偶々大学の講義も、ハッキングの仕事も無く、優一は自室でカステラをお茶受けに、紅茶を飲んでいた。
ふと、卓上の写真立てに目を移す。
そこには優一と、アカツキと違う、一体の神姫が共に写っている。
「もうあれから二年、か・・・」
瞼を閉じると、彼女と今まで紡いできた思い出が蘇ってくる。
ふと、卓上の写真立てに目を移す。
そこには優一と、アカツキと違う、一体の神姫が共に写っている。
「もうあれから二年、か・・・」
瞼を閉じると、彼女と今まで紡いできた思い出が蘇ってくる。
その一:アカツキの場合
暗雲が空を覆い、天使が流す涙の如く、雨が降り注ぐ。
『ごめんなさい、他に好きな人がいるんです』
自分が思いを寄せた女性の、その一言が優一の胸に深く突き刺さっている。
ハッキングの仕事もうまく行かない。しばらく前に自分の神姫、HMT型のライデンを失ってから、失敗が重なり始めた。
どこもかしこも防衛用に神姫やアムドライバーを配置しており、いくら綿密に策を練っても容易に覆されてしまう。
「何処に行っても神姫、神姫、時代は変わったのか・・・」
頭の上にも暗雲が浮かび始めた所で、ふと歩みを止める。
“ホビーショップ・エルゴ”、シンプルながらも豊富な品揃えが特徴の店だ。
「そう言えばあいつも此処で出会ったんだったな・・・」
暗雲が空を覆い、天使が流す涙の如く、雨が降り注ぐ。
『ごめんなさい、他に好きな人がいるんです』
自分が思いを寄せた女性の、その一言が優一の胸に深く突き刺さっている。
ハッキングの仕事もうまく行かない。しばらく前に自分の神姫、HMT型のライデンを失ってから、失敗が重なり始めた。
どこもかしこも防衛用に神姫やアムドライバーを配置しており、いくら綿密に策を練っても容易に覆されてしまう。
「何処に行っても神姫、神姫、時代は変わったのか・・・」
頭の上にも暗雲が浮かび始めた所で、ふと歩みを止める。
“ホビーショップ・エルゴ”、シンプルながらも豊富な品揃えが特徴の店だ。
「そう言えばあいつも此処で出会ったんだったな・・・」
次々と撃ち出されるミサイルが、電脳の地面に火柱を作る。
その間隙を縫って一台のトライクと鋼鉄の騎士が駆け抜ける。
翡翠色のボディに雷光のペイントが施され、後方に設けられたラックには複数の火器が装備されている。
「マスター、離脱ポイントまでは?」
「あと残り400だ。それまで保つか?!」
「心得ましたわ!!」
サザーランドに搭乗した優一は、バズーカを撃ちながら後退する。
今回アネゴの押しつけた任務は極秘の上に、神姫が一体では不可能のため、優一は仕方なくバトルロンドの原型となったロボティクス・ドライブを使ってライデンのサポートも兼ねて出撃した。
「ポイントまで残り300、次はマスターの番ですわ!!」
「承知!!」
優一は弾の切れたバズーカを投げ捨てると全速力で後退し、それと入れ替わりにライデンはトライクモードからスタンドモードに切り替え、カービンで応戦する。
ライデンの考えた作戦はこうだ。
必要なデータを回収した後、距離100ごとに片方が後退、もう片方が牽制と陽動を繰り返す。
単純だが、実に理にかなった方法でもある。
「ポイントまで後200、ライデン!!」
「心得ましたわ!!」
俺はアサルトライフルで向かってくるヘリオンを叩き落とし、その隙にライデンは再びトライクに転じて移動を開始する。
「残り100!ラストスパートですわ!!」
「了解!!」
距離100を切った所で、二人同時に逃走を開始する。
ところが、ポイントまで秒読み段階に入った所で、優一たちの進路に砲弾が着弾する。
その方向には、ヘリオンの武装を纏った一体のストラーフが滞空していた。
「ちっ、神姫もいたとは・・・」
「マスター、私が奴の気を引きますわ。その隙に・・・・・」
「何言ってやがる!?相手は軍用武装だぞ?今のお前じゃ!」
「だからといって、ロボティクスじゃ少ない勝率がさらに目減りしますわ!!行ってくださいな!!!」
「っ、分かった・・・。生きて戻って来いよ!!」
ストラーフと対峙するライデンを一瞥し、優一は背を向けて一足先に離脱する。
その間隙を縫って一台のトライクと鋼鉄の騎士が駆け抜ける。
翡翠色のボディに雷光のペイントが施され、後方に設けられたラックには複数の火器が装備されている。
「マスター、離脱ポイントまでは?」
「あと残り400だ。それまで保つか?!」
「心得ましたわ!!」
サザーランドに搭乗した優一は、バズーカを撃ちながら後退する。
今回アネゴの押しつけた任務は極秘の上に、神姫が一体では不可能のため、優一は仕方なくバトルロンドの原型となったロボティクス・ドライブを使ってライデンのサポートも兼ねて出撃した。
「ポイントまで残り300、次はマスターの番ですわ!!」
「承知!!」
優一は弾の切れたバズーカを投げ捨てると全速力で後退し、それと入れ替わりにライデンはトライクモードからスタンドモードに切り替え、カービンで応戦する。
ライデンの考えた作戦はこうだ。
必要なデータを回収した後、距離100ごとに片方が後退、もう片方が牽制と陽動を繰り返す。
単純だが、実に理にかなった方法でもある。
「ポイントまで後200、ライデン!!」
「心得ましたわ!!」
俺はアサルトライフルで向かってくるヘリオンを叩き落とし、その隙にライデンは再びトライクに転じて移動を開始する。
「残り100!ラストスパートですわ!!」
「了解!!」
距離100を切った所で、二人同時に逃走を開始する。
ところが、ポイントまで秒読み段階に入った所で、優一たちの進路に砲弾が着弾する。
その方向には、ヘリオンの武装を纏った一体のストラーフが滞空していた。
「ちっ、神姫もいたとは・・・」
「マスター、私が奴の気を引きますわ。その隙に・・・・・」
「何言ってやがる!?相手は軍用武装だぞ?今のお前じゃ!」
「だからといって、ロボティクスじゃ少ない勝率がさらに目減りしますわ!!行ってくださいな!!!」
「っ、分かった・・・。生きて戻って来いよ!!」
ストラーフと対峙するライデンを一瞥し、優一は背を向けて一足先に離脱する。
ストラーフが抑揚の無い声でライデンに話しかけてくる。
「あなたの、主人、愚か。あなた、見捨てた」
「見捨てた?マスターは私を信じているからこそ、背中を預けたんですの!貴女には・・・・・負けませんわ!!」
そう言うとライデンは両手にグリップしたフォールディング・バズーカを発砲し、ストラーフも右手のリニアライフルを放つ。
電磁加速された銃弾と成形炸薬弾がぶつかり合い、二人の間の空間で炎の花を咲かせる。
その隙に地上に降り立ったストラーフはソニックブレイドを抜刀して斬りかかり、ライデンもエアロヴァジュラでそれを受け止める。
振動する刀とダガーが交錯し、接触部から火花が散る。
「くっ、やはり性能が違いすぎる・・・」
「あなた、弱い。勝つ、私」
「それでも!!」
ライデンはヴァジュラでストラーフを押し返すとトライクをパージし、特攻させた。
さらにハンドガンで狙撃して燃料に引火させ、爆弾よろしくストラーフの眼前で発破させる。
「やりましたの!?」
「やっぱり、あなた、弱い」
「えっ?!」
爆炎の中から閃光が走る。それがライデンの見た、最後の光景だった。
「あなたの、主人、愚か。あなた、見捨てた」
「見捨てた?マスターは私を信じているからこそ、背中を預けたんですの!貴女には・・・・・負けませんわ!!」
そう言うとライデンは両手にグリップしたフォールディング・バズーカを発砲し、ストラーフも右手のリニアライフルを放つ。
電磁加速された銃弾と成形炸薬弾がぶつかり合い、二人の間の空間で炎の花を咲かせる。
その隙に地上に降り立ったストラーフはソニックブレイドを抜刀して斬りかかり、ライデンもエアロヴァジュラでそれを受け止める。
振動する刀とダガーが交錯し、接触部から火花が散る。
「くっ、やはり性能が違いすぎる・・・」
「あなた、弱い。勝つ、私」
「それでも!!」
ライデンはヴァジュラでストラーフを押し返すとトライクをパージし、特攻させた。
さらにハンドガンで狙撃して燃料に引火させ、爆弾よろしくストラーフの眼前で発破させる。
「やりましたの!?」
「やっぱり、あなた、弱い」
「えっ?!」
爆炎の中から閃光が走る。それがライデンの見た、最後の光景だった。
ネットワークから先に離脱した優一は入手したデータを大急ぎで治安局に転送すると、すぐさまライデンのサポートにかかる。
「データの転送は完了した、ライデン応答しろ。ライデン!?」
優一はインカムでライデンと通信を図る。しかし、返事がない。
「ライデン、何処だ!?居るなら返事しろ!!」
必死に捜索するがコンソール上には絶望的な答えが現れる。
「撃滅」
『馬鹿な、そんな馬鹿な!?あいつは俺が丹精込めてここまで育て上げたのに!!こんな所で、墜ちる訳が!!』
心の中で祈りながら電脳空間偵察カメラ・サイファーを旋回させる。
そして、視界の隅に、CSCが収められた胸部にナイフを突き立てられたライデンが横たわっていた。
「オイしっかりしろ、ライデン!!」
優一は無我夢中でライデンのデータを回収し、彼女の体をメンテ用クレードルに乗せる。
「ま・・・すた・・ぁあ・・・・」
力なく目を開けるライデン、その口から弱々しく言葉が紡がれる。
「もう良い、喋るな!いまどうにかしてやるから!!」
口では強がって見せた優一だが、内心では焦っていた。
パソコンのモニターには、バーチャルとは思えないほどのダメージを素体が負っていることを示している。
『このままでは、ライデンは・・・。だからと言って、今からエルゴに運ぼうにも・・・』
「マスター・・・、もう・・・良いです・・・わ・・・。だから・・・」
「戯言を言うな!!お前は生きる!!生きて、生き延びて、強くなるんじゃ無かったのかよ!?」
何時の間にか、目頭に涙を浮かべながら、優一は作業を続けた。
「私の体は・・・、助からないことは・・・分かっていますわ。」
「ライデン・・・」
「元から私は・・・、弱かったんですの・・・。この程度の任務も、失敗して・・・、当然・・・ですわ・・・」
「バカヤロウ!!!諦めるんじゃねぇよ!!」
「マス・・・ター、私・・・が・・・死んでも・・・、あなたの・・・胸の・・・中に・・・」
「縁起でも無いこと言うな!!」
「私・・・は、マスターの・・・事・・・」
その言葉を最後に、ライデンの瞳は閉ざされた。
「ライデン?ライデン!?うっ、うわぁああああああああ!!!」
優一は床に膝を突き、獣の様に吼えた。
その手に、動かなくなったライデンを抱えて・・・・・。
「データの転送は完了した、ライデン応答しろ。ライデン!?」
優一はインカムでライデンと通信を図る。しかし、返事がない。
「ライデン、何処だ!?居るなら返事しろ!!」
必死に捜索するがコンソール上には絶望的な答えが現れる。
「撃滅」
『馬鹿な、そんな馬鹿な!?あいつは俺が丹精込めてここまで育て上げたのに!!こんな所で、墜ちる訳が!!』
心の中で祈りながら電脳空間偵察カメラ・サイファーを旋回させる。
そして、視界の隅に、CSCが収められた胸部にナイフを突き立てられたライデンが横たわっていた。
「オイしっかりしろ、ライデン!!」
優一は無我夢中でライデンのデータを回収し、彼女の体をメンテ用クレードルに乗せる。
「ま・・・すた・・ぁあ・・・・」
力なく目を開けるライデン、その口から弱々しく言葉が紡がれる。
「もう良い、喋るな!いまどうにかしてやるから!!」
口では強がって見せた優一だが、内心では焦っていた。
パソコンのモニターには、バーチャルとは思えないほどのダメージを素体が負っていることを示している。
『このままでは、ライデンは・・・。だからと言って、今からエルゴに運ぼうにも・・・』
「マスター・・・、もう・・・良いです・・・わ・・・。だから・・・」
「戯言を言うな!!お前は生きる!!生きて、生き延びて、強くなるんじゃ無かったのかよ!?」
何時の間にか、目頭に涙を浮かべながら、優一は作業を続けた。
「私の体は・・・、助からないことは・・・分かっていますわ。」
「ライデン・・・」
「元から私は・・・、弱かったんですの・・・。この程度の任務も、失敗して・・・、当然・・・ですわ・・・」
「バカヤロウ!!!諦めるんじゃねぇよ!!」
「マス・・・ター、私・・・が・・・死んでも・・・、あなたの・・・胸の・・・中に・・・」
「縁起でも無いこと言うな!!」
「私・・・は、マスターの・・・事・・・」
その言葉を最後に、ライデンの瞳は閉ざされた。
「ライデン?ライデン!?うっ、うわぁああああああああ!!!」
優一は床に膝を突き、獣の様に吼えた。
その手に、動かなくなったライデンを抱えて・・・・・。
「やっぱり、神姫が俺には必要だな・・・」
そう言って優一は、エルゴに足を踏み入れると、店主の日暮 夏彦が出迎えた。
「やあ、いらっしゃい優一君。ご用件は?」
「神姫を一体、手に入れたい。オススメは?」
「優一君、君は先月ライデンちゃんを・・・」
「ええ、分かっています。けど、何時までもウジウジしていられませんし。あいつも、今の俺を見たら、なんて思うか・・・」
「そうか、わかった。それでオススメだっけ?今はどれも良いけど、この前アーンヴァルとストラーフのアッパーバージョンが発売したんだ。特徴はそのままに、現行の最新鋭機種にも引けを取らない性能を確保している」
「ふむぅ、それじゃあアーンヴァルを、分割で」
「毎度あり♪」
そう言って優一は、エルゴに足を踏み入れると、店主の日暮 夏彦が出迎えた。
「やあ、いらっしゃい優一君。ご用件は?」
「神姫を一体、手に入れたい。オススメは?」
「優一君、君は先月ライデンちゃんを・・・」
「ええ、分かっています。けど、何時までもウジウジしていられませんし。あいつも、今の俺を見たら、なんて思うか・・・」
「そうか、わかった。それでオススメだっけ?今はどれも良いけど、この前アーンヴァルとストラーフのアッパーバージョンが発売したんだ。特徴はそのままに、現行の最新鋭機種にも引けを取らない性能を確保している」
「ふむぅ、それじゃあアーンヴァルを、分割で」
「毎度あり♪」
「えっと、CSCはバランス重視でセッティング・・・と」
優一は自宅に帰ると、起動作業を開始しようとしたが、臨時のアルバイトがあるのを思い出し、帰ってきた時には既に日付が変わっていた。
「CSCセットアップを確認。天使型アーンヴァル・トランシェ2、起動します・・・」
クレードルに座したアーンヴァルから音声が発せられる。
いつの間にか、カーテンを開けっ放しにしていた窓から朝日が差し込んでくる。
「起動を完了しました。先ず、オーナーの名前を音声入力してください」
起動シークエンスを終え、アーンヴァルが双眼を開ける。
「俺は黒崎 優一、呼び名はマスターでいい」
「わかりました。では、次に私の名前を決めてください」
「名前・・・ね・・・」
優一はふと、窓の外を見やる。そこには煌々と輝く朝日があった。
「そうだな、お前の名は・・・」
優一は自宅に帰ると、起動作業を開始しようとしたが、臨時のアルバイトがあるのを思い出し、帰ってきた時には既に日付が変わっていた。
「CSCセットアップを確認。天使型アーンヴァル・トランシェ2、起動します・・・」
クレードルに座したアーンヴァルから音声が発せられる。
いつの間にか、カーテンを開けっ放しにしていた窓から朝日が差し込んでくる。
「起動を完了しました。先ず、オーナーの名前を音声入力してください」
起動シークエンスを終え、アーンヴァルが双眼を開ける。
「俺は黒崎 優一、呼び名はマスターでいい」
「わかりました。では、次に私の名前を決めてください」
「名前・・・ね・・・」
優一はふと、窓の外を見やる。そこには煌々と輝く朝日があった。
「そうだな、お前の名は・・・」
暁とは、夜明けを意味する言葉だが、優一はその名に、自身の新たな一歩を踏み出す意味を込めたかもしれない。