第七話:双雷姫
「しつこいわね……」
真那は空を舞うエウクランテ二機を忌々しい目で見る。単純に二対一なのが辛い。おまけにあちらはハンドガンやショットガンと取り回しやすい物に対して、こちらはマシンガン二丁とレーザーキャノン。非常に扱いづらい。攻撃の動作では彼女達に負けてしまう。
ルナは回避しつつマシンガンで応戦するが、敵の的確な射撃が邪魔で思うように攻撃できずにおり、少々押され気味だ。
ルナは回避しつつマシンガンで応戦するが、敵の的確な射撃が邪魔で思うように攻撃できずにおり、少々押され気味だ。
「くらえ!」
一番機がルナに対してショットガンを放つ。拡散する弾はルナを逃げ道を塞ぎ、その場で動けなくする。
「追撃!!」
二番機がその硬直している間にハンドガンで背後から放つ。それにより、マシンガンが一つ破損してしまった。
「きゃあ!?」
「ルナ! マシンガンで牽制して連携から抜け出して!!」
「うん!」
「ルナ! マシンガンで牽制して連携から抜け出して!!」
「うん!」
ルナはマシンガンを撃ちながら振るう事で弾丸をばら撒いて相手を牽制するとリアウィングの緊急ブースターを使用して距離を取り、レーザーキャノンに持ち変えてそれを放とうとチャージを開始する。
「そんなもの……何!?」
一番機は回避をしようとしたが、その瞬間、あらぬ方向から弾丸が飛んできて突然の攻撃に自分の身体を硬直させてしまう。
横槍を入れた者……アサルトカービン・エクステンドを放った紫貴を見たルナは彼女に感謝しつつ、チャージ完了したレーザーキャノンを放った。
放たれた光の矢は一番機を吹き飛ばし、ダウン状態に持ち込む。
横槍を入れた者……アサルトカービン・エクステンドを放った紫貴を見たルナは彼女に感謝しつつ、チャージ完了したレーザーキャノンを放った。
放たれた光の矢は一番機を吹き飛ばし、ダウン状態に持ち込む。
「まだまだ! ルナ!! 取って置きをくれてやりなさい!!」
「いけっ!!」
「いけっ!!」
ルナはマシンガンに火を纏わせ、放つ。炎を纏った弾丸はやがて龍を象った炎と化し、一番機を喰らい、爆発した。
高威力の二連撃を直撃した一番機は飛行する事がままならなくなり、彼女は重力に従って地面へと落ちていった。
高威力の二連撃を直撃した一番機は飛行する事がままならなくなり、彼女は重力に従って地面へと落ちていった。
「エレン!! ……お前ぇ!!」
激昂した二番機はエレンと呼ばれた一番機の仇を討たんとハンドガンを連射して接近を始めた。
ルナはその気迫に恐れを抱いてしまい、夢中になってマシンガンで連射する事で牽制をするが、その攻撃は回避され、さらに二番機が距離を詰めていく。
ルナはその気迫に恐れを抱いてしまい、夢中になってマシンガンで連射する事で牽制をするが、その攻撃は回避され、さらに二番機が距離を詰めていく。
「もらった!!」
間合いを詰めた二番機はハンドガンを連射しながら懐からライトセイバーを取り出して出力するとそれをルナに振るおうとそれを振り上げた。
彼女は回避を忘れて目を閉じてしまう。このままでは致命的なダメージを受けてしまいかねない。
彼女は回避を忘れて目を閉じてしまう。このままでは致命的なダメージを受けてしまいかねない。
「ルナ!!」
真那が叫ぶ。しかし、ルナは恐怖のあまり何も出来なかった。
そしてその攻撃は……来なかった。ルナは目を開けてみる。
そこには苦無が三本突き刺さり、何かの銃撃の痕が付いた二番機の姿があった。
そしてその攻撃は……来なかった。ルナは目を開けてみる。
そこには苦無が三本突き刺さり、何かの銃撃の痕が付いた二番機の姿があった。
「くそ……。また邪魔を……!!」
二番機は体勢を崩し、攻撃どころではなくなってしまったため、呪詛の言葉を吐きながら後退していった。
「逃がすな! 三時の方向に『ハイパーブラスト』!!」
「え、あ! ルナ!! それでお願い!!」
「了解!! 取って置き! 行っちゃうよ!!」
「え、あ! ルナ!! それでお願い!!」
「了解!! 取って置き! 行っちゃうよ!!」
すかさず飛ばされた俺の命令に従い、ルナは指定された射角に最大出力のレーザーを放った。通常射撃以上の太さのレーザーは何者をも逃さない月光の牙と化し、逃げようとしている二番機を喰らい、さらに貫通して、ダウンからようやく復帰し、反撃を開始しようとしているエレンをも飲み込んでいく。
二機のエウクランテはルナの恐るべき火力によって撃ち落され、翼をもがれると地面へと墜ちていった。
二機のエウクランテはルナの恐るべき火力によって撃ち落され、翼をもがれると地面へと墜ちていった。
「油断すんな」
「ごめん! 助かった!!」
「ごめん! 助かった!!」
俺は真那とルナに通信でそう忠告する。あまりそういう経験のないこいつらにこういう事を言うのも酷な気がするが、この状況ではそうも言っていられない。
―― ……またピンチになったらバックアップはしてやるけどな。
俺は関係のない事を考えることをやめると戦況を見る。現在、蒼貴はリーダーであり、一番強いヒルダを押さえ、紫貴はネイト、グロリア、ライラの三人を、ルナはエウクランテニ機を撃ち落し、今は紫貴のサポートに回っている。
最初の不意打ちでグラップラップを一機潰し、ルナが火力でエウクランテを撃ち落して今は五機。敵はかなり疲弊しているとは言え、まだまだだ。
依然として人数ではこちらが劣っている故、油断をしたら命取りになる。
最初の不意打ちでグラップラップを一機潰し、ルナが火力でエウクランテを撃ち落して今は五機。敵はかなり疲弊しているとは言え、まだまだだ。
依然として人数ではこちらが劣っている故、油断をしたら命取りになる。
「紫貴、そろそろ頭数を減らせ。それで差を縮めれば、精神的にこちらが有利になる」
『今やっているわ』
『今やっているわ』
紫貴はヒルダからショットガンを貰ったネイト、爆発で致命傷を負ったグロリア、大鎌しかないライラを相手に立ち回りながら俺に答える。
「敵はかなり弱っているが、油断するな。連携に注意しろ」
『言わなくてもわかっているわよ』
「それが油断だ。性能で勝てると思うな」
『……はい』
『言わなくてもわかっているわよ』
「それが油断だ。性能で勝てると思うな」
『……はい』
俺の説教で膨れっ面になった紫貴はライラの振るう大鎌を回避する。さらに追撃をしてくるネイトのショットガンをサブアームで防御し、仕返しにアサルトカービンをライラに放って足止めをし、ネイトに対してブレードを両腕で構え、一閃する。
彼女はサブアームを失っているため、回避するしかなく、何とかしてそれをしようとした。しかし、機動力の低いグラップラップであるネイトがイーダプロトタイプである紫貴の素早さから逃れられる訳でもなく、斬撃をその身に受ける事となった。
それはネイト本体を斬り裂き、深手を負わせ、さらにルナがレーザーキャノンを容赦なく放ち、その二連撃でネイトを討ち取る。
彼女はサブアームを失っているため、回避するしかなく、何とかしてそれをしようとした。しかし、機動力の低いグラップラップであるネイトがイーダプロトタイプである紫貴の素早さから逃れられる訳でもなく、斬撃をその身に受ける事となった。
それはネイト本体を斬り裂き、深手を負わせ、さらにルナがレーザーキャノンを容赦なく放ち、その二連撃でネイトを討ち取る。
「ネイト!!」
味方を倒された二人が同時に声を上げる。紫貴はその隙を逃す事無く、今度はネイトが持っていたショットガンを拾い上げ、アサルトカービンと共にグロリアの爆発によって破損した箇所に向けて容赦ない銃撃を放つ。
ただでさえ爆発で大ダメージを受けていたグロリアはマシンガンとショットガンの火力に溜まらず膝を突き、倒れてしまった。
ただでさえ爆発で大ダメージを受けていたグロリアはマシンガンとショットガンの火力に溜まらず膝を突き、倒れてしまった。
「グロリア……!!」
「悪く思わないで。私も死にたくないの。貴方達がどういう事情なのかは知らないけど私はオーナーの神姫である事を誓った。だから貴方達を倒し、私は『紫貴』であり続ける」
「悪く思わないで。私も死にたくないの。貴方達がどういう事情なのかは知らないけど私はオーナーの神姫である事を誓った。だから貴方達を倒し、私は『紫貴』であり続ける」
紫貴は決意を語りアサルトカービンとショットガンをそれぞれ構えてライラを牽制する。これで三対三。後は実力次第だ。
「そんなもの……認めるか!!」
ライラは自分の持つ双翼を広げるとそれを羽ばたかせ始め、飛翔を始めた。そしてCSCの輝きであるスキルの発動のオーラを発し始める。
――こいつは……『ダークスラッシャー』か!!
そう。黒き翼に秘められたものとは『ダークスラッシャー』と呼ばれる非常に強力な黒き羽を大量に飛ばすスキルだ。
それが決まれば大半の神姫は大ダメージをこうむる事になる凶悪なものでこれを受ければいくら高性能な紫貴と言えど、ただでは済まない。
それが決まれば大半の神姫は大ダメージをこうむる事になる凶悪なものでこれを受ければいくら高性能な紫貴と言えど、ただでは済まない。
「くらえ!!」
大きく翼を広げ、それを紫貴に向かって羽ばたく。その瞬間。その黒き翼から漆黒の雨の如く、無数の羽が降り注いできた。
紫貴は回避しようとするが、その刃の嵐は彼女の退路を断ちつつ、迫る。
ルナはレーザーキャノンから援護射撃用のマシンガンに武装を変えてカバーに回ろうとするが、ライラの動作は速く、これでは間に合わない。
紫貴は回避しようとするが、その刃の嵐は彼女の退路を断ちつつ、迫る。
ルナはレーザーキャノンから援護射撃用のマシンガンに武装を変えてカバーに回ろうとするが、ライラの動作は速く、これでは間に合わない。
「くっ! 紫貴……!!」
「わかってる!!」
「わかってる!!」
俺は咄嗟に紫貴に指示を飛ばし、彼女は俺に応えるべく、その指示と共に攻撃に備え、黒き雨をその身に受け、粉塵の中に姿を消した。
巻き上がるそれは紫貴がどうなったのかわからなくなる程、広がって彼女の安否は全くわからない。
巻き上がるそれは紫貴がどうなったのかわからなくなる程、広がって彼女の安否は全くわからない。
「消えろ……! 消えろ……!! チリと化せっ!!」
ライラは念には念をと言わんばかりに翼をあらん力で羽ばたかせ、自分の力がなくなるまで黒い雨を降らせる。
オーバーキル気味なその攻撃によって粉塵の勢いはさらに増し、蒼貴とヒルダが戦っている場所までも覆い尽くしていく。
全てのCSCの力を使い果たしたライラは荒い息を上げながら、粉塵の下を空から見下ろす。まだ紫貴の姿は見えず、まだ結果が見えてこない。
その中にいる彼女はあの過剰なまでに降り注いだ刃の雨を受けて、ただで済んでいるとは思えない。大丈夫だろうか。
オーバーキル気味なその攻撃によって粉塵の勢いはさらに増し、蒼貴とヒルダが戦っている場所までも覆い尽くしていく。
全てのCSCの力を使い果たしたライラは荒い息を上げながら、粉塵の下を空から見下ろす。まだ紫貴の姿は見えず、まだ結果が見えてこない。
その中にいる彼女はあの過剰なまでに降り注いだ刃の雨を受けて、ただで済んでいるとは思えない。大丈夫だろうか。
「は、はははは……。やった……遂にやりました」
ライラは紫貴がさっきまでいた場所を渇いた笑いを浮かべながら見つめる。あまりにも化物じみた実力を持つ彼女を討ち取ったという事に一種の達成感のようなものを感じ、愉悦しているようだ。
これが武装神姫の本来の性なのかもしれない。武器を装い、人という名の神に寵愛されし姫。その名の通り、戦いに勝利する事こそが彼女達の至上の喜びなのだろう。
これが武装神姫の本来の性なのかもしれない。武器を装い、人という名の神に寵愛されし姫。その名の通り、戦いに勝利する事こそが彼女達の至上の喜びなのだろう。
―― ……だが
俺は薄ら笑いを浮かべ、ライラを睨む。彼女は何の思惑を含ませているのかわからない俺の笑みに何か恐れを抱き、辺りを見回す。
その時には粉塵は少しだけ晴れる。そして紫貴が最後にいた場所には……大量の黒い羽が突き刺さり、大破したトライクの残骸が横たわっているだけだった。
その時には粉塵は少しだけ晴れる。そして紫貴が最後にいた場所には……大量の黒い羽が突き刺さり、大破したトライクの残骸が横たわっているだけだった。
「はっ!? 本体は!!?」
油断していた事に気づいたライラは辺りを見回そうとした。その瞬間、丁度、ライラの背後に当たる煙の中から紫貴が飛び上がってきた。
「紫貴をなめんなーー!!」
「反撃!!」
「反撃!!」
俺の叫びと共に紫貴は唯一残った片刃のブレード『アンチムーバーソード エアロヴァジュラ』をまるで空中での居合いの構えをするかの如く、うずくまって力をため……
「いけぇ!!」
「っはぁ!!」
「っはぁ!!」
黒き天使を……一刀両断の名の下に斬り裂いた。
「ぐあぁぁぁっ!!?」
紫貴の一閃はライラの上半身と下半身を綺麗に分け、翼も奪った。
空を飛ぶ手段を失ったライラは切り落とされた下半身と共に地面へと墜ちていく。
そして、紫貴の着地と同時に重力に従った墜落によって大きな音を立てながら地面に投げ出された。
空を飛ぶ手段を失ったライラは切り落とされた下半身と共に地面へと墜ちていく。
そして、紫貴の着地と同時に重力に従った墜落によって大きな音を立てながら地面に投げ出された。
「ぐっ……。何故……」
「近くに柱があったから、それとトライクで私自身への攻撃を耐え切っただけよ。トライクがお釈迦になったけど命には変えられない」
「近くに柱があったから、それとトライクで私自身への攻撃を耐え切っただけよ。トライクがお釈迦になったけど命には変えられない」
そう。俺は紫貴に防御の方法を黒き雨の前に何とか教えたのだ。
まず、トライクを盾として使って何とか後退しつつ、第一波を防ぎ切り、続く第二波はトライクを犠牲にしながら、柱に隠れてやり過ごし、ライラが全ての力を使い果たすのを待っていた。
そしてそうなった瞬間、粉塵のカモフラージュの中、背後に回り、適当な高台から飛び上がりつつ、奇襲を仕掛けたのである。
まず、トライクを盾として使って何とか後退しつつ、第一波を防ぎ切り、続く第二波はトライクを犠牲にしながら、柱に隠れてやり過ごし、ライラが全ての力を使い果たすのを待っていた。
そしてそうなった瞬間、粉塵のカモフラージュの中、背後に回り、適当な高台から飛び上がりつつ、奇襲を仕掛けたのである。
「くそっ……まだだ……」
ライラはそれを理解し、上半身だけとなったとしても執念がそうさせるのか、そんな酷い身体で動こうとする。手を伸ばした。
その先には大鎌があり、それはライラの執念に呼応するかのごとく、彼女の手に収まる。
その先には大鎌があり、それはライラの執念に呼応するかのごとく、彼女の手に収まる。
「まだ、終わったわけじゃない!!」
なんと残った黒き片翼の浮力を使う事で上半身だけになった身体を無理矢理起きあがらせ、さらに自分の身体の重心で勢いを生み出すと大鎌による全力の一撃を紫貴に向かって放った。
「えっ!?」
上半身だけとなり、何も出来ないと思い込んで油断していた紫貴はその攻撃を回避することもブレードで防御する事も出来ない。
このままでは紫貴が大鎌で両断されてしまう。
しかし、そうはならなかった。その刹那、ルナが二人の間に割って入り、レーザーキャノンを盾にしてその一撃を防いだ。
大鎌はレーザーキャノンに食い込み、それを破壊するが、それは貫通する事はなく、狙いであった紫貴にも、割り込んできたルナにもその攻撃は届く事はなかった。
ルナは大鎌が食い込み、役に立たなくなったレーザーキャノンを食い込んだそれごとライラの手には届かない場所へ放り投げ、唯一残ったマシンガンを取り出すとそれで残った黒き片翼を撃ち抜いてライラを無力化させた。
このままでは紫貴が大鎌で両断されてしまう。
しかし、そうはならなかった。その刹那、ルナが二人の間に割って入り、レーザーキャノンを盾にしてその一撃を防いだ。
大鎌はレーザーキャノンに食い込み、それを破壊するが、それは貫通する事はなく、狙いであった紫貴にも、割り込んできたルナにもその攻撃は届く事はなかった。
ルナは大鎌が食い込み、役に立たなくなったレーザーキャノンを食い込んだそれごとライラの手には届かない場所へ放り投げ、唯一残ったマシンガンを取り出すとそれで残った黒き片翼を撃ち抜いてライラを無力化させた。
「これでおあいこだよ?」
「ご、ごめんなさい……」
「いいよ。……でも、壊れたレーザーキャノンの修理費は紫貴ちゃんのオーナー持ちだからよろしくっ」
「うっ……」
「ご、ごめんなさい……」
「いいよ。……でも、壊れたレーザーキャノンの修理費は紫貴ちゃんのオーナー持ちだからよろしくっ」
「うっ……」
ルナの言葉に紫貴は凄く困った顔をした。
それはそうだ。彼女が盗んだ急速充電機代とこの後のメンテ代、破損したトライクの修理代がただでさえかさんでいるのにこれは痛すぎる。
余計な出費を増やしてくれたおかげで俺の財布の中は火の車だ。勘弁していただきたい。
それはそうだ。彼女が盗んだ急速充電機代とこの後のメンテ代、破損したトライクの修理代がただでさえかさんでいるのにこれは痛すぎる。
余計な出費を増やしてくれたおかげで俺の財布の中は火の車だ。勘弁していただきたい。
「最後の最後まで油断するな。そんなだからああいう事態になったんだぞ? 『戦場では性能が絶対じゃない』って言わなきゃわからねぇか?」
『ごめんなさい……。オーナー……』
「……もういい。これは後にして蒼貴の援護に行ってやれ。今は落ち込むよりも手を動かすんだ」
『……はい』
『ごめんなさい……。オーナー……』
「……もういい。これは後にして蒼貴の援護に行ってやれ。今は落ち込むよりも手を動かすんだ」
『……はい』
紫貴は俺の説教にしょんぼりとした様子で蒼貴の援護に向かうために走り出す。
少しきつい事を言ったが、今後もこうした事は必ず起こる。ここで叱るのを躊躇っていてはまたあいつは繰り返してしまう。それだけは避けておかねばならない。
少しきつい事を言ったが、今後もこうした事は必ず起こる。ここで叱るのを躊躇っていてはまたあいつは繰り返してしまう。それだけは避けておかねばならない。
一方、蒼貴は未だにヒルダと交戦していた。リーダー格の操る彼女は思いの他強く、苦戦を強いられていた。
サブアームやサブウェポンをある程度破壊しているため、手数は減っているものの、依然として攻撃の勢いは止まっていない。
サブアームやサブウェポンをある程度破壊しているため、手数は減っているものの、依然として攻撃の勢いは止まっていない。
「これでどうだ!!」
ヒルダは残ったサブアーム三本と両腕による同時攻撃を仕掛ける。手に持っているのはサブアームにはロングブレード、右腕にはフィンブレード、左腕にはハンドガンと死角のない組み合わせの同時攻撃が蒼貴を襲う。
彼女はまずハンドガンを鎌で払う事でそれを破壊して回避のしようがないその攻撃を阻止し、さらにサブアームは単純な動きしか出来ないため、それを予測して回避し、フィンブレードは手の空いている左手に持っている苦無で受け止めた。
そして蒼貴の反撃。彼女は完全に押さえ込んだヒルダに対して唯一攻撃できる手段である蹴りを腹に放つ。それによってヒルダは体勢を崩し、全ての攻撃が止まる。
蒼貴は鎌と苦無の二刀流で舞い、左のサブアーム一つを斬り落とし、脚部の増加装甲を削る。しかし、ヒルダの防御力は高く、攻撃には成功しても思ったよりもダメージが通っていない様に見える。
流石に近接特化のパワーファイターであるヒルダは防御の仕方が上手く、ネイトのように重要な箇所をなかなか当てさせてはくれない。
彼女はまずハンドガンを鎌で払う事でそれを破壊して回避のしようがないその攻撃を阻止し、さらにサブアームは単純な動きしか出来ないため、それを予測して回避し、フィンブレードは手の空いている左手に持っている苦無で受け止めた。
そして蒼貴の反撃。彼女は完全に押さえ込んだヒルダに対して唯一攻撃できる手段である蹴りを腹に放つ。それによってヒルダは体勢を崩し、全ての攻撃が止まる。
蒼貴は鎌と苦無の二刀流で舞い、左のサブアーム一つを斬り落とし、脚部の増加装甲を削る。しかし、ヒルダの防御力は高く、攻撃には成功しても思ったよりもダメージが通っていない様に見える。
流石に近接特化のパワーファイターであるヒルダは防御の仕方が上手く、ネイトのように重要な箇所をなかなか当てさせてはくれない。
「なかなか、手強い……」
俺は苦い顔をしてヒルダを見る。奴はフィンブレードとハンドガン以外は全て外付けされているため、盗むものが無く、武装を破壊していくしか彼女を弱体化させる方法はない。サブアームは二本切り落として手数は減っているものの、依然として二本の手しかない蒼貴は非常に苦戦を強いられている。
紫貴やルナが介入させようにもこの二人の武器は大振りの物しかなく、蒼貴を巻き込みかねないため、迂闊には加勢させる事ができない。
蒼貴は何とか鎌と苦無でヒルダと対等に渡り合っているが、これがいつ持つかわからない。次の手を打たなければ危険だ。
俺の危惧を気づく事のないヒルダがハンドガンを放ちつつ、サブアームブレードを振るう同時攻撃を仕掛ける。
蒼貴は鎌でハンドガンを弾き、苦無でブレードを受け止める。しかし、パワーが違いすぎるため、かなり押されていた。
紫貴やルナが介入させようにもこの二人の武器は大振りの物しかなく、蒼貴を巻き込みかねないため、迂闊には加勢させる事ができない。
蒼貴は何とか鎌と苦無でヒルダと対等に渡り合っているが、これがいつ持つかわからない。次の手を打たなければ危険だ。
俺の危惧を気づく事のないヒルダがハンドガンを放ちつつ、サブアームブレードを振るう同時攻撃を仕掛ける。
蒼貴は鎌でハンドガンを弾き、苦無でブレードを受け止める。しかし、パワーが違いすぎるため、かなり押されていた。
「そこだ!!」
ヒルダはもう一つのサブアームブレードを放つ。蒼貴は反射的にそれを鎌で防御しようとしたが、その攻撃によって鎌が砕け散ってしまった。
「あっ……!」
武装の破損に蒼貴は驚いてしまった。それ故に反応に遅れ、彼女はその攻撃をまともに受け、倒れてしまった。
「蒼貴! しっかりしろ!! おい!!」
俺は叫ぶが彼女にはその言葉は届かず、目を覚まさない。
その間にもヒルダは容赦ない様子で攻撃を仕掛けようと接近する。彼女は手段をなりふり構わない。情け無用の攻撃を彼女に見舞い、完全に戦闘不能とするだろう。
その間にもヒルダは容赦ない様子で攻撃を仕掛けようと接近する。彼女は手段をなりふり構わない。情け無用の攻撃を彼女に見舞い、完全に戦闘不能とするだろう。
「これで終わりだ!!」
ヒルダはサブアームブレード二本、フィンブレードの三刀流で蒼貴をバラバラにせんとそれらを振り上げる。
「くっ! 紫貴!」
「はい!」
「はい!」
その瞬間、紫貴はヒルダの背後を襲うために駆け出した。今、彼女に残された武器はブレード一本だけ。それでどこまで出来るかわからないが、やるしかなかった。
それに気づいたヒルダは蒼貴を後回しにし、振り向けざまに紫貴にサブアームブレードを振るう。彼女はその攻撃にブレードで弾き、反撃の一撃を放つ。
それに気づいたヒルダは蒼貴を後回しにし、振り向けざまに紫貴にサブアームブレードを振るう。彼女はその攻撃にブレードで弾き、反撃の一撃を放つ。
「邪魔をするな!!」
ヒルダはその攻撃をもう一方のサブアームブレードで阻止しようとした。
しかし、それは阻止するどころかそのために出したサブアームを逆に切断された。紫貴が狙っていたのは阻止するブレードを狙った武装破壊攻撃だった。これで残るサブアームは右のもの一つだけ。ブレード一本の紫貴でも十分渡り合えるはずだ。
ところがヒルダはそれで動揺することはなかった。なんと残っていたサブアームユニットを全てパージしたのだ。
しかし、それは阻止するどころかそのために出したサブアームを逆に切断された。紫貴が狙っていたのは阻止するブレードを狙った武装破壊攻撃だった。これで残るサブアームは右のもの一つだけ。ブレード一本の紫貴でも十分渡り合えるはずだ。
ところがヒルダはそれで動揺することはなかった。なんと残っていたサブアームユニットを全てパージしたのだ。
――なるほど。身体の重心を整え、さらに軽量化して素早くなろうって魂胆か。
そう。もう片方しかないサブアームユニットなど身体のバランスを狂わせる上に空いている方に回りこまれたらその意味もなくなってしまう。
それならば軽量化と身体のバランスを整える方が戦いやすい。
これで残るはフィンブレードとハンドガンと取り回しやすいものばかりが残った。それは、威力はない。しかし、素早い攻撃ができるという事でもある。
大振りのブレードしかない紫貴が果たしてこれに対応できるのだろうか。
彼女はブレードで袈裟斬りを放つ。しかし、ヒルダはフィンブレードでそれを防御し、ハンドガンで紫貴にすかさず連射した。
彼女は鍔迫り合いになっているブレードをずらす事で弾丸の軌道の中にそれを割り込ませて防御してみせる。
さらにブレードを逸らして鍔迫り合いから離脱し、自らの身体をスピンさせて勢いをつけて素早い一閃を放つ。
さすがに得物のパワーでは劣るフィンブレードにはそれを押さえ込むことは難しいはず。
ヒルダは俺と同じ事を考えていたのか、受け止めることを諦め、後退する事で回避する。しかし、紫貴の攻撃はそれでは終わっていなかった。
ブレードを振り切るとその返す刀で突進しつつ、振り上げる。二段攻撃となったその攻撃は回避のしようがなく、ハンドガンを捉え、それを切断する。
それならば軽量化と身体のバランスを整える方が戦いやすい。
これで残るはフィンブレードとハンドガンと取り回しやすいものばかりが残った。それは、威力はない。しかし、素早い攻撃ができるという事でもある。
大振りのブレードしかない紫貴が果たしてこれに対応できるのだろうか。
彼女はブレードで袈裟斬りを放つ。しかし、ヒルダはフィンブレードでそれを防御し、ハンドガンで紫貴にすかさず連射した。
彼女は鍔迫り合いになっているブレードをずらす事で弾丸の軌道の中にそれを割り込ませて防御してみせる。
さらにブレードを逸らして鍔迫り合いから離脱し、自らの身体をスピンさせて勢いをつけて素早い一閃を放つ。
さすがに得物のパワーでは劣るフィンブレードにはそれを押さえ込むことは難しいはず。
ヒルダは俺と同じ事を考えていたのか、受け止めることを諦め、後退する事で回避する。しかし、紫貴の攻撃はそれでは終わっていなかった。
ブレードを振り切るとその返す刀で突進しつつ、振り上げる。二段攻撃となったその攻撃は回避のしようがなく、ハンドガンを捉え、それを切断する。
「ちっ……」
ヒルダは舌打ちすると壊れたハンドガンを手放し、振り切った隙を突かんとフィンブレードを紫貴に振るう。
しかし、彼女はアームガードを盾にその攻撃を受け止め、間合いを取ってみせる。
しかし、彼女はアームガードを盾にその攻撃を受け止め、間合いを取ってみせる。
「くっ……ブレード一本でここまでやるとは……」
「蒼貴は私が守る! 貴方なんかに殺させはしない!!」
「蒼貴は私が守る! 貴方なんかに殺させはしない!!」
紫貴は叫び、ブレードを構える。もはや彼女にとって蒼貴は大切な存在になっていた。そう、紫貴は自分のためではなく、自分の大切な友人であり、姉妹でもある蒼貴を守るという意志を彼女は手にしていた。
そうした守るという意志を持った力は性能では計り知れない力を引き出してくれる。
そうした守るという意志を持った力は性能では計り知れない力を引き出してくれる。
――ピンチはチャンスに変わる。
そう確信した。俺は現在の状況を調べる。蒼貴の復帰は後少しで完了し、ルナは必中の機会を狙っている。次の一撃で全てを終わらせるのが最良の選択のようだ。
「紫貴! 後ろを信じて行け!!」
「……はい!」
「……はい!」
紫貴は俺の呼びかけに答えると走り出し、ブレードをヒルダに振るう。ヒルダは隠し持っていたライトセイバーを取り出して、それとフィンブレードで使って応戦を開始する。
振るわれたブレードはライトセイバーと交差し、火花を散らして鍔迫り合いになり、フィンブレードはその隙に紫貴の腹に向かって放たれた。
彼女はそれに反応するとヒルダの右前方へと転がり込む事で鍔迫り合いとフィンブレードの攻撃から逃れ、起き上がると同時にブレードを振り上げる。
振るわれたブレードはライトセイバーと交差し、火花を散らして鍔迫り合いになり、フィンブレードはその隙に紫貴の腹に向かって放たれた。
彼女はそれに反応するとヒルダの右前方へと転がり込む事で鍔迫り合いとフィンブレードの攻撃から逃れ、起き上がると同時にブレードを振り上げる。
「隙だらけだ!!」
ヒルダは無防備だと思われる紫貴にブレードの斬撃をライトセイバーで受け止めつつ、フィンブレードで彼女の身体を両断せんと全力で振るった。
その攻撃は……通らなかった。いつの間にかエウクランテが持っていたはずのライトセイバーを両手に一つずつ持ち、復帰している蒼貴によって。
「何だと!?」
驚愕のヒルダは一旦間合いを離そうと離脱を試みた。しかし、その瞬間、足が何者かに撃ち抜かれた。
ヒルダは膝を突き、背後を見ると高台からエウクランテから奪ったと思われるロングレンジライフルを構え、味方に当たらない様に彼女を狙撃するルナの姿があった。
ヒルダは膝を突き、背後を見ると高台からエウクランテから奪ったと思われるロングレンジライフルを構え、味方に当たらない様に彼女を狙撃するルナの姿があった。
「なかなか使いやすいライフルだね。……狙い撃つよ!!」
ルナはさらにヘッドセンサーの索敵能力を使用してヒルダの身体のターゲッティングをし、さらに足の関節を針の穴を通すかのような狙撃で撃ち抜いて足を止めていく。
「行きますよ! 紫貴!!」
「ええ!」
「ええ!」
蒼貴と紫貴はその隙にヒルダに対して左右から回りこむ様に走りだす。蒼雷と紫電の如く駆ける二人は彼女にそれぞれの武器を叩き込みX字の傷跡を刻みこんだ。
「くっ……ここまで……か」
双雷の閃きを受けたヒルダはなす術もなく、遂に地面に倒れ伏した。