エピローグ 未来(あした)
「結局あの事件はなんだったんだろうな」
研究所の休憩室でヤクトがつぶやいた。
あれから数週間の時が過ぎた。零リベリオンと名付けられた事件は影を潜め、人々の関心は零リベリオンから別の方に向いていった。神姫たちも元の生活に戻り、まるで事件など存在しなかったかのような日常に戻っていった。
「零の正体も解らないままでしたし。この事件以降、音沙汰なしですし」
アスティが答える。無理もない、依然としてこの事件の謎が解明されていないのだから。
「本当にこれで解決したのかどうか解らないんじゃなあ」
そこへ和多が入ってきた。左肩にはカウベルが乗っている。
「マスター、零について解ったかい?」
待ちかねていたヤクトが和多に質問をした。
「ああ、ある程度は解った」
和多はノートパソコンを開き、今までの事件データと零についてのデータをみんなに見せた。
「しかし驚いたよ、零を調べていたら、あれが本物じゃないことが解ったんだから」
和多の説明によると、以前現れた零の正体は、零仮面をつけられたウェスペリオタイプの神姫であった。あの零は仮面によって操られていたのである。
「ということは、まだ零が存在してるのか?そうだとしたら…」
「いや、この事件が公になってしまった以上、相手も迂闊に手出しすることはできないだろう。もっとも、これに対するセキュリティプログラムを開発中だから、同じサイバーテロが発生しても以前のようにはならないだろう」
ほっとする一同。しかしアスティだけは心配の色を隠しきれなかった。
「もし、それが破られることがあったとしたら、どうしますか?」
「そのときは、また君たちに手伝ってもらうことになるかもしれないな。とはいっても、今までのような戦闘パターンじゃだめだろうけど」
じっとヤクトのほうを見る和多。とたんにヤクトの顔が赤くなった。
「な、何が言いたいんだよ…」
「つまり、もっと練習や試合をして強くなれ、ということだ」
今度は好村と全快したリオーネが休憩室に入ってきた。
「まあ、そういえるかな…、って、お前、何だよこの色は?!」
ヤクトはリオーネが装着しているアーマーとボディの色が変わっていることに気づいた。
「まあ…、詳しく言うと、模様替えということかな。さっきの戦闘でリオーネは大きなダメージを受けたから、一部新しいパーツと交換したんだ」
リオーネのカラーチェンジの理由を好村が説明する。少し照れくさそうに、リオーネからも説明した。
「いくらバーチャルとはいえ、あそこまでダメージを受けると本体もただではすまなかった。だから最新の素体に交換したんだ、CSC中枢とヘッド以外のすべてをな」
「みんなも解ってると思うけど、神姫は頭部にある小型AIと胸部にあるCSCというマインドプログラムが同調して初めて起動する。だから、今の性格のまま新素体を移し変えるのは困難だった。ひとつ間違えたら今までのデータが消えてしまうところだったからね」
続いて好村が説明した。それほどリオーネのダメージは大きかったらしい。
「そうか、お前が無事ならそれでよかった」
ライバルの無事に素直に喜ぶヤクト。しかし、隣にいるアスティがなぜか笑いをこらえていた。
「え、そうでしたか、この前、リオーネの手術のときに『死ぬんじゃねえ、約束しただろ』って、涙を流して叫んでだ…」
その瞬間、アスティの口をヤクトが手で押さえた。
「ばにじまずの、ぼんどのごどばのび」
「言いたいこといいやがって、おめえは黙ってろ!!」
必死でアスティの口を押さえるヤクトを見て、リオーネの顔から笑いが生まれた。
「はははははっ、お前ら、必死すぎだな」
どうやら手術のせいでリオーネの性格に変化が生まれたらしい。いや、それだけではなさそうだが。
「なるほど、頑固一徹のリオーネにもこのような感情が生まれるとは」
「これでヤクトたちともいい付き合いができそうですね」
好村、和多両オーナーもその様子を見て喜んでいた。
「おいおい、笑ってねえでマスター達からも言ってくれよ!こいつのおしゃべりは底知れねえんだからよ!!」
「だがら、ぼうばなじまぜんがら、でをばなじでぇ―――――!!」
焦るヤクト。苦しむアスティ。そしてそれを見てさらに笑うリオーネたち。こうして、この事件は無事幕を閉じた。
研究所の休憩室でヤクトがつぶやいた。
あれから数週間の時が過ぎた。零リベリオンと名付けられた事件は影を潜め、人々の関心は零リベリオンから別の方に向いていった。神姫たちも元の生活に戻り、まるで事件など存在しなかったかのような日常に戻っていった。
「零の正体も解らないままでしたし。この事件以降、音沙汰なしですし」
アスティが答える。無理もない、依然としてこの事件の謎が解明されていないのだから。
「本当にこれで解決したのかどうか解らないんじゃなあ」
そこへ和多が入ってきた。左肩にはカウベルが乗っている。
「マスター、零について解ったかい?」
待ちかねていたヤクトが和多に質問をした。
「ああ、ある程度は解った」
和多はノートパソコンを開き、今までの事件データと零についてのデータをみんなに見せた。
「しかし驚いたよ、零を調べていたら、あれが本物じゃないことが解ったんだから」
和多の説明によると、以前現れた零の正体は、零仮面をつけられたウェスペリオタイプの神姫であった。あの零は仮面によって操られていたのである。
「ということは、まだ零が存在してるのか?そうだとしたら…」
「いや、この事件が公になってしまった以上、相手も迂闊に手出しすることはできないだろう。もっとも、これに対するセキュリティプログラムを開発中だから、同じサイバーテロが発生しても以前のようにはならないだろう」
ほっとする一同。しかしアスティだけは心配の色を隠しきれなかった。
「もし、それが破られることがあったとしたら、どうしますか?」
「そのときは、また君たちに手伝ってもらうことになるかもしれないな。とはいっても、今までのような戦闘パターンじゃだめだろうけど」
じっとヤクトのほうを見る和多。とたんにヤクトの顔が赤くなった。
「な、何が言いたいんだよ…」
「つまり、もっと練習や試合をして強くなれ、ということだ」
今度は好村と全快したリオーネが休憩室に入ってきた。
「まあ、そういえるかな…、って、お前、何だよこの色は?!」
ヤクトはリオーネが装着しているアーマーとボディの色が変わっていることに気づいた。
「まあ…、詳しく言うと、模様替えということかな。さっきの戦闘でリオーネは大きなダメージを受けたから、一部新しいパーツと交換したんだ」
リオーネのカラーチェンジの理由を好村が説明する。少し照れくさそうに、リオーネからも説明した。
「いくらバーチャルとはいえ、あそこまでダメージを受けると本体もただではすまなかった。だから最新の素体に交換したんだ、CSC中枢とヘッド以外のすべてをな」
「みんなも解ってると思うけど、神姫は頭部にある小型AIと胸部にあるCSCというマインドプログラムが同調して初めて起動する。だから、今の性格のまま新素体を移し変えるのは困難だった。ひとつ間違えたら今までのデータが消えてしまうところだったからね」
続いて好村が説明した。それほどリオーネのダメージは大きかったらしい。
「そうか、お前が無事ならそれでよかった」
ライバルの無事に素直に喜ぶヤクト。しかし、隣にいるアスティがなぜか笑いをこらえていた。
「え、そうでしたか、この前、リオーネの手術のときに『死ぬんじゃねえ、約束しただろ』って、涙を流して叫んでだ…」
その瞬間、アスティの口をヤクトが手で押さえた。
「ばにじまずの、ぼんどのごどばのび」
「言いたいこといいやがって、おめえは黙ってろ!!」
必死でアスティの口を押さえるヤクトを見て、リオーネの顔から笑いが生まれた。
「はははははっ、お前ら、必死すぎだな」
どうやら手術のせいでリオーネの性格に変化が生まれたらしい。いや、それだけではなさそうだが。
「なるほど、頑固一徹のリオーネにもこのような感情が生まれるとは」
「これでヤクトたちともいい付き合いができそうですね」
好村、和多両オーナーもその様子を見て喜んでいた。
「おいおい、笑ってねえでマスター達からも言ってくれよ!こいつのおしゃべりは底知れねえんだからよ!!」
「だがら、ぼうばなじまぜんがら、でをばなじでぇ―――――!!」
焦るヤクト。苦しむアスティ。そしてそれを見てさらに笑うリオーネたち。こうして、この事件は無事幕を閉じた。
「めでたしめでたし♪」
「めでたしじゃねえ―――っ!!」
「めでたしじゃねえ―――っ!!」