哀れなる傀儡に、祝福を(前半)
日曜日。クララのサードリーグ登録を済ませ、私・晶が向かう先は
秋葉原神姫センター3階にある、ヴァーチャルバトルフィールド。
今日はここで、ロッテの二戦目を実施しようかと思っているのだ。
クララの装備は開発中だ。あの日暮にも助力を頼んでいるが……。
秋葉原神姫センター3階にある、ヴァーチャルバトルフィールド。
今日はここで、ロッテの二戦目を実施しようかと思っているのだ。
クララの装備は開発中だ。あの日暮にも助力を頼んでいるが……。
「アレス・グリューン──────マイスター、今日も快調ですの♪」
「有無、何よりだ。クララ、ロッテのこの装備を土台にする予定だが」
「……マイスター、綺麗だけど少し大型。CQBでは大きすぎるもん」
「ふむむ?そうか。この翼に負けぬ様、自然と重装化しているからな」
「有無、何よりだ。クララ、ロッテのこの装備を土台にする予定だが」
「……マイスター、綺麗だけど少し大型。CQBでは大きすぎるもん」
「ふむむ?そうか。この翼に負けぬ様、自然と重装化しているからな」
この通り“ゲヒルン”の効能もあり、分析能力では私を越えている。
確かに軽量級ランクの水準よりも多く、吟味して武装させたからな。
何らかの方法で、CQB……戦略的近接戦闘も考慮せねばいかんか?
何せバトルフィールドは毎回、基本的にランダムで選択されるしな。
確かに軽量級ランクの水準よりも多く、吟味して武装させたからな。
何らかの方法で、CQB……戦略的近接戦闘も考慮せねばいかんか?
何せバトルフィールドは毎回、基本的にランダムで選択されるしな。
「だったら、どっか~んって衣替えしちゃえば解決しそうですの♪」
「“どっか~ん”って……クララお姉ちゃん、無理があるんだよ?」
「む、いや待て?……ロッテ、お前の発想は使えるやもしれんぞ!」
「“どっか~ん”って……クララお姉ちゃん、無理があるんだよ?」
「む、いや待て?……ロッテ、お前の発想は使えるやもしれんぞ!」
以前入手した“アレ”を使えばどうにかなるかもしれんな、有無。
解析は少し骨が折れるが、そこはクララや日暮と共同作業で……。
解析は少し骨が折れるが、そこはクララや日暮と共同作業で……。
『槇野晶さん、バトル開始時刻です。オーナー席に付いてください』
と、時間の様だ。思いついた事を咄嗟にテキストエディタに書き込み、
私はクララを肩に乗せて、ロッテをエントリーゲートへと送り出した。
そう言えば今日の対戦相手とそのオーナーは……って彼奴めかーッ?!
私はクララを肩に乗せて、ロッテをエントリーゲートへと送り出した。
そう言えば今日の対戦相手とそのオーナーは……って彼奴めかーッ?!
「うひはッ、あくまたん良い娘だから今日もしっかり勝ってよ~?」
「は、はい御主人様ッ……あたし、がんばりますっ」
「あれは猪刈ではないか!?アレだけ叩かれて舞い戻ってきたのか?」
「マイスター、猪刈さんって確か……その、わたしの姉妹達に……」
「……覚えておったのかロッテや。まあ、気にする事はないぞ」
「は、はい御主人様ッ……あたし、がんばりますっ」
「あれは猪刈ではないか!?アレだけ叩かれて舞い戻ってきたのか?」
「マイスター、猪刈さんって確か……その、わたしの姉妹達に……」
「……覚えておったのかロッテや。まあ、気にする事はないぞ」
猪刈久夫、34歳無職。俗に言う“ネオニート”であり、神姫の敵だ。
む、「何故知っているのか」だと?当然だろうッ!彼奴は某掲示板の
神姫板で、己の神姫に不埒な扱いをして挙げ句壊し……しかもそれを
ネット上で動画公開したのだぞ──“彼女”の悲鳴も収録の上でだ!
無論散々叩かれまくり個人情報も暴露されて、奴は有名人となった。
何故罪に問われなかったのか、と事件当時の私は酷く憤ったが……。
む、「何故知っているのか」だと?当然だろうッ!彼奴は某掲示板の
神姫板で、己の神姫に不埒な扱いをして挙げ句壊し……しかもそれを
ネット上で動画公開したのだぞ──“彼女”の悲鳴も収録の上でだ!
無論散々叩かれまくり個人情報も暴露されて、奴は有名人となった。
何故罪に問われなかったのか、と事件当時の私は酷く憤ったが……。
「あくまたんはとってもエロカワイクて強いから、あんな人形なんて」
「は、はい……“けちょんけちょんのこなごな”にします……」
「……彼奴め、前の一件でもちっとも懲りておらん様だな」
『ロッテvsあくまたん、本日のサードリーグ第7戦闘、開始します!』
「は、はい……“けちょんけちょんのこなごな”にします……」
「……彼奴め、前の一件でもちっとも懲りておらん様だな」
『ロッテvsあくまたん、本日のサードリーグ第7戦闘、開始します!』
“あくまたん”とやらの姿は見えなかったが、すぐに分かるだろう。
今回のバトルフィールドは……廃工場らしい。CQBの課題探りには
うってつけの戦場だな。案の定ロッテは、翼を広げずに相手を待つ。
今回のバトルフィールドは……廃工場らしい。CQBの課題探りには
うってつけの戦場だな。案の定ロッテは、翼を広げずに相手を待つ。
「さ。始めましょう、出てきてくださいですの!」
「は、はいっ……えっと、宜しくお願いしますっ……」
「……えーと、それって重くないですの?」
「は、はいっ……えっと、宜しくお願いしますっ……」
「……えーと、それって重くないですの?」
ロッテが突っ込むのも無理はない。相手はストラーフタイプなのだが、
その機動特性をガン無視して、大量の火器を無理矢理くっつけている。
近日発売のフォートブラッグタイプと撃ち合いでもする気か、猪刈め。
その機動特性をガン無視して、大量の火器を無理矢理くっつけている。
近日発売のフォートブラッグタイプと撃ち合いでもする気か、猪刈め。
「だ、大丈夫ですっ。あたしは、御主人様の為に……勝たないとっ」
「きゃっ!?わたしだって、マイスターの想いを背負ってますのっ!」
「ぷひひ、いいぞあくまたん~!そんな鳥なんか、撃っちゃえ!!」
「きゃっ!?わたしだって、マイスターの想いを背負ってますのっ!」
「ぷひひ、いいぞあくまたん~!そんな鳥なんか、撃っちゃえ!!」
素早く身をよじり風切り音をかわすロッテの後ろで、弾頭が爆ぜる。
爆風がロッテを襲うが、閉じた翼は耐爆装甲の役を果たしてくれた。
増設した脚部の安定性もあり、次々飛来する砲弾の9割は回避する。
とは言え、100%とは行かない。そう思い分析を始めた時だった。
爆風がロッテを襲うが、閉じた翼は耐爆装甲の役を果たしてくれた。
増設した脚部の安定性もあり、次々飛来する砲弾の9割は回避する。
とは言え、100%とは行かない。そう思い分析を始めた時だった。
「きゃああぁっ!?」
「な……ロッテッ!!」
「ぶっひひ~、壊せ、壊せっ!」
「ご、御主人様……はいっ」
「な……ロッテッ!!」
「ぶっひひ~、壊せ、壊せっ!」
「ご、御主人様……はいっ」
白い羽が舞い散り、ロッテが地に伏せる。砲弾が直撃したのだ。
その結果に“あくまたん”は最初不安がったが、猪刈の叱咤にて
トドメを刺そうと、その砲身を零距離まで突きつけてきた……!
その結果に“あくまたん”は最初不安がったが、猪刈の叱咤にて
トドメを刺そうと、その砲身を零距離まで突きつけてきた……!
「ご、ごめんなさい……勝たないとあたし、あたし……」
「……あなたは何故、自分で戦おうとしますの?」
「え……!?」
「……あなたは何故、自分で戦おうとしますの?」
「え……!?」
相手の窮地に際して、それは猪刈も“あくまたん”も予期せぬ問い。
半ばでロッテは見抜いておったのかもしれんな、彼女の戦う意味を。
その証拠に、現在優位である筈の“あくまたん”は……泣き出した。
半ばでロッテは見抜いておったのかもしれんな、彼女の戦う意味を。
その証拠に、現在優位である筈の“あくまたん”は……泣き出した。
「だ、だって……御主人様に喜んでほしい……!!」
「なら“ごめんなさい”は、勝ってからでいいですの」
「うんと……で、でもっ、わたしはっ」
「あなたの“心”に誇りがあるなら……!」
「きゃぅんっ!?」
「なら“ごめんなさい”は、勝ってからでいいですの」
「うんと……で、でもっ、わたしはっ」
「あなたの“心”に誇りがあるなら……!」
「きゃぅんっ!?」
翼を纏ったロッテがバネの様に起きあがって、彼女を突き飛ばす。
猪刈の趣味であろう重火器に足を取られ、転んだ“あくまたん”。
だがそこでロッテは仕掛けたりせん。代わりに、凛と叫んだのだ。
猪刈の趣味であろう重火器に足を取られ、転んだ“あくまたん”。
だがそこでロッテは仕掛けたりせん。代わりに、凛と叫んだのだ。
「自分の戦いには、自信を持ってくださいの!」
「……自分の、戦い?」
「……自分の、戦い?」
──────その言葉は、戦乙女の誇りに賭けて。