第3部 「竜の嘶き」
「ドラゴン-1」
2030年代に登場した飛行能力を備えた航空MMS。
それらは多種多様なメーカーから出された数を含めれば数え切れないほどの多種多様性を誇ったが、一応の一定の安定した戦果をあげる活躍をし、:名機:とよばれるワクで絞っていくと、だいたい10機種くらいになる。
フロントライン社の天使型シリーズ「アーンヴァル」、戦闘機型「飛鳥」、スタジオ・ルーツ社製サンタ型「ツガル」、マジック・マーケット社セイレーン型「エウクランテ」コウモリ型「ウェスペリオー」、アキュート・ダイナミックス社製ワシ型「ラプティアス」ディオーネ・コーポレーション社製戦乙女型「アルトレーネ」
といったところが安定した強さを持っている。
もちろん、各神姫に対する評価は、オーナーにより、また神姫マニアの見方によっていろいろ違ってくる。
例えば旧式で性能的には最新鋭の武装神姫には劣っていても、局地迎撃用や戦闘可能時間の違いとか、火力、防御力、搭載能力、稼働率、整備製、コストパフォーマンスなどの点も考慮にいれなければならない。
例えば旧式で性能的には最新鋭の武装神姫には劣っていても、局地迎撃用や戦闘可能時間の違いとか、火力、防御力、搭載能力、稼働率、整備製、コストパフォーマンスなどの点も考慮にいれなければならない。
このような観点から、総合的に採点してみると、天使型「アーンヴァル」、セイレーン型「エウクランテ」、戦闘機型「飛鳥」などが、武装神姫の中で空中戦ナンバー1を競うことになる。
アーンヴァルは、スピード、ダッシュ力、上昇力および安定性、生産製の高さで、他の航空MMSよりあまりある戦闘能力を保持している。
また「エウクランテ」は軽量で高機動、また支援ユニットに可変することで高速一撃離脱の戦闘方法で一世を風靡した。
「飛鳥」はずば抜けた運動性能で、登場した2030年代初期から中期にかけて、他の航空MMSを徹底的に痛めつけている。
いずれも武装神姫の可動初期からはたらき、改良されながら長期にわたって活躍したことが、他の航空MMSよりもポイントを稼いだ決め手になっている。
もちろんその他の「ツガル」「ウェスペリオー」「ラプティアス」「アルトレーネ」にしてもそれぞれ長所を大きくいかしての活躍が名神姫として数えられている要素になっている。
もちろんその他の「ツガル」「ウェスペリオー」「ラプティアス」「アルトレーネ」にしてもそれぞれ長所を大きくいかしての活躍が名神姫として数えられている要素になっている。
それらの中で、本来ならもっと高く評価されてもいいはずなのに、地味な存在なのがカタリナ社製の「ドラッケン」シリーズである。
「ドラッケン」は航空MMSの中でも「アーンヴァル」とほぼ同等の古い航空MMSである。上記3機が軽装甲、機動性と格闘戦闘を重視したのに、対してドラッケンは頑丈さと火力、防御力で相手の小技を跳ね返す真逆の発想で設計された。
強固な装甲と重火力、それなりの機動性を持つこのドラッケンシリーズは万能戦闘機として結果的に成功をおさめ、その合理性を立証した。
2041年10月16日
天王寺公園神姫センター 第3フィールド森林ステージ
ズンズズン・・・ドン・・・ドドン・・・
天王寺公園の一角、森の中の小川を挟んで、大砲を背負った神姫が激しい撃ち合いを行なっている。
少しはなれた小高い丘で、フィールド参加神姫の待機所で複数の重武装の神姫たちがトレーラに乗って砲声を聞きながらのんびりと出番を待っている。
チーム名「ドラケン戦闘爆撃隊」
□戦闘爆撃機型MMS「シャル」 Sクラス
□戦闘爆撃機型MMS「ライラ」 Aクラス
□戦闘爆撃機型MMS「セシル」 Aクラス
オーナー名「伊藤 和正」♂ 27歳 職業 工場設備関係メーカー営業員
□戦闘爆撃機型MMS「ライラ」 Aクラス
□戦闘爆撃機型MMS「セシル」 Aクラス
オーナー名「伊藤 和正」♂ 27歳 職業 工場設備関係メーカー営業員
とくに話すこともない知れた顔ぶれ、彼女たちは同じ伊藤の所有する神姫たちだ。
伊藤はのんびりと新聞を読んで戦闘中のフィールドからの応援要請を待っている。
シャルは自慢の武装の2mm機関砲を布で綺麗に拭いて手入れをしている。
ライラはぼけーと口を半開きにしてどんよりとした曇った秋空を眺めている。
セシルは地面を這うアリを観察している。
ライラはぼけーと口を半開きにしてどんよりとした曇った秋空を眺めている。
セシルは地面を這うアリを観察している。
ラジオもネットもなく、お互いがそれぞれ別のことをしながらただ、ゆっくりと時間が過ぎるのを待つ・・・・
ダガガガガッガガン!!!ガッガガガガン!!
ふいにカン高い機械音が鳴り響き、ボンボンと黒煙が戦場になびき、樹脂の焼ける独特のにおいが流れてくる。
ポーンと情けないメールの着信音が待機所に設置されているメールボックスに届く。
伊藤がカチカチとノートパソコンのメールボックスを見て待機しているシャルたちに話す。
伊藤「出撃だぞ、手前の赤チームから救援要請だ。敵の神姫にアイゼンイーグルを装備した重火力の武装神姫が出たらしい」
シャル「了解、ドラケン戦闘爆撃隊、出撃します」
ライラがエンジンのスタートキーを回す。
ライラがエンジンのスタートキーを回す。
ドルン、ドルンンドルルン・・ルンルン・・・グオオオオオオンン
まるで獣の吼え声のように強力なエンジンが唸り、心地よい振動を生み出す。
セシル「敵機は?今日は上がってくるのでしょうか?」
セシル「敵機は?今日は上がってくるのでしょうか?」
セシルはぼつりとつぶやく。
シャル「俺たちに救援要請を出したってことは向こうも迎撃機を出すってことだ、足の速いアーンヴァルか、もしくは格闘戦に優れた戦乙女か・・・」
ライラ「こちらドラケン2、出撃準備完了」
セシル「ドラケン3、いつでもいけます」
セシル「ドラケン3、いつでもいけます」
シャルがうなずく。
シャル「マスター、ドラケン戦闘爆撃隊、出撃準備完了、今日の武装は、2mm機関砲、多連装ロケット砲、マイクロミサイルを搭載しています」
伊藤「よし、目標は地上で戦っている陸戦MMSの支援爆撃だ。迎撃機が出るかもしれない、十二分に注意しろ」
シャル「了解しました」
ライラ「はっ」
セシル「YES、SURE」
ライラ「はっ」
セシル「YES、SURE」
ドドドドドン!!ズドドドドドッ!!
強力なアイゼンイーグルガトリングキャノンを構えた悪魔型神姫が前線を押し上げている、横には数体の夢魔型が護衛として付き添っている。
くぼんだ塹壕に、火器型のゼルノグラードとヤマネコ型が身動きがとれずに必死に応戦していた。
ヤマネコ型「畜生、応援のドラッケン部隊はどーした!」
火器型「まだです!まだ来ません!!」
片腕を失った騎士型が荒い息を吐きながら舌打ちをする。
騎士型「あの重機を仕留めないことには、5分も持たないぞ!!!」
火器型「まだです!まだ来ません!!」
片腕を失った騎士型が荒い息を吐きながら舌打ちをする。
騎士型「あの重機を仕留めないことには、5分も持たないぞ!!!」
剣士型「おい!!あれを見ろ!」
キラキラと黒光するネービーブルーの機体を輝かせながら、上空から多連装ロケットランチャーで爆装したドラッケン戦闘爆撃機型MMSが3機、急降下で舞い降りる。
シャル「いいか!味方の塹壕まで2メートルと離れていない、慎重に爆撃しろ!」
ライラ・セシル「了解」
バシュバシュバシュバシュッ!!!
白い噴煙を吐きながらシャルたちは一斉に悪魔型たちに向かってロケット弾を全て打ち込んだ。
夢魔型「ド、ドラッケン戦闘爆撃機!!」
悪魔型「迎撃ッ!!」
悪魔型「迎撃ッ!!」
悪魔型が強化アームでがっしりと構えたアイゼンイーグルを向けて、攻撃しようとするが、ガトリングは砲身が回転するまでのわずかな空転時間を要する。
それが致命的なタイムロスとなり、悪魔型の命運を分けた。
ドドドンッ!!!ズッドオオム!!
数十発のロケット弾が悪魔型と夢魔型数体を巻き込んで大爆発が起きる。
□ 悪魔型MMS 「ノーザス」 Aクラス 撃破
□ 夢魔型MMS 「リセム」 Bクラス 撃破
□ 夢魔型MMS 「パッセル」Bクラス 撃破
□ 夢魔型MMS 「リセム」 Bクラス 撃破
□ 夢魔型MMS 「パッセル」Bクラス 撃破
シャル「命中命中!」
ライラ「ドンピシャリ!」
セシル「全弾命中!」
ライラ「ドンピシャリ!」
セシル「全弾命中!」
下をちらりと見ると味方の神姫たちがしきりに手を振ったり被っているヘルメットや兜を振って声援を上げている。
火器型「助かったぜ!おまえんとこのマスターによろしくな!」
ヤマネコ型「さすがはドラケン隊だ!頼りになるぜ!」
騎士型「次もよろしく頼むぜ!!」
ヤマネコ型「さすがはドラケン隊だ!頼りになるぜ!」
騎士型「次もよろしく頼むぜ!!」
ぐるりと味方の神姫たちの上空で機体を振りながらバンクするとシャルたちは帰り道に急ぐ。
行きはどんよりとした曇り空が今は、風が出てきたのか晴れてきて見通しがよくなってくる。
シャル「・・・まずいな、晴れたきたぞ」
シャルは嫌な悪寒がし、キョロキョロと辺りを警戒する。
チカチカと上空から黄色い閃光が瞬く。
ドガドガドガン!!
右翼を飛んでいたライラの機体を黄色い閃光が貫いたと思った瞬間、ライラの体がバラバラに空中分解して爆散する。
□戦闘爆撃機型MMS「ライラ」 Aクラス 撃破
セシル「ライラッ!!」
ウオオオオオオオオオオオオオンン!!!
シャルたちの上空から4機のアーンヴァルMK-2テンペスタが雲の切れ目から急降下で襲いかかって来た。
シャル「畜生!!待ち伏せされていた!!」
バスンバスン・・・
全身穴だらけのボロボロの体でシャルは伊藤の待つ待機所まで、黒煙を吹きながらたどりつく。
伊藤がバッと新聞を投げ出し叫ぶ。
伊藤「なんてこった、行きは3機で帰りは1機か!」
ガッシャーーン!!
地面に胴体着陸してバラバラになるシャルの武装。
シャル「クソッタレ!」
シャルはむくりと立ち上がると砂埃を払う。
伊藤「大丈夫か?シャル!!他の連中は?」
シャル「セシルは手誰のアーンヴァルに追い詰められて自爆した。ライラは粉々にされちまった」
伊藤「なにがあった?」
シャル「たぶん、アーンヴァルの改良型だ。いきなり雲の中から飛び出してきた」
伊藤「しかし、それにしてもよく無事に戻ってきたな」
シャル「こいつの重装甲のおかげだ。もっともこの重装甲のおかげで逃げ切れなかったという点もあるがな・・・」
伊藤「大丈夫か?シャル!!他の連中は?」
シャル「セシルは手誰のアーンヴァルに追い詰められて自爆した。ライラは粉々にされちまった」
伊藤「なにがあった?」
シャル「たぶん、アーンヴァルの改良型だ。いきなり雲の中から飛び出してきた」
伊藤「しかし、それにしてもよく無事に戻ってきたな」
シャル「こいつの重装甲のおかげだ。もっともこの重装甲のおかげで逃げ切れなかったという点もあるがな・・・」
伊藤はぽりぽりと頭を掻く。
伊藤「しかし、待ち伏せとはな・・・」
シャルは遠い目をして答える。
シャル「俺たちを襲った連中は知ってやがるんだ。鈍重な俺たちが爆撃にくるってことをな」
天王寺公園の一角にあるこの神姫センターは立地条件に恵めれた大型神姫センター店である。
市営地下鉄、私鉄、電気軌道の路面電車、路線バス、高速バスが集中するターミナルとなっており、周辺はキタ・ミナミに次ぐ規模の繁華街を形成している。ミナミの難波とは大阪市街の南玄関としての機能を二分する。
市営地下鉄、私鉄、電気軌道の路面電車、路線バス、高速バスが集中するターミナルとなっており、周辺はキタ・ミナミに次ぐ規模の繁華街を形成している。ミナミの難波とは大阪市街の南玄関としての機能を二分する。
大型商業施設には、百貨店、地下街も充実しており観光地としての表情も併せ持っており、老若男女を問わず賑わいを見せている。
そのため、老若男女を問わず、近隣の郊外から暇をもてあました強力なオーナーが集中し関西でも指折の激戦地区となっていた。
シャルが他の神姫たちと軽い雑談をする。
ぎらついた目つきの悪い黒い天使型のエーベルと、胡散臭いステルス戦闘機型のフェリアだ。
□ 黒天使型MMS「エーベル」 Sクラス
オーナー名「斉藤 由梨」 ♀ 22歳 職業 商社OL
□ ステルス戦闘機型MMS 「フェリア」 Sクラス
オーナー名「今宮 遥」 ♀ 23歳 職業 商社営業員
オーナー名「斉藤 由梨」 ♀ 22歳 職業 商社OL
□ ステルス戦闘機型MMS 「フェリア」 Sクラス
オーナー名「今宮 遥」 ♀ 23歳 職業 商社営業員
エーベル「そうかーライラもセシルも落とされたのか」
フェリア「運が悪かったんだろ、よくあることだ・・・気にするな」
フェリア「運が悪かったんだろ、よくあることだ・・・気にするな」
シャルはこめかみを押さえて顔を歪めて話す。
シャル「2人はバラバラにやられちまってオーバーホールだ。直るのに1週間はかかるよ」
ファリア「テンペスタの小隊か、厄介だな・・・この辺りにはあんまり見かけなかったんだが・・・」
シャル「テンペスタにこっちの武装で勝っているのは装甲と火力だけだ。よほど有利な条件でなければ空中での格闘戦では勝てない」
シャル「テンペスタにこっちの武装で勝っているのは装甲と火力だけだ。よほど有利な条件でなければ空中での格闘戦では勝てない」
シャルはエーベルやフェリアにも警告する。
シャル「お前たちも注意しろよ」
エーベル「・・・」
フェリア「・・・」
フェリア「・・・」
シャル「まあ、注意したってやられるときはやられるんだがな・・・」
夜になり、あたりは鈴虫やコオロギの秋の虫たちの音色で溢れる。
騒がしいまでの虫の音色がピッタと止まる。
ズズンドンドドドン・・・ズンズズン・・・
低い砲声が唸り、爆発音が響く、そして機関銃のカン高い音と照明弾が夜空を照らす。
数機のコウモリ型が夜襲を仕掛け、フィールドで砲台型が迎撃の対空攻撃を仕掛けている。
天使型のエーベルが塹壕からひょこりと顔を出す。
エーベル「やれやれ、今日も懲りずにきやがったな、コウモリの連中」
エーベルはギュムと柔らかい何かを踏みつける。
エーベルはギュムと柔らかい何かを踏みつける。
シャル「いてェ、足を踏むなよエーベル」
エーベル「おおっとシャルか?」
シャルがヒラヒラと手を振る。
シャルがヒラヒラと手を振る。
シャル「今日はコウモリ型の連中しつこいな」
エーベル「フェリアの奴が露払いにさっき出撃したぜ?」
シャルはちらりとエーベルを見る。
シャル「オマエは行かなくていいのか?」
エーベルは肩をすくめる。
エーベル「連中、逃げ足が速いからな、ちょっとでも不利になるとすぐ逃げ出す」
エーベル「フェリアの奴が露払いにさっき出撃したぜ?」
シャルはちらりとエーベルを見る。
シャル「オマエは行かなくていいのか?」
エーベルは肩をすくめる。
エーベル「連中、逃げ足が速いからな、ちょっとでも不利になるとすぐ逃げ出す」
はあーーーとシャルは重いため息を吐く。
シャル「待ち伏せが来るってことは分かっていたはずなんだけどな・・・それをしっかりとライラたちに警告できなかったのは俺のミスだ」
エーベル「シャルを狙ったテンペスタは機関銃が故障していたんでしょう。でなきゃシャルもやられていた。シャルだって危なかったんだ、戦いなんてものはどうしようもないときのほうが多いんだ。イチイチ気にしてたら気が持たないぜ」
シャルは顎に手を付いて考え事をする。
シャル「・・・・・・」
エーベルが顔を上げる。
いつの間にか辺りは静さを取り戻し、虫の音色が再び聞こえてくる。
エーベル「コウモリ型もどこかにいっちまったようだ」
シャルがきょろきょろと警戒する。
シャル「今日は戦艦型の艦砲射撃は無さそうだな」
エーベル「明日も速いし今日は早めに寝るよ」
エーベル「明日も速いし今日は早めに寝るよ」
秋の夜は、少し肌寒い・・・・
To be continued・・・・・・・・
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