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……さて……

みなさんこんにちは、千尋です

三日間の泊まり込みで中学校の特別講師に行ってきました

授業の内容はまたの機会にお話するとして……

今回は少佐の強い要望により一等兵の初陣のお話をしたいと思います

場所は地元のゲームセンター、使う筐体はミッシェルの製品です



……え? 講師に行ってきた街でしなかったのかと?

…………その街、ゲームセンターが無かったんです





第六話 対決、山田農場神姫部門



とある平日の昼過ぎ、自分たちは総帥に連れられて人もまばらのゲームセンターに来ている

目的は一等兵の初陣だ

付き添いとして総帥の神姫は全員連れてきている

「……弾倉よし、各可動部よし……えっと、あとは……」

「一等兵、すでにチェックは終わってるだろう?」

一等兵と少佐のこの会話も今朝より7度目になり、自分としては既に聞き飽きた感がある

「……私も、初陣はあんな感じでありましたか?」

曹長の問いに自分は頷いた

「1年前のお前も落ち着かなかった……あの時も少佐とあんな感じの掛け合いをしていた」

しかし、少佐もよく何度も同じ返答ができるものだ

自分ならば3回目くらいで返答を拒否したくなるのだがな



……そんな事をしている間に、総帥が筐体のそばに着いたようだ

総帥は自分たちを移送用キャリングケースから出して投入ポッドの側に置き、本体側に歩いていった……試合の受付をしてくるのだろう

「……こんな時は手のひらに『人』と書いて飲む…………あれ? わたし達の場合は『神姫』って書くんですか!?」

……本当に落ち着け、一等兵

「……おや? キミ達は、高城さんの所の……?」

一等兵に気を取られているうちに、なにやら大きなキャリングケースを2つずつ持った若い夫婦連れが近づいていた……声を掛けてきたのは夫の方だ

「あ! 山田さん、お久しぶりです!」

タイミング良く総帥が戻ってきた……受付を終了して、挑戦者待ちの状態だとディスプレイに表示されている

「やっぱり高城さんですか!……対戦するんですか?」

この人は、この街の外れで農場を経営している山田 貴善(やまだ たかよし)さんで、後ろにいるのが奥さんの柚月(ゆつき)さんだ……見るからに人の良さそうな若夫婦である

その山田さんが人懐っこい笑顔で総帥に話しかける

「はい、今日はこの子の初陣なんです」

言いながら総帥は一等兵を手のひらの上に持ち上げた……一等兵はまだあたふたしている

「じゃあ、そのお相手はボク達がさせてもらうよっ!」

山田さんの奥方の胸ポケットから顔を出した小さい戦乙女、アルトアイネス型が高らかに宣言した

「……『達』って事は……姉様、私も出るのですか?」

同じ胸ポケットから遅れて顔を出したのは、大きな戦乙女、アルトレーネ型だ

……アルトレーネがアルトアイネスの妹というのも、なかなか違和感があるな……

「ルイはともかくマリがやる気なので、お相手お願いします」

山田さんの夫の方……呼び方が面倒くさいな、名前でいいか……貴善さんが低姿勢に勝負を申し出た

後ろでは柚月さんが会釈をしている……先程から言葉を発してないが、この人は失声症なのだとか

総帥の診断では『何らかの心的外傷』が原因なのだそうだ……まあ、今はそんな事は関係のない話だったな



2人が反対側のポッドに向かい、総帥は一等兵のセッティングに入られた

「さあ、頑張ってね一等兵」

「きっ、期待に添えるよう頑張ります!」

重量のある機関銃に、1本の剣……予備の弾倉が2個

今回はフライトユニットを着けずに出撃するらしい……まあ、相手が2人掛かりなのだから、一撃離脱の戦法は使いにくいだろう

「……あとは……曹長も行こうか」

「はっ! 了解であります!」

さすがに初陣で1対2は辛いと判断されたのだろう、総帥は曹長の準備も始められた

サブマシンガンにガトリング砲、予備弾倉がそれぞれ3個ずつ……どうやら弾幕で援護させる気でおられるようだ

「……じゃあ少佐、指揮は任せたよ」

「はっ! お任せ下さい! 必ずや我が隊を勝利に導いてご覧に入れます!」

ポッド横の指令席に立ち、少佐が総帥に敬礼をした……相変わらず綺麗なフォームだ

「えっ、あの……総帥が指揮をとってくれるんじゃないんですか?」

やはりと言うべきか、一等兵は困惑しているな

そうだろうな、本来神姫バトルにおいて神姫に指示を出すのはマスターの役目だ

しかし、総帥の『指揮』はかなり特殊だからな……通常は少佐が全指揮を取ることになっている

「なんだ? 私の指揮では不満か?」

「あ、いえ、そう言うわけではないんですが……」

「ならば問題無かろう、ポッドに入れ」

有無を言わせぬ少佐の言葉に、一等兵は狐につままれたような表情のまま神姫投入ポッドに入っていった

「では! 行って参ります!」

曹長がセンサーゴーグルを取り外したメットを被り少佐に敬礼をした

「うむ、今回は一等兵の初陣であるからな、しっかり援護してやれ」

少佐の言葉に曹長は再び敬礼をしてポッドに入っていった

ポッドには拠点に収納される予備の武装が既にセットされていた




戦場情報

ステージ:未開の密林

コーナーA  高城・M・千尋
飛鳥型 δ
ゼルノグラード型 γ

予備兵装
ガトリング砲×1門
ガトリング予備弾倉×5個(200発)
サブマシンガン×3丁
マシンガン予備弾倉×7個(80発)
携行式ミサイルランチャー×3門(4発)
軍刀:煉×2本
ヒミツの追加武装(δ)
ヒミツの追加武装(γ)



コーナーB  山田夫妻
アルトアイネス型 マリ
アルトレーネ型 ルイ

予備兵装……不明



『GET READY ?』

モニターにこんな表示が現れる……どうやら相手の準備が完了したようだ

総帥も準備完了のボタンを押す……ポッドのシャッターが閉められた

少佐を見ると指揮用ヘッドセットを装着してマイクテストをしていた

……両者の読み込みが終了し、ディスプレイに二人の姿が表示された

「……貴君らの検討を祈る、行くぞ!」

『了解!』

二人の声が綺麗に重なった……試合開始だ







……今回の戦場は『未開の密林』と名付けられていた、どうやら山田夫妻の自作ステージらしい

鬱蒼と茂る木々に、湿度の高そうな空気、堂々と闊歩する巨大生物……ん!?

白い斑紋のある真っ赤な丸い身体に体躯の半分を占める大きな口、口の上から突き出た目玉、巨躯にはアンバランスな足……恐らく、地球上には存在しないであろう巨大生物がそこにいた

「なっ!? この生き物は!?」

「ばっ、バケモノであります!」

ディスプレイのこちら側にいる自分でも驚いているのだ、実際に目の当たりにした二人の驚きは自分のそれを大きく上回るだろう

「落ち着け! ただのギミックだ!」

少佐の言葉通り、その巨大生物は2人に目もくれずに木々の間を縫って何処かへ歩いていった

「……なんだったのでしょう?」

「向こうがこっちに敵意を出さないなら、気にせず行くであります。敵はもう動き出してるはずであります」

曹長はこんな時、意外と冷静になる

既に思考を戦闘用に切り替えているようだ

「一等兵、貴官は九時方向から進め。曹長は遊撃とする、自己の判断で行動せよ」

『了解!』

再び2人の声が重なり、一等兵は少佐の指示通り拠点から左方向へ歩き始めた

一方曹長は、先程の巨大生物を追うように中央の道を進んでいく

……どうやら、巨大生物が気になっていたようだ

自分はとりあえず一等兵の動向を見ることにするか




……道無き道を進んでしばらく……

周囲の木々は隙間なく茂り戦場の広さがよくわからない上に、視界が非常に悪い

幾度か最初にみた巨大生物よりも3分の1くらいの大きさの生物を見たが、特に一等兵に攻撃を仕掛けることはなかった

生物がレーダーに反応するので多少の攪乱にはなっているが、特に害は無さそうだと少佐は判断している

……しかし、自分にはこの生物がただの環境ギミックには思えなかった

何か別の目的がある……そんな気がしてならなかった

「……これは、なんでしょう?」

自分が考え込んでいる内に一等兵は少し開けた場所に進み、何かを発見したようだ

そこには、赤いタマネギのような球体が3本の足で鎮座していた……その足下の地面にはミステリーサークルのような模様がある

生き物ではなさそうだが、球体の頭頂部では花を模したプロペラがゆっくりと回転している……UFOか?

「……未確認飛行物体をこの目で確認してしまったら、それはUFOと呼んで良いんですかね?」

とりあえず自分はUFOと呼称するとしよう

「そんな事は気にするな、まずは周囲に警戒しつつ『それ』が脅威となり得るか調査しろ」

敵以外のものがレーダーに反応しているので、信じられる物は自らの目と耳だけになっている

しかし、それすらも生い茂る木々とざわめく生物達によって曖昧になる……果たして、どれだけまともに索敵できるかな

「……なんだか、あたたかいです……これは生きているんでしょうか?」

一等兵がUFOに触れて調査している……生きている? これも生物だとでも言うのか?

「剣で叩いてみますか?」

一等兵がベルトから剣を鞘ごと外し、正眼に構える

「やめておけ……おそらくこれもギミックだ」

少佐の判断に一等兵は剣をベルトに戻した



……ガサッ!

「……っ!?」

「隠れろ!」

何かの物音がして、コンマ数秒の間を空けずに少佐の指示が飛ぶ

一等兵はそれに従い、近くにあった倒木の影に身を潜めた

「……今、誰か居た?」

姿を現したのは、マリだった

リアユニット以外の武装を一切着けず、頭に一本のアンテナが立っていて、その先端には赤く光るビーコンが揺れていた……ちょっとマヌケな光景だが、妙に可愛らしい

リアユニットのノインテーターは改造されているようで、スカートを構成するブレードが外されサブアームの手の大きさが倍以上に大きい……実質攻撃力が落ちていると思うのだが、何のために?

「う~……あー、もう! デメマダラばっかりでレーダー使えないじゃん!」

……あのかわい……おかしな生物は『デメマダラ』と言うのか? ということは、小さいのはその幼生体だろうか

「まあいいや……お~い、こっちこっち!」

マリが出てきた方に向かって呼びかけるともう1人、ルイも姿を現した……こちらは頭の上にアンテナと青く光るビーコンが揺れている

「もう……姉様も手伝って下さい!」

ルイの方もマリと同じような改造を施されたニーベルングを背中に背負っていて、今はそのサブアームで何かを抱えている

「いいじゃん、ほら早くペレットこっち置いて!」

マリに誘導されるままルイはそれをUFOの球体部分の真下に置いた

……やはりあのUFOはただのギミックではなかったか……しかし、あれは何だ?……

丈の短い円筒状で、中央に大きく『1』と書かれた赤い何か……マリが『ペレット』と呼んでいたな

……キュミミミ……キュポンッ!

やや間抜けな音を立ててUFOが底部からペレットを吸い込んだ……これが、キャトルミューティレーションというやつか?

「……レーダーに反応が増えました、UFOの内部に反応が二つ!」

相手に聞こえないような小声で一等兵が報告する

「こちらのレーダーでも捕捉している、そのまま様子を見るんだ……相手は二人掛かりの上にどんな武装を持ち出してくるかわからん、下手に動けばやられるぞ」

「了解、このまま経過を見ます」

再び一等兵が視線を戻すと、UFOの頭頂部にあるプロペラが少しだけ早く回っていた

……ポポンッ!

UFOの頭頂部から何かが2個射出され、それはゆっくりと降下して地面に落ち、土に埋まった

……遠目ではよく見えなかったが、なにやら葉の付いた植物の種子のようにみえたが……

「あ! 姉様、芽が生えましたよ!」

しばらくすると、落着した地点から葉っぱのような物が生えた

「……んしょっ、と」

マリがおもむろにその葉の根本をサブアームで掴み、勢いよく引き抜いた

……ぐぐっ……ポンッ!

またも間抜けな音を立て、マリは何かを引っこ抜いた

「きゃうっ!?」

マリが引っこ抜いた『もの』……それは……頭から一枚の大きな葉を生やした種型神姫ジュビジーだった

まさか、相手はこうして戦力を確保するのか?

「じゃあこっちは私が……っと!」

「きゃん!?」

もう一つの葉はルイが引っこ抜く……こちらも同じようなジュビジーが抜ける

……あのUFOはジュビジーを増殖させるための装置なのか?

「……敵戦力が増殖する条件は、先程の『ペレット』と言うことか……」

少佐は自分と同じ事を考えていたようだ

「曹長、聞こえるか? ビジュアルデータを送る、ペレットを見つけ次第破壊しろ!」

「了解であります!」

ディスプレイは一等兵を追跡するカメラになっているから曹長の状態がわからないが、通信終了直後に銃声が聞こえたあたり、付近にペレットがあったのだろう

「……あの、わたしはどうしましょうか?」

相手の様子を見ていた一等兵が少佐に指示を要求してきた

「一度その場を離れてペレットを捜索、発見次第破壊しろ」

……自分は物陰に隠れて機関銃で威嚇射撃、敵の警戒心を煽って増殖の進行を鈍らせる、という行動が最適かと思ったのだが指揮官は少佐だ、だから自分は何も言ってはいけない

「了解、この場を離脱します」

一等兵は気配を殺しながら木々に身を隠してその場を離れて森の中へ入っていった






……森の中は、混沌を極めていた

先程のデメマダラのみならず、珍妙な生物で溢れかえっていた

「……凄いです! この森は生命に満ちあふれています!」

一等兵……お前は何故そんなに楽しそうなんだ?

「気を緩めるな、速やかにペレットを探して破壊しろ。敵の増殖をくい止めるんだ」

はしゃぐ一等兵に少佐が檄を飛ばす

「はい、りょうか……あ! 発見しました!」

一等兵の目の前には複数のペレットがあった

しかし先程見たような物だけではなく赤青黄の三色あり、そのペレットは背が高く葉のない茎で地面と繋がっていて、本体からは花弁が広がっている……まるで一輪の花が直接地面から生えているようだ

「それがペレットの本来の姿なのかも知れん、本体に狙いを集中させて破壊しろ」

「了解!」

一等兵が機関銃を構え、1つのペレット目掛けてトリガーを引いた

数発の弾丸がペレットに直撃、細い茎が激しく千切れ飛び、花弁は儚く散った……しかしペレットは残っていた……しかも無傷で

「……どういうことなの!?」

一等兵は驚きを隠せず、どうして良いかわからなくなっているようだ

「破壊できないなら、せめて奴らに見つからないように運び出せ」

少佐が次の指示を出し、一等兵がそれに従った……しかし……

「……くうっ……お、重いです!」

ペレットは見た目以上に重いらしく、一等兵が力を込めても微動だにしなかった

こんな物を奴らは運び出したというのか?

「あっ、姉様! 敵さん発見です!」

「やっぱりね、銃声が聞こえたと思ったらペレット狙ってたな?」

機関銃の音を聞きつけた二人に見つかってしまった

「先手必勝だ! 撃て!」

「はい!」

少佐の指示に一等兵が機関銃を構ようとする

「させないよ! 行けっ!」

一等兵の行動を予測していたのかマリの行動は一等兵が機関銃を構えるより早く、サブアームで何かを投げつけてきた

「なっ……むぎゅっ!?」

その何かにぶつかり、一等兵は地面に仰向けに倒れた

一等兵にぶつかったものは、頭に大きな葉を付けたジュビジーだった

「まだまだ行くよ! どりゃあっ!」

「それそれなのです!」

マリとルイは追い打ちをかけるように次々とジュビジーを投擲してくる……いつの間に数を増やしてきたんだ?

「むっ、むぐぐ……」

ジュビジー達の下敷きになり、一等兵が足をばたつかせて暴れるがジュビジー達はびくともしなかった

ジュビジーの上にジュビジーが重なり、20人くらいが一等兵の上に乗ったとき、暴れていた一等兵の足がパタリと止まった

「お? やっつけたかな?」

一等兵の状態を確かめるためにマリが近づく

……ドガガガガガガガガガッ!!

そこに降り注ぐ大粒の弾丸の雨、マリとルイは反射的にその場を飛び退いた

「うわっ!? あっぶないなぁ、もう」

「あの、姉様……ジュビちゃんたちが……」

一等兵の上から動かないまま弾丸の雨にさらされたジュビジー達はその大半がヴァーチャルの粒子になって消滅した

「やばっ!? 大損害だよ!」

マリは言うが早いか、どこからかホイッスルを取り出し、思いっきり吹き鳴らした

甲高い笛の音があたりに響き、残っていたジュビジー達がマリの側へ移動する

……ん? 今、マリのビーコンが強く光ったような?

「大丈夫でありますか!?」

ガトリングの掃射を終えた曹長が一等兵に近寄り安否を気遣う

「うぅ……ふぁい、らいじょうぶれす……」

一等兵はゆっくりと起き上がり、呂律の回ってない返事をした……自分には大丈夫に見えない

「……ルイ、ここはボクが引き受けるから、5人連れて増やしてきて」

「わかりました!」

二人の短い会話の後に、今度はルイがホイッスルを短く吹いた

マリの物と音色が違う音に反応し、5人のジュビジーがルイの側に移動する

……気のせいか、ホイッスルを吹いた瞬間ルイのビーコンが強く光った

「すぐに増やしてきます!」

ルイが背を向けて走り出し、5人のジュビジーもそれに続いていく

「逃がすな! 撃て!」

少佐からの指示が飛ぶ、曹長はすぐにガトリングを構えたが、一等兵は先程ジュビジーをぶつけられた衝撃で機関銃を落としてしまっていたようだ

「させるかっ!」

ルイの背中に向けてガトリングを構える曹長にマリがジュビジーを投げつけた

「ぐあっ!?」

ジュビジーがぶつかった衝撃で照準がずれ、撃ち出された弾丸は周辺の木の幹を穿っただけに終わった

「次はこっち!」

マリが次のジュビジーを掴み、今度は一等兵目掛けて投げつけた

「……せいっ!」

ビシュッ!

投げつけられたジュビジーに対し、一等兵は鞘から剣を抜いて逆袈裟に切り払った

ジュビジーは銅を斜めに切断され、ヴァーチャルの粒子になって消滅した

……先程から思ったが、ジュビジー自体には攻撃力も耐久力もほとんど無いようだ

通常の神姫ならば多少の射撃や斬撃では戦闘不能にならないのだが……どうやらこのジュビジー達は攻撃、耐久ともに最低値以下に設定してあるようだ

「……っ! この!」

曹長がジュビジーを振り払い、ガトリングを放棄してサブマシンガンをマリに向ける

しかし、それもまた投げられたジュビジーによって照準を狂わされた

「このままでは時間を稼がれてしまいます」

「分かっているであります……しかし……」

「……ほら、仕掛けてこないの?」

三人は距離を開けてにらみ合っていた

現在マリの後ろにはジュビジーが7人、そしてノインテーターの腕に掴まれているのが2人

攻撃準備動作に入った瞬間にマリはジュビジーを投げつけてくる

マシンガンを構えるより早いその攻撃は、不要なダメージを受けるどころか弾の無駄撃ちも引き起こしてしまう

「……わたしが仕掛けます、援護お願いします」

どうやら一等兵に何か考えがあるようで、剣を握り直して下段に構えた

「……行きます!」

一等兵がマリに向かって駆けだし、その後ろで曹長がサブマシンガンを構えた

「来た! くらえっ!」

マリが右サブアームのジュビジーを投げる……目標は一等兵

「そこっ!」

曹長がサブマシンガンを構え、トリガーを引いた

「させない!」

マリは自分に向けて撃ち出された弾丸を空いた右サブアームで防御する……しかし、曹長の狙いはマリではなかった

「きゃうぅっ!」

マリの左サブアームに掴んでいたジュビジーが悲鳴をあげた

「…!? しまった!」

左サブアームに掴んでいたジュビジーがヴァーチャルの粒子になって消えた

その間に一等兵が投げつけられたジュビジーを切り払い、さらにマリの後ろで待機していたジュビジーを次々と切り捨てていった

「くっ、この!」

マリが空いたサブアームの拳で一等兵に殴りかかるが、手の大きさのせいで大振りになってしまい、易々と回避されてしまう

「食らうであります!」

その隙に曹長がサブマシンガンで残りのジュビジーを掃討する

わずか数秒の内にジュビジーは全滅した

「ぐっ……ちくしょー、ジュビジーが全滅した……こんな時は!」

マリの次なる行動に備えるため、一等兵は剣を、曹長はサブマシンガンを構え直した

マリがその場にしゃがむ、するとビーコンの発光色が赤から白に変化した

「……勇気ある撤退だ!」

突如ビーコンからまばゆい閃光が放たれ、モニターが白一色に包まれた

視界が戻ったとき、すでにマリは姿を消していた

「……逃がしたか……すぐに探せ! まだ遠くへは行ってないはずだ!」

「了解!」

「了解であります!」

少佐の指示に、2人はルイが逃げた方向へ走り出した……おそらく、ジュビジーが全滅したマリはルイと合流するだろうと予測した上での行動だろう







「……えっしょ、えっしょ……」

「…………」

「…………」

……2人は、途中でペレットを運んでいるジュビジーを発見してしまった

驚きな事に、一等兵がどれだけ力を込めてもピクリとも動かなかったペレットをジュビジーはひとりで運んでいる

一歩進むごとに頭の葉がユラユラ揺れてなんともかわい……いや、この状態はどう判断したものか

ここでジュビジーを撃てば、マリとルイに気づかれないように敵の増殖を遅らせることができる

しかし、このままジュビジーを歩かせれば2人がいる地点にたどり着くかもしれない

「撃つなよ、そいつを泳がせれば敵の本陣に着くかもしれんからな」

少佐の判断は後者だったようだ

指示を受け、2人は少し離れた後方からペレットを運ぶジュビジーを観察することにしたようだ

……ドスッ、ドスッ、ドスッ……

しばらく観察を続けていると、デメマダラが2人の横を通り抜けて行った……やはり、2人には興味を示さなかった

ドスッ、ドスッ、ドスッ、ドスッ……グルル……

デメマダラがジュビジーの真後ろで歩みを止め、低く短く唸った

「えっしょ、えっしょ……」

ジュビジーはデメマダラを気にせずにペレットを運び続けている

……グルルル……パクッ

「きゃあっ!?」

「あ……?」

「えっ……?」

ジュビジーの短い悲鳴が響き、2人が素っ頓狂な声を上げた

……ジュビジーがデメマダラに食べられてしまったのだ

まず上半身を大きな口にくわえ、もがくジュビジーを気にせずに上を向いて丸呑みにした

……グルル……

ジュビジーを飲み込んだ後、デメマダラは再び短く唸ってから周囲を見回している

…………ドスッ、ドスッ、ドスッ……

そして再び歩き出す……気のせいか、先ほどまでジュビジーが向かっていた方向へ進んでいった

……デメマダラが去った後には、ペレットだけが残っていた……

「……手掛かり、食べられちゃいましたね」

「……そうでありますな」

いきなりの事態に2人は困惑しているようだ

「……あー……どうしたものか」

少佐まで呆気にとられてしまったようだ

「……と、とりあえずデメマダラを追え! 奴はジュビジーのみを捕食対象にしているのかもしれん」

「了解!」

とりあえず少佐が出した指示に一等兵が返事をする……しかし、曹長は首を傾げていた

「……デメマダラ……?」

そうか……あの時曹長はいなかったから、あの生物の名前を知らなかったのか

「先ほどジュビジーを捕食した生物の名前だ。マリがそう言っていた……今すぐ追え!」

「なるほど……了解であります!」





……2人がデメマダラの向かった方向へ進み、しばらく時間が経過した

既にデメマダラを見失っており、2人はただ歩を進めているだけだった

「……しっかし、やたらと広い森でありますなぁ……軍服を森林迷彩に着替えれば良かったであります」

「うぅ……機関銃を無くしてしまうなんて……軽いサブマシンガンにすれば良かったです」

行けども木々ばかりで気が滅入ってきたのか、2人の声は気弱になっていた

「反省会は後でしろ、今は戦闘に集中するんだ」

少佐のヘッドセットを借り、自分が2人に言葉をかける

「……そうだな、一度2人とも拠点に帰投してはどうだ? 今の装備では心許ないだろう」

後ろの少佐に振り返りながら2人に提案をする……少佐も頷いているから、反対ではないらしい

「……そうですね、さっき少し戦って思ったのですが……マリさんが本気を出したら剣1本では立ち向かえないと思いますので、一度装備の補充に向かいます」

「自分は着替えと弾倉の補充、それとミサイルランチャーを取りに戻るであります……今の武器では、ペレットすら破壊できなかったのであります」

2人の意見を聞き、少佐にヘッドセットを返した

「よし、2人とも拠点への帰投を許可する」

少佐の言葉を受け、2人は拠点へと歩を進めた……





戻る  続く




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