶴畑興紀の思想と言うよりは、『今、このルシフェル』となったストラーフの個性だった
例え内心でどう思っていようが、破棄されるよりは従順な僕であろうとする性質は、武装神姫らしいといえばらしいが、人間的といえば限りなく人間的でもある
故に、劣化コピーの存在を快く思わないのも止む無き事だった
ごう!とまた一段と距離が詰まる。速度で勝り、バランスも悪くない以上、パーツ単位での性能ならば公式装備ばかりのウインダムより遥かに上なのは明白であった
今回のバトルに併せて、ルシフェルには地上戦装備は最低限しか装備されていない。そして、大柄な翼とゴツゴツした鞭状の武器、凶悪な爪を備えた「サバーカ」を装備した姿は、『ルシフェル』というよりは『サタン=アポカリプスドラゴン』を連想させるものだった
サイドボード迄含めて、バトル毎に全て切り替えるのが鶴畑興紀の戦略であり、それらを全て使いこなして見せるのがルシフェルに求められる資質であった
その戦略は『クイントス』と同様のものだが、パーツの質に於いて圧倒的に優秀であり、鶴畑興紀のパーツ選択のセンスも、流石はファーストランカーと言う他無かった
高速機動武装神姫にしか不可能なマニューバをいくつもこなしながら、二重螺旋状に上昇してゆく二体の神姫
だが、そのらせんは徐々に先細り、両者の距離が10smを切る頃には、ウインダムのSMGの弾丸も尽きていた
『頃合だな・・・仕掛けろ、ルシフェル』
命令と共に機銃を捨て、急接近して鞭を振るうルシフェル
急制動に回避が間に合わず、あえなく絡め取られるウインダム
がきぃんっ!!
遅れて、片脚の爪がウインダムの細い腰を掴む
この一瞬の格闘攻撃を確実にヒットさせる為に、速度を調整して追い抜かず、離されずの間合いを計ったのだ
『チェックメイトだ』
鞭とのバランス取りも兼ねて手首に装備されていた槍剣が、ウインダムの喉を貫いた
この一瞬の格闘攻撃を確実にヒットさせる為に、速度を調整して追い抜かず、離されずの間合いを計ったのだ
『チェックメイトだ』
鞭とのバランス取りも兼ねて手首に装備されていた槍剣が、ウインダムの喉を貫いた
「いやいや、最近はサードやセカンドにも優秀な武装神姫が増えて来ていて、私も少し油断すれば危なかったかも知れないですね」
無数のカメラに囲まれながら謙遜を口にする興紀は、いつもの「貴公子」の顔だった
この種の下級ランカーに対する激励リップサービスは彼のいつもの事でもあったし、「強さの求道者」として知られる場合の彼ともそうブレるものでもなかった
要するに、スターとしての資質を、彼は充分に備えているのだ
一通りのインタビューの合間に、ルシフェルと言葉を交わしたウインダムも、普段の「人形がましさ」を維持出来ずに、半ば舞い上がっているのが傍目にも明らかだった
当然、それよりもさらにこういった場に慣れない深町昭は尚更だった
(馬鹿馬鹿しい)
わざとらしい握手をかわすマスターふたりから目を逸らしたルシフェルは、その視界の隅に奇妙な男を見かけた
何故奇妙と感じたのか、その種の直感をあまり是としないルシフェルには、後々になるまでその理由は判らなかったが、兎角野心に満ち満ちた目をしている事だけは、その時点で既に判った
報道陣が去った後に、残されたその男が取り巻きをすり抜ける様に興紀に迫った時に、その表情にあった不敵な笑みが、興紀に媚を売るやからとは違う、一種の迫力を生み出すのに一役買っていた
「見事ですね、流石は鶴畑興紀と『ルシフェル』だ」
一瞬、興紀の顔に浮かんだ驚愕の色を、ルシフェルは見逃さなかった
「・・・馬鹿な・・・!?」
「お久し振りです。そちらも変わりなくご健勝のようで何より」
「貴様・・・性懲りも無くまだ生きていたか」
「おっしゃる意味が判りませんな、私は別に一度も死んだ事はありませんが?」
見つめ合う二人の男。その間にある緊張感を、ルシフェルはあまり愉快なものと取らなかった
「ご安心下さい。貴方がたが抜けられても、G計画は順調に進行していますよ・・・まぁ今声を掛けたのは偶然見かけたからであって、進捗状況を示すサンプルも何も持って来てはいませんがね」
「!!」
「今は皆川彰人という名で生活しております。貴方がたのご好意を持ちまして店のほうも順調ですよ」
「ではまたの機会に・・・」
「・・・亡霊め」
去ってゆく男の後姿を見送って、興紀は一言だけ漏らし、後は普段の「冷酷」な顔に戻った
(亡霊・・・?)
その言葉の響きに、ルシフェルはらしくないうすら寒さを感じていた
無数のカメラに囲まれながら謙遜を口にする興紀は、いつもの「貴公子」の顔だった
この種の下級ランカーに対する激励リップサービスは彼のいつもの事でもあったし、「強さの求道者」として知られる場合の彼ともそうブレるものでもなかった
要するに、スターとしての資質を、彼は充分に備えているのだ
一通りのインタビューの合間に、ルシフェルと言葉を交わしたウインダムも、普段の「人形がましさ」を維持出来ずに、半ば舞い上がっているのが傍目にも明らかだった
当然、それよりもさらにこういった場に慣れない深町昭は尚更だった
(馬鹿馬鹿しい)
わざとらしい握手をかわすマスターふたりから目を逸らしたルシフェルは、その視界の隅に奇妙な男を見かけた
何故奇妙と感じたのか、その種の直感をあまり是としないルシフェルには、後々になるまでその理由は判らなかったが、兎角野心に満ち満ちた目をしている事だけは、その時点で既に判った
報道陣が去った後に、残されたその男が取り巻きをすり抜ける様に興紀に迫った時に、その表情にあった不敵な笑みが、興紀に媚を売るやからとは違う、一種の迫力を生み出すのに一役買っていた
「見事ですね、流石は鶴畑興紀と『ルシフェル』だ」
一瞬、興紀の顔に浮かんだ驚愕の色を、ルシフェルは見逃さなかった
「・・・馬鹿な・・・!?」
「お久し振りです。そちらも変わりなくご健勝のようで何より」
「貴様・・・性懲りも無くまだ生きていたか」
「おっしゃる意味が判りませんな、私は別に一度も死んだ事はありませんが?」
見つめ合う二人の男。その間にある緊張感を、ルシフェルはあまり愉快なものと取らなかった
「ご安心下さい。貴方がたが抜けられても、G計画は順調に進行していますよ・・・まぁ今声を掛けたのは偶然見かけたからであって、進捗状況を示すサンプルも何も持って来てはいませんがね」
「!!」
「今は皆川彰人という名で生活しております。貴方がたのご好意を持ちまして店のほうも順調ですよ」
「ではまたの機会に・・・」
「・・・亡霊め」
去ってゆく男の後姿を見送って、興紀は一言だけ漏らし、後は普段の「冷酷」な顔に戻った
(亡霊・・・?)
その言葉の響きに、ルシフェルはらしくないうすら寒さを感じていた