夏特有の熱い日射しの中、公園にさしかかった辺り。妙にツヤツヤとした華凛と、すっかりくたびれた私が歩いていた。
結局あの後、華凛に身体の隅々までいじくりまわされた。もう、ゴールしても、いいよね?
結局あの後、華凛に身体の隅々までいじくりまわされた。もう、ゴールしても、いいよね?
「いや~、これでまた樹羽と仲良くなれた気がするわ♪ 樹羽の顔もエロかったし♪」
「……おやじ臭い」
「いいじゃん、女の子同士なんだし♪」
「よくない」
「これで今夜のオカズには困らないわね!」
「私、美味しくない」
「大丈夫、美味しく食べるから」
「意味がわからない」
「樹羽はしらなくてもいいの! むしろ知っちゃいけないの!」
「……?」
「……おやじ臭い」
「いいじゃん、女の子同士なんだし♪」
「よくない」
「これで今夜のオカズには困らないわね!」
「私、美味しくない」
「大丈夫、美味しく食べるから」
「意味がわからない」
「樹羽はしらなくてもいいの! むしろ知っちゃいけないの!」
「……?」
知るな、と言われたら気にはなるが、ここは素直に引いておこう。なんだか嫌な予感がする。私は話を切り替えた。
「それで、なんの筐体が入ったの?」
「神姫のヴァーチャルバトル用の筐体だよ!」
「神姫のヴァーチャルバトル用の筐体だよ!」
華凛は興奮気味に声を高くする。それほど興味があるんだろう。
「今まで、首都圏のゲーセンにはあったんだけど、地元には無かったんだよね~。これでくすぶってたマスター連中も暴れだすよ~?」
「ふ~ん……」
「ふ~んって、興味ないの? 神姫」
「神姫は知ってる。でも詳しいことは知らない」
「ふ~ん……」
「ふ~んって、興味ないの? 神姫」
「神姫は知ってる。でも詳しいことは知らない」
そう言うと、華凛は胸をのけぞらせる。自慢したいのだろうか?
「そう言うだろうと思って……はい!」
華凛はバッグの中をガサゴソと探り、一冊の本を取り出した。武装した神姫のシルエットが表紙の少し厚い本だ。
タイトルは『神姫の今昔』。
タイトルは『神姫の今昔』。
「そこの木陰で読んでてよ。あたし、飲み物買ってくるから」
「あ、ちょっと……」
「あ、ちょっと……」
私の制止も聞かず、華凛は行ってしまった。一人残された私は、仕方なく木陰に移動。少し考えてから、本を開いた。
2030年、異様とさえいえる加速度で発達した人類の科学は、
人の脳というシステムそのものを全て量子コンピューターにコピーするという半ば強引な方法で、
人間とさして変わらないレベルの思考を可能にしたAIを作り出した。
このAIは以後改良を重ね、様々な形でロボットに組み込まれていくことになった。
体長15cmの高性能小型ロボット。そう、2031年に発売され後に武装神姫と呼ばれる彼女達にもである。
人の脳というシステムそのものを全て量子コンピューターにコピーするという半ば強引な方法で、
人間とさして変わらないレベルの思考を可能にしたAIを作り出した。
このAIは以後改良を重ね、様々な形でロボットに組み込まれていくことになった。
体長15cmの高性能小型ロボット。そう、2031年に発売され後に武装神姫と呼ばれる彼女達にもである。
2040年、人はついに電子の海に人の精神を送り出すことに成功する。
『神姫ライドシステム』と名付けられたそのシステムは、人間の意識を機械の体である神姫の中へ、
つまるところCPUという仮想空間の中に繋げることを可能にした。
さらにはこれを応用し、神姫を介して別の電脳空間への接続まで実現したのである。
20世紀末などにSFで描かれていた『ネットダイブ』などと呼ばれる仮想空間へのリンクを可能にした画期的な技術。
だがこのような技術でさえ表立った注目をされないほど――
『神姫ライドシステム』と名付けられたそのシステムは、人間の意識を機械の体である神姫の中へ、
つまるところCPUという仮想空間の中に繋げることを可能にした。
さらにはこれを応用し、神姫を介して別の電脳空間への接続まで実現したのである。
20世紀末などにSFで描かれていた『ネットダイブ』などと呼ばれる仮想空間へのリンクを可能にした画期的な技術。
だがこのような技術でさえ表立った注目をされないほど――
「えい」
突然、頬に冷たい物が押し当てられる。それがペットボトルと気付くのに時間はかからなかった。
突然、頬に冷たい物が押し当てられる。それがペットボトルと気付くのに時間はかからなかった。
「冷たい」
「ずいぶん真剣に読んでたわね。やっぱり興味あるんじゃないの?」
「……ない」
「ずいぶん真剣に読んでたわね。やっぱり興味あるんじゃないの?」
「……ない」
私は本を閉じて、ペットボトルを受け取った。
「そう? 妙にはまってた気がしてね」
「……本はじっくり読む方」
「……本はじっくり読む方」
不覚にも、華凛の接近に気付かないほどに読みふけっていたことは確かだ。
「ふ~ん、まぁいっか。まだ読む?」
「ううん、もういい」
「ううん、もういい」
私は本を華凛に返す。華凛は本を受けとると、バッグの中にしまった。
「じゃ、行こっか」
「うん」
「うん」
木陰から出る。また熱い日射しが照りつけてくる。
神姫……か。
神姫……か。