「バ、バーカ!」
『声が小さい!あともっと具体的に!』
「あ、赤バカーーー!」
『お前がバカだ!!』
皆様如何お過ごしでしょうか?寒い日が続いていますが、どうか体調など崩され
ませんよう、気を付けて下さい。凛です。
え?なにをしているか、ですか?
えー、これはですね。いや、違うんですよ。決して私の本意ではないんです。あ
のー、そう、作戦!あくまで作戦なんです!
アイナさんとのレースを受けたはいいんですが、あっと言う間にぶっちぎられて
しまいまして。このままじゃどうしようもない、と隼人の提案したのがこれです
。
「は、隼人ぉ~?こんな事で本当になんとかなるんですか?」
『なるッ!あのテのヤツは挑発すれば絶対乗ってくる!』
「絶対、ですか……?」
『絶ッッッッ対!』
…………一体どこから来るんでしょう、この自信は?『相手を挑発して誘き出す
』というのがこの作戦なんだそうですが――
「全然戻って来ませんよ?もうゴールしちゃったんじゃ……」
とても効果があるようには思えません。そもそもこれ、『作戦』と呼べるんでし
ょうか?子供のケンカじゃあるまいし……
『――ったく、しょうがねぇな。わかったよ、俺が見本見せてやるから、よく見
とけよ?』
見本、って何をするつもりなんでしょう。あぁ、嫌な予感。
『おーい、風華ー!』
『んー?なんだよ隼人?』
おや、どうやらアイナさんではなく、マスターである風華さんに狙いを定めたよ
うです。いくら隼人でも、まさか友人に対して暴言は吐かないと思うのですが多
分きっとお願いですから。
『お前んトコのアイナすげぇな!あんな速いヤツはじめて見たぞ!』
『だろだろーっ?あたしもがんばってカスタムしたんだぜ!』
『へぇー、やっぱり。相性も良さそうだよなぁ、負けん気の強そうなトコなんか
もそっくりだし。で、も、さ?』
『?』
『どんなに性格が似ててもさー、スタイルだけは似せようがないよなwww』
『『『「!!?」』』』
アークタイプの素体は基本的に、非常にスタイル良く作られています。なんと言
いますかこう、胸のあたりなんかが特に無駄に。
……個人の趣向にどうこう言うつもりはありませんが、私としては胸なんていう
のは飾りでしかないと思うんですよ。そんな表面的な部分で女性の価値は決まり
ませんし、そのような事でしか女性を評価出来ない男性なんて器量が知れるとい
うもので、だから私は別に気にしている訳でもましてコンプレックスなんて感じ
ていませんし断じて悔しくもないのです。
『………そ、そ、そんなこと……そんなことっ……』
『ないのかwww胸がwwwww』
『………………う、うわぁぁぁぁぁん!!アイナぁぁぁぁぁぁーーーーーー!!
』
確かに風華さんは部分的に見れば非常に控え目な造りをしていらっしゃいます。
舞や旋華さんに比べてもそれは顕著かもしれません。ですがそれにしたって酷い
!酷すぎますよ隼人!私にはよくわかりますよ風華さん!あなたの気持ちが!
『……隼人、後で話があるから』
『ボクも。隼人君はそんな人じゃないと思ってたのに』
『え、なんでお前らが怒るの!?』
女性陣から一身に深い怒りを買った隼人。このまま無事に済むとは思わない方が
いいですよ。
と、フィールドにこだました風華さんの叫びに呼ばれ、彼方から青い影が轟音を
あげながら近付いて来ます。
「あんたらー!風華いじめんなー!!」
それは当初のもくろみ通りに舞い戻って来たアイナさんでした。これで見事に作
戦成功、のハズなんですが……うぅ、いくら勝つ為とは言え、何か大事な物を失
った気分です。
『隼人のバカ!スケベ!変態!もう許さないからな!どうなったって知らないか
らなぁーーーーっ!』
あぁ、風華さん号泣です。こんな辱めを受ければ当然でしょう。私も泣きたい気
分です。
「隼人!!女性を泣かせるなんて最低ですよ!言っていい事と悪い事があるでし
ょう!?」
『な、なにも泣くことねーだろ!?だいたい何でお前まで泣いてんだよ!』
「隼人なんかに女性の、私達の気持ちはわかりません!後で覚えていて下さい!
」
『アイナーーー!!レースなんてもう知らねー!やっちゃえ!やっつけちゃえー
ーーー!!』
ひとまずこの場は全力で勝利を目指しますが……バトルが終わったらちゃんと謝
りましょうね、隼人。
『声が小さい!あともっと具体的に!』
「あ、赤バカーーー!」
『お前がバカだ!!』
皆様如何お過ごしでしょうか?寒い日が続いていますが、どうか体調など崩され
ませんよう、気を付けて下さい。凛です。
え?なにをしているか、ですか?
えー、これはですね。いや、違うんですよ。決して私の本意ではないんです。あ
のー、そう、作戦!あくまで作戦なんです!
アイナさんとのレースを受けたはいいんですが、あっと言う間にぶっちぎられて
しまいまして。このままじゃどうしようもない、と隼人の提案したのがこれです
。
「は、隼人ぉ~?こんな事で本当になんとかなるんですか?」
『なるッ!あのテのヤツは挑発すれば絶対乗ってくる!』
「絶対、ですか……?」
『絶ッッッッ対!』
…………一体どこから来るんでしょう、この自信は?『相手を挑発して誘き出す
』というのがこの作戦なんだそうですが――
「全然戻って来ませんよ?もうゴールしちゃったんじゃ……」
とても効果があるようには思えません。そもそもこれ、『作戦』と呼べるんでし
ょうか?子供のケンカじゃあるまいし……
『――ったく、しょうがねぇな。わかったよ、俺が見本見せてやるから、よく見
とけよ?』
見本、って何をするつもりなんでしょう。あぁ、嫌な予感。
『おーい、風華ー!』
『んー?なんだよ隼人?』
おや、どうやらアイナさんではなく、マスターである風華さんに狙いを定めたよ
うです。いくら隼人でも、まさか友人に対して暴言は吐かないと思うのですが多
分きっとお願いですから。
『お前んトコのアイナすげぇな!あんな速いヤツはじめて見たぞ!』
『だろだろーっ?あたしもがんばってカスタムしたんだぜ!』
『へぇー、やっぱり。相性も良さそうだよなぁ、負けん気の強そうなトコなんか
もそっくりだし。で、も、さ?』
『?』
『どんなに性格が似ててもさー、スタイルだけは似せようがないよなwww』
『『『「!!?」』』』
アークタイプの素体は基本的に、非常にスタイル良く作られています。なんと言
いますかこう、胸のあたりなんかが特に無駄に。
……個人の趣向にどうこう言うつもりはありませんが、私としては胸なんていう
のは飾りでしかないと思うんですよ。そんな表面的な部分で女性の価値は決まり
ませんし、そのような事でしか女性を評価出来ない男性なんて器量が知れるとい
うもので、だから私は別に気にしている訳でもましてコンプレックスなんて感じ
ていませんし断じて悔しくもないのです。
『………そ、そ、そんなこと……そんなことっ……』
『ないのかwww胸がwwwww』
『………………う、うわぁぁぁぁぁん!!アイナぁぁぁぁぁぁーーーーーー!!
』
確かに風華さんは部分的に見れば非常に控え目な造りをしていらっしゃいます。
舞や旋華さんに比べてもそれは顕著かもしれません。ですがそれにしたって酷い
!酷すぎますよ隼人!私にはよくわかりますよ風華さん!あなたの気持ちが!
『……隼人、後で話があるから』
『ボクも。隼人君はそんな人じゃないと思ってたのに』
『え、なんでお前らが怒るの!?』
女性陣から一身に深い怒りを買った隼人。このまま無事に済むとは思わない方が
いいですよ。
と、フィールドにこだました風華さんの叫びに呼ばれ、彼方から青い影が轟音を
あげながら近付いて来ます。
「あんたらー!風華いじめんなー!!」
それは当初のもくろみ通りに舞い戻って来たアイナさんでした。これで見事に作
戦成功、のハズなんですが……うぅ、いくら勝つ為とは言え、何か大事な物を失
った気分です。
『隼人のバカ!スケベ!変態!もう許さないからな!どうなったって知らないか
らなぁーーーーっ!』
あぁ、風華さん号泣です。こんな辱めを受ければ当然でしょう。私も泣きたい気
分です。
「隼人!!女性を泣かせるなんて最低ですよ!言っていい事と悪い事があるでし
ょう!?」
『な、なにも泣くことねーだろ!?だいたい何でお前まで泣いてんだよ!』
「隼人なんかに女性の、私達の気持ちはわかりません!後で覚えていて下さい!
」
『アイナーーー!!レースなんてもう知らねー!やっちゃえ!やっつけちゃえー
ーーー!!』
ひとまずこの場は全力で勝利を目指しますが……バトルが終わったらちゃんと謝
りましょうね、隼人。
「くっ!速い!」
『後ろだ!跳べ!』
隼人の声に従い跳躍。直後、間一髪で空を斬り裂く刃。あ、危なかった!
なんとかアイナさんと接近戦に持ち込めた所まではよかったのですが、今度は動
きが速すぎて全く手が出せません。自在にトライクを操るアイナさん相手に防戦
一方です。
唯一の救いはあちらも陸戦型、という点でしょうか。前回のアルさんのように高
低差が無いだけ幾分かはマシですね。
「ふっ!」
銃撃に対して身を低く屈め、すれちがい様に後ろ回し蹴り。
「おっと!」
惜しい!ですが大分タイミングは掴めて来ました。同時に、アイナさんの武装も
一通り把握する事が出来ました。近接用のブレード、中距離のアサルトライフル
、そして恐らく遠距離用であろう、長い砲身。これらがメインウェポンの様です
。
ライフルで牽制し、ブレードで仕留める。シンプルですが堅実な戦法です。しか
し、単調すぎましたね!アイナさんの直情的な性格故なのでしょう。攻撃を繰り
出しながら直進、そして反転し再び攻撃。動きがパターン化してしまっています
。確かにスピードは桁違いですが、これならいくらでも対応出来ます。と、言っ
ている間にも再び接近してくるアイナさん。私はタイミングを図り、敢えて前へ
。そして目前に迫る前輪を低く飛び越え、フロントカウルの上に乗り上げます。
「このっ……!」
迎撃の為私に向けようとした銃口を押し退け、その顔面にまず一発。さあ、反撃
開始です。散々持て余したフラストレーションを、今こそ発散させてもらいまし
ょう。ふふふ、覚悟しなさい。
「はああああああっ!」
握り締めた左右の拳を、ひたすらアイナさんに叩き付けます。技術も戦略も無関
係に、力の限りに振るう打撃。充分にダメージを与えたであろうと判断した私は
とどめにサマーソルトキック、顎を蹴り上げながら跳躍し、トライク上から飛び
降りました。
『キィィィィ!ガシャーーーーン!!』
蹴り飛ばされたアイナさんは派手な音をたてながら岩壁に激突。さらに崩れてき
た岩に埋もれてしまいました。
……正直、少しやりすぎたような気がしなくもありません。
『どう見ても交通事故です。本当にありがとうございました』
「み、みなさんも道を歩く時は事故には気を付けてくださいね!」
ってそうじゃなくて!まさかこんな事になってしまうとは。アイナさん、生きて
ますか!?
『あーあ、ありゃ死んだな』
「わ、私はなんてことを……」
『とりあえず話は署の方で伺いますんで。カツ丼でもどうぞ』
「こ、殺すつもりはなかったんです。まさかあんな事になるなんて……」
「こらぁ!勝手に殺すなぁーっ!」
あ、生きてた。傷だらけで砂埃にまみれながらも、なんとか瓦礫から這い出て来
たようです。まぁ、どうせバーチャルなんで本当に死ぬことなんてないんですけ
どね。それにしてもタフな方ですこと。
「軽く言うなぁ!ホントに死ぬかと思ったわよ!もう、あったまきた!風華、あ
れやるよ!」
どうやらまだ切札があるようですね。しかしアイナさん自身は脱出しましたが、
武装を搭載した肝心のトライクはまだ瓦礫の下にあるままです。仕掛けるなら…
…
『今だ!やっちまえ凛!』
「合点承知です!」
私は一気に間合いを詰め、再び攻勢に出ます。まだダメージも残っている筈です
し、反撃の暇など与えません!
「え?いや、ちょっと待……」
「お断りです!」
返答と共に、顔面に右の拳を叩き込みます。続けて、よろめいた所に左のボディ
ブロー。そして彼女が悶絶した隙にエネルギーを右拳へと収束、くらえ必殺!
「獣牙ぁ!爆熱けえぇぇぇぇぇぇぇぇぇん!!」
渾身の力を込めたとどめの一撃。 力強く振り抜いた右腕はアイナさんを軽々と吹
き飛ばし、彼女を再び瓦礫の中へ。派手に砕け飛ぶ破片が、その衝撃を充分に示
してくれました。
「よしっ!」
確かな手応え!例え立ち上がれたとしても、もうまともに戦う事は出来ないでし
ょう。私の勝ちです!
「隼人、やりましたよ!ヒカリはどうなったでしょうか?」
勝利を確信し、私はアイナさんに背を向けました。その瞬間、巻き上がる粉塵を
吹き払った一陣の風。いえ、それはただの風と呼ぶにはあまりにも強烈なうねり
でした。私を飲み込んだそれはまさに「竜巻」。
全てを薙払う青い竜巻。私は為す統べもなく、その渦中へと吸い込まれてしまい
ました。
『後ろだ!跳べ!』
隼人の声に従い跳躍。直後、間一髪で空を斬り裂く刃。あ、危なかった!
なんとかアイナさんと接近戦に持ち込めた所まではよかったのですが、今度は動
きが速すぎて全く手が出せません。自在にトライクを操るアイナさん相手に防戦
一方です。
唯一の救いはあちらも陸戦型、という点でしょうか。前回のアルさんのように高
低差が無いだけ幾分かはマシですね。
「ふっ!」
銃撃に対して身を低く屈め、すれちがい様に後ろ回し蹴り。
「おっと!」
惜しい!ですが大分タイミングは掴めて来ました。同時に、アイナさんの武装も
一通り把握する事が出来ました。近接用のブレード、中距離のアサルトライフル
、そして恐らく遠距離用であろう、長い砲身。これらがメインウェポンの様です
。
ライフルで牽制し、ブレードで仕留める。シンプルですが堅実な戦法です。しか
し、単調すぎましたね!アイナさんの直情的な性格故なのでしょう。攻撃を繰り
出しながら直進、そして反転し再び攻撃。動きがパターン化してしまっています
。確かにスピードは桁違いですが、これならいくらでも対応出来ます。と、言っ
ている間にも再び接近してくるアイナさん。私はタイミングを図り、敢えて前へ
。そして目前に迫る前輪を低く飛び越え、フロントカウルの上に乗り上げます。
「このっ……!」
迎撃の為私に向けようとした銃口を押し退け、その顔面にまず一発。さあ、反撃
開始です。散々持て余したフラストレーションを、今こそ発散させてもらいまし
ょう。ふふふ、覚悟しなさい。
「はああああああっ!」
握り締めた左右の拳を、ひたすらアイナさんに叩き付けます。技術も戦略も無関
係に、力の限りに振るう打撃。充分にダメージを与えたであろうと判断した私は
とどめにサマーソルトキック、顎を蹴り上げながら跳躍し、トライク上から飛び
降りました。
『キィィィィ!ガシャーーーーン!!』
蹴り飛ばされたアイナさんは派手な音をたてながら岩壁に激突。さらに崩れてき
た岩に埋もれてしまいました。
……正直、少しやりすぎたような気がしなくもありません。
『どう見ても交通事故です。本当にありがとうございました』
「み、みなさんも道を歩く時は事故には気を付けてくださいね!」
ってそうじゃなくて!まさかこんな事になってしまうとは。アイナさん、生きて
ますか!?
『あーあ、ありゃ死んだな』
「わ、私はなんてことを……」
『とりあえず話は署の方で伺いますんで。カツ丼でもどうぞ』
「こ、殺すつもりはなかったんです。まさかあんな事になるなんて……」
「こらぁ!勝手に殺すなぁーっ!」
あ、生きてた。傷だらけで砂埃にまみれながらも、なんとか瓦礫から這い出て来
たようです。まぁ、どうせバーチャルなんで本当に死ぬことなんてないんですけ
どね。それにしてもタフな方ですこと。
「軽く言うなぁ!ホントに死ぬかと思ったわよ!もう、あったまきた!風華、あ
れやるよ!」
どうやらまだ切札があるようですね。しかしアイナさん自身は脱出しましたが、
武装を搭載した肝心のトライクはまだ瓦礫の下にあるままです。仕掛けるなら…
…
『今だ!やっちまえ凛!』
「合点承知です!」
私は一気に間合いを詰め、再び攻勢に出ます。まだダメージも残っている筈です
し、反撃の暇など与えません!
「え?いや、ちょっと待……」
「お断りです!」
返答と共に、顔面に右の拳を叩き込みます。続けて、よろめいた所に左のボディ
ブロー。そして彼女が悶絶した隙にエネルギーを右拳へと収束、くらえ必殺!
「獣牙ぁ!爆熱けえぇぇぇぇぇぇぇぇぇん!!」
渾身の力を込めたとどめの一撃。 力強く振り抜いた右腕はアイナさんを軽々と吹
き飛ばし、彼女を再び瓦礫の中へ。派手に砕け飛ぶ破片が、その衝撃を充分に示
してくれました。
「よしっ!」
確かな手応え!例え立ち上がれたとしても、もうまともに戦う事は出来ないでし
ょう。私の勝ちです!
「隼人、やりましたよ!ヒカリはどうなったでしょうか?」
勝利を確信し、私はアイナさんに背を向けました。その瞬間、巻き上がる粉塵を
吹き払った一陣の風。いえ、それはただの風と呼ぶにはあまりにも強烈なうねり
でした。私を飲み込んだそれはまさに「竜巻」。
全てを薙払う青い竜巻。私は為す統べもなく、その渦中へと吸い込まれてしまい
ました。
馬鹿野郎!凛のヤツ、完全に油断してやがった!
多分、あいつは勝ちを確信していた。それだけの手応えがあったんだろう。
しかしマズかったのは相手をぶっ飛ばした場所だ。さっきと同じ場所、つまりト
ライクが埋まっていた場所。そこに体ごと、それこそ瓦礫を巻き散らす程の勢い
で突っ込んで行ったんだ。結果的には相手の切札のそばに、それもわざわざ邪魔
な障害物を取り除いて案内してやった事になる。当然アイナのダメージもかなり
のモノだろうが、トライクを操作するぐらいなら出来るハズ。いや、現に出来た
から目の前の光景があるワケだ。
粉煙の中から飛び出したのは、愛機であるトライクに乗り込んだアイナ。繰り出
したのは、恐らく必殺技。機体を高速で回転させ、弾丸の様に凛目がけて突撃。
それは、さながら竜巻の様に凛を飲み込んでいった。完全に直撃。かなりヤバい
。
「凛!早く離脱しろ!このままもっていかれるぞ!」
凛を飲み込んだ竜巻は未だその威力を衰えさせない。えぐられた装甲を礫の様に
巻き散らしながら、フィールドを一直線に駆けていく。
『うわあああああああっ!!』
「凛!くそっ!」
自力での脱出は見込めそうに無い。かと言ってぷちマスィーン程度のサポートメ
カでは止める事など出来ないだろう。
こうなったら、やれるだけの抵抗をするしかない。
「アーマー強制パージ!キャスト・オフ!」
外部操作で凛の全アーマーを強制的に取り外す。弾け飛んだアーマーが一瞬でも
盾になってくれれば、もしかしたら脱出出来るかもしれない。完全に運任せだが
――
「頼むっ!」
俺は祈るような気持ちでキーを叩いた。一斉にアーマーがパージされ、弾けた胸
甲・心守が見事に弾丸の先端に突き刺さる。そして回転の中心軸を塞いだ異物に
よって凛の体は渦の中から弾き出され、土煙をあげながら赤茶色の砂地を転がっ
て行った。と、同時に響く鈍い破砕音。心守が文字通り粉砕されのだ。もしあの
ままだったら、破壊されていたのはアーマーだけではなかっただろう。間一髪、
と言ったトコロだ。しかし……
「凛!おい、凛!立てるか!?返事しろ!」
一撃必殺は避けたものの、その傷は深い。まだ戦えるのか?立ち上がる事すら難
しいかもしれない。試合終了のコールがない以上、意識は保っているハズだが。
『無駄無駄!アタシの切札、マグナムトルネード!まともに喰らって立ち上がっ
たヤツはいないからね!』
『そ、それじゃあ、私が最初の一人、ですね。光栄ですよ』
『!?』
なんとか立ち上がった……と言えるのだろうか。体の各部からは電流が走り、片
目は開かなくなっている。損傷の激しい右腕、左足もまともに機能しておらず、
正に満身創痍というヤツだ。
『へぇ……!よく立てたね。ちょっとムカついたよ。でも、もうギブアップした
方がいいんじゃない?それで勝てると思ってんの?』
『ふふ、もちろん。私はどんな時でも勝つつもりでいますよ!』
考えろ。どんなに強がっても、立っている事すら危ういのは確かだ。勝ち目はか
なり薄い。
でもだからこそ俺がいるんだ。代わりに戦う事は出来ない。だからこそ知恵を絞
って、勝つ方法を見付出すんだ。
考えろ。考えろ。考えろ。
『苦しそうだね。そろそろ楽にしてあげるよっ!』
アイナの操る車体が、再び回転を始める。二発目のトルネード。もはや回避は不
可能。どうする?あのパワーを止めるには、あの弾丸を防ぐには―――
「凛!最後の賭けだ!行けるか!?」
我ながら無茶な要求だ。立っているのがやっとだろう。試合を止められても仕方
のない状態だ。なのに、まだ戦わせようと言うのだから。まだ勝つつもりでいる
のだから。でもあいつは、凛は笑顔を見せる。どんな時でも、勝つつもりでいる
。それは強がりなんかじゃない。信じているから、凛と俺なら、どんな相手にだ
って負けないはしないと。
だから―――
『もちろんです!任せて下さい!』
だから、絶対に諦めない!
多分、あいつは勝ちを確信していた。それだけの手応えがあったんだろう。
しかしマズかったのは相手をぶっ飛ばした場所だ。さっきと同じ場所、つまりト
ライクが埋まっていた場所。そこに体ごと、それこそ瓦礫を巻き散らす程の勢い
で突っ込んで行ったんだ。結果的には相手の切札のそばに、それもわざわざ邪魔
な障害物を取り除いて案内してやった事になる。当然アイナのダメージもかなり
のモノだろうが、トライクを操作するぐらいなら出来るハズ。いや、現に出来た
から目の前の光景があるワケだ。
粉煙の中から飛び出したのは、愛機であるトライクに乗り込んだアイナ。繰り出
したのは、恐らく必殺技。機体を高速で回転させ、弾丸の様に凛目がけて突撃。
それは、さながら竜巻の様に凛を飲み込んでいった。完全に直撃。かなりヤバい
。
「凛!早く離脱しろ!このままもっていかれるぞ!」
凛を飲み込んだ竜巻は未だその威力を衰えさせない。えぐられた装甲を礫の様に
巻き散らしながら、フィールドを一直線に駆けていく。
『うわあああああああっ!!』
「凛!くそっ!」
自力での脱出は見込めそうに無い。かと言ってぷちマスィーン程度のサポートメ
カでは止める事など出来ないだろう。
こうなったら、やれるだけの抵抗をするしかない。
「アーマー強制パージ!キャスト・オフ!」
外部操作で凛の全アーマーを強制的に取り外す。弾け飛んだアーマーが一瞬でも
盾になってくれれば、もしかしたら脱出出来るかもしれない。完全に運任せだが
――
「頼むっ!」
俺は祈るような気持ちでキーを叩いた。一斉にアーマーがパージされ、弾けた胸
甲・心守が見事に弾丸の先端に突き刺さる。そして回転の中心軸を塞いだ異物に
よって凛の体は渦の中から弾き出され、土煙をあげながら赤茶色の砂地を転がっ
て行った。と、同時に響く鈍い破砕音。心守が文字通り粉砕されのだ。もしあの
ままだったら、破壊されていたのはアーマーだけではなかっただろう。間一髪、
と言ったトコロだ。しかし……
「凛!おい、凛!立てるか!?返事しろ!」
一撃必殺は避けたものの、その傷は深い。まだ戦えるのか?立ち上がる事すら難
しいかもしれない。試合終了のコールがない以上、意識は保っているハズだが。
『無駄無駄!アタシの切札、マグナムトルネード!まともに喰らって立ち上がっ
たヤツはいないからね!』
『そ、それじゃあ、私が最初の一人、ですね。光栄ですよ』
『!?』
なんとか立ち上がった……と言えるのだろうか。体の各部からは電流が走り、片
目は開かなくなっている。損傷の激しい右腕、左足もまともに機能しておらず、
正に満身創痍というヤツだ。
『へぇ……!よく立てたね。ちょっとムカついたよ。でも、もうギブアップした
方がいいんじゃない?それで勝てると思ってんの?』
『ふふ、もちろん。私はどんな時でも勝つつもりでいますよ!』
考えろ。どんなに強がっても、立っている事すら危ういのは確かだ。勝ち目はか
なり薄い。
でもだからこそ俺がいるんだ。代わりに戦う事は出来ない。だからこそ知恵を絞
って、勝つ方法を見付出すんだ。
考えろ。考えろ。考えろ。
『苦しそうだね。そろそろ楽にしてあげるよっ!』
アイナの操る車体が、再び回転を始める。二発目のトルネード。もはや回避は不
可能。どうする?あのパワーを止めるには、あの弾丸を防ぐには―――
「凛!最後の賭けだ!行けるか!?」
我ながら無茶な要求だ。立っているのがやっとだろう。試合を止められても仕方
のない状態だ。なのに、まだ戦わせようと言うのだから。まだ勝つつもりでいる
のだから。でもあいつは、凛は笑顔を見せる。どんな時でも、勝つつもりでいる
。それは強がりなんかじゃない。信じているから、凛と俺なら、どんな相手にだ
って負けないはしないと。
だから―――
『もちろんです!任せて下さい!』
だから、絶対に諦めない!