『対戦相手求む!』の表示がされたスクリーンの真下にある扉を開き、僕たちはバトルスペースへと入り込んだ。
どうやらここの神姫センターはバトルする神姫のマスターは個室に入る仕組みらしい。個室の中にはおそらくバトルする神姫の様子を見ながら指示を出すためにつかわれるのであろう壁いっぱいの大きなモニターとヘッドセットとキーボード。そして神姫を戦場へと送り込むパネルがあった。
まるで公衆トイレのような狭く薄暗い空間に妙な落ち着きを感じてしまい、僕は立ち尽くす。
「ダイチ、なにぼーっとしてんのさ速く速く!」
ランにそう急かされわれに返った僕は、カバンを床に置きパーツの入ったケースを取り出した。
少し迷ったのちに白いパーツを取り出しランに次々と装着していく。
武装完了となったランをモニターの下に取り付けてあるパネルに近づける。するとモニターから光とも煙ともしれない白い靄が現れ、ランはパネルの中へと吸い込まれていった。
バトルステージへと転送されたのだ。
僕の手元から転送されていったランが草木のほとんど生えていない岩場に現れたのを僕はモニターで確認した。
今回のバトルステージは荒野だ。大きな岩や地面のくぼみ以外あまり隠れる場所も大したギミックもないオーソドックスなステージである。
少し迷ったのちに白いパーツを取り出しランに次々と装着していく。
武装完了となったランをモニターの下に取り付けてあるパネルに近づける。するとモニターから光とも煙ともしれない白い靄が現れ、ランはパネルの中へと吸い込まれていった。
バトルステージへと転送されたのだ。
僕の手元から転送されていったランが草木のほとんど生えていない岩場に現れたのを僕はモニターで確認した。
今回のバトルステージは荒野だ。大きな岩や地面のくぼみ以外あまり隠れる場所も大したギミックもないオーソドックスなステージである。
「ラン、油断するなよ」
僕はヘッドセットを使いマイクテストも兼ねてランに声をかける。
「わかってるって。久々のバトルだ。全力でいくよ!」
ランはそう言いつつ地面を蹴り、低空を勢いよく移動し始めた。
ちなみに今回のランの装備はなんの変哲もないストラーフの標準装備である。
もちろんランは『白黒子』であるので黒ではなく白い装甲だがそれ以外は普通に神姫ショップで売られているストラーフと見た目はまったく同じ、いわばどノーマルの状態である。
一見なんの捻りもなく弱そうに思えるかもしれないが、特に目立った癖もなく、ランも生まれた時から使っている装備なのでミスもしにくいため、この装備を僕とランはけっこう気に入っている。
今回のように僕たちが初めて来た土地や、長くバトルから離れている時はこの標準装備にすることも少なくなかった。
作者が装備を考えるのが面倒くさかったとかそういうことでは決してない。
ちなみに今回のランの装備はなんの変哲もないストラーフの標準装備である。
もちろんランは『白黒子』であるので黒ではなく白い装甲だがそれ以外は普通に神姫ショップで売られているストラーフと見た目はまったく同じ、いわばどノーマルの状態である。
一見なんの捻りもなく弱そうに思えるかもしれないが、特に目立った癖もなく、ランも生まれた時から使っている装備なのでミスもしにくいため、この装備を僕とランはけっこう気に入っている。
今回のように僕たちが初めて来た土地や、長くバトルから離れている時はこの標準装備にすることも少なくなかった。
作者が装備を考えるのが面倒くさかったとかそういうことでは決してない。
「うわっと!?」
ヘッドセットからランの驚いた声が聞こえてきた。
どうやら攻撃を受けたらしい。
どうやら攻撃を受けたらしい。
「ラン、大丈夫か!」
「うん、なんとか避けた。今のは……!?」
僕もはっきりとは確認できなかったがランの斜め後方から光線が何本か飛んできたのはわかった。
ランは投刃武器であるフルストゥ・クレインを2本取り出し構えると、先ほどよりも速い速度で光線の飛んできた方向へと移動する。
通常のストラーフとは比べ物にならないほどの加速と最高速度。この機動力こそ『白黒子』の最大の特徴のうちの1つであるといえる。
僕はモニターを穴があくほどにらみつける。先ほど光線が発射されたとされる付近を観察した。
すると大きな岩と岩の間、ちょうど影になって見難い場所に薄緑の尻尾が揺れるのを発見した。
ランは投刃武器であるフルストゥ・クレインを2本取り出し構えると、先ほどよりも速い速度で光線の飛んできた方向へと移動する。
通常のストラーフとは比べ物にならないほどの加速と最高速度。この機動力こそ『白黒子』の最大の特徴のうちの1つであるといえる。
僕はモニターを穴があくほどにらみつける。先ほど光線が発射されたとされる付近を観察した。
すると大きな岩と岩の間、ちょうど影になって見難い場所に薄緑の尻尾が揺れるのを発見した。
「ラン! 岩の狭間だ!」
僕が指示を出すと同時にランが素早くフルストゥ・クレインを投擲した。
するどい2本の刃が回転しながら飛んでいき、片方の刃はわずかに左にそれ岩に深々と突き刺さり、もう片方は素早く引っ込められた尻尾をわずかに掠めて地面に刺さった。
次の瞬間、岩の狭間から神姫の影が飛び出してきた。と同時に先ほどの光線がまた飛んでくる。
ランはそれを身を捻りつつなんとか避けながら素早く距離をとり砂地の上に着地する。
するどい2本の刃が回転しながら飛んでいき、片方の刃はわずかに左にそれ岩に深々と突き刺さり、もう片方は素早く引っ込められた尻尾をわずかに掠めて地面に刺さった。
次の瞬間、岩の狭間から神姫の影が飛び出してきた。と同時に先ほどの光線がまた飛んでくる。
ランはそれを身を捻りつつなんとか避けながら素早く距離をとり砂地の上に着地する。
「へえ~、てっきりアーンヴァルかと思ったら白いストラーフじゃんか。リペイントバージョンなんて今時珍しいねえ」
ランの遥か上空から声が聞こえてきた。どうやら相手神姫はいつの間にか空へと飛び上がっていたらしい。
「お前ここらじゃ見かけない顔だなあ。オレのプチマスィーンズたちの奇襲を1発も被弾しなかったヤツなんて久しぶりだぜ」
そう言って偉そうに腕組みをしながらフワフワと浮かんでいるのはハウリンであった。まるで男のような雄雄しいしゃべり方だ。
基本的なハウリンの標準装備に黒き翼とアーンヴァルのエクステンドブースターを装備している。本体の周りにはプチマスィーンズが飛び回っていた。
ランは相手のハウリンの姿を確認すると、相手と同じ高さまで飛び上がった。
基本的なハウリンの標準装備に黒き翼とアーンヴァルのエクステンドブースターを装備している。本体の周りにはプチマスィーンズが飛び回っていた。
ランは相手のハウリンの姿を確認すると、相手と同じ高さまで飛び上がった。
「ボクたち今日ここに引っ越してきたんだ。アンタけっこう強そうだけど、あの程度の射撃ボクにとっては屁でもないね」
ランはそう言って相手と同じように偉そうに腕を組んだ。ちなみに屁でもないなどと強がってはいるが、先ほどの攻撃は言うほど楽に避けたわけではないはずだ。少なくとも僕にはそう見えた。
しかし相手のハウリンにはそれが強がりとわからなかったのか、フンと鼻を鳴らすとこめかみのあたりをヒクヒクさせた。
しかし相手のハウリンにはそれが強がりとわからなかったのか、フンと鼻を鳴らすとこめかみのあたりをヒクヒクさせた。
「ふふん、調子に乗るなよ。洗礼としてオレがボコボコにへこませてやんよお!」
威勢よくほえるハウリン。てっきりそのまま突っ込んでくると思い、僕とランは身構えたがハウリンは素早く踵を返すとブースターを噴射させながら飛んでいった。
「あれれ? 逃げちゃったよ?」
「油断するなよラン、なにかの罠かもしれない」
僕は釘をさしたが、ランは「へーき、へーき」などといいながら全速力でハウリンの後を追い始めてしまった。止めようかとも思ったがいずれにせよランは遠距離戦は得意ではない。近づかなければ正気はないため僕はそのまま行かせることにした。
その後も相手は一向にこちらと積極的に戦おうとはせずに、逃げ回ってばかりいた。
近接距離での真っ向勝負が大好きなランにとってはまったく面白くないらしく、モニターに移る横顔は明らかにイラついていた。
近接距離での真っ向勝負が大好きなランにとってはまったく面白くないらしく、モニターに移る横顔は明らかにイラついていた。
「あー! もうっ! 逃げ回ってばかりじゃなくてちゃんと戦いなよ!」
とうとう癇癪をおこし、ランはそう叫ぶ。
しかし相手はまったく答えることはなく、そのかわりに遠隔操作されていると思われるプチマスィーンズによる射撃がランの死角の位置から飛んできた。
しかし相手はまったく答えることはなく、そのかわりに遠隔操作されていると思われるプチマスィーンズによる射撃がランの死角の位置から飛んできた。
「うわあ!」
被弾。
普段のランならばなんなく避けることができる程度の攻撃だったが、イラついているせいか、動きが大雑把になってしまっている。
相手が機動力を生かして逃げ回り、それを追いかけるランが焦れたところをプチマスィーンズによる他方向からの攻撃。先ほどからこのパターンの繰り返しだ。
1つ1つはたいして痛くもないがダメージは確実に蓄積している。
僕はモニターの右上に表示されているランと相手の残りエネルギー残量を確認する。
相手はいまだに9割以上のエネルギーを残しているのにくらべ、ランの方は残り5割に近づこうとしていた。このままではジリ貧だ。
普段のランならばなんなく避けることができる程度の攻撃だったが、イラついているせいか、動きが大雑把になってしまっている。
相手が機動力を生かして逃げ回り、それを追いかけるランが焦れたところをプチマスィーンズによる他方向からの攻撃。先ほどからこのパターンの繰り返しだ。
1つ1つはたいして痛くもないがダメージは確実に蓄積している。
僕はモニターの右上に表示されているランと相手の残りエネルギー残量を確認する。
相手はいまだに9割以上のエネルギーを残しているのにくらべ、ランの方は残り5割に近づこうとしていた。このままではジリ貧だ。
「しっかし、あの好戦的なハウリンにここまでクレバーな戦法をとらせることができるなんて……相手のマスター、かなりのやり手だな」
僕は素直に感心してしまった。
普通ハウリンと戦う場合はナックルや打撃武器といった近接武器でガシガシ打ち合う戦いになることが多いのだが、このように距離を取りまくるハウリンというのもなかなか珍しい。
神姫の性格に合っていない戦法をとるのは難しいはずだ。神姫と話し合い、心を通わせて、なれない距離の戦いの修練の積み重ねが必要になってくる。
僕も時々ランに遠距離戦の指示を出してみることもある。が、うまくいったためしはほとんどない。根っからのインファイターにアウトサイドな戦いをさせる難しさはよく知っているつもりだ。
それなのにあそこまで見事なヒットアンドアウェイを見せられるとは。ただただ、相手のマスターの技量を尊敬するしかなかった。
普通ハウリンと戦う場合はナックルや打撃武器といった近接武器でガシガシ打ち合う戦いになることが多いのだが、このように距離を取りまくるハウリンというのもなかなか珍しい。
神姫の性格に合っていない戦法をとるのは難しいはずだ。神姫と話し合い、心を通わせて、なれない距離の戦いの修練の積み重ねが必要になってくる。
僕も時々ランに遠距離戦の指示を出してみることもある。が、うまくいったためしはほとんどない。根っからのインファイターにアウトサイドな戦いをさせる難しさはよく知っているつもりだ。
それなのにあそこまで見事なヒットアンドアウェイを見せられるとは。ただただ、相手のマスターの技量を尊敬するしかなかった。
「感心してないでなんとかしてよお! このままじゃ負けちゃうよ!」
ランが顔を真っ赤にしながらそう叫んでくる。
僕は残り時間を確認する。あと1分。時間切れになれば判定で相手の勝ちだ。
どうする?
僕が悩んでいると、向こうのハウリンが喋りかけてきた。
僕は残り時間を確認する。あと1分。時間切れになれば判定で相手の勝ちだ。
どうする?
僕が悩んでいると、向こうのハウリンが喋りかけてきた。
「へへーん、たいしたことないな新入りのストラーフ! そんなザマじゃあこの街では通用しないぜ!」
「なんだとお!?」
ランの顔がさらに赤くなる。やかんでものせればお湯が沸かせそうだ。
「くやしかったらついてきな。ここで相手してやるよ!」
そう言ってハウリンは小高い岩山に掘られた、原始人でも住んでいそうな洞窟に入っていった。あからさまな挑発とあからさまな罠だ。
ランはその入り口で急停止する。ランも罠に誘われていることに気づいたのだろう。
しかし僕は停止したランに向かって叫んだ。
ランはその入り口で急停止する。ランも罠に誘われていることに気づいたのだろう。
しかし僕は停止したランに向かって叫んだ。
「止まるな、突っ込むんだ! ラン!」
僕の一声にランは一瞬戸惑ったが、すぐに加速して洞窟のなかに突っ込んでいく。
「こうなったら賭けにでるしかない……」
僕の意図を察したのか、ランも覚悟を決めた表情でうなずいた。