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そのじゅう「そして少年は少女と再会す」



 僕はここしばらく一番近所のセンターではなく、二駅隔てた町のセンターに通うことにしていた。
 理由は近所で名が知れてきた事。
 神姫のオーナーである事を、未だ隠している僕にとって、名前と顔が知られると言う事は致命傷になりかねない。
 こんな事にこだわってる自分が情けないし、ティキにも申し訳ないと思ってはいる。
 気にし過ぎなのは分かってんだけどね……
 ともあれ、ここでさえ僕らの学校の生徒からすれば十分行動範囲内なんだから、このままじゃここにさえ居られなくなるのは明らかで。
 気しなければ万事解決なのだけども。
 ……一時しのぎなんだよなぁ。
「マスタ、そろそろですよぉ♪」
「あ、もうそんな時間?」
 ティキに言われて僕は時計を見た。確かに次のバトロイの開始時間が近づいてる。
 今僕たちが主に参加しているのが、“バトロイ”。要するにバトルロイヤル。最大10体の神姫が、敵味方の区別なく闘う、というフリーバトルからの派生戦闘ルール。……試合というよりはゲームだけどね。
 バトロイの方が僕やティキにとって戦闘スキルを磨くのに適しているし、何より試合形式のバトルほどじゃないけど、一応ポイントも稼げるし、ランキングにだって微妙に影響する。
 つまり、全くの無駄じゃない。
 更にこのバトロイの面白いところは、エリアごとに区分けされた地域をリンクさせて、他センターからの参加者とも戦える点だ。
 エリアは細かく区分けされてるので、ここから参加してもエルゴ周辺の地域の人たちとは戦えないけど。
 いつかは胸を張ってあの人たちと戦いたいと思いながら、僕とティキは今日もバトルに臨む。



 ステージ・荒野

 ティキがあまり得意とはしないシチュエーション。遮蔽物がほとんど無いって事は、ティキが高速移動するための足場も無いって事。
壁を蹴りながら速度を増して高速で移動する事をスタイルとするティキにとって、何も無い荒野は戦いにくい。
 バトロイのステージ決定は完全にランダムだから、運が悪いと開き直るしかない。
 ティキはヴァーチャルの中で、悠々と大空を飛翔していた。
 本来神姫のバトルはリアルなものだけど、バトロイに関していってしまえば、その性質上、ヴァーチャルでしかありえない。
「こんな事ならエクステンドブースターも持ってきてれば良かったかな?」
『アレはかさばるから嫌なのですよぉ~』
 かさばるも何も、ウイングユニットからアームで繋げているレーサーライフルの方が大きいですよ?
 声に出さずツッコミを入れる。
『だから、これ以上重たくしたく無いんですよぉ♪』
 だから、声に出して無いんだって。
 バトルを繰り返すうちに、ティキは僕の思考を読む事が多くなってきた。
 阿吽の呼吸ってヤツなのだろうか?
 でも、それをバトル以外の局面で披露して欲しく無い気もしないでもなく。
 と、気の抜けたやり取りをしていられなくなってきた。
 こちらでも確認できる、ティキのレーダー上に姫影。タイプ・ヴァッフェバニー。
「ティキ、向こうにはまだティキは確認出来ていないハズだ。先制で一発お見舞いさせちゃえ」
『了解ですぅ♪』
 サブユニットの恩恵を十二分に享受し、未だこちらに気がついていない相手にレーザーライフルを正射。HIT! だが致命傷には至らなかったらしく、目標はロストしてない。
「遠すぎたかな?」
 しかし遠いという事はまだこちらにまだ分があるという事。向こうが同じ様なレーザーライフルを装備してなければ、こちらにもう一度攻撃するチャンスがある。
 ティキは大きく場所を変えながらレーザーのチャージを待つ。同じ位置に留まるほど間抜けじゃない。何より向こうはティキを確認できていないんだからなおさらだ。
 向こうもフライングユニットを使用しているのか、高速で接近。
 だけど、遅い!
 ティキは目標に向かいもう一度レーザーを撃つ。
 目標、消滅。
 と同時にティキは右大腿部のホルスターに収めたヴズルイフを抜く。
 確認することなくあらぬ方向に向かって六発全弾を撃ちつくす。
 その射線上にはタイプ・ストラーフが、ティキに向かってフルストゥ・グフロートゥを構えジャンプしていた。完全に虚を突いたと確信していたそのストラーフは、防御する事も出来ず全弾被弾。行動不能。
『ティキに死角は無いのですよぉ♪』
 ティキは自慢げにうそぶく。
 そう、ティキのサブシステムこと情報集析装置は、あの『十兵衛ちゃん』の義眼に肉薄する性能がある! ……と思いたい。あくまで自称なんで根拠はまるっきり無いんだけど。
 瞬く間に二姫撃墜を果たしたティキは、戦場を目指し移動を始める。
 リボルバーにリロードする事も忘れない。
 すでにエリアの全てを網羅しているティキなら、当ても無く彷徨う事は無かった。
『? なんかおかしいのですよぉ?』
 目的地に近づき、ティキは異常を訴える。
「何か不具合でもあった?」
『ティキの事じゃないのですよぉ、マスタ♪ なんか、5対1で闘ってるような、そんな反応なんですよぉ?』
「それって今参加してる全部じゃん」
『そうなのですぅ♪』
 今回は十姫埋まらなかった為に九姫でバトロイがスタートしてるから、間違いない。
「でも、5対1って卑怯くさいなぁ」
『そうなのですよぉ☆ だけど、ルール違反では無いのですぅ♪』
「で、それのなにがおかしいんだ?」
『あ、今3対1になったですぅ♪』
「え? ええぇ?? 一姫方が団体様を押してるの?」
『そういうことですぅ♪』
 なるほど、おかしいってこの事だったのか。
 そこで僕はふと考える。
 そんな強い神姫を相手にするのも骨が折れる。
 だからといって、複数でこちらに襲い掛かられるのも勘弁願いたい。
「……卑怯だけど、漁夫の利を狙おうか?」
『ハイですぅ♪』
 多分ティキは僕が何を考えたのか分かってる。1対1でやるバトルじゃないし、何よりバトロイはそういうところが面白いわけだから、ここは卑怯に徹しよう。と考えた所まで。
 だから、ティキは余計な事は言わない。……一方的な思い込みだったらヤダなぁ。
 ティキはレーザーライフルを構える。なるべく効率よく、一回の正射で出来るだけ多くの神姫を打ち倒せるようにタイミングを計る。
 相手の索敵範囲外とはいえ、ジッと同じポイントに居続けるのは落ち着かない。

 一条の閃光

 四姫中、三姫撃破。
「一姫だけ打ち洩らしか…… 上々だね」
『でもでも、残ったのアノ強い神姫ですよぉ~』
「うっそーーー」
 ツイてない。
『ものすごい速さで接近中ですぅ!』
 相手はフル装備のアーンヴァルだった(と言っても手持ちの銃器はレーザーライフルだけだけど)。ブースターがついてる分、加速性能だけならこっちが不利。遮蔽物が無いエリアなのが、今更ながら恨めしい。
「って、クサってても仕方ない。向こうもライフル持ってる分、遠距離は不利だから。ライフルパージして、突っ込んで!」
『ハイですぅ!』
 言うなり一気に距離を縮める。レーザーライフルをウイングユニットからパージしたのは少しでも身軽にする為。アーンヴァルにライフルを撃つ間を与えちゃいけない。
 もちろん、相手もこちらの思惑はわかっている。ティキが近づく前にライフルを発射。
 しかし、ティキはそれを避けた。
「おい! どうやって避けたんだよ!!」
 と、僕のその疑問にティキが今答えられるハズも無く。
 ティキとアーンヴァルは白兵距離に入る。ティキの左手にはいつの間に抜かれたのか、ロングソードが逆手で握られている。
 それに対するアーンヴァルはライフルを捨ててライトセイバーの二刀流で応戦。
明らかに不利。
 当然のようにティキの剣撃を一本のライトセイバーで防ぐアーンヴァル。ティキの剣撃に押されて、そのライトセイバーは後ろにはじかれる。だがもう一方のライトセイバーがティキに迫る。
 が、
「ありえないだろ?」
 僕は思わず呟く。
 ティキは、相手の二倍の速さを持って剣を繰り、一本の剣だけで二本のライトセイバーを防ぎきっている。
 自身の“目”に頼る必要が無いティキは、相手の太刀筋を確認するプロセスをすっ飛ばして、反射的に腕を振るっている。
 刀なんかでは出来ない芸当。こんな使い方、脆くて扱いに技術が必要な刀では、とっくに折れてしまっているだろう。
 そうなると腕が一本空いている分、ティキのほうが有利だ。
 目にも留まらない挙動でティキはリボルバーを抜くと、一瞬の間も与えずアーンヴァルに弾丸を撃ち込んだ。
「これで全姫撃墜っと。でさ、ティキ。どーやってレーザーをかわしたのさ?」
『相手がレーザーライフルの引き金を引くタイミングでその射線から逃げたのですよぉ♪ とある“にゃんこ侍”さんから教わったのですぅ☆』
 あー。そんな芸当、普通出来ませんよ? それに“にゃんこ侍”って、それ聞いたらきっと泣いちゃうよ、あの娘……
『サブユニットのおかげなのですよぉ♪』
 親父、何かとんでもないモン残して逝ってくれたよ、アンタ。
 そこまで話をしていて、僕は違和感を覚えた。
「あれ? なんでゲーム終了しないの?」
『イントルーションした人がいるみたいですぅ~』
 そんなのんきに構えてる場合か?
「じゃぁ、まだ敵がいるって事だろ!?」
『そうですよぉ♪ そろそろお迎えにいくですよぉ☆』
 なんだか増長してないか?
「……油断すんなよ」
『ハイですぅ♪』
 一抹の不安を覚えながらも、僕にはそう言うしか出来ない。
 ロングソードを左手に逆手で持ち、リボルバーを右手に握っている。レーザーライフルは撃ち捨てたままだ。
「おい! ライフルは!?」
『そんなもの、役に立たない相手なのですよぉ☆』
「知ってる神姫なのか?」
『……海神ちゃんですぅ!』



 ティキが目指すその先に、黒き翼をまとったフブキが確かにいた。
「ティキ、サブユニットの冷却剤、もうそろそろ切れる。長引くのはうまくない」
 神姫のコアと同じくらいの能力が備わっているものだ。メリットばかりなワケが無い。
 ウイングユニットそのものをヒートシンクの代替品として利用してるけど、それだけであれが発する熱量を解消できるはずも無い。だから冷却剤が無くなれば遠からずシステムダウンを引き起こす。
 数多の高性能ユニットが抱える問題を、一介の高校生が解決できるはず、無い。
『ハイですぅ♪ でもでも、そんな事言ってられない相手なのですよぉ♪』
 さっき、もしかしたら増長してるかも、と思ったのは間違いだったみたいだ。ティキはただ、ハイになってるだけ。
 僕とティキがやり取りしている間に、ティキと海神の彼我距離は瞬く間に縮まる。
 海神がティキに向かって大手裏剣を投げた。
『当たらないですよぉ♪』
 当然のように避けるティキ。しかし次の瞬間には海神本体がティキに接している。
 投擲した瞬間に移動し、手裏剣と同じ速さ海神は動いていた。
 何も言わずに忍者刀・白詰草を振るう海神。
 持ち前の反応力でティキは難なくそれをかわす。
 が、海神はティキが避けたはずのその場所に先回りし、更に白詰草を薙いだ。
「うわっ……フブキの敏捷性ってここまですごいのか!?」
 ティキだって敏捷性では負けているはずが無いのに、それでもフブキはティキの上を行っている様に見えた。
「ティキ! 距離を取って!!」
『ハ……ハイですぅ☆』
 ティキは僕の言葉に従い、海神を蹴って間を無理やり開けた。
 このまま超々白兵距離で戦っててもこっちに勝機は無い。それどころかこっちから攻めるタイミングさえ掴めてない。
 蹴った勢いと、加速性能の差でティキと海神の間に距離が開いた。すかさずリボルバーで海神に攻撃。
 連続して撃ち出された弾丸は、全弾海神目掛けて突き進む。
 当たった!
 そう僕は確信していた。
 が、

 キン キン キン

 軽やかに響くその音が僕の思いを裏切る。
 海神は弾丸のことごとくを手にするその忍者刀で両断した。
 ……話では聞いたことあるよ。まっすぐ刀の刃に向かって撃ち出された弾丸は、真っ二つに切り裂かれるって。
 だけど、だけどそれを実戦で出来る事なんてありえるのか?
 と言っても実際にそれが行われているんだから、認めるしかないのが現状。
 ……“にゃんこ侍”や“紅の剣客”あたりなら当たり前にやってそうだけど。
 でもなにより僕とティキを驚かしたのは、その動作をこちらに突進しながら行った事だ。
 つまり、僕らが驚いている隙に、海神はまたティキに接敵した訳で。
 防戦一方な展開が再び繰り返される事になる。
「~~~~~~~~ッッッ!! このままじゃジリ貧だ!」
 決定的な経験不足を思い知らされる。こんな時、ティキにどうアドバイスしていいのか思いもつかない。
 そして経験不足なのは僕だけじゃなく、ティキもそうだった。
 この局面でどう対処していいのか、わからないままに剣を振るっている。
 どうにか持ち前の反応力で持ちこたえているけど、ただそれだけ。
 だけどそれは言い換えれば海神も、ティキに決定打を与える事が出来ていないという事でもある。
 その点だけは、まだ不幸中の幸いと言えた。
 刀対剣。
 何度目かになる打ち合い。
 攻撃が単調になってきているのは気のせいか?
 ……気のせいじゃない。海神の太刀筋が一定のリズムを刻んでいる!
 これを勝機と感じた僕は、その事をティキに伝えた。
『……わかったですよぉ☆』
 コッソリとうなずくティキ。大丈夫、こっちの会話が向こうに流れる事は無い。
 ティキと僕は、海神のその攻撃のリズムを読み、タイミングを図る。
 左、左。大きく右から。
「ここでかわせ!」
 今まで剣で受けてきた攻撃を、ここで始めて後方に移動し避けた。
 次に来るのは突き。腕が伸びきったところで反撃に出れば勝てる!
 そう思ったその時、

 ティキの胸に、届かないはずの刀が刺さっていた。

「なんで!?」
 僕は海神に目を向けた。
 そこには突きを繰り出す姿勢でありながら、その手に何も持たない海神の姿があった。
 ……海神は刀を手から離し、その勢いでティキに向かって飛ばしていたんだ。



 完敗。
 最近負け無しで来てたから、正直ショック。
 僕とティキは同じように肩を落とし、オーナーブースから這い出る。
 そのまま僕らは会話も無く、大人しくフードコートへと移動した。
「久しぶりね」
 そう言って僕らの目の前に現れたのは、海神とそのオーナー結城セツナだった。
「お久しぶりです」
 彼女と初めて会ってからまだ二週間たっていない。だけどその時以来会ってないから、やっぱり久しぶりって言うのが正しい。
「会っていきなりこんなこと言うのも失礼だけど…… キミ、今のままだとサードなら通用するけど、セカンドに行ったら厳しいわよ」
 うーん、ホントにいきなりだよ。
「……何処が悪いのか教えて欲しいですぅ!」
 ティキは、何処か思いつめた様な顔で結城さんに言う。その目はまっすぐ結城さんの目を捉えていた。
「…………無駄な動きが多い」
 ティキの言葉に答えたのは海神だ。そして海神は言葉を続ける。
「あなたは自身と、その特殊装備の性能によって立っている。それは悪い事ではない。だが、それに頼りすぎている」
 あーーー 痛いトコ突いてくるなぁ。
 海神の言ったそれはまさしく僕らの最大の課題で、つまりは性能に頼りきりで能力をうまく活かしていないって事に他ならない。
「どうすればいいのですかぁ~?」
 ティキは泣きそうな声で尋ねる。
 僕もティキも、問題点がわかっていてもそれを改善する策を持っていない。
「わからない」
 だけど海神の答えは素っ気無かった。
「そんなっ!」
 思わず声を出す。
「私とあなた達は、よって立つ所が違う。だから、答えられない」
「確かに、それはそうだけど……」
 当たり前すぎる答え。だけどそれって冷たくない?
「……海神のいう事ももっともだけど、もう少し相談には乗ってあげるべきね」
 眼鏡の綺麗なお姉さんは、そう言って微かに笑む。
「あなた達は今の勝ちにこだわりすぎているのよ」
「今の勝ち、ですかぁ?」
「そう。あなた達、自分達の問題点をわかっているのでしょう? だったらその問題点に意識を持ってくるべきだわ」
 えーっと、つまりは……なんだ?
「常に課題を設置し、試合の勝ち負けよりもその課題をクリアする事を目的に戦いなさい。それを繰り返す事こそが、経験」
「なるほどー」
 納得してしまった。
 そう、僕らは勝つ事こそが経験を積む事と思い違いをしてた。それじゃあ問題点を改善する事なんてできっこない。
「あっれー? 雪那君??」
 と、そこで聞き覚えがある女性の声――個人的には、あまり聞きたくない声――だ。
 振り向くとそこには僕と同じ学校に通う女の子がいた。その娘の隣にはやっぱり見覚えのある男が連れ添っている。
 あぁ、確かに僕よりもイイ男だよね。背も高いしさ。
「……どーも」
 形だけ、僕は頭を下げる。
 あれ、彼氏、今結城さんに見とれてなかったか?
「どーしたの? こんなところまで? あれ? 彼女と一緒なの?」
 でもそんな事に気付かず、彼女は好奇心に彩られた目で僕らを見る。
「マスタ、誰なのですかぁ?」
 ティキが訝しげに僕に問う。
 そう言えばティキには話した事無かったっけ。
 で、僕がティキに答えようとするそのお言葉を遮って、彼女が口を開いた。
「うわっ! 何それ? もしかしてぶそーなんとかってヤツ? ……へぇー、雪那君って、そんな趣味あったんだぁ。納得ぅ」

 カッチーン

 蔑むようなその言い方に僕は憤った。
 が、彼女の言葉は終わらない。
「どーりで、ねぇ。そんなガラクタなんかが好きなら、仕方ないわよねぇ。良かった、さっさと別れて」
 ガラクタなんか? ガラクタって言ったか!?
 怒り心頭に発するって、こんな気持ちか?
 腸が煮えくり返るような思いで、僕は立ち上がる。
 目は一点、彼女の目を見据えて。
「こわー! オタクが睨んでるー」
 からかうような口調でそう言うと、彼氏の背後に隠れた。
 ……彼氏もそれに対して、オレが守る! 的な態度を取るもんだから、本当に腹が立つ!
「……マスタ、撃っちゃっていいですかぁ☆」
 いつもの様な口調で、でも怒りをあらわにしてティキは言うけど。
「だめだ。オレの方がムカついてっから」
 言葉にはっきりと出して、この場にいる誰にも聞こえるように言った。
「何か勘違いいていない?」
 だけどその後に言葉を発したのは結城さんだった。
「あなた、自分が何かを選んだ風に、そう言っているけれど、果たして本当にそうなのかしら?」
 空調はしっかり整えてあるはずなのに、その声にはぞっとするような冷たさを感じた。
「……どういう事?」
 彼女も負けていない。
 しかし
「物の道理も見抜けなく、他を蔑む事でしか己の優位性を確認できない人に、何言っても無駄かしら?」
 結城さんの迫力勝ち。美人が醒めた目で一瞥するだけで、彼女もその彼氏も一言も発せ無くなる。
 ……もちろん僕も。
「……勘違いしているようだから言っておくけど、あなたが何かを選んだんじゃない。彼が、私を選んだのよ。……わかるかしら?」
「!」
 結城さんのその言葉を聞いて、彼女はカッと怒りを表情に表す。
 その表情を確認し、勝ち誇った様な笑みを浮かべると、結城さんは「出ましょう」と言って、僕の腕を取った。
 そして止めを刺す様に、挑戦的な口調で、
「見る目が無いのね。この人はこれからもっとイイ男になるわ」
 と言った。



「はあー、スーッとした」
 センターを出るなり、結城さんが言う。
「あのあの、マスタとセツナさんは付き合ってるですか??」
 ティキが僕の頭の上でワタワタして聞く。
 当の僕は現状についていけなく、真っ白になっているわけだが。
「ティキちゃんの目を避けて、藤原君と交際なんて、出来る訳無いじゃない」
 うん。僕も誰かと付き合ってる覚え無いし。
「私も腹が立ったから、ね。それにああしないと、藤原君、殴ってたでしょう?」
「え……あぁ……ハイ」
 確かにあの時僕は男共々あの女をぶん殴ってやろうと思っていた。
 そして多分、僕はその通りにする事が出来た。
「すみません…… それと、ありがとうございます」
 これは純粋に、僕が暴力を振るうのを止めてくれたお礼。
「いいのよ。それに私、自分の男云々以外、うそ言ってないし」
「へ?」
 驚いて結城さんの方を見ると、そのすぐ近くにあるままの顔は、まっすぐ僕の目を見ていた。
 顔が赤くなるのを実感する。
 こんな綺麗な人に、じっと見つめられれば、頭に血が上っても仕方ないだろ。
 そんな僕を見てなのか、結城さんはやわらかく笑って、掴んでいた僕の腕を放す。
「あなた達はもっと、ずっと強くなるわ。だから、そのための精進を忘れないで。ね。」
 そう言うと「また、どこかで」と言って彼女は僕に背を向けた。
 そんな彼女を僕はボーっと見とれていた。
 と、突然髪の毛を引っ張られる痛みで我に返る。
「な……なんだ? ティキ! 痛い、痛いって!」
 ティキは何故かムキになって髪の毛を次々と引っ張っていく。
「ティキさん? ホントに痛いんですけど。 ……ナニ怒ってんのさ?」
 僕は、できる限り静かにティキに問うた。
 それに対してティキは、僕の頭の上で暴れる事を止めもせず言った。
「ティキにも良くわからないのですよ! でもでも、なんだかスッゴク腹が立つのですぅっ!!」
 ……ティキさん、それでは僕にも良くわかりません。

終える / もどる / つづく!




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