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第七話 決別姫




「ば、バカな……」

 前オーナーは呻く様に言葉を漏らす。それは自分の思い描いていた未来とはまるで違う展開だと思っていたに違いない。
 そりゃそうだ。この俺が育てた蒼貴はフブキという躯体のポテンシャルを極限なまでに活かしている。それに素早い事を活かして武器を盗んだり、武器を破壊したりと相手の弱体化を考えた戦術を仕掛けている

「おい。お前のだった『役立たず』が勝っちまったぞ? 装備は充実していてレベル差もあった。おまけに戦績はお前の方が上だ。にも関わらず装備を全て壊され、なす術もなく、攻撃が命中したのはさっきのパンチだけ。無様としか言いようが無いな」
「ひ、卑怯だぞ! 武器を奪ったり、武器を壊すなんてルール違反だ!!」

 前オーナーは俺の型破りな戦い方にルールという後ろ盾を使って批判しようとした。
 奴にとってそれは論外の戦術だったに違いない。力こそが正義であり、勝てるのは装備を充実させているからだと思い込んでいるのだから。
 だが、蒼貴は知恵と技で勝利した。それは前オーナーにとって、あってはならないとだという事になっており、それをマニュアルにこじつけているのである。

「何を言ってんだ? あんた。マニュアルには目を通しているつもりだが、そこには『武器を盗んではならない』とか『武器を壊してはならない』とは書いていないぜ」
「こ、これはウチの神姫同士の戦いだ! 戦績には入らない!!」
「訳わからねぇぞ。捨てておいて何を今更。……そうだ。蒼貴の意思を尊重してみようか。おい。俺とあいつ、どっちがお前のオーナーだ?」
「もちろん。オーナーは貴方です」

 俺が尋ねると蒼貴は一瞬たりとも迷わず、俺に顔を向けた。
 俺はその反応に満足すると前オーナーにニッと笑いながら流し目で見てやる。

「だとよ。神姫の自由意志もこっちにある。完全に蒼貴は俺のものだ。って訳でお前の敗北だ。それも惨敗な」
「ぐっ……だが……」

 そう言おうとした瞬間。周りからざわめきが広がった。そう。自分の敗北を未だに認めないマスターの態度に冷ややかな気持ちを持ち始めているのだ。
 その辺の下ごしらえは戦闘前に終わらせてあるため、周りはあの前オーナーが自分の敗北は自分の神姫のせいであると思いこんでいる小物にしか思えない。

「くそ! 覚えてろ!」
「待った」

 俺は逃げようとする前オーナー達に待ったをかけた。
 彼は随分とご機嫌斜めなお顔で振り返る。

「あ!?」
「お前じゃない。アミーに用がある」
「な、何だ?」

 まさか自分に声をかけられると思っていなかったアミーは驚いた様子で俺に返事をした。

「後はお前次第だ。そのオーナーを成長させられるかどうかはな」

 そう。このままにしては成長なんて望めない。それにこいつもまたリセットされたら敵わん。この敗北を知っている『この』アミーにこそ成長の鍵がある事を彼に気づかせておく必要がある。

「え?」
「お前のオーナーはこの瞬間、奈落の底にまで落ちてしまった。それをどうするか、道を示してやるのは神姫であるお前にしかできないこった」
「……わかった」
「死ぬなよ」
「……はい」

 念を押すと俺はアミーとそのオーナーが去っていく姿を見送る。願わくは、この敗北で神姫に対する考えを改めて欲しいと思いながら。
 そうして俺と蒼貴の勝つべき戦いが終わり、観客は去っていく。散って行く彼らはどうにも俺と蒼貴の事を口々に噂し始めている。
 これで有名になったら困るんだがな……。

「ミコちゃん。おめでとっ」

 そんな中、真那が俺に話しかけてきた。「俺が勝てなかったとか思っていた」なんて推測してみる。

「貴方なら勝てると思っていたわ」
「意外だな。あれはひっくり返せないとか思ってたんじゃないのか?」
「そんな訳無いじゃない。ひっくり返せる事を証明したのは貴方でしょう?」
「そりゃそうだが……」

 それは流石に否定しない事にする。そうするしか俺の戦い方は無いのだから。

「でしょ? だからあんな火力馬鹿になんて負けないって。そういえばなんであの神姫に声をかけたの?」
「……あいつに死なれたくないからさ」
「そっか……」

 俺の言葉を聞いた真那は少し暗い顔をした。そう。あいつは何度もCSCを外す……つまりは神姫を殺している。そんな彼がこの敗北をまた、神姫のせいにし、逃げれば何の罪も無いアミーは……死ぬだろう。

「また、CSCのせいにしたらまたあのオーナーは神姫を殺す。それだけは止めておきたかった。あの言葉がどこまで通用するかはわからんがな」
「届くよ。きっとね」
「根拠も無くよく言えるもんだな」

 何を思ったのかは知らないが俺の言葉を肯定する真那の言葉に俺は皮肉を漏らす。

「無いからこそよ。だから信じるって事が出来るんじゃない?」
「……そうだな」
「オーナー……。私が死にたくないと願ったためにそれがアミーさんを……殺してしまうのですか?」
「そいつは……イエスやノーで答えられることじゃないさ。お前は自分が役立たずではないと証明するために戦った。アミーはオーナーの無敗神話に守るために戦った。そしてお前がアミーの思いを踏み台にして自分の思いを叶えたんだ」
「そう……なんですか……」

 まず突きつけた事実にやはり自分のせいでアミーが酷い目にあうかもしれない事を知った蒼貴はとても暗い顔をした。自分がそうされた事でわかるからこそ余計に辛いのだろう。

「だがな。それでお前が情けをかけて負けたとしてそれが彼女のためになると思うのか?」
「それは……」

 そう。まず、蒼貴は一方的にやられる演出をして見せた。そうしてアミーが思ったことは何だったのか?
 ……それは失望だった。
 彼女は自分の思いのために一生懸命になれる奴だとたった一回の戦いで俺は知る事が出来た。そんな奴に手を抜けるだろうか? いや、抜けない。抜く訳にはいかなかった。全身全霊を持って完膚なきまでに倒す事が彼女に対してのせめてもの敬意だ。
 最初は計画だったが、その内、彼女の熱い戦いの意志に応えるための表現にそれは変わっていたのだ。

「あいつはこれから考えるだろう。打ちひしがれたあのオーナーと共にな。それで何が得られるかは知らない。だが、これまでに無い経験になったはずだ。だからな。蒼貴」

 俺は一旦言葉を切ると彼女の頭を撫でてやりながら、

「俺達に出来るのはそれでもなお、立ち上がる事を願ってやる事なんじゃないのか?」

 何をすべきか諭す。これが俺に出来る精一杯だ。すまないな。

「はい……。オーナー……。ごめんなさい……。ごめんなさい……っ」

 そうすると蒼貴は泣き始めた。涙を流すわけではないが、泣いているような顔をして俺にすがってきた。

「泣くな。お前は別に悪い事をしたんじゃないんだ。そいつはわかっているからよ」
「そうよ。貴方はミコちゃんの想いに応えたくて一生懸命頑張っただけなんだから。めそめそしなくていいの」

 泣いてばかりの蒼貴を俺と真那は出来るだけ優しく慰めてやる。
 こいつは優しい。それは、人は甘いというだろう。だがそうだとしてもこいつにはこのままでいてもらいたい。
 そういう心こそがこの世知辛い世の中には必要なのだから。


 ティールームに移動し、しばらく蒼貴が泣き止むのを待った。
 その頃には真那の神姫 ルナも腕の修理が終わって、蒼貴の近くについていてくれた。そんな想いに囲まれた蒼貴は真那とルナの優しさのおかげで泣き止んだ。
 ったく……随分と手間のかかるガキンチョだったぜ……。

「私のいない間にそんな事があったんだね。蒼貴ちゃん」

 ルナが蒼貴から話を聞いて同じ神姫としてその話を重く受け止め、頷いた。
 確かにこんな自分勝手な人間達の生んだこの悲劇とも喜劇とも言えそうにないこんな話は神姫にとってはろくなものではないだろう。
 神姫は物であるという考えがそこにはあるのだから。人と神姫という冷酷なまでの大きな差が目の前に今、立ち塞がっているのだから。

「はい。でももう大丈夫です。お手数をかけました」
「全くだ。メソメソ泣かれたおかげで俺は変な目で見られちまったじゃねぇか」
「その割にちゃんと道を示してあげているのは何でかなぁ?」
「うるせぇ……」

 俺が蒼貴に勘違いされないように憎まれ口を叩くが、真那の奴がそれを台無しにする。それを聞いた蒼貴は俺に泣きはらした顔を笑顔に変えて俺を見つめてきた。
 俺はそれにやれやれとため息を吐くしかなかった。
 思いっきり勘違いしやがって……。

「さて、もう湿っぽいのは止めにして祝杯でも挙げに行かない? 居酒屋なんかがいいな。手っ取り早くていいでしょ? お酒も飲めるし」
「おいおい。行く事確定かよ」

 俺は真那の切り替えの速さと強引さに大いにずっこける。何だこれは。新手の逆ナンパかよ。

「あら? 女の子の誘いを断るの?」
「あのなぁ……」
「お似合いです」
「蒼貴っ!」

 ボソッと漏らした蒼貴の言葉に俺は思わず叫んでしまった。何でこんな強引な奴と……。

「あははっ。話がわかるじゃない。蒼貴ちゃん。さぁ、四人で乾杯よ!」
「……わかったよ。ったく」

 もう全てを諦めた俺は仕方なく、真那と共に居酒屋にいく事にした。そこで俺は色々と飲まされるわ、それが終わったらカラオケで歌わされるわで凄まじく疲れる羽目になった。
 そしてそれが終わる頃にはもう午前零時になり、自分の部屋に辿り着いた時にはもうグダグダになってベッドに横たわるしかなくなった。
 もう……うんざりだ……。


「あの酒豪女……俺を殺す気か……」

 改めて俺は、今は近くにいない真那に恨み言を漏らす。彼女はいくら酒を飲んでも酔って倒れず、飲み続けていたのだ。
 そんな奴に巻き込まれれば恨み言の一つも言いたくなると言うものだ。

「お疲れ様です……」
「全くだ……。労ってくれるのはお前だけだぜ……」
「あの……」
「何だ?」
「今日は本当にありがとうございました」

 蒼貴は突然、正座をすると深々と俺に頭を下げた。

「何だよ。改まって……」
「あの時、前のマスターを前にして私が怖がっていた時、貴方が先頭に立って真っ向から立ち向かってくれました。だから私は立ち上がる事が出来たんです。それに戦った後の後悔も貴方は断ち切ってくださいました。だから……」
「その先は言うな」
「え?」
「俺はきっかけを与えてやったに過ぎん。それで立ち上がったのは他でもないお前自身の力なんだ。誇っていい。お前はお前自身の力をやっと手にしたんだ」

 そうだ。俺は単に蒼貴の成長の力を信じてここまで育ててきたのだ。俺はお前が部屋に迷い込んできてから今までお前が悩みながら、迷いながら、修行を重ね、俺の言葉を聞き、俺に勝利をもたらすために頑張っていた事を俺はしっかりと見ていた。
 それは俺がくれてやったものでも何でもない。蒼貴が蒼貴なりに造り上げた蒼貴だけの力なんだ。俺がやった事いえばデータ収集とアイデアトレーニングの構築ぐらいなもんだ。

「……はい。ありがとうございます」
「わかったらお前もクレイドルに行きな。一回、急速充填したとは言え、そろそろバッテリーもヤバいだろ?」
「わかりました。あの……」
「何だ?」
「……いえ。何でもありません。……おやすみなさい」

 蒼貴は何か言いかけて止めると恥ずかしそうな顔をしてクレイドルに横たわった。
 一体、何を言いたかったのだろうか。俺は色々と巡らせてみたがあまり思い浮かばなかった。……変な奴だ。
 俺はその考えをやめると蒼貴を見やる。彼女が俺の部屋に紛れ込んでからというものいろいろと忙しくなった。表の普通の生活と裏での蒼貴の特訓の二重生活は結構、応えるものだ。体面も気にしないとならないし、無茶苦茶面倒極まりないものだ。
 しかし、こいつは必死に頑張って俺に応えようとしている。そして今日は俺に晴れ姿を見せてくれた。それで勝利した時は本当に楽しかった。知略を尽くして敵を出し抜いた時は心が高揚したもんだ。


 ―― ……深みに填っていく気はするが、これはこれで……悪くない……か?

第一部 深み填りと這上姫 ―終―






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