第五間幕。ライト点灯。
初夏の日差し。陰になっている階段に座ってケータイにメールを打ち込んでいるアキ。肩に乗ったルクスがこちらに気付き、つんつんと頬を突付く。
アキ、はっと顔を上げると照れ恥ずかしそうにケータイを直して立ち上がる。
ルクスのスーツカラーは先ほどと違い、シルバーとブラックに染め抜かれている。
アキ、はっと顔を上げると照れ恥ずかしそうにケータイを直して立ち上がる。
ルクスのスーツカラーは先ほどと違い、シルバーとブラックに染め抜かれている。
アキ「ゴメンゴメン。2036の風の第五幕。読んでくれてサンキューな。ウチは山県 光。珍しい名前やろ? アキって読むねん」
ルクス「お初にお目にかかります。砲台型フォートブラッグのルクスと申します」
ルクス「お初にお目にかかります。砲台型フォートブラッグのルクスと申します」
ルクスの一礼の後、アキ、階段に座り込む。
ルクス「今回の話・・・私が母様より瞳を受け継いだ時・・・夏前でしたね」
アキ「BMAによるオフィシャルバトルの地方予選だったかな。六月も終わる頃や」
ルクス「ポイントによるシードに残れなかったのは私の責任です」
アキ「BMAによるオフィシャルバトルの地方予選だったかな。六月も終わる頃や」
ルクス「ポイントによるシードに残れなかったのは私の責任です」
ルクス、僅かに頭を垂れる。その姿にアキ、苦笑。
アキ「あかんで、そんな風に考えたら」
ルクス「・・・すいません」
ルクス「・・・すいません」
陰が少し濃くなる。
ルクス「しかし、平日の朝から、わざわざ千葉まで行くマスターの行動力には呆れます」
アキ「そりゃ、ホンキやからね」
ルクス「・・・?」
アキ「ルクスへの愛やん」
アキ「そりゃ、ホンキやからね」
ルクス「・・・?」
アキ「ルクスへの愛やん」
笑うアキ。
ルクス、赤面して困ったようにバイザーを下ろす。
ルクス、赤面して困ったようにバイザーを下ろす。
ルクス「マスター、ご冗談を・・・」
アキ「冗談で言えると思う?」
ルクス「・・・」
アキ「冗談で言えると思う?」
ルクス「・・・」
黙り込むルクスを、先のお返しとばかりにツンツンと突付くアキ。
ライト、少し暗く。
ライト、少し暗く。
ルクス「・・・『愛』。神姫の愛。人とは違う我らの、ヒトとは違うカタチ」
アキ「そりゃぁ。子孫を残す能力が無い神姫やから・・・性欲って言えば言葉は悪いけど、「本能的」な子孫繁栄がどうしても関わってくるウチらの愛と形は違うはず」
ルクス「私達の愛は、内面的な、心情的なモノに特化されているのかもしれません」
アキ「・・・」
アキ「そりゃぁ。子孫を残す能力が無い神姫やから・・・性欲って言えば言葉は悪いけど、「本能的」な子孫繁栄がどうしても関わってくるウチらの愛と形は違うはず」
ルクス「私達の愛は、内面的な、心情的なモノに特化されているのかもしれません」
アキ「・・・」
ルクス、そっと自分の胸に手をやる。
ルクス「性別も、存在も・・・何もかもを越えた、ヒトのそれよりも遥かに純粋で・・・思慕的な、ピュアな感情として」
アキ「それを愛と呼べるかは解らんけどな。けど、それ以外の単語があるかっていうと・・・」
アキ「それを愛と呼べるかは解らんけどな。けど、それ以外の単語があるかっていうと・・・」
小さく笑う二人。風、一つ。
ルクス「・・・それでも。それでも、ヒトに憧れる神姫の気持ちも、解ります」
アキ「けどな。人って言っても色々あるで? 生まれて直ぐ病気になったり、親に殺されたり、時には武器を持って数万対数万で殺し合い。別に神姫より幸せな種とは思えへんけど?」
ルクス「人になりたいのではありません、ヒトの姿になりたい」
アキ「・・・?」
ルクス「彼女達は、きっと。『愛する者に近づきたい』。ただ、その純粋な気持ちだけなのでしょう」
アキ「けどな。人って言っても色々あるで? 生まれて直ぐ病気になったり、親に殺されたり、時には武器を持って数万対数万で殺し合い。別に神姫より幸せな種とは思えへんけど?」
ルクス「人になりたいのではありません、ヒトの姿になりたい」
アキ「・・・?」
ルクス「彼女達は、きっと。『愛する者に近づきたい』。ただ、その純粋な気持ちだけなのでしょう」
ライト、更に暗く。
アキ「ルクスも、ちょっとはあるん? ヒトの姿になりたいとか」
ルクス「・・・はい。少し、ですが。色々・・・出来ますし」
ルクス「・・・はい。少し、ですが。色々・・・出来ますし」
ルクス、何故か赤面。
アキ「けど、神姫サイズやから出来る事もあるやん? ウチは一度でいいから、神姫サイズ。小さくなりたいけどなぁ」
ルクス「あ・・・私は、それでも・・・いいのですが」
アキ「?」
ルクス「(小さな声で)その・・・ヒトのように、抱き締めて・・・もらえたら。いいな、と・・・」
アキ「(大きな声で)へぇ~?(笑)」
ルクス「あ、ち、違います! マスター! その・・・今のは・・・!」
アキ「うーん! 幸せモンやなぁ。ウチって!」
ルクス「ま、マスター!」
ルクス「あ・・・私は、それでも・・・いいのですが」
アキ「?」
ルクス「(小さな声で)その・・・ヒトのように、抱き締めて・・・もらえたら。いいな、と・・・」
アキ「(大きな声で)へぇ~?(笑)」
ルクス「あ、ち、違います! マスター! その・・・今のは・・・!」
アキ「うーん! 幸せモンやなぁ。ウチって!」
ルクス「ま、マスター!」
消灯。
第五幕。了。