ウサギのナミダ
ACT 1-9
◆
ミスティは神姫サイズのソファに座って、テレビを見る振りをしながら、自分のマスターを観察している。
久住菜々子はベッドの上で、うつ伏せになって、枕に顔を埋めている。
今は微動だにしていないが、ときどき思い出したようにじたばたする。
ここ三日ほど、ずっとこんな調子だ。
ミスティは自らのマスターが深く悩んでいるにも関わらず、我関せず、という態度を貫いていた。
久住菜々子はベッドの上で、うつ伏せになって、枕に顔を埋めている。
今は微動だにしていないが、ときどき思い出したようにじたばたする。
ここ三日ほど、ずっとこんな調子だ。
ミスティは自らのマスターが深く悩んでいるにも関わらず、我関せず、という態度を貫いていた。
菜々子が悩んでいる理由はよくわかっている。
先週末、親しくしている神姫プレイヤーの遠野貴樹と、その神姫ティアに、あるスキャンダルが持ち上がった。
それは、ティアが売春をしていた決定的な証拠が公に明らかになってしまったのだ。
行きつけのゲームセンターで、他の常連達から噂を聞き、その雑誌も見た。
正直、女性であれば、いや良識ある武装紳士であれば、誰もが眉をひそめるような痴態が掲載されていた。
それを見たとき、菜々子はとても気分が悪くなった。
ミスティの目から見ても、激しく動揺し、彼女らしくもなく、逃げるように店を出た。
先週末、親しくしている神姫プレイヤーの遠野貴樹と、その神姫ティアに、あるスキャンダルが持ち上がった。
それは、ティアが売春をしていた決定的な証拠が公に明らかになってしまったのだ。
行きつけのゲームセンターで、他の常連達から噂を聞き、その雑誌も見た。
正直、女性であれば、いや良識ある武装紳士であれば、誰もが眉をひそめるような痴態が掲載されていた。
それを見たとき、菜々子はとても気分が悪くなった。
ミスティの目から見ても、激しく動揺し、彼女らしくもなく、逃げるように店を出た。
それから三日になるが、ミスティのマスターはさらに懊悩を深めているようだ。
きっと、遠野貴樹を信じたいけど信じられない、かといってこちらから連絡して確認するのもはばかられる、でも相手から連絡があったら、どう答えていいかわからない、とまあ、こんなところだろう。
きっと、遠野貴樹を信じたいけど信じられない、かといってこちらから連絡して確認するのもはばかられる、でも相手から連絡があったら、どう答えていいかわからない、とまあ、こんなところだろう。
マスターの苦悩がわかっていながら、ミスティは無視を決め込んでいた。
ミスティにとっては最初から疑う余地もなく、結論はとっくに出ている問題だった。
なのに、菜々子はいまだに同じ結論に達する気配がない。
だが、いい加減に復活してもらわないことには、先行きが思いやられるというものだ。
やれやれ、仕方のないマスターだこと。
わたしがちょっとだけ、助け船を出してあげるとしましょう。
ミスティにとっては最初から疑う余地もなく、結論はとっくに出ている問題だった。
なのに、菜々子はいまだに同じ結論に達する気配がない。
だが、いい加減に復活してもらわないことには、先行きが思いやられるというものだ。
やれやれ、仕方のないマスターだこと。
わたしがちょっとだけ、助け船を出してあげるとしましょう。
「ナナコ、何悩んでるの」
「……」
「まあ、おおかた、タカキが神姫風俗に通ってたかも知れないとか、ティアに売春させてたかも知れないと思って、年頃の乙女としては心情的に許せない、そんなところかしら」
「ちょっ……あなた、遠野くんのこと呼び捨て!? しかも名前で!?」
「血相を変えるポイント、そこ?」
「……」
「まあ、おおかた、タカキが神姫風俗に通ってたかも知れないとか、ティアに売春させてたかも知れないと思って、年頃の乙女としては心情的に許せない、そんなところかしら」
「ちょっ……あなた、遠野くんのこと呼び捨て!? しかも名前で!?」
「血相を変えるポイント、そこ?」
菜々子はベッドから勢いよく身を起こし、わたしだってまだ名前で呼ばせてもらってないのに、とブツブツつぶやきながら、恨みがましくこちらを見ている。
ミスティは少し呆れ気味に菜々子を見た。
ミスティは少し呆れ気味に菜々子を見た。
「……わたしが呼び捨てにしたくらいで血相変えるほど、タカキのこと好きなんでしょ」
「うっ……だ、大本命よ、わるい?」
「うっ……だ、大本命よ、わるい?」
菜々子は顔を真っ赤に染めながら、そっぽを向いた。
ミスティはそんなマスターを可愛いと思う。
菜々子の神姫であるという贔屓目をのぞいても、ミスティは菜々子を素敵な女性だと思っている。
こんなにいい娘はそういない。
そう思うからこそ、ミスティは菜々子の恋を応援したいと思うし、貴樹にはがんばってもらわないと困るのだ。
ミスティはそんなマスターを可愛いと思う。
菜々子の神姫であるという贔屓目をのぞいても、ミスティは菜々子を素敵な女性だと思っている。
こんなにいい娘はそういない。
そう思うからこそ、ミスティは菜々子の恋を応援したいと思うし、貴樹にはがんばってもらわないと困るのだ。
「だったら、自分の好きな人を、信じてあげるべきじゃないの?」
「信じたいわよ、わたしだって! でも……!」
「信じたいわよ、わたしだって! でも……!」
菜々子は真剣な顔で、ミスティを振り返った。
「あの雑誌の写真は、どう見たってティアだった……遠野くんはそんなことする人じゃないと思っていても……あの写真と遠野くんが関係ないって証拠はないじゃない……」
「あるわよ」
「あるわよ」
ミスティが簡単に放った一言。
菜々子はミスティをすがるように見つめる。
菜々子はミスティをすがるように見つめる。
「どこ……どこにそんな証拠があるっていうの!?」
「バトルよ」
「バトル?」
「わたしとティアの戦いの中に、その証拠はあるわ。だから、わたしははじめから、あの写真とタカキは関係ないし、ティアに売春させるなんてあるはずがない、と確信してる」
「バトルよ」
「バトル?」
「わたしとティアの戦いの中に、その証拠はあるわ。だから、わたしははじめから、あの写真とタカキは関係ないし、ティアに売春させるなんてあるはずがない、と確信してる」
ミスティは自信に満ちた表情で、自らのマスターを見据えた。
狐に摘まれたような顔をしていた。
狐に摘まれたような顔をしていた。
「バトルのどこに証拠があるって……?」
「わからないかなぁ……」
「わからないかなぁ……」
これでも『エトランゼ』の異名を取る神姫プレイヤーなのかしら。
ミスティはそっとため息をつく。
ミスティはそっとため息をつく。
「いい? ティアはね、オリジナルの脚部パーツを操るだけで、わたしの攻撃を全部かわすのよ? 全部かわせるのよ? この、エトランゼのミスティの攻撃を! 並の神姫にそんなことができる?」
「そ、それとこれとは……」
「関係あるわ。
わたしのリバーサル・スクラッチは、並のアーンヴァルなら、間違いなくかわせない。
飛行タイプの神姫でもかわせない攻撃を、地上装備でかわすのよ。
しかも、あの子は壁を走って、相手を見ないで射撃する。
回転しながらブラスターを連射する。
そこまでの技を、基本動作プログラムもない武装で積み上げるなんてことは、並大抵の修練じゃできない。
自分の神姫に売春させて小金を稼いでいる暇なんて、ないの」
「……」
「それだけじゃないわ。
あの子の技の精度は日に日に高まっているのよ。
新しい技だって、どんどん身につけてる。
それは、毎週末に手合わせしてる、私たちが一番よくわかってる。
マスターがきちんと神姫の面倒見なくちゃ、技は身に付かない。神姫がマスターを信じていなくちゃ、技を修得することはできないの。
わかるでしょ?」
「わかる、けど……」
「ティアとタカキは、共に過ごす時を、すべて技の修得に使ってる。そうでなきゃ、あれだけの技を積み上げることはできない。
だから、タカキがティアに売春させてるなんてあり得ない。
ティアと戦った私達だからこそたどり着く、それが真実よ」
「そ、それとこれとは……」
「関係あるわ。
わたしのリバーサル・スクラッチは、並のアーンヴァルなら、間違いなくかわせない。
飛行タイプの神姫でもかわせない攻撃を、地上装備でかわすのよ。
しかも、あの子は壁を走って、相手を見ないで射撃する。
回転しながらブラスターを連射する。
そこまでの技を、基本動作プログラムもない武装で積み上げるなんてことは、並大抵の修練じゃできない。
自分の神姫に売春させて小金を稼いでいる暇なんて、ないの」
「……」
「それだけじゃないわ。
あの子の技の精度は日に日に高まっているのよ。
新しい技だって、どんどん身につけてる。
それは、毎週末に手合わせしてる、私たちが一番よくわかってる。
マスターがきちんと神姫の面倒見なくちゃ、技は身に付かない。神姫がマスターを信じていなくちゃ、技を修得することはできないの。
わかるでしょ?」
「わかる、けど……」
「ティアとタカキは、共に過ごす時を、すべて技の修得に使ってる。そうでなきゃ、あれだけの技を積み上げることはできない。
だから、タカキがティアに売春させてるなんてあり得ない。
ティアと戦った私達だからこそたどり着く、それが真実よ」
ミスティは言い切った。
言葉で自らのマスターの迷いを断ち切るように。
だけど、と。菜々子はそれでも言い募る。
言葉で自らのマスターの迷いを断ち切るように。
だけど、と。菜々子はそれでも言い募る。
「だけど、だったら、あの写真は? ティアがひどいことされてる、あの写真は? あんなの、いつ撮ったって言うの……?」
「ああ……それはあの、井山とかいう男が撮ったのでしょ。きっと……ティアとタカキが出会う前に……」
「ああ……それはあの、井山とかいう男が撮ったのでしょ。きっと……ティアとタカキが出会う前に……」
ミスティは少しうつむいて唇を噛んだ。
あの写真が示すとおり、ティアが陵辱されていたこともまた事実なのだ。
それがどれほどの苦しみだったのか、ミスティには想像もつかない。
あの写真が示すとおり、ティアが陵辱されていたこともまた事実なのだ。
それがどれほどの苦しみだったのか、ミスティには想像もつかない。
「じゃあ、やっぱり、ティアは神姫風俗にいたっていうこと……それじゃあやっぱり、遠野くんも……」
「ナナコ!!」
「ナナコ!!」
突然の大声に、菜々子はびくり、と震えて、思わず顔を上げた。
菜々子の視線の先で、ミスティは見たこともないような鬼の形相で睨みつけていた。
菜々子の視線の先で、ミスティは見たこともないような鬼の形相で睨みつけていた。
「いい加減にしないと、わたしだって怒るわよ……!?
なんでこんな簡単なことがわかんないの!?
ティアは確かに風俗にいたかも知れない。タカキだって、もしかしたら神姫風俗に行って、そこでティアと出会ったのかも知れない。
でもそれが何?
そんな過去を持つティアを、タカキは全部受け止めて、あの子を育てたのよ、あそこまで!
それが一番大切なことでしょう!?」
なんでこんな簡単なことがわかんないの!?
ティアは確かに風俗にいたかも知れない。タカキだって、もしかしたら神姫風俗に行って、そこでティアと出会ったのかも知れない。
でもそれが何?
そんな過去を持つティアを、タカキは全部受け止めて、あの子を育てたのよ、あそこまで!
それが一番大切なことでしょう!?」
菜々子は驚いたように、ミスティを見つめている。
ミスティは、呼吸を整えると、今度は静かな声を出した。
ミスティは、呼吸を整えると、今度は静かな声を出した。
「タカキは……そんなことができる、優しい人よ。最高に、優しい人よ。
ねえ、ナナコ。いつもあなたが言ってる『女の勘』を信じてよ……あなたが、タカキを好きになった、その勘を信じてよ。
あなたが好きになった人は、そんなやましいことをするような人?」
ねえ、ナナコ。いつもあなたが言ってる『女の勘』を信じてよ……あなたが、タカキを好きになった、その勘を信じてよ。
あなたが好きになった人は、そんなやましいことをするような人?」
菜々子は黙ったまま、静かに首を振った。
「だったら、タカキを信じて、味方になってあげて。
今タカキは、きっと一人きりで戦っているわ、ティアのために……」
今タカキは、きっと一人きりで戦っているわ、ティアのために……」
そして、ミスティは思っている。
やはり一人で戦い続けている菜々子を救ってくれるのは、きっと貴樹なのだ、と。
ティアにしたのと同じように、きっと菜々子のすべてを貴樹は受け入れてくれる。
やはり一人で戦い続けている菜々子を救ってくれるのは、きっと貴樹なのだ、と。
ティアにしたのと同じように、きっと菜々子のすべてを貴樹は受け入れてくれる。
菜々子はうつむいて、ミスティの言葉を聞いていた。
しばしの沈黙。
やがて菜々子は呟いた
しばしの沈黙。
やがて菜々子は呟いた
「……あるのかな……」
「え?」
「……わたし、遠野くんを好きになる資格、あるのかなぁ……?」
「え?」
「……わたし、遠野くんを好きになる資格、あるのかなぁ……?」
今度はミスティが驚く番だった。
こんな弱々しい菜々子の声を、今まで聞いたことがなかったからだ。
こんな弱々しい菜々子の声を、今まで聞いたことがなかったからだ。
「……わたし……ティアのひどい姿見て……びっくりして、気持ち悪くなって……逃げ出しちゃったよ……。
遠野くんとも会わずに、逃げちゃった……。
それどころか……遠野くんのこと、疑った。ティアに、あんなひどいことしてるのかもって……」
「……」
「そ、そしたら、好きな気持ちよりも……許せない気持ちの方が、大きくなって……風俗で、神姫にひどいことしてたのか、とか、もしかしたら今もティアに……とか考えて……勝手に遠野くんを悪者にして、勝手に嫌いになろうとしてた……」
遠野くんとも会わずに、逃げちゃった……。
それどころか……遠野くんのこと、疑った。ティアに、あんなひどいことしてるのかもって……」
「……」
「そ、そしたら、好きな気持ちよりも……許せない気持ちの方が、大きくなって……風俗で、神姫にひどいことしてたのか、とか、もしかしたら今もティアに……とか考えて……勝手に遠野くんを悪者にして、勝手に嫌いになろうとしてた……」
いつもの明るい口調はなりを潜め、菜々子の声は低く、かすれていた。
それでも、菜々子は言葉を紡ぐ。
それが贖罪であるかのように。
それでも、菜々子は言葉を紡ぐ。
それが贖罪であるかのように。
「ほんとうは……と、遠野君に言ってないこと、わ、わたしにだって……あるのに……。
そ、そんなひどい、心の狭い女を、遠野くん、許してくれるのかな……あなたが最高に優しいっていう人そのばに、わたし、いてもいいのかなぁ……?
わたし、遠野くんを好きでいて、許されるのかなぁ……?」
そ、そんなひどい、心の狭い女を、遠野くん、許してくれるのかな……あなたが最高に優しいっていう人そのばに、わたし、いてもいいのかなぁ……?
わたし、遠野くんを好きでいて、許されるのかなぁ……?」
菜々子の伏せた顔から、きらきらと光る雫が、いくつもいくつも落ちていく。
まるで道に迷った子供のようだ、とミスティは思う。
マスターが道に迷っている。
ならば、それを示すのは神姫の役目だ。
まるで道に迷った子供のようだ、とミスティは思う。
マスターが道に迷っている。
ならば、それを示すのは神姫の役目だ。
「そんなの、許されるに決まってるでしょ」
ミスティは断言する。
今回の件に関しては、彼女には一本道しか見えていない。最初から。
今回の件に関しては、彼女には一本道しか見えていない。最初から。
「ティアとバトルして、真実にたどり着いているのは、きっと私たちくらいでしょうよ。
だから、タカキの味方になる資格があるのは、ナナコだけ。
タカキに悪いって思う気持ちがあるなら……その分、彼の力になってあげればいいじゃない?
その方がよっぽどポジティブよ」
「わ、わたしに、なにができるかな……」
「考えて。いま、ナナコにできる精一杯のことを、あの二人にしてあげて。わたしじゃ……何もできないんだから」
だから、タカキの味方になる資格があるのは、ナナコだけ。
タカキに悪いって思う気持ちがあるなら……その分、彼の力になってあげればいいじゃない?
その方がよっぽどポジティブよ」
「わ、わたしに、なにができるかな……」
「考えて。いま、ナナコにできる精一杯のことを、あの二人にしてあげて。わたしじゃ……何もできないんだから」
神姫たるミスティの身では、貴樹とティアに何をしてあげることもできないのだ。
だから、ミスティは願う。
どうか、菜々子が元気を取り戻し、あの二人の力になってあげてほしい、と。
だから、ミスティは願う。
どうか、菜々子が元気を取り戻し、あの二人の力になってあげてほしい、と。
長いこと、菜々子はしゃくりあげながら、涙を拭っていた。
やがて、顔を上げた菜々子の瞳は真っ赤だった。
でも、ミスティを見つめる視線には、いつもの眩しさが戻っていた。
やがて、顔を上げた菜々子の瞳は真っ赤だった。
でも、ミスティを見つめる視線には、いつもの眩しさが戻っていた。
「そうだね……あなたが言うとおりね、ミスティ」
「ナナコ……」
「わたし、もう逃げない。遠野くんを信じてみる。そして……わたしにできる精一杯のことをする」
「うん……! それでこそ、ナナコよ。わたしのマスターよ!」
「ナナコ……」
「わたし、もう逃げない。遠野くんを信じてみる。そして……わたしにできる精一杯のことをする」
「うん……! それでこそ、ナナコよ。わたしのマスターよ!」
ミスティの声に微笑んだ菜々子の顔は、ひどい有様だった。真っ赤な頬が、涙でびっしょりだったし、髪もボサボサ、ここ何日かの心労で、目の下のクマも濃くなっている。
それでも、菜々子は笑っている。瞳にいつもの生気を宿して。
こうなった菜々子は、やるといったらやる女であることを、ミスティはよく知っていた。
それでも、菜々子は笑っている。瞳にいつもの生気を宿して。
こうなった菜々子は、やるといったらやる女であることを、ミスティはよく知っていた。
「それでナナコ、とりあえず何をする?」
「ゲームセンターに行くわ」
「ゲーセン? なんで?」
「ゲームセンターに行くわ」
「ゲーセン? なんで?」
まさかのんびりバトルロンドというわけでもあるまい。
菜々子はミスティの疑問に頷いて、言った。
菜々子はミスティの疑問に頷いて、言った。
「とりあえず、情報集めね。
いま、遠野くんたちを取り巻く状況を調べなくちゃ」
「直接会わないの?」
「……まだ心の準備ができない。それに、わたしは逃げてきて、まだ何もわかってないんだから、状況を把握しなくちゃ、遠野くんの何の助けもできないわ」
いま、遠野くんたちを取り巻く状況を調べなくちゃ」
「直接会わないの?」
「……まだ心の準備ができない。それに、わたしは逃げてきて、まだ何もわかってないんだから、状況を把握しなくちゃ、遠野くんの何の助けもできないわ」
ミスティはそんなマスターを見て、こっそりと笑った。
いまの口調は、まるで貴樹のようではないか。
ミスティは思う。
貴樹もティアも、決して絶望なんてしないでほしい。
わたしと菜々子は、こんなにもあなたたちのことを心配しているから。力になってあげたいと思っているから。
わたしたちは、絶対に、二人の味方だから。
いまの口調は、まるで貴樹のようではないか。
ミスティは思う。
貴樹もティアも、決して絶望なんてしないでほしい。
わたしと菜々子は、こんなにもあなたたちのことを心配しているから。力になってあげたいと思っているから。
わたしたちは、絶対に、二人の味方だから。