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第六話:乱戦姫



「やはりここにいたか」

 女性の声が聞こえる。それと同時に複数の足音が響き、こちらに近づいてきた。
 目を凝らして見てみるとそこにはリーダー格と思われる女性とそれに付き従う取り巻きが六人の計七人が俺達に迫っていた。

「大人しくそのHMT型を渡してもらおうか。それはあたし達の獲物だ」

 リーダー格が俺にまるで悪役のデフォルトの様なセリフをこれまたデフォルト的な凄みを利かせて宣告してきた。

「嫌だと言ったら?」
「あたし達の神姫の餌食になってもらう」
「なるほど。そりゃ大変だ。だが、身内を渡してやる程、俺も人でなしじゃあない。つー訳で謹んで断る事にするよ」

 リーダー格の脅迫に屈する所か平然と言葉を返す俺の反応が御気に召さない彼女は顔をしかめ始める。
 逆にイーダは自分を家族扱いしてくれた事に感激している様子だった。
 別に大した事でもない気がするんだが……まぁ、いいか。

「何? 賞金を手に入れずにそいつを引き取るだと?」
「別におかしい事でもないだろ? 厄介な家族が一人増えるが、悪くは無い」
「訳がわからんな。そいつは賞金首だというのに受け入れるなどという神経は理解に苦しむ。それにお前はそのフブキと一緒にその試作機を操れるのか? デュアルオーダーはそう多くはいないぞ」
「デュアルオーダー?」
「神姫を二体同時に操れる人の称号みたいなものよ。双姫主(そうきしゅ)とも呼ばれているわ」

 真那は話を続ける。
 BRでは通常一機しか神姫を操ることしか出来ない。これは当たり前の事だ。
 しかしそれの意味を考えたことはあるだろうか。確かに一対一の方がわかりやすい戦いにはなる。実はそれだけではない。
 それは普通のオーナーには神姫を一機までしか操れないという事だ。
 思考的な意味での限界と刻一刻と変化する状況に臨機応変に対処するために効率性を重視する場合、従える神姫は一体に絞った方がやりやすいのである。
 しかしその常識を覆し、二体同時に操るオーナーが少数ながら存在する。そうした者達を周りの者達は全体を見渡せる卓越した戦闘指揮能力と思考を持つ事から畏怖を込めてその者を双姫主と呼ぶのである。
 真那の口調からすると双姫主とは恐ろしく難しい事ならしい。しかし、俺にはどうにもそんなに難しいとは思えない。詰まる所、『型に填らなければいい』という事なのだ。
 だったらやってやろうじゃないか……。その双姫主とやらを……。

「なるほどな。……大した問題じゃねぇな」
「なんだと!?」
「……試してみるか?」
「上等だ!!」

 リーダー格は取り巻きと共に神姫を取り出し、俺達に対して攻撃態勢を取る。
 数は七体。フブキ近接戦機、ヴァッフェドルフィン近接特化型、ハウリン純正機が一機ずつ、エウクランテ砲撃仕様、グラップラップ純正機が二機ずつだ。
 近接戦で一気に勝負を仕掛けてくる戦力だ。恐らくフブキ、ヴァッフェドルフィン、ハウリンがエウクランテの援護射撃を受けつつ、先行して弱体化させた後、グラップラップのパワーで蹂躙するというのが大体のパターンであると推測できた。

「うわっ。七体!? こんなに相手に出来ないわよ……」
「いや、そうでもないさ。宮本武蔵が二刀流なのは知っているな?」
「へ? いきなり何?」

 いきなり場違いな事を聞かれた真那は訳のわからない様な顔をする。

「知ってるか?」
「し、知っているわよ! それでとてつもなく強いお侍さんだったんでしょう?」
「そうだ。だが、宮本武蔵が強かったのは二刀流が出来たからじゃあない。卓越した策略を巡らせる事のできる優秀な兵法家だったって事さ」

 そう。宮本武蔵は確かに二刀流の侍であり、非常優れた者だった。しかしそれは彼の真の力に繋がっている訳ではない。
 彼の真の力は恐るべき頭の切れにある。兵法家として戦略を瞬時に練り上げて相手を打ち負かし、思想家としてかの有名な書物である『五輪書』を世に残し、様々な人に影響を与えた。そうした総合的な強さこそが彼の強みなのである。

「それがこれにどう関係あるって言うのよ!?」
「せっかちだな……。つまりだ。戦いの勝敗を決めるのは戦力じゃなくて戦略なんだよ」

 こちらはフブキタイプである蒼貴、アーンヴァルタイプであるルナ、イーダプロトタイプである紫貴の三機と戦力的には確かに劣るが、一ついい事がある。
 それは非常にバランスの取れたチーム編成になっている事だ。
 ルナは今回、本気である砲撃仕様になっているため、遠距離で援護射撃から砲撃支援までこなせるし、イーダは非常に近接戦に強い。そして蒼貴は各距離に対応し、相手の武装を盗める。これなら遅れを取る事はあるまい。

「さて……イーダ」
「はい」

 俺が蒼貴に武装を手渡しながら彼女に声をかけると明瞭な声が返ってくる。

「普通に喋ってもいい。楽に行こうぜ?」
「……うん。オーナー、命令をお願い」
「ああ。最初の命令だ。お前は今日からイーダじゃない。紫貴だ」
「紫貴……。良い名前ね……気に入った」
「OK。……じゃ、行くか。今から携帯の端末機能を使って通信をするぞ。周波数は303だ」

 BRであった神姫と通信する機能。実はダウンロードをすれば携帯でも行える様になっている。指定した周波数に合わせることで神姫と携帯電話を繋ぎ、トランシーバーの様な役割を果たす。
 屋外ではBRの様な機能はないため、上手く相手に悟られずに戦術を展開するには非常に重要な機能なのである。

「ミコちゃん、合わせたわよ」
『蒼貴、接続を確認しました』
『通信を繋げたわ』
『よく聞こえるよ。指示、お願い』

 俺の指示で全員がコネクトを303に合わせてくれた。これで指揮系統が安定する。後は敵を攻めるだけだ。

「OKだ。真那、遅れを取るなよ?」
「言われるまでも無いわ!」

 俺の言葉によって倍以上の戦力に怖気もしなくなった真那の反応に俺は笑う。これだけ士気が高ければ間違いない。勝てる。

「それだけでかい口が叩けりゃ上等だ。行くぞ!」
『了解!!』



「まずは出鼻をくじく。各機散開。真那は援護射撃を頼む」
「任せて! ルナ! マシンガンで弾幕を!!」
「はい!」

 ルナは空中へ飛翔し、マシンガンを二丁、腰に抱える様に構え、上空から多量の弾丸の雨を降らし始める。

「あのアーンヴァルを撃ち落せ!!」
「了解!」

 それに対してエウクランテ二機はルナに対して遠距離用のライフルで狙い撃ち、さらには背中に増設されたミサイルを四基発射するが、彼女はアーンヴァルとしての機動力がライフルを回避し、ミサイルはマシンガンの弾幕が対空砲の如く、ルナに到達する前に片っ端から撃ち落していく。

「狙いが甘いよ!!」

 ルナはライフルによる攻撃を自分の身体をロールさせる事で回避しつつ、一旦、マシンガンをウイングのアタッチメントにしまうと背部に装備してあったレーザーキャノンを持ち出してチャージをし、それを放つ。
 極太のレーザーはまず、撃ち落そうとしていたエウクランテに降り注ぎ、さらにルナはブースターを噴かす事で制動力を強化し、そのまま強引にレーザーキャノンを左へ振る事で近くにいたグラップラップ二機共々薙ぎ払う。

「くそ! 回避だ!」

 咄嗟に味方に命令を下すエウクランテは回避したが、動きが鈍重なグラップラップは長距離からの砲撃に適正が追いつかず、直撃してしまい、大ダメージを受ける事となった。
 だが、重装甲が幸いしたためか、一機は何とか立ち上がる事が出来た。
 ルナはまだ生きている事を確認すると反撃が来る前にレーザーキャノンからマシンガンに持ち変え、再び前衛を牽制し始める。

「何て強引な奴だ……!!」

 生き残ったグラップラップが空を舞い、容赦ない砲撃と弾幕を降らせるルナを睨む。
 俺も同じ事を思った。普通、レーザーキャノンは保持して確実性を求めるのが道理だが、ルナはそんな事もせず、ただ手から離れない程度の保持力で発射し、薙ぎ払いをしてみせた。どうも彼女は砲撃の仕方を熟知しているようだ。

「調子に乗るな!!」

 エウクランテ二機はこれ以上、ルナを放置していてはこちらが動けなくなると判断し、ライフルを捨て、それぞれハンドガンとショットガンを取り出して飛翔し、それぞれの武器を放つ。

「ルナ! 柱を盾に!!」
「はい!」

 ルナは真那に指示された通り、非常に硬い鉄骨の後ろに隠れる事で敵の攻撃を防ぐ。
 さらにレーザーキャノンをしまい、マシンガンを二丁取り出してそれで弾幕を作り上げ、回避の難しい攻撃を仕掛ける。
 エウクランテ達もルナから学習して鉄骨で防御しようとしたが、学習という過程が入ってしまったがために少しタイムラグが入り、そうしきれず、多少被弾してしまった。
 ルナはそれを見てマシンガンを一つにし、狙い撃ちながら突撃を開始した。

 ――こりゃ、あの時、あんな装備で来られたら負けていたかもな……。

 弾幕の天使と化しているルナを見て、苦笑する。恐らく蒼貴が成長したように彼女もまた蒼貴の形外れな戦いからそうした応用を編み出したのだろう。

「やるな……。こっちも負けていられん。紫貴、蒼貴をトライクに乗せられるか?」
「出来るわ。パッセンジャーモードがあるから」
「OK。パッセンジャーモードに変形。蒼貴はそれに乗れ! ターゲットはフブキ!!」
「わかったわ!」
「了解しました」

 紫貴はパッセンジャーモードに変形し、さらに蒼貴を乗せるとフブキに対して強襲を仕掛ける。敵に接近するまでの間、蒼貴は備え付けられたアサルトカービンを使ってフブキに素早い動きをされる前に連射する。
 陸と空、両方から放たれる多角的な弾幕は素早い近接戦の機動力をもってしても回避しきれず、思わず防御し、棒立ちとなる。
 そして蒼貴と紫貴はフブキに一気に攻め入り、蒼貴はトライクにマウントしていた鎌を手にとって飛び降りた。
 その直後、誰も乗っていないトライクである紫貴は変形し、その勢いを持ってフブキに突っ込む。フブキは突然の強襲に大鎌を突く事で紫貴を迎撃しようとする。
 彼女はそれに反応し、片方のサブアームで防御し、もう片方のサブアームクローで彼女を掴み、握り潰す。
 フブキは握る事による圧力とクローの鋭さの二重のダメージに苦しみ、あまりの痛みとダメージに遂にはダウンしてしまった。
 紫貴はそれを見るとそれを、何とか足止めをするルナを撃ち落そうとしているエウクランテに投げつける。
 まっすぐ飛んでいくフブキはエウクランテを巻き込み、共に壁へと突っ込んだ。

「ライラ! 無事か!?」
「ご主人様……すいません……」

 ライラと呼ばれたフブキは何とかダウンから復帰すると自分の持っている大鎌を杖にして立ち上がる。
 全体的にかなりのダメージを負ったが、まだ戦えるようだ。それに倒れず立ち上がるとなるとかなりの熟練度を持った相手であり、数だけの集団ではないという事になる。

「すまない……まさかこんな事になるなんて……お前、鎌はどうした?」
「え……?」

 オーナーはライラのもう一つの異変が気づいた。
 自分のメインウェポンである鎌が無くなっていたのだ。サブウェポンである苦無も鎧の中から消えており、残っているのは取り回しにくい大鎌だけ。

「まさか……!」


 ライラのオーナーは蒼貴を見る。
 何と彼女はいつの間にかライラの鎌を盗み出し、二刀流の竜巻となって舞っていた。
 そう。蒼貴は飛び降りた際、紫貴が握りつぶしている間にライラの武器を失敬させてもらったのだ。
 相手は同じフブキタイプ。装備の互換性もバッチリだ。おまけに二刀流が成立し、圧倒的な手数を蒼貴は手にする事になる。

「蒼貴。二刀流はどうだ?」
「結構、慣れてます。『前の私』の影響かもしれません」

 ヴァッフェドルフィンとハウリンを同時に相手している蒼貴に二刀流の感想を尋ねてみる。彼女はそれに二人の神姫が仕掛けてくる挟撃を自分の身体を軽く浮かせて素早く回転して斬りつける事で刃の嵐を作り出して捌き、さらにはヴァッフェドルフィンの武装を切り落としつつ、答える。

「……そうか。『前のお前』の遺産、大事に使おうぜ」
「はい」

 俺の言葉に答えた蒼貴は右手の鎌をヴァッフェドルフィンに素早く投げつけて体勢を怯ませ、さらに手の空いた右手で腰に仕込まれた苦無を四本、ハウリンに投げつけて足止めを行う。さらにそこに紫貴が介入し、ハウリンを掴んで後衛陣に投げ飛ばし、トライクモードに変形してそれを追撃する。
 ハウリンは吹き飛ばされた先にある柱に上手く着地し、紫貴に反撃の拳を仕掛ける。
 紫貴はそれに対してサブアームを盾にする事で防ぎ、その向こうからアサルトカービンを放つ。ハウリンはその攻撃に空いていた方の手甲で防御し、そのまま、回りこむ。

「いくら近距離戦が強くたってそのトライクは動きの邪魔になる!!」

 ハウリンの言葉通り、トライクは非常に大きい。詰まる所、大きい故に攻撃が大振りになりかねない。確かにそうだ。……トライクをくっつけたまんまだったらな。

「紫貴! トライクパージ!! ブレードで叩き斬れ!!」
「はい!」

 その瞬間、紫貴に装着されていたトライクの接続が外れ、大きな音を立てて地面へと脱落する。身軽になった紫貴は素早く右へと跳躍し、その攻撃を回避する。
 さらにブレードで振るわれるハウリンの十手を、それを受け止める。ブレードと十手はぶつかり合い火花を散らして拮抗状態となって互いを動けなくする。

「まだまだ!!」

 紫貴はブレードで十手を受け流し、ハウリンに仕掛ける。しかしその時、グラップラップがサブアームで殴りかかってきた。
 紫貴はトライクをパージしているため、防御が出来ない。上手い奇襲だ。
 彼女はその攻撃にかろうじて反応すると攻撃を中断し、ブレードでグラップラップのアームの関節を切断する事で攻撃を阻止した。
 そしてこれ以上の攻撃を受けるとまずいため、一旦、距離を取る。
 それと同時にハウリン、グラップラップ、ライラが集結し、紫貴を睨む。三対一という状況が出来上がってしまった。

「三人同時相手か。やれるか?」
「当然よ。それぐらい出来なきゃ、この戦いは勝てない。オーナー、一つ提案があるんだけど」
「何だ?」
「私のトライクにはダミートライクって機能があるの。それで挟撃をしない?」

 俺は紫貴の言葉に少し驚いた。話しぶりから察するとパージしたトライクは遠隔操作で動かす事が出来る機能が搭載されてあるらしい。もし本当ならば、上手い挟撃になるに違いない。

「なるほど。トライクが独りでにか。いいぜ。それで蹴散らしてやれ」
「了解」

 紫貴は俺の許可を受けると敵勢力を迎え撃つためにブレードを構え、敵の攻撃を待つ。

「ライラ。もういいのか?」
「倒れている訳には行きません。ネイト。グロリア。三方向同時に攻めましょう。彼女は今、トライクが無いのでこの攻撃を防ぎきる事はできません」
「了解だぜ! 任せろ!!」
「わかった。その通りにしよう」

 ネイトと呼ばれたグラップラップ、グロリアと呼ばれたハウリンはライラに従い、それぞれの武器を構える。
 そして……互いが動き出す。紫貴はブレードでまずは動きの遅いネイトの残された方のサブアームを狙って一閃を仕掛ける。

「そんな事はお見通しだ!」

 ライラは大鎌を突き出す事でグロリアに向けられたブレードの軌道をそらし、紫貴の攻撃を失敗に追い込み、さらにネイトが残った拳で紫貴に殴りかかる。

「くっ……」

 トライクの無い紫貴はその攻撃を受けるしかなく、何とかガードする事でダメージを軽減させ、逸らされたブレードを返し、三人を後ろに下がらせる威嚇をした。
 敵はそれに怯み、動かなくなる。

「今だ! ダミートライク起動!!」

 俺がそう叫ぶと紫貴はトライクの第四の機能 ダミートライクを発動させる。
 なんとパージしたまま放置されてあったトライクが独りでに動き出し、紫貴無しの状態でのトライクモードに変形した。

「何だと!?」

 ライラ達のオーナー達は今起きている事に動揺していた。確かにバトルモードに変形する機種は存在する。しかし、それは神姫の傍にあって初めて実行できる行動なのである。
 しかし、トライクはその常識を無視して独立行動を行っている。紫貴は彼らにとって想像以上に常識外れな機体だった様だ。

「そのまま、挟撃だ!!」
「了解! 来て!!」

 紫貴の声と共にトライクは彼女の下へと走り出す。紫貴はネイトに向かって走り出し、ブレードを彼女に下から上へと振り上げる。

「何!? うわぁっ!!」

 グロリアはブレードを回避するが、背後から来るトライクの突進には対応できず、それに吹き飛ばされる。
 紫貴は駆けつけてきたトライクに斬り上げの勢いで飛び乗り、アサルトカービンを取り出すとそれをネイトに連射する。
 彼女は吹き飛ばされた事で宙を舞い、無防備な状態でその攻撃を受ける羽目になり、装甲が破損する。
 そしてトライクの上から跳躍し、ネイトにブレードで居合いを仕掛ける。
 その攻撃に彼女は何とかサブアームで防御をしようとするが、ブレードの切れ味は鋭く、防御が間に合っていないそれを腕ごと切断されてしまい、ネイトの近接武装はこれで失われてしまった。
 紫貴の攻撃はまだ終わらなかった。跳躍していた彼女にトライクも続いてジャンプして変形する事でバトルモードへのドッキングを果たし、紫貴と共に強力な打撃をグロリアに対して放つ。

「そんな攻撃、通用しない!!」

 彼女は右へと飛んで避けつつ、棘だらけの円月輪を投げ飛ばす。それは紫貴の装甲を削ぎ、彼女の体勢を崩す。
 さらに骨の形をしたランチャーを放たんと構える。これを決められてしまうと躯体に対してのダイレクトダメージが入ってしまって流石の紫貴でも持ち堪えられない。

「これで終わりだ!!」

 グロリアはランチャーを放とうとトリガーを引く。そして……発射しようとしたそれが何故か爆発した。

「あああぁっ!?」

 爆発に巻き込まれた彼女はそのダメージでダウンしてしまった。ライラはそのおかしな光景に目を疑ったが、よく見ると爆発の原因がわかった。

「鎌!? あのフブキタイプが放ったのか!?」

 そう。確かに蒼貴はヴァッフェドルフィンに足止めされている。しかし、それは援護できない事にはならない。
 敵の隙を見て蒼貴は常に周りを見ており、当然、紫貴の危機も察知していた。
 そして都合のいい物……ランチャーを見つけた時、彼女の援護のために武器の銃身に投げつける事で発射口を塞ぎ、暴発を招いたのだ。

「ナイスアシストだ。蒼貴」
『恐縮です』

 鎌を投げつけて紫貴を助けた事を通信で理解した蒼貴は右手に鎌、左手に苦無を持ってヴァッフェドルフィンへ駆け、斬りつける。
 しかし、ヴァッフェドルフィンはその攻撃を阿修羅のような四本の腕で防御し、逆に空いているそれで反撃をする。蒼貴はその攻撃に鎌と苦無を交差させる事でそれを防ぐ。
 ヴァッフェドルフィンはフィンブレードを取り出して蒼貴に突き刺すが、その彼女は右に体を捻る事でそれを回避し、苦無を投げつけた。
 それに対してもサブアームでそれを弾き、もう一度、フィンブレードを蒼貴に斬りつける。彼女は鎌を出し、それで鍔迫り合いに持ち込んだ。
 こいつ、七体の神姫の中で一番出来る奴ならしい。オーナーはあのリーダー格の女。偉そうな口を叩くだけの事はあった。

「お前。名は?」

 自分の武器にさらに力をかけ、ヴァッフェドルフィンが突然、名を尋ねてきた。

「蒼貴です」
「なるほど。私の名はヒルダだ。蒼貴。貴様は思っていたよりも遥かに出来る。卓越した戦闘技術、相手から武器を盗み出す手先の器用さ、普通のトレーニングで学んだものではないな?」
「その通り。私のオーナーは最高の鍛錬を提供してくださいました。貴方こそやりますね。数で群れているのが惜しいぐらい」

 互いに名を名乗りながら剣を交える。ヒルダは肩にマウントされたガトリングガンを蒼貴に放つ。
 彼女はガトリングガンが自分に向いた瞬間から敢えて右へと前進しつつ、回避行動に移り、弾道から逃れると鎌で疎かになっている脚部に装備されたショットガンを破壊し、苦無でサブアームの一つを切断した。

「鍛錬を怠っていないだけの事。それに我々には目的がある。そのためには百万円が必要なのだ」
「何ですか?」
「それお前に教える義理は無い」

 その瞬間、隙を突いたヒルダがまだ破壊されていないショットガンを、武装を失っているネイトに放り投げ、さらにフィンブレードを側面に放つ。
 蒼貴はそれに反応し、持っていた苦無でそれを受け止め、空いている鎌をヒルダに振るう。彼女はそれに対してハンドガンを柄にぶつける事で自分に向けられた刃を食い止める。

「なりふりなど構っていられない事だけは言っておく。悪く思うな」

 その言葉と共にヒルダは蒼貴に蹴りを入れる。それによって彼女は無造作に置かれてあった土嚢に吹き飛ばされる。その攻撃は強力だったが、土嚢がクッション代わりになったため、二重のダメージは逃れられた。

「くっ……。私達だって紫貴を死なせたくないんです。それを譲るつもりはありませんよ」

 そこから立ち上がった蒼貴は鎌と苦無を構え、自分の目的を語る。そうだ。こちらには俺達を信じてくれた紫貴がいる。彼女を死なせる訳には行かないのだ。

「互いに譲れないものがあるか。ならばそれを賭けて勝負だな!!」
「言われるまでもありません!」




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