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『13km』-3/3



取り決めのあった通り、ギンが選んだステージはハルが一人で戦った時と同じ、規則正しく縦横に走る道路の中に高層ビルが立ち並ぶ、しかし人の姿がない箱庭。
目前にコンクリートの巨木のようにそそり立つビル群の反対側、あいつらのいる場所まではかなりの距離がある。
この距離すべての物を、さも障子紙を破るかのように薙ぎ払い襲い来る神殺槍に改めて戦慄しそうになるけど、長く伸びる『ただそれだけのもの』であれば、何も恐れる必要なんてない。
「……とはいえ、やっぱりちょっと心配になってきた、かも」
「私の太鼓判では不安か? ホノカ」と茶化すように言うハル。
「ううん、そういうんじゃないけど」
「ネタさえ分かれば、あとは恐れず戦うだけだ。さあ、始まるぞ」
私達はまだ、ギンの武装をこの目で見ていない。
だからこれから1つずつ、推理が正しいことを証明していかなきゃいけないわけだけど、一度でも間違っていれば、即、真っ二つにされてしまう。
今更だけど神姫バトルに一撃必殺ってアリなのか。
ちまちま撃ち合ったりポコポコ殴り合ったり、LPを少しずつ減らしていくのが私の知る神姫バトルだ。
一度攻撃を当てればハイおしまい、だなんて理不尽な攻撃が許されるのか。
許されてたまるか!
いや、そういえばハルも、一撃必殺とはいかないまでも一度の攻撃でLPをごっそり持っていくタイプだし、今私が感じている恐怖に近い緊張感なんて日常茶飯事、なんだろうか。
ちらりとハルの顔を盗み見ると、その瞳に恐れの色はまったく映っていなかった。
やるか、やられるか。
普段からこんなロシアンルーレットのような勝負に身を置いているから、あんな目ができるんだ。
スタートの合図は、心構えができないまま聞くことになった。



合図と同時に私達は高く飛び上がった。
同時に遙か下、私達が立っていた高さを赤く細い光が薙いだ。
ログで見た時よりも鮮やかすぎる赤が地面を覆ったように見える。
光は水平に走ったため、ほぼすべてのビルは切断されても崩れず、コンクリートを抉る轟音を立てるだけだった。
しかし続け様、上昇する私達を追いかけるように2,3,4回と走る光がビルを斜めに切断していき、ステージ全域にゴゴゴゴと物凄い音を響かせながら、同じ向きに一斉に倒壊していく。
摩天楼が次々と無残な姿へと変わっていき、気分はハリウッドの特撮映画だ。
あれだけ背の高かった街並みが、私達の眼下で、まるで風に吹かれた積み木のようにあっけなく崩れていく。
その光景があまりに私の知る神姫バトルからかけ離れすぎていて、一周回って私の頭は落ち着いていた。
崩れ落ちるビルに合わせて私達も上昇から一転して急降下を始めて、闇雲に振られるビームソードの合間を縫ってスタートの位置に戻ってきた。
未だ崩壊を続けるビルから吹き出る埃で視界がかなり悪くなり、ゴーグルをかけた。
ハルは軽く目を細めるだけで、埃を払おうともしない。
「ここまではあなたの予想通りだ。どうだ、少しは自信を持てたか?」
予想といっても、正解だと分かった今となっては、逆に頭を悩ませていたことが馬鹿馬鹿しく思えてきた。
つまり、ギンは相手の位置を知る術を持たず、長いビームソードを当てずっぽうに振っているだけなのだ。
昨日ハルをいきなり真っ二つにしてみせたのだって、よくよく考えてみれば神姫の背の高さは皆だいたい同じなんだから、とりあえず水平に振っておけば何処かしらには当たる。
だから実はスタート直後に適当に上昇でもすれば、初撃は必ず回避できるんだけど、それを知らない相手にとってはまさに、回避不能の一撃必殺ってわけだ。
さらにビルという目眩ましが自分の位置を性格に狙われたと錯覚させるのに一役かっている。
一晩悩んでいた時は、真っ二つにされたハルの姿が目に焼き付いたままだったせいか、ずっと【自分の位置を正確に狙ってくるビームソード】をどう回避するかばかり考えていた。
この時から私とハルは、ギンの術中にはまっていたんだ。
神殺槍に対する恐怖を勝手に増大させ、戦意すら失いかけていた。
思い込みとはまったく恐ろしい。
「そう言えば……」
ネタが分かった今更になって、神様の言っていたヒントの意味が理解できた。
超遠距離かつ大威力のビームソードをもし自分が使うとしたら、どう扱うか。
索敵なんて面倒なことをせずとも、そんなの単純に、相手のスタート位置目掛けて振りさえすればいいのだ。
あのタチの悪い神様はヒントと言っておきながら、ほとんど正解を口にしていたんだ。
「ほんっと、ひねくれてるんだから」
「ん? どうかしたか」
「こっちの話よ。じゃあハル、予定通りに」
「私は見つからないようギンと距離を詰めて、あなたがイヅルを仕留める。次に会う時は勝利の目前だ」
槍の穂とライフルのバレルをカチンと打ち鳴らし、私達の本当の勝負が始まった。
足元を狙って地面スレスレに走った光を軽く飛び越えて、ハルとは違う方向へ飛び出した。



イヅルはサポートだ、というギンの言葉を信じるのなら、イヅルは間違いなく索敵に特化したタイプだ。
恐らく、アーティル・フルバレルとしての能力すべてをその一点につぎ込んでいる。
敵の座標をギンに伝え、その座標をビームソードが薙ぎ払う――見つかった瞬間にゲームオーバー。
逆に言えば、イヅルさえ倒してしまえばギンのビームソードの命中率をかなり低く抑えることができる。
索敵の時間を与えるほどこっちが不利になってしまうのに、どうしても移動が慎重になってしまい、倒壊したビルの影をコソコソと飛ぶ速度が自然と落ちてしまう。
ストライカーのプロペラの音をできるだけ小さく抑えて、土埃も荒らさないようにした。
辺りを覆う土埃は、十中八九レーダーを使っているイヅル相手には隠れ蓑にはなってくれず、目視で探す私の妨害にしかならなかった。
空戦型のスコープのような目でも、先に相手を発見できるかは微妙なところだ。
最悪、ギンとイヅルの正面に出て、ハルが近づく時間を稼ぐ覚悟でいないと。
……ギンのビームソードはしばらく鳴りを潜めている。
あたりを付けて攻撃するのをやめて、イヅルの探知を待っているのだろう。
あれだけの大出力ならエネルギーもそんなにもたないはずだし、その節約の意味もあるはず。
――――と。
「結構簡単に見つかったわね」
土埃が少しずつ引いていく中、遙か遠くにキラリと緑色に光るランプが見えた。
物陰に隠れつつ目を凝らしてみると、倒壊したビルの上に人影らしきものも見える。
どうやらイヅルはスタートの位置からほとんど動いていないらしかった。
さっきまで振るわれていたビームソードの位置から考えて、恐らくギンも近くにいる。
まだ私の体が五体満足でいるところを見ると、どうやらここはイヅルの索敵範囲外らしい。
ほんの少しだけ、気を落ち着けることができた。
いつ斬られるか分からない緊張感で、さっきから頭がどうにかなりそうだったのだ。
というか、「……私って、こんだけしか進んでなかったのね」ビビりすぎて私こそスタートの位置からほとんど動いていなかった。
ああ、恥ずかしい。
とにかく無事見つけたんだから、後はこのまま狙撃すればいいんだけど、いかんせん距離がそこそこあって土埃が舞い視界が悪いため、確実に仕留められる自信がない。
せめて目視でハッキリと的を捉えられる位置までは近づきたいんだけど、それだと確実に探知されるだろう。
もう少し近づいてみるかと進もうとした、その時だった。
イヅルのセンサーのランプが緑から赤に変わり、その直後、潜んでいたビームソードが再び走った。
今度は先のようにステージ全域を撫でるような攻撃ではなく、狭い幅をピンポイントで狙っていた。
私は固まったまま、その赤い光を見送ることしかできなかった。
幸か不幸か、赤い光は私とは全然違う位置を通りすぎていった。
いや、不幸に違いない。
ハルが見つかったんだ。



バトルスタート直後とは比べ物にならないくらい激しく、ビームソードはある一点めがけて滅茶苦茶に周囲のものを切り刻んでいった。
崩れ落ちたビルがさらに細切れにされていき、縦方向に振られた時は空と地面を割った。
頭上に伸びた耳を掠めるほど近くを光が通り過ぎ、戦慄するより早く周囲の瓦礫が崩壊を始めた。
「ちっ……!」
ハルがこの猛攻を凌いでくれているかは分からない。
仮に無事だったとしても、いかに機動力に優れたアルトレーネとはいえ、私のような小回りが効かないんじゃこんな嵐のような攻撃をいつまでもやり過ごせるはずがない。
もうビビってなんていられない。
瓦礫から飛び出して、真っ直ぐイヅルを目指した。
連携が上手くいっていないのか、イヅル自身も崩壊に巻き込まれて体勢を崩している。
スターを構えたままストライカーを全力全開で走らせた。
ゆっくり狙って撃つ暇なんてない。
どうせイヅルにまともな攻撃手段は無いんだし、真正面から突っ込んで蜂の巣にしてやる。
トリガーを引き絞ったと同時、イヅルと目が合った。
「デスク長!」と叫ぶイヅルの唇がスローモーションのように見えた。
もう唇が見て取れる位置まで接近していて、イヅルが白衣の内側からチャチなハンドガンを抜くより先に、スターのマズルが三連続で火を吹いた。
一発目はイヅルの足元に着弾して、二発目と三発目は腹と胸に命中した。
この距離なら確実に致命傷になっている。
直撃を受けて弾け飛ぶイヅルを下方に見送りながら追い越した、その瞬間。
赤い光が走って、イヅルの首を切断した。
「はっ!?」
それと一緒に両足のストライカーの下半分を切断され、切断面から火花が散った。
推進力を失った体が重力に引っ張られた。
もうギンは目と鼻の先にいた。
私のことを捉えている。
首と胴が別れたイヅルのことなんて見ていなくて、私を斬るついでに「運悪く」巻き添えにしてしまったらしかった。
全速力で飛んでいた勢いそのまま地面に激突し、瓦礫に体がぶつかってようやく止まった。
「う、ううっ…………ぎゃっ!?」
うつ伏せになった私の顔の右のすぐ側を赤い光が通り過ぎ、右肩から先が切断された。
スターを握っていた感覚が無くなった。
「う、うわあああああああああああっ!」
「どうしてくれんねん、おたくのせいでイヅルがマミってもうたやないか。カワイイ部下のグロシーン見せられて、こりゃあ慰謝料百万円やで」
糸目のラプティアスはバトル前と変わらない涼しい顔で、私のことを見下している。
その両手には想像していたようなビームソードのグリップではなく、火炎放射器のようなゴツいものが握られていた。
ギンの背後には四角い、神姫一体がスッポリ入りそうなくらいの箱があって、ギンの手元の放射器と太いケーブルで繋がっている。
あの大威力を実現させるためには、これくらいの重装備がないといけないんだろう。
「この神殺槍を作ってもろてからまだそう経ってないんやけど、他の神姫に見られたんは研究室の連中を除いて、おたくが初めてや。こんなどう見ても槍に見えん不っ細工な武器やから見られたらネタがバレてまうやろ? 言いふらされるんは勘弁してほしいトコやけど、今日から第三デスクのメンバーになるんやったらまあ、知られるくらいええやろ。さらに大サービスや、神殺槍の秘密、こっそり教えたろか。ホンマ内緒やで」
ギンの言っていることよりも右腕の喪失感による気持ち悪さが大きすぎて、ほとんど聞き取れなかった。
離れた右腕はまだスターのグリップを握ったままだった。
両足もストライカーごと斬られ、もう動くのは左腕しかなかった。
それでも。
「……負けない」
「あん? なんやて?」
「あんたなんかに負けないんだから! まだ私達は負けてないっ!」
「ホンマ生きのいい飛鳥やで、爪垢をイヅルに飲ませたいくらいやわ。でもなぁ、『火葬』を頼りにしとるんやったらそれは残念やったなぁ」
ギンが言い終えたと同時、近くの瓦礫が突然弾けて、ハルが飛び出してきた。
「オオオオオオオオッ!」
ハルは私よりも酷い有様だった。
左足は膝から下がなく、スカートアーマーと副腕は両方とも切り取られ、残った右足と右腕はそれぞれ足首、手首から先を喪失していた。
長さが半分になった槍を脇に挟み、なんとか固定してギンに向かって突進をかけている。
綺麗だったポニーテールも、ヘッドセンサーごとなくなっていた。
それでもハルの闘志は少しも欠けてはいなかった。
動ける限り足掻き続ける。
そんな彼女の泥臭くて眩しい姿を見たギンは、
「ハイ、おつかれさん」
と呟いただけだった。
槍の切先はギンに届く前に地に落ち、ハルは私と同じように地面に激突した。
「あぐっ!? な……なんだ、力が……」
途中で力尽きてしまったようには見えなかった。
よく分からないが、突然ハルの体が痙攣しはじめたのだ。
「ナイスタイミングやで『火葬』。今から【それ】の説明をするとこやったんや」
火炎放射器のようなランチャーを手元で操作したギンは、ごくごく短いビームソード(それでも普通の剣と比べて大分長い)を伸ばして、ハルの手から離れた槍を細切れにしてしまった。
「ボクの『13km』って通名は知っとるやろ。あれ、ボクが流した嘘なんや。言うたほど長くは伸びん。せいぜいどのステージでも端から端まで届くくらいや」
ギンがつらつらとどうでもいい秘密を暴露する中、私の体も突然激しく痙攣を始めた。
どこも苦しいわけではない。
ただ、体が言うことを聞いてくれない。
「こんだけキョーレツな武装やったら支えとくのもしんどくてな、ぶっちゃけイヅルが敵さんの位置見つけても、その位置をキッチリ斬るのってなかなか難しいんや。二人とも中途半端に怪我しとるんがエエ証拠やろ?」
確かにそうだ。
位置を特定したハルも視認した私も、致命的な部分は斬られていない。
「ラプティアスはパワーのある神姫やないから、神殺槍を使いこなせんことは初めから百も承知なんや。敵さんを取り逃がして接近されてまうことはまあ、多々あるやろ。そんでボクがどうした思う?」
尋ねられても、私もハルも痙攣が酷くてギンの顔すらまともに見ることができない。
「ビームにな、毒、混ぜてみたんや。そしたらこれが大当たりでな。血ぃ吐いて倒れるようなえげつないヤツと違うで、ちょっと体が痺れるくらいや。せっかくビームを避けても、毒吸い込んでしまえばお終いや。なかなか上手いこと考えたと思わんか」
「さ……最悪な、こ……考え……わね」
「褒め言葉と受け取ったろ。さってそろそろ終わらそか。この後歓迎会も開いたるさかい、早いとこ決着つけんとな」
「ま……まだだ」
「あんなぁ、投了って言葉知らんか? これ以上は恥かくだけやろうに」
「あ、あんた……なんかに」
可動部という可動部が痙攣して私もハルも丘に打ち上げられた魚のように、みっともなくビクついている。
まな板の上で斬られるのを待っている哀れな魚――それでいい。
みっともなくていい、哀れでいい。
毒が回ったって体はまだ動くんだ!
「「負けるかぁ!」」
ハルが最後の力を振り絞って飛び上がり、ギンの腕に噛み付いた。
槍も、腕も、手も足も失ったハルの最後の攻撃手段。
「イタァっ!? な、なにすんのや自分!?」言うや噛み付かれたほうとは反対の手でハルの顔面を殴りつけた。
二発三発と続けて殴られ、目に涙を滲ませても、ハルは咥えた腕を犬のように離さなかった。
たまらずギンはハルの腹部を蹴りつけて引き剥がした。
地面を転がるハルの勢いが止まる前に、ビームソードで今度こそ胸を貫いた。
貫かれた瞬間、最後にビクッと大きく痙攣して、ハルはビームソードに縫い付けられたまま動かなくなった。
「はあ……はあ……! な、何やったんや、アタマおかしなったんと違うかホンマ……普通ここまでするか?」
「あんた、に……負、けたく、ない……からよ」
ハルが稼いでくれた時間でセイブドマイスターに手が届いた。
幸運にも、スターのバレルは狙い通りの位置を向いているから、トリガーを引き絞るだけでいい。
「や、やメェや! そないなことしたら――!」
狙いに気づいたギンが慌ててビームソードを向けてきた。
それより早く、弾丸はギン、の後ろの大きな箱に命中した。
エネルギーを大量に蓄えたそれの爆発ならきっと、ギンを一撃で吹っ飛ばせる。
まあ、私も一緒に吹っ飛ぶわけだけど。
カッ! と箱が光った瞬間、うつ伏せになっていた私の左胸に、何か地面に挟まれた硬いものの感触があった――。


◆――――◆


「何でや、おかしいやないか!」
茶室に戻るなり、ギンの細目が私を睨みつけながら詰め寄ってきた。
私はといえば、五体満足であることにこれ以上無い喜びを感じているのであった。
毒による痺れもない。
ビバ☆私のボディ。
「あれだけの爆発で何で自分だけ助かっとんのや! せめて引き分けやないと話通じんやろ! ズルしたんと違うか!」
「ああ、コレのおかげよ」
懐から取り出したのは、小さくて丸いアイテム。
バトル前にハルが渡してくれた、使い捨てのシールドだ。
うつ伏せになった私の胸と地面にギュッと挟まれて作動してくれたのだった。
神様の言葉じゃないけど、私は実に運がいい。
「そ、そないなもんで……!」
全然納得がいかない風のギンはまだ私にイチャモンをつけようとするが、間にハルが入ってきて遮られた。
「この勝負、私達の勝利だ。他に何かあるのか」
「……フン、ええわ。今回はこれくらいで諦めたる。しかし『火葬』に『セイブドマイスター』、自分ら後で後悔しても知らんで。ウチの研究室に後から入れろ言うても聞かんからな」
そう言うとギンは黙っていたイヅルを連れて、茶室の出口へ向かった。
「待て、ギン」
ハルは何故か呼び止めた。
「あなたは何故、最初の一戦で私を仲間にしようとしなかったんだ」
背を向けたまま立ち止まったギンはひとつ大きな溜息をつくと、糸目を少しだけこちらに向けた。
「あの時言わんかったか。ボクの神殺槍は初見殺しや。最初の一回だけ神サマも殺せる、ただそれだけの武装や。そんなコト繰り返して仲間増やして、何が楽しいんや?」
それはハルへの返事というより、ギン自身に言い聞かせた言葉のように聞こえた。
ヒラヒラと手を振ったギンはそれ以上何も言わず、茶室を後にした。


◆――――◆


「いやいや、初戦を飾るに相応しい、際どい勝負だった。君のストライカーが斬られた時は、ああこりゃもうダメだ、って思ったんだがね。相手がおしゃべり好きの油断屋で助かったな。やはり君は実に運がいい」
仮想空間から戻った私を、神様はパチパチと拍手で迎えた。
あれだけ頑張ったのに出迎えがこんな胡散臭い神姫一人だなんて、まったく割りに合わない。
だからといって豚マスターに賞賛されたところで嬉しくもなんともないけど。
しかしそれでも、外出中のマスターの知らないところで勝利を重ねる神姫ほど虚しいものはないとも、胸のCSCは訴えていた。
「そうね、運が良かったのは認めるわ。今だってまだ、普通に戦って勝てる相手じゃなかったって思うもの」
「随分と素直じゃないか、面白くない。相方に何か言われたのかい」
「フフン、神姫はバトルを通じて成長していくもんなのよ」
「ふうん……兎に角、君はこれで悲願への道を七分の一進んだことになる。まだ先は長いが、次の勝負までゆっくりと英気を養っておくがいいさ」
そう、あれだけの死闘を繰り広げても、まだ最初の一人でしかないんだ。
あんなのをあと六人も相手しなきゃいけないと思うと、重い溜息が出てしまう。
ウンザリしてしまう。
「でも……まぁ」
私にはハルヴァヤという素晴らしい仲間ができた。
二人で立ち向かえば、たぶん、いやきっと、何とかなる。
「おっと、勘違いしないでくれよ。言っておくが君自身の手で相手を倒さなきゃ無効試合だからな」
「は?」
「さっきのバトルも、もし君ではなく相方のハル君が勝負を決めていたら、勝利数にはカウントしなかった。ああでも心配しなくていい。そうなった場合は次の新しい相手を探してやるさ」
「そういうことは先に言いなさいよ!」
「それともう一つ。君がもし他人に僕との契約のことを話した場合、僕は姿を消すからそのつもりで」
「だからどうしてそんな大切なことを今更……はぁ。もういいわ、何にせよ一人目を無事クリアしたことだし。今日は疲れたからさっさと寝ちゃいたい」
実体を取り戻した格好のまま、クレイドルに意識を沈めていく。
まだ昼間なのに、なんだかとても長い一日を経験したようだった。
久しぶりに、ぐっすりと眠れそうだ……と、ひとつ気になることがあった。
「ねえ。次の相手ってもう決まってるの?」
「勿論だとも。君も聞いたことがあるだろう、『大魔法少女』だ」
「はぁ!?」と思わずクレイドルから飛び起きてしまった。
「あんなの勝てるわけないじゃない、正真正銘のバケモノよ!」
「はっはっは、だからこそ二人目として相応しいんじゃないか。誰もが認める強敵をサクッと倒して、さらに勢いをつけてもらおうっていう、僕の粋な計らいさ」
頭が痛くなってきた……あの狂ったシュメッターリングをどうやってサクッと倒せというのだろうか、この神様は。
いやそもそも、私みたいな有象無象を相手にしてくれるんだろうか。
できることなら、頼まれたって相手にされたくないけど。
「そう思い悩むことはないさ。まだ時間はタップリあるんだ、さっきのバトルのようにギリギリの展開を考えておいてくれよ」
「狙ってやったんじゃないっての」
こういうのも、一難去ってまた一難、と言うのだろうか。
ズキズキとしてきたこめかみを押さえながら、ボフッとクレイドルに倒れ込んで、私はそのまま深く静かな眠りへと落ちていった。



一人目
『13km』
鷲型ラプティアス エアドミナンス
清水研究室第三デスク長 ギン
撃破完了!








ギンが京都弁ではなく大阪弁(エセ)でしゃべるのは仕様です。
あくまで市◯ギンとは別人ですから、と言い訳をしてみます。








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