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「『弾丸』と美咲さん」


こんにちは、美咲です。今日も今日とてテーブル磨きです。神姫サイズの掃除機でピカピカのテーブルを掃除します。あ、ちなみにこの掃除機、今度先生の勤め先の会社から新製品として発売されるそうです。性能としては、内部容量の関係であくまで“掃除してる気分になれるオモチャ”です。
そうだ、いい機会なので先生のお仕事について語らせていただきます。先生の勤め先の会社は「株式会社カサハラ・テクニカル」。主に取り扱う製品は、神姫の武装と、神姫の為の玩具、それから電子部品等に使われる精密なネジや金具、そしてそれらをフルに使ったカーナビゲイション等です。特に力を入れているのは神姫用の製品で、時代の流行に乗っている形になりますね。
ただこれだけ聞くと、その辺のありふれた中小企業のうちの一社程度にしか思えないでしょうが、この「カサハラ・テクニカル」はちょっと凄いんです。なんと、神姫用玩具の約八割のシェアを獲得しています。
一番最初に発売された神姫用玩具はトランプなのですが、その最初に発売した会社がこの「カサハラ・テクニカル」なんです。そして、さらに凄いのは、先生が……。

「みっさきさぁーん!」

おや、先生がご帰宅なされたようです。現在午後二時。以前にもちらと言いましたが、先生は拘束時間のないお仕事をなさっているので帰宅時間はまちまちです。あ、先生のお仕事についてはまた今度と言うことで。

「はい、なんですか先生」

まあ、新装備でしょうけれど。

「今日は普通に戦うために神姫センターに行きましょう」

「……はいぃ?」

思わず疑問系な言葉が口から零れます。だって、新装備も無しに神姫センターなんて、年に数十回のメンテナンスの時くらいですよ?

「おおう、そこまで酷い返され方は予想外でした……」

「え、あ、ごめんなさい先生!」

落ち込んでしまった先生を急いで慰めます。

「今回、私は、私はただ、いつもいつも新装備の試着ばかりをさせて苦労をかけていますから、その労いの意味も兼ねて、新装備の試着や性能テスト等抜きにして、ただただ美咲さんと過ごす時間を大切にしたかっただけだったんです……」

「ごめんなさい先生! 本当にごめんなさい! 行きたいです私、先生との時間を大切にしたいです!」

確かに慰めるために言った言葉ですが、嘘偽りのない本心でもあります。

「美咲さん……」

先生の機嫌は、すぐに治ってくれました。






さて、やって参りました神姫センター。恥ずかしい格好も新装備もなしです。それでも周りの方々は皆やさしく受け入れてくれます。証拠にほら、皆さん「先生のフブキがどノーマル!?」「なんだ今日は見れないのか珍プレイ」「つまんねー」「でもバトルするんなら見ていこう。美咲さんハァハァ……俺の、嫁……」「お前、先生に殺されるぞ……」等と……。
……普通に来た私を歓迎してるようには見えませんね。私の価値って、新装備のお披露目だけですか……。

「大丈夫ですよ美咲さん。美咲さんの強さを見せ付けてあげれば、きっと皆さんも見直してくれますよ」

落ち込む私に、先生はそう言ってくれました。そうですね、私が頑張れば、皆さんきっと見方を変えてくれますよね。

「うわぁぁぁぁん!」

私が奮起すると同時、男の子の泣き声が聞こえてきました。

「何事でしょうね?」

「行ってみましょう!」

もし困り事で泣いているなら、見捨てては置けません。

「アンリを返してよぉぉ!」

泣き声の発生源は、小学生の男の子でした。なんだか、えらく柄の悪そうな人に懇願しているようです。

「はぁーっはっは! 返してほしけりゃ、俺に勝って見せろよぉガキぃ。まあ、自分の神姫が動かないんじゃ、戦いようもねぇなぁ!」

あっはっは、と、柄の悪い人は高笑いします。何でしょうか、見てるだけでイラッとします。

「すみません。一体何があったんですか?」

「あ、先生! 大変なんだ! あのチンピラ、あの子の神姫のAIデータを抜き取ったんだ!」

AIデータを、抜き取った? 一体どういう……。

『マスター! 助けてください!』

柄の悪いチンピラさんが手に持つノートPCから、そんな悲鳴が聞こえてきました。見ると、液晶にアーンヴァルタイプが映っています。

「何だったら、別のやつが取り返しに来てくれてもかまわねぇぜ。ただし、自分の神姫を賭けて戦ってもらうけどなぁ!」

それはつまり、あのかなり柄の悪いチンピラさんとの戦いに負ければ、自分の神姫を捕られる、ということですね。では、あの男の子もそんな勝負を? ……いや、あんな子供がそんな真似を……それに、神姫の素体はあの子が持っていますし……AIを、抜き取った……。

「AI移送接続ソフト、ですか……」

そう呟いた先生の声は、剣呑な雰囲気を纏っていました。

「大方、紳士なフリを装って初心者と対戦しソフトを使ってAIを奪い、それを人質にとり他の誰かに賭けバトルで対戦させ、素体や武装を強奪して荒稼ぎ、といった具合でしょうね」

聞いてるだけで気分が害されるようなお話です。それに、それは犯罪行為です。

「許してはおけません!」

「ですが美咲さん、相手はおそらく違法改造された神姫を使用してくるはずです。普通に戦っては勝ち目などありません」

「ですが!」

「美咲さん!」

先生は普段なら絶対に出さないような大声で私の名を呼びます。それだけで、冷静さを欠いた私の頭はクールダウンしました。

「正直に率直に言いましょう。私は確かにああいう輩は許せません。その鼻っ柱をへし折りたいと思います。しかし、その為に美咲さんを危険に晒したくもありません」

「……先生」

先生の表情は、内の葛藤を表すかのように苦悶を浮かべていました。先生は、私をそこまで……。

「私は、他人と美咲さんを天秤に掛けたとしたら、美咲さんを迷わず選びます」

その割には、表情は決して冴えることはなくて……。

「私がお相手致すですの!」

「斯様な下賎な輩、放ってはおけません!」

二人の神姫が、あのかなり柄の悪すぎるチンピラの前に立ちます。あれは……エルスさん! ステルヴィアさん!

「ちょ、エルス!? ……ああもう、仕方ないわね」

「まあ、ステルヴィアがそう言うなら……」

それぞれのマスターさんも、乗り気ではないようですが、戦うための準備を始めました。

「カエデさん、ケイゴさん……」

先生の手の平の上から、彼らの背を眺めるしか、今の私には出来ませんでした。






「くっ……ですの」

自慢の触手もボロボロになり、素体にも無視できないほどのダメージを負いながらも、ステルヴィアさんは立ちます。

「このぉですの!」

「にゃにゃっ♪」

苦し紛れに伸ばした触手はしかし、相手のマオチャオタイプ(名前はリーフ)に届く前に、横からの砲撃によってちぎれ飛びました。横を見ると、ランチャーを構えるアークタイプ。そして背後から攻撃をうけ、ついにステルヴィアさんは地に伏してしまいました。

「卑怯……ですの……」

「にゃにゃー。卑怯ぅ? ジョートージョートーにゃにゃ♪ 勝てば官軍にゃにゃー♪」

最低限の赤と黒の趣味の悪い塗装を施した装甲にハンドガン一丁という軽装備のリーフが、ステルヴィアさんの頭に銃口を突き付けます。その周りを、似たような趣味の悪い塗装をなされた装備の神姫が、なんと五体もいます。

「ぐっない触手ちゃん♪ 持って返ったらたぁっぷりいたぶってやるにゃにゃん♪」

ぱん。軽い音とともに、ジャッジが勝者を告げます。筐体を囲む人々は口々に非難を浴びせます。「卑怯だぞ!」「まともに戦え!」「違法じゃねぇか!」等々。しかし、かなり柄の悪すぎる腐れチンピラは、その非難を鼻で笑います。

「文句は勝ってからにしな雑魚共。さて、約束だぜ。てめえらの神姫を、武装ごとぜんぶよこしな」

反対側のブースに周り、怒りと悔しさに顔を歪ませる二人のマスターさんに要求しています。エルスさんとステルヴィアさんも悔しそうにかなり柄の悪すぎる腐れ外道チンピラを睨み付けます。ですが、かなり柄の悪すぎる下賎な腐れ外道チンピラは構わず二人に手を伸ばします。

「お待ちなさいそこのかなり柄の悪すぎる包茎で下賎な腐れ外道チンピラ!」

「美咲さん!? なんと下品な言葉を……」

「誰がチンピラだ!」

「ツッコむとこそこなんですの……」

思わず私は声を張り上げていました。ごめんなさい先生。やはり私には見過ごすことは出来ません。無垢な少年のみならず、多少語弊はあるものの親しき友人達にまで手を出されるとあっては、我慢なりません。

「私がお相手致します!」

相手の装備もやり口もわかりました。ならば、それの対策をしたならば、勝ち目はあります。

「美咲さん……」

あとは、先生が許可を下されば……。

「先生。私は必ずや、あのかなり柄の悪すぎる包茎短小で下賎な腐れ外道チンピラを退治いたします。どうか、お力添えを」

「……美咲さん、その……。あまり下品な物言いは止してください」

仕方ない、とばかりにため息を吐く先生。

「わかりました、やりましょう」

「先生……」

やはり先生は、私の味方です。






「いいですか美咲さん。相手はどこからか神姫を召喚して数で攻めてきます。おそらくは彼の自宅かどこかに戦闘用の神姫を待機させ、ハッキングによってこの筐体内にデータを送り込んできていると思います」

ただ見るだけでそこまでの予測ができる先生は、やはり凄いです。

「敵の総数はわかりかねます。先の戦いでは全部で五体召喚されていましたが、それ以上はいると思って下さい」

「はい! それで、勝利するためにはどう戦えばいいですか?」

「相手のメインと思われる、あのリーフというマオチャオを叩いてください。他の神姫を叩いても無意味です」

簡単に仰られますが、かなり難しいですね。まあ、不可能ではありません。

「では、美咲さん、頑張ってください。そうだ、この戦いに勝利したら、美味しいと評判のチーズケーキを買いましょう。そして二人で、勝利のお祝い会です!」

「は、はい……頑張ります……」

先生、嬉しいご提案ですが、戦う前に言ってほしくなかったです。これじゃあまるで死亡フラグ……。

「フッフッフ、そうと決まれば圧倒的力量差を見せ付けて勝利しましょう! 相手は所詮、力に頼った戦い方しかできない相手です! 私の美咲さんに勝てる相手なぞ、いませんよ!」

ああ、敗北フラグまで……。






──「ああ、ここにくるのも久しぶりだね、フェフィー」

「はい、師範」

「まだいるといいな、先生」

「いると思います、師範」──






「にゃっにゃっにゃー!?」

開始から一分。呆気ないほど簡単にリーフを下しました。五体の神姫の索敵網を抜け、背後に回り、先生お手製の近接武器「長刀苦無」という、刀身が通常の苦無よりも延長されつつ軽量化がなされ、刃は表面に僅かに張られたレーザーであるという光学兵器を背に突き立てました。
あまりに呆気なさすぎて、勝った、と思えませんでした。そして、その感覚こそが正解でした。

「ざーんねん♪ そいつは影武者にゃにゃ♪」

背後から、衝撃と共にそんな声が聞こえました。どうやら背中を撃たれたようです。

「か、影武者!?」

倒れたマオチャオは確かに粒子になって消滅しましたが、ジャッジは判定を下しません。く、まさか、そんな手でくるとは……!

「まあ、影武者やられてちぃとびびったが、もうアドバンテージはこっちにあるにゃにゃ♪」

気が付けば、周りを囲まれてしまいました。その総数、な、なんと七体!? アーンヴァルやアークやヴァッフェバニー等、素体はバラバラですが皆一様に赤と黒の塗装です。

「にゃっにゃっにゃー♪ いてこましたれやぁ!」

囲んでいた神姫達が、一斉に射撃してきました。

「美咲さんっ!?」






──「どの神姫センターも同じ作りだけど、入ってみると……やっぱりなんとなく懐かしく感じるね」

「そうですね、師範。以前の私の感情記憶からも懐かしさが伝わります」

「ん? そっか、フェフィーはその体でくるのは初めてだったね」

「はい、師範」

「……あれ、なんだろうあの人だかり。って、この神姫センターで人だかりっていったら、やっぱり先生かな」

「そうだと思います、師範」

「ふふ、懐かしいなぁ。まあ、先生は僕のこと忘れてるだろうけど。だって、あの人は人の顔と名前をすぐ忘れちゃう人だから」

「そうでしたね、師範」

「でもきっと、フェフィーのことは覚えてるよ。神姫に対しては凄い記憶力だからね」

「そうですね、師範」

「さ、行ってみようか」

「はい、師範」──






「くぅっそー、ネコでも無いくせにちょこまかとぉにゃにゃ!」

リーフの指示で七体の神姫は射撃しますが、私はそれを障害物で回避します。みてください私の活躍! 先生の立てた死亡フラグと敗北フラグをも回避してますよ!

「にゃっにゃっ! ライフルなんかでちまちま狙っても埒あかねえにゃにゃ! もうこーなったらバズーカであそこら一帯ふっとばせにゃにゃ!」

「「サーリーダー!」」

……ちょっとまずい雰囲気です。

急いで障害物から出てダッシュで離脱。フブキタイプであるのと先生の細かいメンテナンスと改修で、私のダッシュは通常の神姫よりも早いです。……まあ、風になるほど早くはありませんが。
後方で連続した大きな爆発音。本当に辺り一帯を吹き飛ばしたらしい。やることがむちゃくちゃですあのマオチャオ!

「あー、あっちに逃げてくにゃにゃ! アーク、行けにゃにゃ!」

「サーリーダー!」

アークタイプがトライクに変形して追い掛けてきます。さすがに逃げ切れませんね、これは。覚悟を決めて長刀苦無を構えます。申し訳ありません先生。もうあのマオチャオだけを狙うというのは無理そうです。一体ずつ周りを沈めます。






──「……すみません、今、これ、どういう状況なんですか?」

「ん、ああ、あのチンピラが、人の神姫を賭けバトルで強奪しようとしてんだ。既に三人、被害にあった。そいつのやり口も卑怯でな、大量の改造神姫で戦ってやがる。で、今、先生が相手してるんだが……」

「先生が?」

「先生を知ってるのかい? ああいや、今はどうでもいいか。それより今、かなり不味い。先生の美咲さんも、相手に押されてるんだ。あの美咲さんでも、さすがに違法改造された連中相手じゃ分が悪い……」

「師範」

「ん、わかってるよ。恩返しだね」

「恩返しって……まさか君、戦うつもりかい? 止めときなよ、負けたらその子、失うぞ」

「大丈夫です。フェフィーは強いですから。さて、あの柄の悪い人に乱入許可でも貰ってくるかな」

「……フェフィー? どこかで聞いたような……」──






「にゃにゃー♪ さぁて、楽しい楽しい鬼ごっこもおわりだなぁにゃにゃ♪」

数体は撃破しましたが、やはり多勢に無勢でしょうか……。今、私はフィールドの中にそびえ立つ小さな教会の壁に背を付けています。右腕は半ばから千切れて痛みを訴え、足は小さなダメージの蓄積で運動性能が低下しています。反して、相手の神姫は……リーフ含め十体。新たに召喚されていました。
申し訳ありません、先生。私は、変な意地を張って先生の意志に従わないどころか、その意地のせいで今や、他人の手に渡ろうとしています。先生はそれに悲しむでしょう、苦しむでしょう、後悔するでしょう。そして、それは全て……私のせい……。

「にゃにゃ。お前たち、一斉に撃てぇにゃにゃ。今度こそ、逃がすなよにゃにゃ」

一斉に、周りを囲む銃口。申し訳ありません先生。私は……先生の神姫でいられて、幸せでした……。

「お久しぶりです、美咲さん」

そんな声が聞こえたのは、覚悟して眼を閉じた時でした。うっすらと眼を見開くと……とても愛らしい笑顔のウェルクストラタイプと、銃身のひしゃげたライフルを構える赤と黒の神姫達。

「にゃ、にゃにゃ、一体何が起こったってんだにゃにゃ?!」

リーフの配下の神姫達もリーフも、かなり慌てているようです。

「いやぁ、なんとか間に合ったようですね」

ふと先生のいるブース側から声がしました。振り返ると、先生の隣に座る青年。ウェルクストラタイプ……青年……あ。

「もしかして、エンドウくんですか?」

私がそう尋ねると、青年は嬉しそうに笑いました。

「さすが美咲さん、覚えていてくれましたか」

「エンドウくん……? すみませんが、過去にお会いしましたか?」

先生はどうやらエンドウくんのことを忘れているようです。私は少しこけました。

「あはは、相変わらず先生は人を覚えない人ですね。まあ、この子のことは覚えてると思いますが。ねえ、フェフィー」

エンドウくんがそう言うので、先生はフィールドに現れたウェルクストラタイプを見つめます。

「……フェフィー? ……ああ、ああ! 三年前にここに来た、ゴッテゴテの重装備のウェルクストラ、フェフィーちゃんを連れてきたあの初心者の! エンドウくん! いやぁ久しいですねぇ」

先生、神姫関連でしか人を覚えられない癖、そろそろ治しませんか?

「いやぁ、お恥ずかしい話です。あの時は、強い武器を持っていれば強いんだと思い込んでた時ですから」

確かに、それは初心者にはありがちの思い込みです。実際に強い武器は強いですが、使いこなせなければ意味はありません。逆に装備を完璧に使いこなせるならば、重装備の相手にも軽装備で勝利するのも不可能ではありません。

「しかし、フェフィーちゃんは素体が違いますね。細部が私の記憶と一致しません。どうしたんですか?」

先生は人を覚えるのは苦手ですが、こと神姫に関しては一目見れば一生忘れないほどの記憶力を持ちます。故に、三年の月日が経っても、細部の違いがわかります。……恐ろしいですね。

「いやぁ、それに関してはちょっとわけ有りで……まあ、積もる話もあとにしましょう。今はこのバトルです。さ、フェフィー、レッツバトル!」

「はい、師範」

エンドウくんの掛け声に、フェフィーちゃんは笑みを消し、とたんに不機嫌そうに眉間に皺を寄せました。そして、リーフに振り返ります。

「長々と会話に花咲かせやがってにゃにゃ。まあそのおかげでこっちも準備が整ったわけだがなにゃにゃ」

気が付けば、リーフの配下の装備は一新され、数も増えてますって、あれはさっき撃破したアークタイプとイーダタイプ!?

「にゃっにゃっにゃー♪ 私の忠実な僕、『鋼の十二騎』は最強だにゃにゃ。改造神姫である上に自己修復システム、さらにやられても黄泉還りシステムで二分で復帰してくるっていう、まさに不死身の部隊なんだよにゃにゃ!」

リーフ以外の十二体の神姫が、一斉に銃器を構えます。

「……フッ。くだらない」

つぶやくフェフィーちゃんの声は、相手を見下すような冷たい口調でした。

「……美咲さん、危険ですから、隠れていてください。この程度の連中、私一人で十分ですから」

しかし、私に対する言葉はとても優しい、愛らしい口調です。

「ですが一人であの数は……」

「美咲さん……」

振り返ったフェフィーちゃんの顔は、覇気すら纏った絶対強者のそれでした。私はそれ以上何も言えず、黙って身を隠しました。

「余裕こきやがってにゃにゃ。まあでも、そんくらい不適なほうが後々調教する時に楽しいけどなにゃにゃ」

リーフの顔はマオチャオとは思えないくらい邪気に満ちた笑顔でした。

「しかも、おまえの装備、なんだそりゃにゃにゃ? まさか、パンチやキックで私らと戦おうってのかにゃにゃ?」

そう、フェフィーちゃんの装備は驚くほど軽装です。頭部には、ウェルクストラの初期装備であるヘッドギアを格闘家が使うようなものに似せて改造されたものを装備し、胸にはサラシのような布、腕には紫色のクリアパーツが備えられたオリジナルの籠手とグローブ。腰には姿勢制御用の小型バーニアを備えた軽装型スカートアーマー、足には腕のと似たようなプロテクターと、バッタの足のような機構をした装置。銃器の類は一切見受けられず、格闘戦特化といった風貌です。

「そうですよ」

フェフィーちゃんは余裕を持って告げました。が、その口調は、それで充分という余裕が含まれています。

「舐めやがってにゃにゃ。遠慮はいらねえ、おまえら、ぶっとばしちまえにゃにゃ!」

リーフの指示で、十二体の神姫は一斉に射撃体勢をとりました。

「フェフィー」

エンドウくんが、指を三本立てました。

「三十秒が合格ライン。さっさと終わらせよう」

「はい師範」

その三十秒が、自分たちを倒すための時間だと気付いたリーフが激昂しました。

「ぶっつぶせにゃにゃぁ!」

そして、一斉に発射されるライフルやランチャーやバズーカ。ミサイルまで。一斉にフェフィーちゃんに殺到します。って、フェフィーちゃん!? なんで避けようとしないんですか!?

「フェフィーちゃん!?」

私は爆風に備えるために眼を閉じてしまい、フェフィーちゃんの姿を最後まで捕らえられませんでした。

「フェフィーちゃん!」

「にゃっにゃっにゃー! 口ほどにもねぇにゃにゃ! 木っ端微塵だぜにゃにゃ!」

ゲラゲラと笑うリーフ達。私はその姿を見て、呆然としました。赤と黒の集団の中に、白と紫の装備の神姫がいたんです。あたかも、始めからそこに居たかのような自然さで、十二体の一番先頭のアークの背後に。あまりの自然さに、どうやらリーフ達はまだ、気付いていないようです。

「はっはっはっはぎぃっ!?」

先頭のアークが、奇妙な悲鳴を上げました。それでやっと、何が起きたのか、リーフ達は気が付いたようです。

「ば、馬鹿なにゃにゃ!? いつの間ににゃにゃ!?」

「こ、このぉ!」

「よせバカにゃにゃ!」

アークをやられて焦ったのか、フェフィーちゃんの背後にいた三体の神姫が近接武器で襲い掛かります。

「まずは四……」

フェフィーちゃんは背後の攻撃に臆する事無く、構えました。足のプロテクターが光を帯びます。

「アクロバットローカス!」

襲い掛かってきた三体を纏めて蹴り上げ、自身も上昇。そして、スカートアーマーのバーニアを軽く吹かして二連蹴りを見舞い、最後には三体纏めて蹴り落とし、自身もそこに向かってバーニアを吹かして足から落下します。足のプロテクターが一際強く輝き、着地と同時に強力なエネルギー波を発生させました。

「ぎゃぶぅ!?」

三体の神姫は、なにが起きたのかも理解できていなかったと思います。スクッと立ち上がったフェフィーちゃんの足プロテクターが展開し、音を立てて過剰な熱を逃がしているようです。

「な、なめんじゃねぇ!」

唖然と眺めていた他の神姫達が、再び発砲しました。今度こそ、私はフェフィーちゃんの姿を捕えていました。フェフィーちゃんは銃弾を躱すように低姿勢を取ると、ボクシング選手のように拳を眼全で構えて走りだしたんです。それも、弾丸のような速度で。私はそれで、再びフェフィーちゃんから眼を離してしまいました。速すぎです……。

「お、思い出した……フェフィー……セカンドリーグ、総合第九位!」

ギャラリーの一人が、叫びました。その叫び声と内容に、周りも驚愕して一斉に注目が集まります。

「くそがぁぁぁ!」

フェフィーちゃんの足元目がけてバズーカが放たれました。それは確かに地面に着弾し、爆発します。普通なら避け切れずに爆発に巻き込まれてダメージを負います。が。

「遅いですね」

「な!?」

フェフィーちゃんの声がしたのは、バズーカを放った神姫の背後から。建物の壁に張りつくように、フェフィーちゃんはいました。

「これで五……合計九」

フェフィーちゃんは、バズーカを放った神姫に向かって、紫色に光り輝く両手を突き出すように……跳びました。それはまるで、砲弾のように見えます。

「エリアルレイド!」

避けられるレベルではない速度で、フェフィーちゃんはバズーカを持った神姫に追突します。フェフィーちゃんの拳は、その神姫とともに地面に追突し、同時にエネルギー波を放ちます。

「ぐわっ!?」

「ぎゃっ!?」

範囲内にいた四体の神姫はバラバラになりながら吹き飛んでいきます。爆心地にいた神姫はもう見る影もありません。

「次に三……合計十二」

籠手から熱を排気しながら、肩を突き出すような格好になります。

「う、うわぁぁぁ!」

視界に納められた神姫が、恐怖から銃を構えますが、その時は既にフェフィーちゃんは目の前でした。

「バーストタックル!」

尋常ではない脚力に加え、バーニアによってさらなる推力を追加されたそのタックルは、直撃した神姫を強引に真っ二つに裂き、さらに後方にいた神姫二人をも突き飛ばしてリタイアさせました。

「……残りはあなただけですね」

「ぐにゃにゃっ……」

フェフィーちゃんは眉間に皺を寄せ、リーフを睨み付けます。整った顔立ちでそんな表情をされると凄い怖いです。

「ちくしょぉ! リーフ、こいつで何が何でも勝ちやがれぇ!」

リーフのマスターのチンピラが、リーフに装備を送り込んできました。それは、標準のマオチャオ装備を赤と黒に趣味悪く塗り替えた上に背中にはドクロマークが入っていました。
きっとあの装備も違法改造品なのでしょう。

「きやがれクソがぁぁぁにゃにゃ!」

挑発に乗ってか、フェフィーちゃんは駆けました。相変わらず凄い速度です。対してリーフは、電磁シールドのようなものを展開しました。

(くくくく……馬鹿めにゃにゃ。格闘攻撃しかねえってことは、このシールドも殴って壊すしかねぇにゃにゃ。だが、このシールドは一瞬でも触れりゃあたちまち全身の運動機能を奪うウィルス入りにゃにゃ。おまえがどんだけ速かろうが、関係ねえにゃにゃ。これを殴った瞬間が、おまえの最後にゃにゃ!)

「きやがれぇにゃにゃ!」

フェフィーちゃんの拳がリーフに届く範囲に来たとき、リーフは勝利を確信したように笑いました。何かある、と思いましたが、私にそれをフェフィーちゃんに伝えるすべも時間もありません。
フェフィーちゃんは電磁シールドを殴る……ことなく、直前で両手をクロスさせて蹲ります。

「にゃにゃ!?」

「マイト……」

あまりに突飛な行動に、リーフの判断が遅れたようですが、どの道、たぶんもう遅いです。

「デスチャージ!」

ばっとフェフィーちゃんが両手を開きながら起き上がったかと思うと、フェフィーちゃんの眼前、リーフの頭上に、紫色の球体が一瞬出現して弾けました。

「にゃにゃぁぁぁ!?」

それはどうやらエネルギー波だったようで、リーフの電磁シールドを吹き飛ばし、リーフ自身の体勢も崩しました。そして、フェフィーちゃんはもう次の攻撃の体勢に入っていました。

「フラッシュチャリオットぉ!」

フェフィーちゃんは紫色に光る籠手とグローブ……あ、思い出しました、ガントレットでした。あれ、ガントレットです。紫色に光るガントレットで、眼にも止まらぬほど高速の拳を連続でたたき込みます。

「ぶべべべべべべ!?」

やがてガントレットの紫色の光が、金色に変化していきます。そしてラッシュは止まり、左一閃。

「フィニッシュ、です」

そしてとどめに右ストレート。その際に、右手の一点に集約された金色のエネルギーも一緒に放出され、リーフの体は小石のように軽く飛んできて、私の隠れている教会に衝突、貫通し、フィールドの外側……フィールドアウトまで飛んでいきました。
そして、ジャッジが勝者を告げました。私は、ただ唖然とするので精一杯でした。

「……銃火器を一切携帯せず、拳のみで近〜遠距離戦、果ては対空戦も対応し、目にも止まらない拳のラッシュで数々の敵を地に沈めてきた。そして、どこであろうと、どこにいようと発揮される弾丸の如きその突進能力を恐れられ、付いた二つ名が『弾丸』……。『弾丸』のフェフィー!」

先ほど叫んだ方が、バトルが終わってから解説しました。まあ、フェフィーちゃんの戦いが終わるまで二十九秒しか経っていませんが。






「クソ、嘘だろおい」

「悪りい、負けちまったにゃにゃ」

「認めるかぁ!」

ポットから出ると、なにやらチンピラの方が煩いです。

「あんなのありかよ! おまえ絶対違法改造やってんだろ!」

「いいえ。フェフィーはオフィシャルに認められた物しか使用してませんよ。それに、もし使用していたとして、あなたにはそれを咎めるだけの資格はないと思いますが」

「う、うるせえ! とにかく、こっちが負ける要素はなかったはずだ! 数でも装備でも! なのに負けるなんておかしいだろ!」

「そうですね、おかしいですね。あなたの頭が、ですが」

言ったのはフェフィーさん。チンピラの足元に降り立ち言い放ちました。

「なんだと!? このやろう!」

チンピラが足でフェフィーさんを踏み付けようとしますが、フェフィーさんは右に左に華麗に回避します。

「ああちくしょう!」

「気が済んだのなら、約束通り捕った神姫を返して下さい」

エンドウくんが笑顔で告げる。と、チンピラは頭に来たんでしょうか、ポケットから何かを……ナイフ!? え、エンドウくん危ないです! エンドウくんもナイフを出されるのは予想外だったのか、驚いて固まっています。

「ちくしょうがぁぁぁ!」

チンピラはそれをエンドウくんに突き出しながら襲い掛かります。エンドウくん!?

「まったく、ここは神姫センターですよ」

かし、と。突然先生が割り込みチンピラさんのナイフを持つ手をつかみ、軽く足を掛けます。すると、掴んだ先生の手を中心にまるで新体操のリボンのように半回転すると、チンピラは背中から倒れこみました。すかさず先生は掴んでいた手からナイフを払い落とすと、チンピラ自身の腕でチンピラの首を閉めるように腕を回し、空いてる右手でチンピラの左手を背後に回します。そして、右膝をチンピラに押しつけてやれば、痛みと苦しさでチンピラは動けなくなりました。

「は、放せ、ちくしょう」

「いえいえ、折角ですから、警察の方がお越しになるまで、このままでいましょう」

おお、と周りから拍手が起こります。たしかに、賛辞を受けるに値する華麗な動きでした。

「師範! ご無事ですか!」

「うん、なんとかね。フェフィーは?」

「私もです」

エンドウくんとフェフィーちゃんは、お互いの無事を確認し合います。二人とも無事でよかったです。

「兄貴を離せこのくそじじいにゃにゃ!」

しまった、油断しました! リーフが手に槍を持って先生に襲い掛かります。く、助けが間に合わない!
と、思ったとき、そのリーフの後ろから、すいーっと近づく見たことのある姿。

「触手マイスター殿のマスター殿に手を出すなですの!」

そう叫び、エルスさんに抱えられて上空から迫っていたステルヴィアさんがリーフに飛び掛かります。不意を突かれたリーフに対抗する術はなく、あれよあれよと四肢を絡め取られて身動きできなくなりました。

「ちっくしょおにゃにゃ!」

「ありがとうございます、ステルヴィアさん!」

本当に助かりました。ステルヴィアさんはグッとサムズアップしました。

「さあさあ、お口と手癖の悪いネコさんには、それはそれは口では言えないような罰を与えねばなりませんですの♪」

「な、なにしやがるにゃにゃ! ば、バカやろうおまえ、そんなとこ触、にゃぁぁぁぁん!?」

はいアウト! せめて最後まで格好よくいてくださいステルヴィアさん!






こうして、神姫センターにやってきた警察の方にチンピラとリーフは引き取られていきました。事情聴取をすると言って先生も連れて行かれそうになりましたが、途端に入った無線によって、先生以下神姫センターの方々は無関係にされました。
恐らく先生が手を回したのだと思います。正確には、先生の同僚という方がでしょうけれど。先生の人間関係は凄いです。

「いやぁ、大変でしたね、先生」

「そうですね」

待ち合い席にて、エンドウくんと向かい合わせに先生は座ります。私はフェフィーさんと向かい合っています。

「改めまして、お久しぶりです、美咲さん」

「はい、お久しぶりです、フェフィーちゃん」

先ほどのバトルの時とはうってかわって、愛らしい笑顔を向けてきてくれます。ああ、こうして見ると、やっぱりあの時のフェフィーちゃんのままです……。

『美咲さん! 今日もご指導お願いします!』

『はい、いいですよフェフィーちゃん』

懐かしい思い出が蘇ります。
「そういえば、素体が交換されているのには、訳があるとおっしゃいましたね?」

「ええ、そうなんです。実は……」

先生に促され、エンドウさんは少々遠い眼をされました。

「フェフィーは、一度死んでいるんです」

「……ぇ?」

あまりの衝撃的な言葉に、私は絶句してしまいます。フェフィーちゃんを見ると、どうやら事実のようで、すこし寂しそうに頷きました。

「あれは、N県に引っ越してから、すぐの事でした。僕たちは引っ越し祝いも兼ねて、近くに見えた海に遊びに行ったんです。フェフィーはもう、おおはしゃぎで、見るもの全てに興味を示して……」

エンドウくんは楽しげに笑って見せましたが、目は遠いままです。

「そうしたら、防波堤の上にいたヤドカリをフェフィーが見つけて、つっつきまわして遊んでいたんです。そしたら……」

そうしてエンドウくんは、拳をキュッと握り締め、悔しさを滲ませます。一体、何が……。

「そうしたら、フェフィーが……ザリガニに垂直落下式リバースDDTを決められて、そのまま海中に……」

……想像したらちょっと笑いそうになりました。ごめんなさい、エンドウくん。でも、もっと別の表現方法でもよかったのでは?

「そして、僕が海中から慌ててフェフィーを引き上げたら……ザリガニにタワーブリッジを決められていて、その時に、CSCをやられて……っ!」

だから、なんでタワーブリッジとか、そんな表現をするんですか。リアルに想像できて吹きそうになるじゃないですか。といいますか、先生なんて悲しんで顔逸らしてるフリして小刻みに肩揺らしてますよ。
……それにしても、神姫を機能停止にまで陥れるなんて、どれだけ強いヤドカリですか。

「その後、僕は無事だったフェフィーのコアを利用して、新しい素体に交換したんです。ところが、お店でCSCを組んで貰うときに「射撃主体でお願いします」と言ったにもかかわらず、何を考えたのか、ミスなのか、格闘特化な組み方をされまして……それに気付いたのも起動してからで、また眠らせるのも忍びなく、こうして仕方無しに格闘特化型として戦わせているんです」

なんというか……あんまりな人生ですねフェフィーちゃん。しかし、そんな逆境すら乗り越えて、今やセカンドリーグのトップランカーに仲間入りですか。

「そして、受難はそれだけに留まらず……フェフィーの性格も、コアとCSCとの相性が悪かったのか……」

なんだか、エンドウくんが難しい顔をしました。性格に何か問題が? まあ確かに、戦いの時のあの不機嫌そうな態度が性格から来ているのであれば、問題といえば問題です。

「ところで美咲さん、一つ、お聞きしたいことが」

「はい、何ですか?」

フェフィーちゃんは相変わらず、天使のような愛らしい顔です。ああ、昔の記憶が蘇ります……。

『美咲さん、質問です! 相手の弾幕が厚くて顔を出せない時はどうしたらいいんですか?』

『そういう時はですね、相手の裏に回り込んだり、牽制弾を放って怯ませたりして切り抜けてください』

『はい、わかりました! ありがとうございます美咲さん!』

美咲さん、美咲さんと質問してくれるフェフィーちゃんは、とても良い教え子でした。

「師範と先生、どちらが責めのほうがいいですか?」

「……………………………はぃ?」

こ、この子は一体何て言ったんでしょう。分かりかねます。いや、分かりたくないとかではなく、本気で分かりません。

「やはり、ダンディズム溢れる先生に優しく指導される師範が王道と言えますが、逆に、一生懸命に貢献しようとする健気な師範の責めを大らかに受け入れる先生というのも捨てがたいですね」

「……」

『美咲さん! みさきさん! さきさん……きさん……ん……n……』

ああ、待って! 行かないでください私の思い出の中の純粋だったフェフィーちゃん!

「……とまあ、このように、BL好きになってしまったのです」

「それは……それは」

珍しいことに先生も絶句なさっています。

「美咲さんはどちらでしょう?」

「いえ、私はそういうのはちょっと……」

私がそう否定すると、フェフィーちゃんはにっこりと笑います。

「大丈夫ですよ美咲さん、そんなに照れなくても。皆さんそうなんですよ。恥ずかしいからって照れ隠しに、そんなの興味ない、なんて嘘をついて。フフ」

「……さらにタチの悪いことに、全ての神姫がすべからくBL好きだと思い込んでいます」

「それは……なんともはや」

タチが悪すぎです……。

「でもですね、私はあの、ステルヴィアさんのマスターさんも含めた3Pも有りではないかと思いますよ。それで……」

フェフィーちゃんのBL講座は、先生がご帰宅なさるまで続きました……。




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