叡智を刃に、想いを力に(中編)
目測0.24ミリのワイヤーで作られた檻。その中にクララが封じられた。
藻掻けば、防御力に富む“Heiliges Kleid”といえどズタズタだろう。
だが、クララは自らの腕から引き抜いたダガーを軽く構え……投げる。
その軌道は、一見するとアラクネーとは完全に違う方向を狙っていた。
藻掻けば、防御力に富む“Heiliges Kleid”といえどズタズタだろう。
だが、クララは自らの腕から引き抜いたダガーを軽く構え……投げる。
その軌道は、一見するとアラクネーとは完全に違う方向を狙っていた。
「……そなた、ハウリンタイプの癖に体力や汎用性もないのか?」
「そうだよ。ボクは同型の姉妹と比べても貧弱……だけどッ!」
「なっ……!?く、ぅうあああぁっっ!?」
「そうだよ。ボクは同型の姉妹と比べても貧弱……だけどッ!」
「なっ……!?く、ぅうあああぁっっ!?」
だがその直後に、檻の監守・アラクネーは閃光で目を塞ぐ格好となった!
同時に鋼の糸で作られた“蜘蛛の巣”を覆う形で紫電が奔り、銀糸を壁に
固定していたアンカーボルトが、壁を破壊する形で次々と抜けていくッ!
莫大な電力が流されて、ワイヤー全体が必要以上の破壊力を持ったのだ。
そして糸は次々と床に落ち、後には感電したアラクネーとクララが居た。
同時に鋼の糸で作られた“蜘蛛の巣”を覆う形で紫電が奔り、銀糸を壁に
固定していたアンカーボルトが、壁を破壊する形で次々と抜けていくッ!
莫大な電力が流されて、ワイヤー全体が必要以上の破壊力を持ったのだ。
そして糸は次々と床に落ち、後には感電したアラクネーとクララが居た。
「ぅ、ッ……一体何が、そなたその剣で何をしたのだ!」
「……グレネードダガー“シラヌイ”。スタン効果付きダガーだよ」
「ま、待て!逃げるかッ!?」
「……グレネードダガー“シラヌイ”。スタン効果付きダガーだよ」
「ま、待て!逃げるかッ!?」
痺れが抜けきらないアラクネーと距離を離す為、クララは脚部に備える
走行補助装置“アサルトキャリバー”を展開、迅速に部屋を脱出した。
慌てたアラクネーが、後を追う……その時をクララは狙っていたのだ!
走行補助装置“アサルトキャリバー”を展開、迅速に部屋を脱出した。
慌てたアラクネーが、後を追う……その時をクララは狙っていたのだ!
「きゃう!?ううっ、あああぅッ!?」
「……武器はよく見た方がいいもん。ボクも、貴女も」
「な、何故床に落ちたダガーが、こちらに飛んでくるッ!?」
「そういう仕組みだからだよ……まだ感電する?」
「断るッ!……くぅっ!!」
「……武器はよく見た方がいいもん。ボクも、貴女も」
「な、何故床に落ちたダガーが、こちらに飛んでくるッ!?」
「そういう仕組みだからだよ……まだ感電する?」
「断るッ!……くぅっ!!」
入口に駆け寄った所を狙い、次々と“シラヌイ”が床に叩き付けられる。
この剣は柄にボタンがあって、押すと0.35秒後に鍔のブースターが動く。
引き抜いた時にセーフティは解除されており、刀身部分が衝撃を受けると
柄のコンデンサから急速放電、命中した周囲の存在をも感電させるのだ。
この複合武器によるCQBは奏功し、アラクネーは窓から飛び出したッ!
この剣は柄にボタンがあって、押すと0.35秒後に鍔のブースターが動く。
引き抜いた時にセーフティは解除されており、刀身部分が衝撃を受けると
柄のコンデンサから急速放電、命中した周囲の存在をも感電させるのだ。
この複合武器によるCQBは奏功し、アラクネーは窓から飛び出したッ!
「……ビルの外に飛び出た?」
「ここならば、その奇妙なダガーも避けやすい!それに……」
「それに……何かな?アラクネーさん」
「最初に一発、今ので八発……残りのダガーは七本だ」
「ここならば、その奇妙なダガーも避けやすい!それに……」
「それに……何かな?アラクネーさん」
「最初に一発、今ので八発……残りのダガーは七本だ」
だがやはりアラクネーはただ者ではない。街灯にワイヤーを引っかけて
落下のダメージを相殺したばかりか、あの猛攻の中で残数を見ていた。
未だ共通武装を持たないクララにとって、ダガーの数が攻撃の回数だ。
対してあちらは落下時にワイヤーを殆ど回収したらしい。不利だった。
落下のダメージを相殺したばかりか、あの猛攻の中で残数を見ていた。
未だ共通武装を持たないクララにとって、ダガーの数が攻撃の回数だ。
対してあちらは落下時にワイヤーを殆ど回収したらしい。不利だった。
「さあ、真の姿を見せろ。さもなくばそなたに勝ち目はないぞ?」
「……マイスター、いいかな?実戦運用は初めてだけど」
「構わん。“魔法少女”……もとい“戦乙女”として戦えッ!」
「マイスターがそのボケをするとは、思わなかったんだよ」
「……マイスター、いいかな?実戦運用は初めてだけど」
「構わん。“魔法少女”……もとい“戦乙女”として戦えッ!」
「マイスターがそのボケをするとは、思わなかったんだよ」
……ちょっとした茶目っ気だ。とはいえ満更嘘でもないのだぞ?
私の檄を受け、クララは躊躇うことなく窓から飛び出したのだ!
そしてバックルに手を添え、引き倒した。法衣が四方に散るッ!
私の檄を受け、クララは躊躇うことなく窓から飛び出したのだ!
そしてバックルに手を添え、引き倒した。法衣が四方に散るッ!
『Plug-out!』
アーマーの破片がアラクネーの掴まった街灯を、次々と凹ませていく。
危険と判断したのか、彼女は街灯を離れ距離を置き……空を見上げた。
そこにいたのは、灰色の“魔女”……否、それは“戦乙女”であった!
特徴的な帽子と左手に抱えた巨大な本だけみれば、クララは“魔女”。
だが、右手の槍と背中の翼……そして装甲は間違いなく“戦乙女”ッ!
危険と判断したのか、彼女は街灯を離れ距離を置き……空を見上げた。
そこにいたのは、灰色の“魔女”……否、それは“戦乙女”であった!
特徴的な帽子と左手に抱えた巨大な本だけみれば、クララは“魔女”。
だが、右手の槍と背中の翼……そして装甲は間違いなく“戦乙女”ッ!
「翠月の穿姫(ジェイダイト・ヴァルキュリア)・クララ、来陣だよ」
「漸くその姿を見せてくれたか……相手にとって、不足無し!!」
「ぷちマスィーンズ、アールからデルトまで……発進ッ」
「漸くその姿を見せてくれたか……相手にとって、不足無し!!」
「ぷちマスィーンズ、アールからデルトまで……発進ッ」
彼女は驚異的な身体能力で壁を蹴り、滞空するクララの元へ肉薄する。
対するクララは、両肩と逆関節風の両膝に付いている“角”を外した。
それは直ちに展開、三枚の電磁式安定翼で飛翔し……銃撃を開始した!
そう、自分で撃てないのなら他人が撃てばいい。これが答えの一つだ。
対するクララは、両肩と逆関節風の両膝に付いている“角”を外した。
それは直ちに展開、三枚の電磁式安定翼で飛翔し……銃撃を開始した!
そう、自分で撃てないのなら他人が撃てばいい。これが答えの一つだ。
「ぷちかッ!だが、全てハンドガン……この程度ならかわせる!!」
「なら、これもどうかな?“ドライエクス・ジステム”、全機発進ッ」
「なっ!?馬鹿な、八機のぷちマスィーンズだと……うぅ、くっ!?」
「なら、これもどうかな?“ドライエクス・ジステム”、全機発進ッ」
「なっ!?馬鹿な、八機のぷちマスィーンズだと……うぅ、くっ!?」
クララの腰から飛び立った八機の“三角翼機”も、銃撃を開始する。
彼女の“ヴァルキュリア・ロクス”は、遠隔攻撃用システムなのだ。
司令用の機体ならともかく、十数機もの攻撃端末を同時に動かすのは
無理な話だが……“ゲヒルン”を備えるクララならば、処理出来る!
そう……こんなじゃじゃ馬の“ぷちマスィーンズ”も手懐けられる。
彼女の“ヴァルキュリア・ロクス”は、遠隔攻撃用システムなのだ。
司令用の機体ならともかく、十数機もの攻撃端末を同時に動かすのは
無理な話だが……“ゲヒルン”を備えるクララならば、処理出来る!
そう……こんなじゃじゃ馬の“ぷちマスィーンズ”も手懐けられる。
「“クリーンキーパー”、隙を狙い狙撃を」
『Ja(了解)』
「くっ、こいつはレーザーガンか……離れろッ!?」
『Feuer(発射)』
「何、狙撃ライフル……うあああっ!?」
『Ja(了解)』
「くっ、こいつはレーザーガンか……離れろッ!?」
『Feuer(発射)』
「何、狙撃ライフル……うあああっ!?」
同名の箒型飛行ユニットを徹底的に改造した、サイクロン掃除機型の
“ぷちマスィーンズ”。背後にセットされたそれは、掃除だけでなく
自律浮遊・自動攻撃式の対MMSライフルとしても機能する主力武器!
強烈な鉛玉を受けて……厳密にはワイヤーを盾に凌いで……地面へと
落下し土煙を上げるアラクネー。直撃ならば、これで勝ったのだが。
“ぷちマスィーンズ”。背後にセットされたそれは、掃除だけでなく
自律浮遊・自動攻撃式の対MMSライフルとしても機能する主力武器!
強烈な鉛玉を受けて……厳密にはワイヤーを盾に凌いで……地面へと
落下し土煙を上げるアラクネー。直撃ならば、これで勝ったのだが。
「その箒は、隙が大きすぎるぞ……ッ!!」
「!?……しまった、切断……ッ!」
「!?……しまった、切断……ッ!」
流石と言うべきか。土煙を応用して身を隠し、再び舞い上がってきた
アラクネーは、間髪入れずに“クリーンキーパー”を斬り捨てたッ!
他の“ぷちマスィーンズ”も、クララの盾となる為に自ら斬られる。
結果として致命傷を与えられず、クララの“部下”は沈黙した……。
アラクネーは、間髪入れずに“クリーンキーパー”を斬り捨てたッ!
他の“ぷちマスィーンズ”も、クララの盾となる為に自ら斬られる。
結果として致命傷を与えられず、クララの“部下”は沈黙した……。
「さあ、どうする。その杖で某とまだ戦うか?」
本と杖を構えた“魔女”を、ビルの上から見下ろすアラクネー。
この段階でクララの手は完全に封じられた……誰もがそう見る。
それでもクララは諦めない。絶対的な勝算と“心”を持つ故に!
この段階でクララの手は完全に封じられた……誰もがそう見る。
それでもクララは諦めない。絶対的な勝算と“心”を持つ故に!
「勿論。ボクにはまだ“魔術”があるから」
「魔術……だと!?何を馬鹿な事を……」
「今、見せてあげる……ボクの、力」
「魔術……だと!?何を馬鹿な事を……」
「今、見せてあげる……ボクの、力」
──────そして、電脳の戦場に“奇跡”が起きるの。