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―僕とティキの番外編―



 それは僕、藤原雪那(ふじわら・せつな)の神姫、ティキがサードからセカンドにランクアップして、暫くしてからの事。
その日僕とティキは五月の連休を利用し、都内の大きな大会に出ることにした。
 僕とティキの実力が、実際どの程度なのか知りたいと思ったんだ。
 エルゴでバトルを繰り返す事も幾度かあって、その中でもそこそこの戦績を残せるようになった(それと同時に地元じゃ物足りなくなった)けど、それなら全体的に見たレベルはどうなんだ? と思ったのがキッカケ。
 ……地元の、ヤツへの雪辱は晴らしてないけれど。
 ヤツと戦う前に自分がどれくらいの位置にいるのか知りたいんだ。
「マスタ。ティキ、キンチョーしてるですよぉ~」
 定位置である僕の頭の上のティキが、なんとも情けない声を出した。
「あー…… 僕も緊張してるから、どうにもならないなぁ」
 でも、そうそう遅れをとることはないだろうと踏んでいる。いくら都内の大会だとしても、エルゴで少しは鍛えられたティキだ。それなりに場数は踏んでいるし、ティキも精神的にいくらかは図太くなってる。
「ティキは図太くないですよぉー!」
「うわっ、心を読むな」
「はっきりと口にしてたですよぉ?」
「え? 僕喋ってた?」
 ティキはご丁寧にわざわざ僕の肩に飛び移ると、恨みがましい目で僕を見ながらうなずいた。
「あ……ごめっっつあ!?」
 ティキに対して謝ろうとしたその時、後ろから重心が低い所に設定されている何かに思いっきり押される。
 ……僕ってなんて器用なんでしょう。
 頭を下げようとしたそのタイミングで受けた衝撃により、僕の掛けていた眼鏡はその定位置からあっさりと離脱。そのままの運動エネルギーを全て落下に用い、あっという間に床に到着。その後、バランスを崩した僕の持つ皮製の小さなトランクがその眼鏡に追い討ち攻撃。
 眼鏡 全 損 !!
「うわあぁぁぁ」
 なんとも情けない声をあげる僕。
 こんなベタな事、今時マンガでもやらないよ。
 あぁ、色々な意味で泣きたい。
 ちなみにティキは僕の襟につかまり事なきを得る。
 そんな可哀相な僕の背後から、その声は高らかに発せられた。
「なによドン臭いわね! こんな所でぼさっとしてると邪魔でしょ!? それともそんなことも判らないくらいに頭の回転が鈍いの!?」
 …………酷い言われようだ。
 何でぶつかってきた相手にそこまで言われなければならないんだろう……
 心の中でそう呟きながら、僕はその悪口の主の姿を捉えようと振り返る。
 はたしてそこにいたのは、いまどき珍しくお嬢様然としたひらひらのドレスに身を包んだ背の低い少女だった。
 高校二年生としては背の低めな僕より更に小さいのだから、それはもちろん小学生のようにしか見えない。
 多めに見積もってもせいぜい進学したばかりの中学一年生だろう。
 ちなみに眼鏡が壊れたくらいで日常生活が送れなくなるほどには目は悪くない。
 ついでに言ってしまえば、眼鏡をかける必要も無いくらいだ。
 だから、相手の姿をしっかりと認識する事は当然出来る。
「…………」
 僕は何も言わずに立ち上がり、そして真っ直ぐにその子を見据える。
 一応、礼儀ぐらいはわきまえて欲しい。
「少なくてもここは通路ではないし、特に僕は人の流れに逆らって立ち止まっていたワケでもない。そこにぶつかってきて、あたかも僕だけが悪いように言うのは、どうかと思う」
 しっかりと自己主張。
「はぁ? 何言ってんの? このアタシに非があると、そう言いたいワケ? アンタ何様のつもり?」
 そっくりそのまま言葉を返したい。
「少なくとも僕にだけ非があるとは思えない、と言ったつもりなんだけど、幼い君には理解できなかったかな?」
 少しだけ言葉が攻撃的になる。
 高圧的な態度に、つい反抗してしまいたくなる大人気ない僕だった。
「あぁ? 何で中坊のアンタにガキ扱いされなきゃならないのよ!?」
「誰が中坊だ! テメェみたいなクソガキが何偉そうに語ってやがる!」
 やばい、地が出た。
 と、思った瞬間、視界に拳が迫る。
 しかも素人とは思えない鋭さ。
 それを間一髪でかわし、そして条件反射的にその腕を取り、捻ってしまった。
 が、その子は僕が捻った勢いのまま、体をくるりと軽快に前に回転させながら跳ねて、そしてその勢いを利用してブーツのかかとが僕の顔面に迫る。
 スカートの中身が公然の前で晒されるのも気にせずに。
 僕は殆ど考えることなく体を引き、そしてその攻撃を受けきる。
 体に染み付いた経験ってのはなかなか忘れる事ができないらしい。
 鈍りきった体には少々キツイが、それでもコレだけ動ける自分に誇らしさが半分と忌々しさが半分。
 そして当然その娘は途中で勢いを殺されたためにその場にあえなく墜落。
 しかし完璧な受身をとり、無様な格好を晒すことなく再び僕と対峙する。
「――あのなっ! いきなり何してくれんだよ!」
「アタシは高校生だ! ガキ扱いすんじゃない!!」
 ざわざわざわ
 僕もその子もかなりの大声で。
 そしてそんな立ち回りをしたもんだから当然注目されて。
「んなナリして高校生だとか、ざっけんのも大概にしとけっ!」
「なに? ケンカ売るつもり!?」
「テメェからケンカ吹っかけといて、何だその言い草は!?」
 僕の頭の上で必死に僕を止めるティキの声も、遠巻きに野次馬し始める周りの反応も気付け無い。
 大声で罵り合い、そしていつまた殴りあいに発展するかわからないような、そんな一触即発な空気。
 ……当然のように僕らは係員の手によって会場を追い出された。



『ここで白黒ハッキリさせてあげるわ!』
「そんなのはこっちのセリフだ!!」
 場所は場末のアミューズメントパーク。
 神姫用の筐体が設置されてはいるが、ただそれだけといった感じの、いわゆるゲーセン。
 僕らはオーナズブースで向き合った今でも、お互い罵り合うことをやめてなかった。
「……ティキ、ゴメンな。こんなことになっちゃって」
「うー……ティキはそれよりも怖いマスタの方がいやなのですよぉ~」
 悲しそうな表情で僕を見るその小さな存在に、自己嫌悪の念で頭がいっぱいになる。
「でもでも、あの女の人がいけないのですよぉ! だってマスタは何も悪くなかったのですぅ!」
 マスタが怒るのも当然なのですよぉ! と息巻き、悲しげな顔をがらりと変えた。
「あの人の神姫に恨みなんて無いのですが、マスタの代わりにぎゃふんと言わせてやるのですよぉ☆」
 ティキが怒ってもあんまり迫力は無いんだけど、それにもまして『ぎゃふん』は無いだろ……
「さて、それじゃ準備しますか」
 気を取り直し、僕は持ってきていたトランクを開ける。
 中には『M.D.U.シルヴェストル』が一揃え。
 まずは『シルヴェストル』のメインであるフライングユニット。
 そのユニットを中心に、下部には放熱板、上部にはレドーム、右側にはレーザーキャノンが、左側にはスプレーレーザーポットが据付けられている。そして問題点のとりあえずの打開案として、プロペラントタンクに模した余剰バッテリーを設置してある。
 次いで両の大腿部より取り付けられた大型腰部装甲。といってもコレは装甲と言うより挙動制御のための装備だ。
 そして次が新装備。前腕の武装をビームシールド発生装置に変更した。
 手持ちの武装も相変わらずのハンドガンとソードのほかに、突撃用にランスをプラス。
 ソードを収める鞘を取り付けている左腰部装甲のサブアームに新たにランス用のハードポイントを設置した。
「さて、目に物見せてやるか!」
 すっかりと落ち着きを取り戻し、僕はティキをドームへと送り出した。



『それではあなた様には何の恨みもございませんが……わたくしの主人のためにあなたを倒します』
 その神姫はそう宣言し、深々と頭を下げた。
 TYPE FIGHTER 飛鳥。
 まんまノーマルな武装の彼女のその態度につられ、ティキも頭を下げる。
『どうもご丁寧になのですよ。でもでも、ティキもマスタのために負ける訳にはいかないのですよぉ~♪』
『なに馬鹿なやり取りしてるの! 早くそのごてごてした美意識の欠片もないマオチャオを全損してやりなさい!』
 あー……神姫と違って向こうのオーナーはなんて不遜な態度なんだろう。
「ティキ、標準装備って事はそれだけ戦い方に自信があるという見方も出来るから、気を引き締めて」
 相手の無駄な挑発を思いっきり無視して極々冷静にティキに言葉をかける。
『アンタ! なに無視くれてんのよ!!』
 無視無視。もしかしたら相手を挑発して戦いを有利に持ってくるスタンスのオーナーかもしれないから、自分のペースを崩さない事を心がけよう。
『ホント、ムカつくわ! 遠慮すること無い! 尊(たける)! 破壊しなさい!!』
『了解』
 夜の都市の上空を、尊と呼ばれた飛鳥が流れるように飛んだ。
 ティキも尊に合わせるように『シルヴェストル』で飛翔する。
「……夜間だとこっちが不利かな」
 『シルヴェストル』の光の翼は、本来なら発光する事もなく飛行を可能としているのだけど、翼にも攻撃力を与えるために自動的にビームを発生させるように設定している。
 つまりこんな夜の空では、ティキから相手を認識するのは難しく、そして相手からはティキを簡単に目視できてしまう。
 ……とブラフのために呟いてみた。
 実際は『シルヴェストル』に装備されている、索敵・集析ユニットで相手の位置も挙動も丸判りなんだけど。
 そんな情報をわざわざ相手に教える必要は無い。
 まぁ、お互い白に近い色の神姫だから闇に紛れるなんて土台無理なんだけども。
「ティキ、とりあえず相手の度肝を抜いてやろう」
 僕は意地の悪い笑みを浮かべると、ティキもほんの少しだけ口の端を上げる。
『いっくですよぉ~♪』
 それはまるで出鱈目に、しかしその実しっかりと狙って、ティキはレーザーキャノンを発射させた。
 もちろん、威嚇。
 しかしその光の軌跡は尊のすぐ脇を貫く。
『な……! 何その出鱈目!!』
 実際はアーンヴェルのレーザーライフルよりほんのチョットだけ威力があるってだけで、別にインチキでもなんでもない。
 ただ、マオチャオが砲撃をやることが意外だったんだろう。
 本来なら近接戦を得意とする神姫なんだけど、昨今は銃撃や砲撃をかますマオチャオだって多いんだぞ。
『ならばっ!』
 距離をとることを不利と感じたのか、尊という名の飛鳥は千鳥雲切を抜き放ちティキへ接近。
 ……基本に忠実なのかも知れないけど、マオチャオ相手に接近戦で勝てると思っているのか?
『それくらいなんとも無いのですよぉ~☆』
 ティキはそれに応えるかのようにロングソードを抜くと、尊の攻撃をあっさりと剣で受け止めてみせる。
 が、僕にもティキにも油断もあったんだろう。
 尊は受け止められる事を前提にしたように、あっさりと剣を引くと、鶴林を装備したその足で鋭い蹴りを浴びせた。
『甘い!』
『ふにゃあぁ~』
「くっ! ……オーナーと一緒で足癖の悪い神姫だなっ!!」
 ガードする事も間に合わず、ティキは後方へ流される。
が、すぐに体を回転させながら体勢を整え、間髪入れずにウズルイフを発射させ、ついでにスプレーレーザーポットを尊に撃つ。
『ただでやられたりはしないのですよぉ~!』
 さすがに全弾命中とはいかないが、それでも何割かは命中し、尊にダメージを負わせる。
 初手は痛み分けと言ったところか。
『……間抜けな顔をして、なかなかやるじゃない』
「そりゃどーも」
 間抜けな顔っていうのが僕を指してるのかティキを指してるのか……僕を指しているんだろうけど、相変わらず失礼な物言いだ。
「あんたもただのチビじゃないようで、良かったよ」
『――っ! また言ったわね! 絶対許さないんだから!!』
 打てば響く性格してるなぁ。まったく、からかい甲斐がある。
 しかしオーナーが頭に血の上りやすいのに対して、その神姫である尊はかなりクレバーな性質だと思える。決して油断は出来ない。
 尊はティキの攻撃を潜り抜けるように接近し、再び千鳥雲切で切りつけてくる。
 その攻撃をティキは左手に逆手で握ったロングソードでいなしなす。隙を見てウズルイフで攻撃しようと狙っているが、そのウズルイフをflak171.5mm機関砲でたくみに弾き、狙いを付けさせない。
 それだけでも尊がかなりの強敵だと知れる。
『ふにっ!』
 ティキの手からロングソードが零れる。
 幾合にわたる斬り合い、叩き合いに、ティキの方が先にミスを犯した。
 しかしそれも、ティキが弱いのではなく尊が強い証だろう。
 ティキとここまで鍔迫り合いをこなせる神姫なんて、海神(わだつみ)以外に見た事が無い。
『トドメ!』
 そして当然、尊はその隙を見逃さなかった。
 尊は千鳥雲切をがら空きになったティキの左腹部に突き入れようとする。
 当然ティキにそれをかわすだけの余裕は無い。
 だが。
 結果、ティキはその突きを受けきった。
 新しく装備したビームシールド発振機のおかげだ。
 ティキは尊の刃が届く前にビームシールドを発生させ、その攻撃を防ぎきったのだ。
「あぶねー」
 思わず安堵の息をつく。
『ッチ! 色々と姑息な装備をしてるじゃない!』
 明らかな舌打ちと侮蔑の言葉。
「備えあれば憂い無しって言うんだよ」
『フンッ。それよりも降参しなくてもいいの? 白兵距離での攻撃手段がもう無いじゃない』
 落としたロングソードの事を言ってるのだろう。
 たしかに尊相手にロングソードを取りに行く余裕はない。
 でも、まだ白兵武器は残っているのだけれども。
 言う必要はもちろん無い。
 それに頼るのはまだ後でもいいはずだ。
「ティキ、距離を取れるか?」
『やってみないことにはなんとも言えないのですよぉ~』
「向こうにもflak171.5mm機関砲や三七式一号二粍機関砲があるから距離をとっても対応されるだろうけど、それでも火力じゃこっちが上。チョット頑張ってみて」
『了解ですぅ~♪』
 相手に聞こえないようにそう指示すると、ティキは相手に背を向けないままで距離をとろうと移動した。
 さすがそれを不利と感じたのか、追うように尊も移動を開始する。
『――!』
 しかしシルヴェストルに勝てないと悟った瞬間に、尊は機関砲でティキに攻撃し始めた。
「深追いはしない、か。なかなか冷静だね」
 まぁ、向こうのオーナーズブースではギャーギャーとチビッ子が捲し立ててるんだけど。
 尊の攻撃は全てビームシールドで防ぎながら、ティキは距離をとると『今度はこっちから行くですよぉ~』と今度は当てるつもりでレーザーキャノンを撃つ。そしてその発射と同じに今度は全速で尊へと向かった。
 その手に持つのはランス。レーザーとランスチャージの二段攻撃。
 レーザーの威力に尊の攻撃は全て無効化され、しかしそれでもティキの放った光撃は威力を失うことなく尊に向かう。
『ランスチャージならぬ、レイチャージなのですよぉ~☆』
 ……まぁ、たしかに光撃突進なのだから、間違っていないのか?
『さすがにそれを喰らう訳にはっっ!』
 そう言って回避行動をとる尊。しかしそれくらいは予測済み。
 その為の突進だ。
 ティキはほんの僅か飛行角度を変え、ランスの先を尊に向けてなおも突進。
『それくらいじゃこの攻撃はかわせないのですぅ~!』
『くうっ!』
 朱袴『八重牡丹』とり付けられている回転翼『飛輪』を巧みに操り、尊は間一髪でティキのランスをかわした。
「かかった!」
 僕がそう叫んだその直後、尊に極大ダメージが与えられる。
 シルヴェストルの光の翼が、尊のボディを真っ二つに切り裂いた。



「ごーめーんーなーさーいー」
 見事なまでに感情のこもっていない、平板で棒読みなその謝罪の言葉に僕はもう呆れ果てて、呆れ過ぎて、呆れるを通り越して、笑ってしまった。
 なんて素直じゃないんだ。意地っ張りもここまで来るともう可笑しくて。
「なによ」
「いや、別に」
 そういうのが精一杯で、僕は笑いを止めることが出来ない。
 だって言葉とは裏腹にその顔は真っ赤に染まって、謝る事の屈辱がありありと出ていて。
 本質的には可愛い娘なのだろうと思えてしまって。
 だからもうどうでも良くなっていた。
「こっちこそゴメン。なりだけ見て、ガキなんて言っちゃって」
 僕のほうが素直に頭を下げると、たじろいだふうに体を震わせる。
「べ……別にアンタが謝る必要ないわよ。……こっちが悪かったわけだし」
 後半は消え入るような声で。
「さて、それじゃぁ手打ちってことで。悪かったね、せっかくの大会おしゃかにしちゃって」
「それは……アタシだけじゃなくアンタもなんだからお互い様でしょ」
 とそう言って無事別れる事が出来てればそこでいい話として終われたんだけど。
 そのアミューズメントパーク……いや、もういちどハッキリ言っておこう。その場末のゲーセンから二人で出ようとした時に、僕はいきなり殴られた。
 不意打ちとは言え、情けなすぎる。
 僕は……俺は殴られる事になれていない。つまりそれは殴られないよう体を動かすからで、そして未だに殴られてそれを許すほどに成熟していなかった。
「男はここでネンネしてな」
 俺を殴った男はそう吐き捨てると、そのツレだと思われる別の男二人が、彼女を囲み、そして押さえつけていた。
 さすがにあれだけの体捌きを見せた彼女でも、この状況で如何にかできるとは思えない。
「これからオレ等と遊びに行かない? もちろんそこの彼のおごりで」
 勝手な事を言ってくれやがる。
「はなしなさいよ!」
「情けない彼氏なんてほっといてさ、オレ等と遊ぼうゼ?」
 ロリコンかこいつらは!
 どう見てもこの娘は小学生か、いいとこ中学生くらいにしか見えない自称高校生だって言うのに、それでもそういう楽しみ方をしたいなんて、ただの変態かそれともよほど女に餓えてるのか?
 ……あー、別にどっちでもいいわ。俺にはカンケーねー。
 理由なんてインネー。
「ティキ、悪いな」
 俺はどうにかティキにそれだけを言って、それでティキに許されるとも思って無かったけれど、それでも一言断っておきたくて。
「……マスタ、やっちゃってくださいですよっ!」
 だからティキのその言葉はチョットだけ慰めになって。
 俺は迷うことなく反撃に出る。
 体を回転させながら足払いを喰らわし、その勢いのまま立ち上がる。
 倒した男の顔面を思いっきり踏み潰した。
 その痛みにバタバタと這いずり回っている。
「誰が情けなくて、誰のおごりだって?」
 俺が立ち上がったときにはすでに仲間が一人やられているその状況がイマイチ理解できないらしく、ぽかんと呆けている男が二人。
 当然そこに隙が生まれ、彼女を拘束していた手も緩む。
 なら彼女だって現状を打開するために行動を起こす。
 彼女を押さえつけていた男の一人が、前触れも無く投げ飛ばされる。
 受身もろくに取れないその男は、それだけで気が遠くなったはずだ。
「な……なに?」
「リアクションが最悪。ひねりも何も無い。減点」
 俺がそう言って最後に残った男をぶん殴ってやろうとするよりも早く、その男が股間を押さえて悶絶した。
 彼女の蹴りが、思いっきり股間にHITしていた。



「はぁ、はぁ、はぁ」
「ふぅ、ふぅ、ふぅ」
 僕とその彼女は息を切らしながら大通りへと逃げ出していた。
 これだけの人混みに紛れれば、追っても見失うだろう。
 あのあとゲーセンの中から、奴等の仲間らしい男が何人か現れ、キリがないと思った僕らは逃亡を決め込んだ。
 ……さすがに名前も知らない彼女を巻き込む訳にも行かないし。
 向こうも同じような事思ってるのかもしれなくても、ね。
「……もう、諦めたようなのですよぉ~」
 ティキが上着のポケットから確認してくれる。
「戻っていくのが確認できるですよぉ~♪」
「はあぁ~」
「ふうぅ~」
 お互いに息をつき、そして顔を見合わせて笑った。
「大変な休日になっちゃた」
「ははは、お互い災難だったね」
「……元はといえばアタシのせいだし、ホントにゴメン」
 そう言うと、彼女の表情はあっという間に暗くなる。
「いや、面白かったよ。君の神姫とのバトルなんて、本当に面白かった」
 慰めの言葉かもしれないけど、でもそれは紛れもない真実で。
 自身のレベル――この場合ティキのレベルか――も始めた頃に比べて上がり、でもその代わりティキと同ランクの対戦相手で初顔合わせという相手が少なくなっていたから、今日みたいに、実力が伯仲していてそれで初対戦の相手とバトル出来て、本当に楽しかったんだ。
「ティキも、すっごく楽しかったのですよぉ~♪」
 ほら、ティキもそう言っている。
「それとも尊ちゃんと、そのオーナーさんは楽しくなかったのですかぁ?」
 ティキの満面の笑みに毒気を抜かれたのか、彼女はクスリと笑った。
「ううん。とっても楽しかった」
「ハイ。わたくしもとても楽しめました」
 小さい彼女と、そのこの神姫は華のような笑みで僕を見る。
「えっ……と、うん。なら、万事OKってヤツじゃん」
 不意打ち気味にそんな可愛らしい表情をみせられると、ドキドキしちゃうじゃないか。
「それよりさ」
 僕は自分の彼女に対する感想をごまかすように話を切り替える。
「お腹すかない? お昼もいつの間にかに過ぎちゃってるし、もしよかったら一緒に何か食いにいかない?」
 って、これじゃ下手なナンパだよ!
 言い訳にしか聞こえないかもしれないけど、そんな気は無いんだ! 純粋に、彼女と話してみたくなっただけで……って、ますます墓穴を掘ってる感じだけど。
「そうね。アタシもお腹すいてるし、ファーストフードか喫茶店でも行こうか」
 そう言うと彼女は僕の手を取って歩き始める。
「え?」
 なにがどうなっているのかよく判らないけど、けれどさすがに振り払う訳にもいかないし、だから僕はそのまま彼女に手を引かれたまま、街の雑踏を歩いていった。



 結局、その後僕らはファーストフード店で食事をし、そして神姫のことで大いに盛り上がった。それこそ尽きる事が無いくらいに。
 気がついたときにはもう空は茜色に染まり、さすがに帰らないとまずい時間。
「今日は本当に楽しかった。また会えるかどうか、それこそ神様でもないアタシには分からない事だけど、また会えることを楽しみにしているわ」
「うん。僕も楽しかったよ。また、どこかの会場で会えるといいね」
 駅の前で別れの挨拶をする僕たち。
 お互いに住む場所も、名前も知らないままだけど。いや、神姫の名前だけはお互いに知ってはいるんだけど。
 でも、それでももし再会する事があったらその時に名前を名乗りあおうと約束して。
「ティキもまた会えるようにお祈りするのですよぉ~♪」
 ティキが僕の胸ポケットから乗り出すように彼女に手を振り。
「わたくしも、再会を心待ちにしています」
 尊が彼女の肩の上で恭しく頭を下げた。
「それじゃ、また」
 さよならじゃなく、また会えることを祈って。
「うん。またね」
 僕達は握手をした。
 そして不意に力が込められ、僕はその力で彼女の方にバランスを崩す。
 つまり引っ張られた訳だ。
「おわっ」
 ふっと頬に触れる柔らかい感触。
 だけどそれはあまりに刹那で。
 次の瞬間には彼女は何も無かったかのような笑みで、僕から離れる。
「じゃ、またねー」
 手を振りながら遠ざかる彼女に、僕はただ間抜けに手を振り返す事しかできなかった。
「…………」
 うう、下方向から――具体的に言うとポケット付近から――冷たい視線を感じる。
「な……なにかな、ティキさん?」
「……セツナさんに言いつけてやるのですよぉ」
「ちょ……なんでそこで結城さんの名前が出てくるの? そ……それにあれは不可抗力で……」
「あー! マスタ、酷いのですよぉ! 尊ちゃんのオーナーさんだって、きっと頑張ったのですよぉ!?」
「お……おい! そんな事言われても、僕にはよく判らないんだけど」
「もう! マスタなんて知らないのですよ!」
 一体なにがどうなってるのか。
 釈然ともしないし、そして上手く理解する事も出来ないけど、兎に角僕はティキに謝りながら家路へとつくのだった。


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