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 ―PM:14:53 March XX, 203X Japan-Time.
 ―President's office, Head office of 『Houjouin-Group』.
 ―in Japan.
 
「えええ脅迫状~!?」
「予告状です。似たようなものですが」
 前者の声は、若くして社長の座に就いた……のではなく非常に若々しい外貌を持つ鳳条院グループ本社の長、鳳条院 伊織。実際の年齢に相応する威厳が、見た目にも性格にも全く現れていない彼女だがそれはある意味凄い事であろう。因みに彼女は二人の子供を設けているが、彼女の辞書には『可愛い子には旅を~』と言う諺など全く無いらしく、大変な子煩悩らしい。
 後者の台詞は、鳳条院グループ本社の社長である鳳条院 伊織の古くからの幼馴染であり有能な秘書でもある水無月 桜。社長同様やはり若々しいが、大変なしっかり者で少し(?)天然が入った社長を支える事が出来る数少ない人物であり、影では『鳳条院の名参謀』とまで呼ばれている。
 そんな二人が社長用の巨大な机を挟み、一つの手紙を前にして相談していた。
「誰がそんなのを送ってきたの~!?」
「差出人は…『ARCANA』、ですね。恐らくタロット占いに使われる78枚のカードの事でしょう。危険物検査を終え安全であると確認されましたが、如何為さいますか?」
「て、手紙くらい一人で開けられるもんっ!!」
 大概なら『内容を確認せよ』か『処分せよ』が相場だが、伊織と言う人物ゆえの発言といえよう。それは兎に角、美しい彫刻が為されたペーパーナイフで手紙を開封する。
 
 中には、犯行声明らしきワープロ文を記した手紙と、3枚のカードが固定されている台紙が入っていた。
「えっと? 『虚構の人形師達よ。汝らは無知であるが故にその穢れは未来永劫拭われる事はない。知りながらそれを無視するならば、五色の翼の杯に二十二の罰を下さん』……???」
「これは、『吊るされた男』のカードと『ハートのキング』に『スペードの10』ですね。ですが『スペードの10』以外は、上下逆さまです」
 唯の悪戯にしては文面が奇妙だし、わざわざ別に分けたカードを固定して送付すると言う少し手の込んだ細工を施すだろうか。また、宛先が運営者その人である為、下調べをしてあるか知人であると言うことだ。
「どういう事なのかしら…?」
「少なくとも断言出来るのは、『アルカナ』は世界中の武装神姫の大きなバトル大会にて爆弾テロを起こしてきた凶悪犯であると言う事です」
 幼馴染であり秘書である桜のその言葉に、伊織は絶句する。
「あぅぅ、どうしましょう~鳳凰カップ開催の期日が近いと言うのに~……明人なら何とかしてくれると思うけど、明人にそんな危ない事をさせたくないわ~…」
 だからと言って、鳳凰カップを中止にしては鳳条院グループの名前に泥を塗ることになる。今現在出来ることといえば警備員を増員させることだけだが、物々しい警戒態勢を布いて大会を開いては、参加者達に不安を与える事になってしまう。それは出来れば避けたいところだ。
 そこで桜は、
「『アルカナ』は恐ろしい存在です。ですが、世界中の情報機関が挑み敵う事のなかった『アルカナ』の凶行を三度、阻止した人物がおります」
「そ、そんな凄い人がいるのぉ!? 大至急呼集して!!」
 希望の光が差し込んできたと言うべきか、伊織は慌てて問いただしてきた。
「その人物は…若干20歳にしてUCLAに在学しつつ、幾多の神姫犯罪を阻止してきました」
「それで、どんな人でなんて名前の人なの!?」
 机に身を乗り出しかける伊織。
 
『その名は、ミラ・ツクモ。『死刑執行人』の異名を持つ、アメリカ・カリフォルニア州神姫BMA・ロサンゼルス支部に所属する違法神姫調査官です』
 
 
   ANOTHER PHASE-01
                『DefencePhoenix』
 
 
 ―AM:06:00 March XX, 203X
 ―Mila Tsukumo's Room, "UCLA"Dormitory, Westwood.
 
 休日であっても、大学の朝は早い。己の学問や研究にスポーツに勤しむ者が多く集まるだけに、寝過ごすなど時間の浪費なのである。
「ん…ふぁぁ…」
 ミラは目覚まし時計は持っていない。だが、ミラの部屋は丁度午前6時ごろに都合よく陽の光が窓から差し込んでくるという非常に恵まれた環境なのだ。
 起き上がるとまず最初に軽く体操をする。これだけで脳の働きが変わるもので、毎日欠かさず行っているのである。体操を済ませると次にシャワーを軽く浴びる。
 シャワールームは共用ではなく各部屋に備え付けられており、バスルームや洗濯機に小規模ながらキッチンも備え付けられているのである。学生の寮として非常に恵まれた環境であるといえるが、一等地に建っている為に寮費はかなり高いのだが。
(「スッキリ」)
 とまぁ、シャワーを浴び終えたミラは身体を拭いて普段着に着替え始める。大概は漆黒で統一された辛気臭い喪服を着るのだが、休日には完全な緋色に統一されたロングドレスにショールを羽織る。その格好もまたあからさまに浮いて見えるが、それはミラの趣味だ。
 因みに烈風ら3体に神姫専用ドレスの話を持ちかけてみたら、
『うざってぇっ! ……えっ、れ、レンがそこまで言うなら…』
『………銃器を隠す事が出来るチャイナドレスで妥協する』
『えへへ~烈風が可愛いって言ってくれるから何でも~♪』
 まぁ、神姫もそれぞれである。
 と、そういえば3体は何処にいるのか。 
(「…まだ眠っているのか。昨日の仮想演習に疲れたか?」)
 と、ミラのデスクの上の、ノートパソコンに繋がれた三つのクレイドルで眠る自分の神姫達を見つめた。ドッグタイプMMSの烈風は大の字になって豪快に眠っており、デビルタイプMMSの震電はクレイドルの端で上体を起こしながら常にハンドガンを手元に置きながら眠り、サンタタイプMMSの連山は猫の様に…と言うより何故か黒い猫耳と尻尾を生やして猫の様に丸まって眠っていた。
 ミラは軽く息を吐くと、キッチンに立って朝食の用意を始めた。
 
『チンッ♪』
 と、旧式のトースターから2枚の食パンが飛び出た。丁度、サラダとスープも完成した頃だ。
 リビングに持っていって、朝食を運ぶ。
「いただきます」
 と言って両手を合わせる。食前に信仰する神に祈りを捧げるのは、宗教を信じている人だけ。ミラは無神論者なだけに過ぎない。それに、亡きミラの両親がずっとこうしてきたのだから自分もそうするのだ。
「おお? 今日も随分と早く起きたな」
 と、デスクの方から声が聞こえてきた。右腕と左脚にリストバンドを巻きつけている烈風だ。
「今日中に、ネットワークセキュリティのスライドを仕上げておきたい。それにこの間のロボット工学三原則のディスカッションのメモも纏めておきたいからな」
 と言って、ミラはスープをスプーンで掬って静かに啜った。
「あ~あ、そりゃまた忙しすぎるぜ。大体よぉ、ミラは興味がある科目を全て受けるからそんな無駄に忙しくなるんだぜ。ついでにISIの二束の草鞋だろ? いつか折れるぜ?」
 烈風は大いに呆れていたが、
「忙しいと感じるのはISIだけだ。こうして新たな知識を学び、他人の意見を聞けると言うのは最高の贅沢だと思うのだがね」
「ハッ、ボクにゃサッパ理解出来ないね!」
 クレイドルにどさりと倒れこむ烈風を尻目に、ミラは程よく焼けたパンにマーガリンを塗った。
 
 それから2時間程度過ぎた頃、
「ネットワークの世界に、現実世界の体力まで反映されるようになってから…」
 早速、スライド作成に取りかかっているミラ。部屋に残っているのは、充電にまだ時間の掛かる連山だけでありまだ眠っていた。
 烈風と震電は、UCLAの広大なキャンパス内を自由に闊歩していた。武装神姫に関する研究も為される現在、内部でいざこざを起こさない限り武装神姫の所持も認められているのである。
 烈風と震電以外にも、神姫を連れて勉強する学生は結構多いようだ。
 
「こらぁぁぁ、てめぇらぁぁぁ!!」
 と、構内の広場で烈風が大学生を相手に怒鳴りつけた。その怒号に周囲の学生達がびびる。
「芝が敷かれているところで煙草を吸うなって、何度言えば分かるんだ、えっ!?」
 烈風の勢いに飲まれ、たじろぐ学生達。
『ゲッ、ブルーインズの番犬だっ!?』
『に、逃げろぉぉっ!!』
「待ちやがれ! その前に携帯灰皿で火を消せってんだ!!」
『おっと、烈風君。待ちたまえ』
 と、逃げる学生を追いかけかかる烈風だったが、一人の老人に声を掛けられ止められた。
「いやぁ、いつもいつも済まないねぇ。全く、最近の若者は周りへの配慮に欠けてばかりで困る」
 その老人は、植物に関する学問で博士号を取った教授の一人だった。
「ヘッ、ボクはムカついたから怒鳴っただけだぜ?」
「いやいや、悪いと思ったことに対して真っ直ぐな意見を述べられる事は立派な事だぞ」
 と、教授と烈風は蕾の段階の桜の木を眺めていた。
「だか然し、『ブルーインズの番犬』とは…悪いが言いえて妙かもしれないな、はっはっはっ」
「チッ、余計なお世話だぜ…」
 烈風は主に構内や講堂を散歩しているのだが、マナーの悪い学生がいたら片っ端から怒鳴りつけているのだった。神姫相手だと思って開き直ろうとすれば、脛に強烈な蹴りを食らわせるのだから恐ろしい。
 然し、そのお陰でマナーが悪い学生が減っており、烈風の意思とは関係なく教授達や用務員達からありがたがられているのだった。
 
 一方、
「………」
 資料保管室のパソコンに繋がり、座ったままじっと動かないのは震電だった。
「あらら…今日もまた来ているの?」
「自ら進んで勉強したがる神姫も珍しいよね」
 と、室長とまた別の教授が話をしていた。
 震電は本を読む事が好きで、機会があれば聴構もしている。
(「井の中の蛙、大海を知らず……ジャパンの諺か」)
 特に好んでいるのは、世界の諺や先人の名言である。さほど長くも無い言葉に、深い意味が込められている事が、震電には不思議でならない事だった。
 名言や諺を知り、活かしたいと思っての独学なのだから全く悪い事ではない。
「ちょっと訊ねたい事がある」
「ん、何かな?」
 と思っていたら、震電はネットワークから切断して室長に話しかける。
「ガバルニと言う人物の言葉なのだが…『人間は創造主が作った傑作である。だが誰がそう言うのか、人間である』…にはどのようなニュアンスが込められている?」
 分からない事があればすぐに訊ねる、これも震電の勉強熱心さだった。
「これは参ったな。まず、人間そのものへの強烈な皮肉であることは分かるだろう?」
「それは何となく…」
「果てさて、君達武装神姫に置き換えるなら、創造主とやらが神姫で言う製作者達で人間は神姫のこと。製作者が作った傑作は神姫…それをだねぇ、神姫自身が吹聴する事が実におこがましい事なのだと思うな」
 と、室長は簡単に推論を述べてみる。
「だが私には、創造主或いは神と呼ばれるものの存在が何か分からない」
「そうだねぇ。神と呼ばれるその存在は、人間達が空想した存在なのだと僕は思うよ。人間にしても世界も、この世にあるからには人間も世界も作った存在がいる、果てそれは何者か? そんな感じの考えで、神の存在を信じたのかな?」
「すると、昔の人間は空想を信じ、空想の存在を借りて己を褒め称えようとしていた人間が多かったというのか?」
「う~む、だからそんな皮肉な言葉を生み出したんだと思うんだ」
 一度、興味を持ち出すとなかなか止まらないのが震電なのだった。
 
 
 そんなこんなで各自、休日にキャンパスライフを送って1時間経過した頃、
 ミラの部屋にて、
 
『RRR,RRR,RRR!!』
 
「ん?」
 リビングの隅に設置された電話が鳴り出した。ミラはデスクから離れ、すぐに受話器を受け取る。
「ミ~ラ~ちゃ~~~ん!!」
 こんな間延びした声の持ち主は、ミラの知り合いの中でたった一人しか存在しない。
「叔母様、健やかな休日に何の御用で?」
 先程、スライド作成を終えて気分を良くしていたところだけに、突然の呼び出しは気分を損ねるには十分だった。
「だ~い~し~きゅ~う~な~の~~~っ!!」
「そんな大声を出さなくても聞こえている。用件は?」
「説明は~~こっちでするから~~! 『アルカナ』が~また犯行声明を挙げたのよ~~っ」
「!!」
 その名を聞いたミラは、一瞬にしてストレスや不機嫌さが吹き飛んだ。
 聞き覚えのあるどころか、三度も戦ってきた世界的規模に亘る正体不明の神姫犯罪者だ。
「…分かった。すぐに向かう」
「早く来てね~~お願いよ~~っ!!」
 と、ミラはここで受話器を置いた。すぐにでも駆けつけたいところだが、その前に烈風ら3体を連れて行かねばならない。
 烈風と震電は構内にいる筈だからアナウンスを頼んで呼びかければいいだろう。残るは、
「連山、起きろ」
「う~~みゅ~……」
 烈風が『眠り姫』と呼ぶだけあって、連山を起こすには相当な根気と努力が必要である。だが、ミラには妙案があった。
 連山の近くでぼそりとこう囁くのである。
「あ、烈風が君を求めているな。待ちきれないって」
「うみゃっ! 烈風っ、れっぷぅぅぅ~どこ~っ!?」
 あからさまな嘘なのだが、根が単純すぎる連山はあっさり起き上がった。
「ふむ…烈風の声が聞こえた気がしたのだが。それはいいから準備を整えておくように」
「れっぷぅぅぅ……ふにゅぅ」
 悲しんでもニコニコ顔が絶えることの無い連山は、仕方なくミラのトランクに一番乗りした。
 数分ほどして、先に”フレスヴェルグ”に乗った震電が戻り、最後に烈風が帰って来た。
「…行くか」
「チェッ、何なんだよったく!?」
「人死にが出るかもしれない、そういうことだ」
 取り敢えず大至急の用事であることを伝え、ミラはいつものトランクに3体を収容した。
 
 
 ―AM:10:41 March XX, 203X
 ―Research-Division, Shinki-BMA・L.A.branch office, Century City.
 
 程無くして、ミラは神姫BMAロサンゼルス支部に到着した。
 拡大化が進められたセンチュリーシティにある此処と、UCLAは自動車さえ使えば割と近い。
「あら、今日は随分と派手なドレスね。いつも着ている喪服は?」
「…数分前まで今日は気分のいい休日だったからな。だが電話一本で台無しだ」
 気軽に声を掛けてくれた受付嬢にミラは冷淡に答え、そのまま調査課へと歩いて行った。
 
 調査課では十数人程度の職員が、デスクトップパソコンを前にキーボードと格闘していた。一度見せてもらった事があったが、アメリカ全州の神姫犯罪のデータ整理は本当に大変なものらしい。
 そんな中、一番奥のチーフ用デスクの前にはとても落ち着いていられず、動物園の熊のようにそわそわしながら右往左往している神姫BMA・L.A.支部調査課課長がいた。
「叔母様、もう少し毅然とすべきだと思いますがね」
「あ、ああ~ミ~ラ~ちゃ~~~ん♪ 来てくれたのね~ちょっと心配だったけど~信じてたわ~♪」
 そっちから呼び出しておいてなんて言い草だ、とその場にいた誰もが思ったが、思うだけに留めるのが吉なので誰も突っ込まない。
「いいから用件を」
「あぅあぅ~そうなのよ~~『アルカナ』がね~……」
 と、エステラに導かれるようにして、チーフ用デスクまで案内された。
 机の上は書類で一杯……ではなく、意外と言うと失礼だが非常に綺麗に整頓されていた。L.A.支部の職員達の間では、『仕事の速さに正確さ、判断力とリーダーシップで課長に及ぶ人はいない。その証が課長のデスクに現れている』と大評判だが、ミラにはどうしても全く理解できなかった。
 
「ほらほら~これこれ~~これなのよ~」
 と、エステラが見せてくれたのは、丁寧な文字で書かれた便箋だった。既に開封されていたが、それは先にエステラが中身を確認したからだろう。
 ミラは中に入った手紙と、カードが取りつけられた台紙を取り出した。最初に目に付いたのは手紙ではなく、カードが取りつけられた台紙だった。こういったメッセージは挑発的な何かであると同時に、何らかの意味を現す重要な手掛かりである。
「これと同じ手紙がね~向こうにも届いてたらしくてね~とっても~大混乱らしいのよ~」
「四度目も似たような見立てか。今度は、『THE HANGED MAN』の逆位置…」
 それは、『吊るされた男』のことである。更に、『聖杯の王』の逆位置と『剣の10』の正位置を見て、ミラは白けた様子で言った。
「今回はどんな意味なの~?」
「『THE HANGED MAN』の逆は、エゴ・受難・自暴自棄・利己主義と言った意味がある。『聖杯の王』の逆は二重人格・不公正・モラルの欠如・偽善など。最後の『剣の10』は、失望・破産・破壊・災難と言った意味がある」
 エステラは頭上にクエスチョンマークを無数に浮かべていたが、
「私は『アルカナ』ではないから分からないが、奴がこれまでにしてきた事から察するに、武装神姫同士が戦うことを著しく嫌っているのだろう」
「それは確かなのよね~毎度毎度~大手企業が開催するエキシビジョンマッチに~犯行声明を送るのよね~。そうじゃないコンベンションには~まるで無関心なのよね~?」
 カードが取りつけられた台紙をデスクに放り投げると、ミラは推論を述べた。
「台紙のカードの見立ては恐らく、『利己主義にして我が身だけを考える者は、その偽善或いは不公正により破滅に終わる』……と言いたいのではないだろうか?」
 大手企業に対して宛てる内容としては、何と強烈な嫌味であろうか。
「あら~毎度の事ながら~酷い言い草よね~。いつも思うんだけど~言いたい事があるなら~カードにしないで~全部手紙に~書いてしまえばいいのにね~?」
「それは、奴が『アルカナ』と名乗っている故のこだわりだろうな。占い師の真似事にしては下らんな」
 一枚一枚のカードに深い意味がある為に、それに対し特にこだわりを見せるのだろう。主に愉快犯や確信犯などに見られる心理だ。
 続けてミラは、手紙の方に軽く目を通した。
 
『虚構の人形師達よ。汝らは無知であるが故にその穢れは未来永劫拭われる事はない。知りながらそれを無視するならば、五色の翼の杯に二十二の罰を下さん』
 
「成る程、分かり易い」
「何々っ? 手掛かりになるかもしれないから教えて!」
 それを見て、ミラは何かが確信に至ったらしく、エステラに説明を始めた。
「奴は、武装神姫の戦いよりも寧ろ、戦わせているオーナーを嫌っているようだ。だから虚構の人形師などと言っているのだろう。そして神姫の戦いはオーナー同士のエゴのぶつけ合いであり、オーナーはそれを自覚していないからパートナーである神姫を穢し背負わせていく……大体こう解釈した」
 武装神姫とは武装神姫同士で互いに戦うものである。故に、武装神姫を戦いに遣わせるオーナーは罪深く、背負うべきものを神姫に背負わせているということか。
「そうは言ってもね~神姫自身にも~相応に闘争心があるんだから~仕方ない事じゃないの~…?」
 と、ミラの発言をキーボードに打ち込みながらエステラが聞いてきた。
「奴は、神姫をパートナーである以前に人形……即ち人間の身代わりとなる存在として見ているのだろうな。私も多少なりとも先の文句は自覚しているつもりだ。だが」
 暫くの間、重たい沈黙が漂う。
 そして、
「二十二の罰…それはアルカナそのものでありタロット占いに使われる22種のカードを意味しているのだろう。遂に小アルカナだけでは物足りなくなったか。奴が今までと同じならこれは22個の爆弾となる。今までは少なくて4個だったり多くて14個だったが、どうやら奴も本気になったようだな」
「に、に、22個って犯罪史上最高記録じゃないのっ!?」
 エステラだけでなく、その場にいた職員達もが仰天した。破壊対象の施設の規模が如何なるものであるにしろ、最大級の爆弾テロとなる事は間違いない。
「そして『五色の翼の杯』。これが大会の事で………ん?」
 と、ここで初めてミラの思考が止まった。
「五色の翼……朱雀、或いは不死鳥の事か? だが、カリフォルニアどころか全州に亘って、そのような名前の大会が開かれるなど聞いたことも無いのだが…?」
 珍しく困惑するミラだったが、爽やかな笑顔でエステラは言った。
「だって~ジャパンで開かれるんですもの~『ホウオウカップ』って言うみたいね~」
 え、ジャパン? 日本?
 それを聞いてミラは暫く真顔のまま固まっていたが、
「そ……そうか、それなら私の管轄では無いな。ニッポンのセキュリティの高さがどれ程のものか、少しは期待して見守ってみるとしよう」
「『ホウジョウイン』グループは~ミラちゃんをご指名みたいなの~」
 成る程、鳳凰だから厳密的にはチャイニーズフェニックスの事か。
 ミラは納得して頷くと、遂に不機嫌の塊だったものが爆発し、マシンガンの様に文句を飛ばしてきた。
「冗談じゃない、一切断る! 確かに『アルカナ』は放置しておけない存在で、奴とは三度戦って必ず勝ってきたが、一介の学生に過ぎぬ私にニッポンにまで飛んで行けと言うのか? 私から大学生活を剥奪しなければ阻止出来ない程、ニッポンのセキュリティーは腰抜けなのか!?」
「あぅあぅ~~文句を~わたしに言われても~…はぅぅ」
 ミラの言うことは至極当然の事である。功労者やISIである以前に唯の大学生であるミラに、遥々太平洋を越えて、大学生活を引き換えに爆弾処理をさせる事自体、あまりにも理不尽な話だ。
 幾ら鳳条院グループがこの件に莫大な報奨金を掛けたとしても、大学の方が重要なミラには全くの無価値である。
「次の課題があるからな。帰るぞ!」
「ああっ、待ってってば~~~ミラちゃ~ん~っ」
 怒り心頭のミラが去ろうとしたその時、


『えすて~ら~ちゅわぁぁぁぁん!! めるし~! ぼんじゅ~る!!!』
 
 
「!?」
 あまりにも場違いすぎる、壮齢の男性の奇怪な日本語(?)が近くから聞こえてきた。予測外を遥かに超越した出来事に、ミラどころかその場にいた職員達全員が思わず日本語(?)が聞こえた方向を探した。
 何事かと思われたが、意外と近くにその要因は見つかった。それは、エステラのデスクトップパソコンからだった。
「あらあら~この声は~兼房おじ様じゃない~♪」
 と、エステラはパソコンの近くにあったカメラに顔を覗かせると笑いながら暢気に手を振った。どうやらウェブカメラを使ったネットワークコミュニケーションシステムが、いきなり繋がってきたようだ。
『おおっと、間違えたぞい。はろー! ないすとぅみーちゅぅ、じゃな!!』
「さっきのではフランス語よ~♪ あ、でも~わたしはまだ勤務中なの~ちょっと困るわ~」
『なになに、固い事を言うない。少ぅしばかり忙しくてなかなか会えなかったんじゃからなっ!』
「あら~あら~さびしんぼうさんで~ちょっとこまったさんね~♪」
 モニターから聞こえる、わっはっはと豪快な笑い声にエステラは子供の様に微笑んでいた。
 突然の和やかな日本語同士の会話に何事かとばかりに、ミラを含めた職員達がエステラのパソコンのモニターに殺到した。モニターに映っているこの壮齢の日本人男性が兼房なる人物なのか。
「え、エステラ……?」
 怪訝そうにモニターを見つめるミラだったが、エステラに強引にウェブカメラの前に引き寄せられてしまった。
「あ~そうそう~紹介します! わたしの自慢の姪っ子、ミラちゃんで~すっ!」
『おお! 噂には聞いていたがべっぴんさんじゃの!!』
 先程の憤りが何処かに飛んでしまったミラは瞬きしながら唖然としていたが、
「兼房様、お初にお目にかかります。ミラ・ツクモと申します。以後、お見知りおきを…?」
 一応、相手に合わせてミラも日本語で挨拶した。最後が疑問系になっているのは、突拍子も無いこの状況について来れなかったからだった。
『ほぅほぅ、そうか! これから何としても、ミラちゃんの力を借りたいのじゃが、宜しいかな?』
 どうしていきなり話がそんな流れになるのか。少なくとも兼房というこの人物は私の事を知っている。それに、『これから』と言ったと言うことは…?
「いえその前に……無礼を承知して話を遮りお訊きしますが、兼房様の姓は『鳳条院』ですね?」
 
 すると、感心した様子でモニターの向こうの兼房は、
『ほほぅ、初対面にしてわしの姓を当てるとは流石じゃな。そうじゃ、わしが【鳳条院グループ】の総帥、鳳条院 兼房じゃ』
 と、モニター越しに兼房はミラに丁寧に挨拶してきた。
『何なら、フレンドリーにジジイと呼んでも構わんぞ?』
 と、いきなり悪戯っぽく言ってきた兼房に、エステラ以外全員が脱力してしまった。
「あ、あまりフレンドリーではないような…それよりも、そちらではおよそ16時間も早い…と言うよりそちらでは深夜の筈では?」
 今はもっと重要な事を聞きたい筈なのに、何故か違う事を聞いてしまった。だが然し、時差を考えると兼房は夜中の2時くらいにこちらに話しかけているのである。
『いやぁそれがじゃな…最近は伊織と香憐が煩くてのぉ…こんな時間でコソコソしなければなかなか繋ぐ事が出来なくてのぉ…老いぼれから楽しみを奪うなど、ああ惨い事じゃよ…』
「色々と~楽しいお話を~しているだけなのに~…ね~?」
『そうそう、全くじゃよ…ね~?』
 エステラと実にフレンドリーな様子の兼房を見て、本当にこの人が鳳条院グループを纏める大物なのかとつい疑いかけてしまった。
 気を取りなおし、ミラはやっと本当に聞きたかったことを訊ねた。
「冷静に考えれば、実にタイミングのいいハプニングだった。まるで狙い定めたかのように。兼房様は私が爆弾解体を承諾しない事を予見していたのだな?」
 あまりにも突然なタイミングに呆気にとられるしかなかったが、改めて思い出せば実に怪しい。ミラがここにきた時には既にここと繋いでいたと考えれば合点がいく。
『ほっほ! 流石、お見通しと言うわけじゃな。そうじゃ、わしは最初からずっと聞いておった。エステラちゃんには悪い事をさせたがのぅ』
「いえいえ~お気になさらず~」
 あのハプニングの時、最初にモニターに向かったのはエステラだった。オンラインのままモニターの電源を切っておいて、ミラに最初に『アルカナ』の予告状に意識を向けさせたというわけだ。
「鳳条院グループの長たる人物が何故、そのような一計を謀った?」
『確かに悦ばしい事ではなかったな、それは詫びよう。然し、鳳条院グループの名に懸けても、爆弾なぞに屈せず三度目の鳳凰カップを無事に果たしたいからじゃ。その為にもミラ殿、折り入って頼みたい事がある』
 先の砕けた空気は何処へ、今の兼房の表情は家族親戚には決して見せない、非常に真摯なものだった。
『2035年より始め、今回で5回目となる【鳳凰カップ】。今回も大会も鳳条院グループの総力を込め、多くのオーナー達の思いに応えたいのじゃ。バトルばかりが全てではない。様々な形で神姫を愛する者が一斉に集い楽しみ、喜びを分かち合う…これからもそんな大会にしていきたいと心から願っておる』
「……」
『じゃから絶対に、絶対にこの大会は最後まで果たさねばならぬ。爆弾などで打ち砕かれるのはバトルなどではないのじゃ。施設の復旧なら何とかなるが、爆弾に巻き込まれたオーナーと神姫の心は戻りはせん』
「心…か」
 ほんの一瞬だけ、自分に微笑んでくれたパートナーがミラの脳裏に浮かんだ。
 あの頃の自分はまだ幼く、いつも天使型のパートナーにすがり付いていた。
 懐かしさと悲しさで胸が込みあがりそうになったが、すぐに回想を振り払うと兼房の話を聞いた。
『この老いぼれに出来ることなら、何でもやって見せよう。じゃからどうか、この【鳳凰カップ】を、神姫に思いを込めた者達を、どうか守って欲しい…!』
 たった一人の遥かに若き大学生を相手に、モニター越しながら頭を下げるその人物はそれは紛れもなく、一つのグループを取り仕切る男だった。その姿に、一同は唖然として沈黙するしかなかった。
 ミラはすぐに返答した。
「兼房様。貴方はグループの指導者である前に、何よりも客、いえ人の心を大切にされる偉大な方とお見受けしました。また、先の私は己の事ばかり考え驕りたかぶっていましたが、兼房様の誠意のお姿は私の目を覚まさせてくれました。故に私は兼房様の誠意に応え、全力で『アルカナ』に立ち向かいます」
 と、ミラもモニター越しに兼房にゆっくりと礼をした。
『それでは…引き受けてくださる、のですかな?』
「はい」
 暫くの間沈黙が続いたが、それを破ったのは嬌声に近い叔母の声だった。
「ミ~ラちゃぁ~~~ん!! 凄いわぁ~偉いわぁ、あなたの叔母として言うことなしだわ~っ!!」
 大いに感激し感涙したエステラに抱きつかれた。
「や、止めてくれないか…真剣な話の最中に…!」
『ほっほ。まだお話は終わっておらぬぞ、エステラちゃん?』
「は、はぃぃぃ~……」
 と、兼房とミラの言葉におずおずと引き下がるのだった。
「それでは早速ですが、本題に入りましょう」
『うむ、何でも聞こう』
 
 最初にミラが訊ねた事は、
「まず、開催はいつから?」
『そちらの時間では、四日後じゃ。足に関してはこちらで十分に手配しておくぞ』
 それを聞いてミラは頷きつつ更に訊ねる。
「では、明日からそちらに向かいます。それで、大会の日程は?」
『予選リーグの一日目と、決勝トーナメントの二日目に分かれる』
「表彰式は何時から?」
『それは、大会の進み方次第じゃな。じゃが、少なくとも夕暮れ時に終わることはないじゃろう』
 『アルカナ』の狙いは表彰式にある。その為にも、爆破予定時刻を少しでも先延ばしにしたい。
「多く見積もってタイムリミットは32時間…か。では、これから説明ではなく要望となります。宜しいですか?」
『うむ、出来る限り応えよう』
「まず、施設の全体像と、スタッフのスケジュールと、スタッフ及び参加者の名簿。これら三つをファイルして、私に提供して戴けないでしょうか?」
『それならお安い御用じゃな』
「後、警備の増強は一切行なわないようにお願いします。無理に増強した警備は、隙間だらけの全身甲冑と同じです。それと、最も信頼出来る人物を警備責任者にし、その人にのみ爆弾テロの事実を伝えるように。嘗て、会場を守る警備員が『アルカナ』の部下だった事がありましたので」
『むぅ…出来る限り努めたいところじゃが、伊織が心配じゃのぅ…』
 イオリとは、ミラには初めて聞く名前だったが、
「場慣れしていない、それも足手纏いなど不要です。ある程度、自由に警備員を動かす事が出来れば十分です」
『ふむ。尤もじゃが、わしの周りには心から信頼できる人間は多いのでな』
「人選はそちらの判断に任せます。私からはこれで以上…」
 と、軽く会釈してミラは説明を終えた。続けて、兼房からミラに話しかけてきた。
『ふむ、明日からすぐに迎えを出そう。ところで、大学に通っているとの事じゃが…』
「……何か?」
『無理をさせて呼んでいるのじゃ。成功失敗を問わず、五年分の講習を免除するよう、そちらに要請しよう』
「え!?」
 適当な理由をつけて休み、空けた日の学習はすぐに埋めるつもりだったが、なかなか凄い事をやってのけようとするものである。
「そ、それは……いや、自ら受けに行く分には問題なし……だな」
『命を掛けた作業となるのじゃからな。それと、ミラ殿の要望を聞いておらなんだが?』
 成功した暁として、高い報奨金を掛けてもいい筈である。だが、
「それは、成功してから考えますので。では兼房様、明後日に」
『うむ、宜しく頼む。それにしても……』
 と、固い空気が解けて兼房の表情が一瞬でだれた。
『エステラちゃぁぁぁん~また今度、いつ遇えるかのぅ?』
「あらら~お堅いお話が終わりましたら~またちょっと困ったさんに~逆戻りなのね~」
 真面目なお話を終えてすぐにそれはないだろう……と、ミラは思わずうな垂れてしまった。
「叔母様……どのくらいのお付き合いで?」
「実は~これでもう5年近く~なるのよね~♪」
『うむ、伊織と香憐にバレないかいつも冷や冷……!!』
 その時、モニターの向こうの兼房が明らかに何かに動揺していた。その表情は熊に遭遇した登山者、いや巨大怪獣に出くわして腰を抜かした一般市民と例えるべきか?
『そ、それではぐっばいじゃぁぁぁぁぁ~~っ!!』
「あらら~バイバイ~なのよ~っ!」
 と同時に、兼房とのアクセスが切れた。一体、何があったのだろうか。
「……本当に、色々な意味で凄い人である事は十分に分かった…気がするな」
「でもでも~兼房おじ様に~何があったのかしら~大丈夫かしら~?」
 それは恐らく本編で語られる………かもしれない。
 
 
 ―The next day...
 ―AM:07:58 March XX, 203X LosAngeles-Time.
 ―Entrance, "UCLA"Dormitory, Westwood.
 
 ミラはいつも通りの喪服を着てトランクを片手に、鳳条院グループからのお迎えを待っていた。
「なぁ、ミラぁ?」
 烈風がトランクから這い出て、肩によじ登りながら訊ねてきた。
「今回も、俺らが爆弾を処理しなきゃいけねぇの?」
「奴が今まで通りなら、な。これまでにも皮肉の上乗せのつもりか、神姫の手による処理でなければ解体出来ない爆弾を作ってきたからな」
 はぁぁ、と烈風は溜息を零した。
「もし、今回で遂にヘマしたらどうすんだよ?」
「ほぉ。つまり君は出来ることに失敗できてしまうくらい、自信がないのか?」
「ハッ、抜かせ……っと、何かでかい車が来たようだぜ?」
 と、ル・コント道路を横切ってきたのは、とても長い豪華なリムジンだった。全面的に信頼されているとは言え、実に豪奢なお出迎えである。
 運転手らしき人がミラの前で会釈すると、
『ミラ・ツクモ様、お待たせしました』 
 と言うと同時に、座席のドアが自動的に開いた。
「一秒一分が惜しい。すぐにLAX(ロサンゼルス国際空港)へ向かってくれ」
『かしこまりました』
 巨大リムジンの登場に興味津々の学生達が集まってきたが、ミラは意に介することなく乗り込んだ。
 
 
 ―AM:08:24 March XX, 203X LosAngeles-Time.
 ―Shinki-Class, Special-Airplane of 『Houjouin-Group』, LAX.
 
 ロサンゼルス国際空港に到着すると、また新たに別の案内人がミラを招いてきた。
 ここでミラを驚かせてくれたのは鳳条院グループ専用機が、ミラを待っていたことだった。
「チケットの手配が無いと少し不安に思っていたが、こういうことか…」
 普通の航空機でロサンゼルスから日本へ行けばおよそ28時間となるところだが、グループ専用機であると同時に最新鋭機であるこの飛行機なら片道18時間まで短縮されるらしい。
 余談だが、数年前までは日本まで12時間程度で着く筈だったのだが、最近は不安定な異常気象が絡んでいる所為で、逆になりかかっている。
 改めて、鳳条院グループ総帥である兼房に驚かされながらも、ミラは専用機に乗りこんだ。
 
 
 ―PM:12:47 March XX, 203X LosAngeles-Time.
 ―Shinki-Class, Special-Airplane of 『Houjouin-Group』, North Pacific Ocean.
 
 ロサンゼルス国際空港を発ってから4時間経過した頃。
 ミラは役員専用特別室で、昨日のやり取りで頼んだ三つの資料に読み耽っていた。更に机の上には、自分で買ってきたタロットカードが広げられていた。
 烈風ら3体の神姫を呼び出して、簡単なミーティングを行なっていたところだった。
「『アルカナ』が仕掛ける予定の爆弾は22個。それだけの数を仕掛けるとなると、必ず共犯、或いは仲間が必要となる。それも恐らく、内部に精通している誰か。まぁ常識だな」
「上下逆さまにしただけで、意味が変わるってか……いちいち覚えてらんねぇよ!!」
 『JUSTICE』のカードの説明を読んで苛々している烈風だが、
「わざわざ22種、それも一枚一枚に深い意味が込められたものを題材にしてきたと見て間違いない。だから、爆弾の装置もなかなかふざけた趣向を凝らすのだろうな」
 暫く経ち、今度は震電が声を掛けてきた。
「奴は火薬を選ばないから余計にタチが悪い。前の時は、一つの爆弾にTNTが6kg…だったな」
「それに関しては、日本のニュースサイトを一通り確認した。つい最近、ニッポンの工場から主にペンスリット・TNTが大量に盗まれている。だが今回は、松根油と言った液体の可燃物も混じっている」
「……厄介だな」
 と言いながら震電は、ハグタンド・アーミーブレードをより小型化させたナイフをじっくりと手入れした。
「それにしても~どうやって表彰式ぴったりに爆発させるんだろ~?」
 と、『THE WORLD』のカードに興味津々な様子でニコニコ笑っている連山が言った。
「おい…ある大会では試合時間の延長といった多少の誤差があったにもかかわらず表彰式ぴったりに起爆させた例がある。多少の遠隔操作は出来るものと見て間違いないな」
「でもそれってぇ、連山達が解除しようとすれば、起爆させてもいいってことにならな~い?」
「『アルカナ』が今までそうしてきたように、必ず表彰式を狙って起爆させてきた。その心配は要らないだろう。それに奴は、神姫ではなくオーナーを嫌っているようだからな。褒め称えられる姿を嫌悪しているのだろうな」
 と、連山の疑問にミラは淡々と答えた。
 
 
 ――日本への到着まで後、14時間……。

 

 

 

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