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えむえむえす ~My marriage story~

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キズナのキセキ
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引きこもりと神姫
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戦うことを忘れた武装神姫
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The Armed Princess―武装神姫―
ウサギのナミダ
PRINCESS BRAVE
神姫☆こみゅにけ~しょん
アルトアイネス奮闘姫
ロンド・ロンド

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双子神姫
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犬子さんの土下座ライフ。
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武装神姫のリン
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戦う神姫は好きですか
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すとれい・しーぷ011


何故、こんなことになったのだろうか。
紅は肩に鎮座した小さな機械人形をちらりと盗み見た。
碧のメルや、瑠璃のルキス、ユノ、それに妹のライアだって、自分の主人に忠実ではないか。
なのにこの神姫、ミューズは少しも俺に懐く気配がない。
自分が機械音痴なのが悪いのか、単に彼女との相性の問題なのか。
紅は真意を測りかねていた。

「充電は後どのくらいもちそうだ?」

「あと1時間は大丈夫ですわ。さぁ、早くクレイドル、とやらを買って帰りましょう」

つん、と顔を背けながら行く先を指差し彼女、紗羅檀型のミューズは言った。
先刻からこの調子で、会話らしい会話をしていない。おまけに…

「んもう、歩くのが遅いですわ!この木偶!」

登録時に設定した呼び方はどこに行ったのやら、この“木偶”という呼び名が定着してしまっている。怒ろうにも、接し方がわからないため、それが正しいことのなのかわからない。
なかば諦めのため息を吐くと、首筋にちくりと痛みが走る。
蹴られた。

「ため息なんてつかないでくださいます?ため息をつきたいのはわたくしの方ですのよ?」

ため息を通り越して泣きたいのは俺なんだが…
紅は口を閉ざした。そんな反論をしたら、また生意気、と蹴りを食らうに違いない。
まったく、扱いにくい神姫だ。
そんな事を考えていると、目的地のホビーショップが見えてきた。
なにせよ、クレイドルを購入したら任務は完了。また、瑠璃の家に行って、ミューズと二人きりという状況から開放されるのだ。
ホビーショップに向かう足は自然と早足になっていた。

■■■

「ところで、わたくしの充電はどうなりさりますの?」

ミューズの声にハッとしたのは、その場にいる全員だった。
神姫に充電に必要なクレイドル。起動に気を取られるあまり、オーナーさえもその存在を忘れていたのだ。

「まずいな、うちにあるのは旧式のクレイドルだから、1体しか充電できない…」

オーナーはわたしを見つめ、困ったような顔をしたあと、すぐに顔を上げた。
いい事を思いついた!そう言わんばかりの表情に、わたしも、紅も期待を寄せた。

「ミューズと二人で買いに行ったらいいんだよ」


■■■


あの時の自信満々の瑠璃の提案を拒否することができず、今に至る。
とぼとぼと慣れない店内をふらつきながら目当ての物を探す。
ホビーショップなど、何年ぶりになるだろうか。
巨大ロボットの模型や、美少女フィギュアの中に紛れて、それはあった。
武装神姫のコーナーの片隅に、ひっそりと。
最後の在庫なのだろう、その箱は1つしかない。
紅がその箱に手を伸ばし触れた。それと同時に反対側からも手。

『あ』

両者の声が重なる。
普通ならば、どうぞ、と素直に譲るところだが、今回は自分の神姫の命(?)がかかっている。
やすやすと譲ってやるわけには行かなかった。
紅は相手が譲ってくれることを祈った。

「ちょっとー、手ぇ放してくれませんかぁー?」

少女の声が紅を穿った。
驚きに顔を上げると、そこには長いストレートの髪をサイドテールにまとめ、キャスケッチをかぶった少女が立っていた。

「お兄さん、それ、譲ってくれませんかぁー?」

先ほどの声。しかし発しているのは目の前の少女ではない。一体何処に?
探るような視線を少女の投げかけると、彼女の肩から紅い神姫はひょこりと顔を出した。
薄桃から黄色へと変化するグラデーションの髪が夕焼けのようだ。

「ガーネ、どうします?」

キャスケットのツバをさすりながら、少女は肩の紅い神姫に問う。
その表情は読めない。まるで能面でもつけているかのように、薄く笑ったままピクリとも動かないのだ。

「譲ってくれないみたいだし、戦って勝った方がゲットってのはぁー?」

紅い神姫…ガーネはにやり、と桜色の唇を持ち上げると、紅とミューズを見た。
鋭い瞳。まるで獲物を見つけた猛獣のような…。
紅はその挑戦を受けるか、決めあぐねていた。
ミューズの充電はあと1時間程度しかもたない。激しい運動、バトルをするのならば、もっと短いかもしれない。
しかし、肩に座っていたミューズは、紅の思考とは裏腹に、怒りを露にして、相手に食ってかかった。

「その挑戦、受けますわ!わたくしを愚弄した罪、重くってよ!」

「威勢いいのはいいけど、退屈させないでよね?」

2体の神姫の間にバチバチと激しく火花が散った。
紅はもう成り行きに任せるしかなかった。はたして、バトル初心者、否神姫初心者の自分が勝利を収めることができるのか…。
と、キャスケットの少女が鞄から手のひらには少し余る長細いカードを一枚取り出した。
その表情が僅かに曇ったような気がした。


■■■


「まさか、IC登録もしてない初心者だったなんて、ねぇ?」

やや呆れ気味にガーネが言ったのを、キャスケットの少女が受け取り、静かに頷く。
紅が初心者だと知ったにも関わらず、彼女の表情には油断はない。一方のガーネは余裕を孕んだ表情でこちらを見ていた。

「ちょっと、早く登録を済ませてちょうだい!わたくしの怒りが収まらないうちに!」

急かすミューズと、わけのわからない機械操作に板ばさみにされ、紅はしどろもどろになっていた。
しまいにはミューズが画面をタップする始末…。
自身を情けなく感じながら紅はようやっとオーナーブースに立った。

「カ…イン…ね、よろしくお願い致します、カインさん」

対面した少女の情報がディスプレイに表示される。
プレイヤーネーム、吊るし人。完全に本名ではない。自分が言えた義理ではないが…

「ふふ、本名は結構ですよ。のちのち不便になったりしますからね」

動きを止めた紅に微笑みかけたその顔は先ほどの能面とは程遠い美しいもので。
紅は僅かに戸惑ったが、すぐにミューズをアクセスポッドに横たえると、油断なく構えた。


■■■


ミューズが電子の海を泳ぎ、たどり着いたのは、ガラス細工で構築された城だった。
幾重にも重なり合ったガラスは空の青を反射し美しいスカイブルーの光を放っている。
なんて幻想的なステージ。ミューズはうっとりと目を閉じる。

「木偶、わたくしへの指図はしなくてよろしくてよ?貴方の指示がなくとも戦えるという事、見せてさしあげるわ」

ガラスのフロアを舞うように回ると、ミューズはスラリと長い腕を広げた。まるでかかって来い、と言わんばかりに、無防備に。

『おい、あまり油断するな、相手はかなり手慣れている』

紅の声の直後、ガラスの薔薇が崩れ、その影から城の青とは正反対の深紅の影が飛び出してきた。
手には巨大な剣。深紅の刀身を持つコラル=エルプシオンが唸りを上げ、蒼い床を抉った。
剣士型の中でも、攻撃特化のその固体の一撃は空を裂き恐ろしい衝撃波を生み出した。
が、その衝撃はミューズを捕らえる事は適わなかった。

「どちらを向いていますの?鈍間さん」

いつの間にか背後に回ったミューズが手を振り上げる。

「木偶!リジルを!」

紅はわたわたとメインボードに設定されたボウナイフをミューズの元に送り出す。
光の粒子が振り上げた手に集まり、凝固する。同時に振り返ったガーネの大剣がミューズの首を跳ねんと振りかぶられる。
ガギィィ、けたたましい金属音がガラスの城に響くと、ミューズは顔をしかめた。

「やかましいことこの上ないですわね!…それに木偶、行動が遅くってよ?」

キリ、と奥歯をかみ締め己の主の愚鈍さを叱咤する。
なぜ、わたくしはこの鈍間のサポートがなければ戦えないのか。
ミューズは苛立ちをぶつけるかのようにガーネに向けボウナイフを振り下ろすと、軽やかなステップで彼女との間合いを取った。
ガーネも同じく、ミューズの攻撃の間合いが届くか届かないかの距離を保ち剣を構えている。
おそらくは、誘っている。ミューズはにやりと口端を持ち上げナイフを頭上に掲げると、高らかに叫ぶ。

「木偶、グラニヴァリウスですわ!」

と、紅の僅かな操作によって、再度光の粒子が、ミューズの左手に集まり、肘から下をエレキヴァイオリンへと換装させた。
ぎりぎりの間合いを保ったままだったガーネも僅かに動揺したのか、すかさずバックステップで間合いを広げた。
「甘いですわ!グラニヴァリウスの攻撃は音によるもの!いくら間合いを広げても音からは逃れられない!」

ミューズの勝ち誇った声はガラスの城に反響し、美しい音色のようにフロアに降り注ぐ。
同時に換装された腕にボウナイフを軽く当て、音楽を奏で始める。
軽やかな曲調。これはバッハの…

『「“しりぞけ、もの悲しき影”」』

紅とミューズの声が重なった瞬間、ガーネの様子が一変した。
頭を押さえてうずくまっているのだ。

「わたくしの奏でる音色は、神姫の神経回路を麻痺させ、動きを止めますの」

「く、そ…汚いぞ、ヴァイオリン型ぁ…!!」

ガーネの苦し紛れの咆哮にミューズは怯むことなく歩を進め、手にしたナイフを高々と掲げた。

「初陣にて、初勝利、ですわね!」

今まさに振り下ろさんとするナイフを視界に入れ、ガーネは尚も咆哮した。
ジャリと、ガラスの破片をこする音。彼女は自身の大剣を掴んでいた。

『ミューズ!避けろ!』

紅の荒々しい叫びに、ミューズは我に返る。とどめを刺さんと振り上げたナイフの先にあったはずの紅い神姫がいない。
一体何処へ?ミューズが振り返る隙もなく、標的はさも簡単に彼女の背後に現れ、その深紅の刀身を突き立てんと振り下ろす最中だった。
間に合わない。ミューズが目を閉じた時、視界どころか、思考までもが闇に呑まれたのだった。


■■■

紅はなにが起きたのか理解できなかった。
ガーネの剣によって、ミューズが貫かれる、とばかり思っていた。
しかし現実は違う。刀身がミューズの素体に触れる寸前、パシュウッ、と空気の抜けるような音と共にガーネの動きが止まったのだ。
次いでミューズまでもがその動きを止め、その場に倒れ伏してしまった。
何がなんだか。
困惑する紅に、ゆったりとサイドテールを揺らしながら吊るし人が近寄って来る。

「充電切れですね。ガーネも、彼女も」

酷く落ち着いた声で彼女は言った。その表情は戦う前の能面じみた薄ら笑いに戻っている。
紅は惚けたまま、彼女を見やった。

「先に充電が切れたのはガーネです。お約束通り、クレイドルはお譲り致しますね」

すんなりと手渡された箱はずっしりと重みを持っていて。
ふいに、ガーネの充電はどうするのか、など色々な思考が紅の頭を埋めた。

「ガーネの充電なら心配要りませんよ。単に、調子に乗りすぎただけです。我が家にはクレイドルもありますし、ね?」

それに、と吊るし人は涼やかな声で続けた。

「欲しかった物は手に入れましたし…なにより、貴方と戦えましたから」

ひらり、とほぼ正方形に折り畳まれた包装紙を紅の前にチラつかせると、そのままショップの出口へと消えて行った。
不気味な奴だ、と。それが率直な感想だった。
とにかく、クレイドルは無事に入手したのだ。早々に帰還し、止まってしまったミューズを起こさねばならないだろう。
吊るし人の目的だとか、先ほどのバトルの反省だとかは、その後だ。
紅は素早くレジに並ぶと、足早に岐路に着いた。
まだ日の高い昼間のお話。






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