招き猫、猫又、鎌鼬
土曜日、繁華街の近くとは言え朝は静かな境内、今日もお勤めに励むとしましょう。お早う御座います、結です。
手水舎の柄杓を拭いていると聞き慣れた鼻歌が聞こえて来ました。ふむ、今日は随分とお早い。
「お早う御座います。おや?」
チロルさんの後ろにお二人いらっしゃいます。一人は猫型ですけど黒髪に、もう一人は天使型です。
「ようこそ、鍔鳴神社へお越し下さいました。巫女をさせて頂いております結と申します」
「あ、ご丁寧にどうも。チロルの友達でトルテと言います!」
少し緊張されてますね。猫型のトルテさん、デニムとトレーナーが似合ってらっしゃいます。
「お早うです。流(ながれ)って言います。宜しく」
人懐っこい笑みを浮かべる天使型の流さん。ロングスカートに薄手のタートルネックな落ち着いた服装も相まって仲の良い姉妹のようです。
「お二人とも宜しくお願いします。今日はトレーニングですか?」
「そだよ。この前言ってたイベントに皆出るからその練習」
「チロルがいい場所があるって言ってたんですよ」
お二人はそのままいつもの場所で準備を始められます。
「流さんは?」
「あたしは監督です。一応先輩だし」
成る程。
境内の隅での練習の音をBGMに掃除に勤しみます。
以前チロルさんの会話に出てきたお友達のお二人、あの方達も出場されるのでしょう。さっき覗いてみれば真剣そのものでした。特に流さんは個々に指摘していましたし。何だか昔を思い出しましたよ。
「やってるなぁ」
「皆さん頑張ってらっしゃいますよ。私もお勤めが終ったらトレーニングしますし」
「程々にな。ん?あの天使って流か?」
煙草に火を付け縁側からご覧になっていたご主人、流さんをご存知のようです。
「そうですよ。お知り合いだったんですね」
「まぁな。・・・・ふむ」
奥へと戻られるご主人。むむ、何でしょう私の勘が警戒せよと言っています。
それから1時間程して菅原さんがいらっしゃいました。更に30分後には泉谷さん達も。
今度は何を思い付かれたのやら。
「お早う御座います。おや?」
チロルさんの後ろにお二人いらっしゃいます。一人は猫型ですけど黒髪に、もう一人は天使型です。
「ようこそ、鍔鳴神社へお越し下さいました。巫女をさせて頂いております結と申します」
「あ、ご丁寧にどうも。チロルの友達でトルテと言います!」
少し緊張されてますね。猫型のトルテさん、デニムとトレーナーが似合ってらっしゃいます。
「お早うです。流(ながれ)って言います。宜しく」
人懐っこい笑みを浮かべる天使型の流さん。ロングスカートに薄手のタートルネックな落ち着いた服装も相まって仲の良い姉妹のようです。
「お二人とも宜しくお願いします。今日はトレーニングですか?」
「そだよ。この前言ってたイベントに皆出るからその練習」
「チロルがいい場所があるって言ってたんですよ」
お二人はそのままいつもの場所で準備を始められます。
「流さんは?」
「あたしは監督です。一応先輩だし」
成る程。
境内の隅での練習の音をBGMに掃除に勤しみます。
以前チロルさんの会話に出てきたお友達のお二人、あの方達も出場されるのでしょう。さっき覗いてみれば真剣そのものでした。特に流さんは個々に指摘していましたし。何だか昔を思い出しましたよ。
「やってるなぁ」
「皆さん頑張ってらっしゃいますよ。私もお勤めが終ったらトレーニングしますし」
「程々にな。ん?あの天使って流か?」
煙草に火を付け縁側からご覧になっていたご主人、流さんをご存知のようです。
「そうですよ。お知り合いだったんですね」
「まぁな。・・・・ふむ」
奥へと戻られるご主人。むむ、何でしょう私の勘が警戒せよと言っています。
それから1時間程して菅原さんがいらっしゃいました。更に30分後には泉谷さん達も。
今度は何を思い付かれたのやら。
「成る程、それは面白そうですな」
「だろ?」
「よっしゃ、消耗した分は俺が何とかしてやろう」
ご主人と菅原さん、流さんのオーナーの古賀尚人さんの会話が弾んでいる横で私達は蚊帳の外状態です。
「盛り上がってますね」
「だね。って言うか古賀さん知り合いだったんだ」
「私も今知りましたよ」
縁側で休憩中の流さん達、ハードなトレーニングでチロルさんとトルテさんはノビてます。
「泉谷君が言ってたのってここの人達だったんだね」
「そだよ。チロルが結さんに勝負して以来何かと縁があってね」
「へぇ、更に先輩まで知り合いだったとはね。何だか不思議な話」
その横でお茶を飲んでらっしゃるのは泉谷さんの同級生の長谷川眞澄さん、トルテさんのオーナーさんです。
「しかし何を算段されているのでしょうね。話の流れからでは判りませんでしたし」
「んー、なんだろう?古賀さんは唐突に何かするから判んないなぁ」
「先輩いっつも思い付きで動くしね」
何だかご主人達と同じ匂いがしますね・・・類は友を呼ぶというものでしょうか?
「よし、それじゃ始めるか」
席を立ち縁側に向かわれるお三方、私達も続きます。
「流、装備持ってきたから着替えてくれ」
「はぁ。でもどうして?」
「いいから」
受け取った装備を持って隣へとその間に私も装備をするよう指示を受けました。・・・勝負せよって事ですね。
「トルテ、よ~く観ておくんだよ」
「勿論です!流さんの実力は知っていますし結さんの強さはチロルから聞いています。見逃すなんて勿体無い事しません!」
「だろ?」
「よっしゃ、消耗した分は俺が何とかしてやろう」
ご主人と菅原さん、流さんのオーナーの古賀尚人さんの会話が弾んでいる横で私達は蚊帳の外状態です。
「盛り上がってますね」
「だね。って言うか古賀さん知り合いだったんだ」
「私も今知りましたよ」
縁側で休憩中の流さん達、ハードなトレーニングでチロルさんとトルテさんはノビてます。
「泉谷君が言ってたのってここの人達だったんだね」
「そだよ。チロルが結さんに勝負して以来何かと縁があってね」
「へぇ、更に先輩まで知り合いだったとはね。何だか不思議な話」
その横でお茶を飲んでらっしゃるのは泉谷さんの同級生の長谷川眞澄さん、トルテさんのオーナーさんです。
「しかし何を算段されているのでしょうね。話の流れからでは判りませんでしたし」
「んー、なんだろう?古賀さんは唐突に何かするから判んないなぁ」
「先輩いっつも思い付きで動くしね」
何だかご主人達と同じ匂いがしますね・・・類は友を呼ぶというものでしょうか?
「よし、それじゃ始めるか」
席を立ち縁側に向かわれるお三方、私達も続きます。
「流、装備持ってきたから着替えてくれ」
「はぁ。でもどうして?」
「いいから」
受け取った装備を持って隣へとその間に私も装備をするよう指示を受けました。・・・勝負せよって事ですね。
「トルテ、よ~く観ておくんだよ」
「勿論です!流さんの実力は知っていますし結さんの強さはチロルから聞いています。見逃すなんて勿体無い事しません!」
互いに装備を整え境内の隅へと場所を移します。
「いきなりの展開だね。でもま、拳からの友情を演出って事で」
「はい。楽しみましょう」
「いきなりの展開だね。でもま、拳からの友情を演出って事で」
「はい。楽しみましょう」
玉串を手に対峙します。仕込みはその場に置いておきます。
流さんの得物は両腕の外側に付いた鎌状の両刃、手甲と一体になったその武器を前に眼前で上下に構えています。
(間合いは・・・あちらに分がありますね)
摺足で距離はそのままに出方を見合います。相手も迂闊には動かずに。
「ふっ!!!」
右に足を出した時、彼女の鋭い覇気と一足飛び!
左腕を前に右を引いてのそれを上体を下げて前進、刃の腹に打ち上げを!
「せいっ!」
くっ、前蹴りで追撃を牽制され仕方なく距離を取ります。
(早い)
大降りではありますがそれを操る彼女の動きは早いのです。おそらくチロルさんよりも踏み込みに躊躇がありません。
玉串を前に構え体勢を整え・・
(なっ!?)
振り上げた玉串、その榊の枝を模した先端に亀裂が入っています!
いつの間に・・・いや刃に当たった感触なんてなかったのに・・
ニヤリと笑う彼女、私の驚きを予測していたようです。
拙いですね。このトリック早く解かないと攻め手がありません。
「しゃっ!!」
「!」
攻めに戸惑った一瞬、距離を詰められます。
仕方なくその刃を打ち払いますが・・・くっ、先端だけでなく軸自体にも亀裂が入っていく・・・
(くっ、このままでは!)
玉串に沢山のヒビが入りボロボロに。多分後数撃程で折れる事でしょう。
「っ!」
「はぁぁぁ!!!」
絶え間ない連撃、上下の斬撃とその隙間を縫うローキックにどんどん追い詰められていきます。仕方ない、ここは・・タイミングと位置を考慮して仕掛けます!
「はっ!」
「そこっ!」
蹴りと斬撃の僅かな隙間に玉串を投げ付け左の刃を牽制、直後に来る右の刃をバク転で蹴り上げを。両手が地面を押す時に左手の下には仕込みの鞘、掴んで着地と同時に腰溜へと。右手を柄に横薙ぎで彼女の腰を狙います。
「ちっ!」
流石に大降りのこれを受ける気は無いらしく後退で避けられます。良し、何とか間合いは取れました。
房を前に薙刀の構えで刺突、狙うは彼女の刃です!
(秘密は腕で間違いない筈)
房を前にするのは打撃面を隠す為と仕込みの損傷を最小限にする為の二つです。
三連の突きと威力より動きを重視した軽打で彼女を攻め立てます。
(そうそう見せてはくれませんか・・)
攻めを変えた途端彼女は例の秘密を隠してしまいます。流石に一筋縄ではいきません。ですがそれも時間の問題です。彼女が秘密を使わないならそれこそ狙い目になるのですから。
数回の攻防の後始めのような状態に戻りました。
「やるね。ここまで強いとは思わなかったよ」
「貴女も強いです」
そぐわない会話と笑顔、でも互いに目線はその隙を探しています。
「でも勝たせて貰うわ。あたしの閃き、ご照覧あれ!」
両手を、掌を上にして眼前で刃を交差させての前進。速さは今迄で一番。
「はぁぁぁぁぁ!!!!!!」
その間合いの少し前で振るわれる刃!彼女程の手誰が間合いを間違える事はない筈。咄嗟に屈んで房を上に仕込みを立てて頭部を防御します。
(!?)
瞬間棚引く房、次にその一部が刻まれて宙を舞います。同時に背中の一部を斬られたようですがそれよりも気になる今の現象。
おかしい。揺れたのが振るわれた時の風としてもそれで斬裂くなど・・・剣豪や剣聖ならば可能かもしれませんがあの速度では不可能。ならばそれこそがあの武器の秘密!
互いに距離を離し構えます。
彼女も離れたのは意外です。おそらくは先程の攻撃にはチャージ距離が必要なのでしょう。
(させませんよ!)
彼女が走る体制になるまでに前進その距離を殺して刺突を。狙うは腹部、鳩尾!
「っち!」
体制を低くしていた彼女、堪らず弾かんと刃を振るわれます。
「せいっ!!」
上向きに弾かれた房、鞘の上を左手で滑り左足を後ろにスライドさせます。彼女の前で横を向いたまま柄で突きを!
「「くっ!!」」
彼女の左肩に柄が、私の脇腹に彼女の膝蹴りが決まります。更に私の左の袖が斬られています。
再度距離を離し構えを。
ダメージは負いましたが今ので判りました。
彼女の攻撃、それは刃だけではなく放たれる風こそが攻撃だったのです。
攻撃を受けた時に感じた圧力と何かを射出したような発射音。多分それで斬られたんだと思われます。
彼女も先程の構えで対峙する私達、お互い手の内も少くなってきましたしそろそろ・・・
「次で終らせるわ!」
「受けて立ちます!」
体制を低く一足での早さは彼女が上、対する私は腰溜からの抜刀術の構えを。
「「勝負!!!!」」
その全力の走りに私も前進し左手を離して抜刀せずに全力の横薙ぎを。左手は右袖の中へと。
「しゃぁっ!!」
渾身の一撃、その射程前でも房は斬裂かれボロボロに。でもそこが私の狙い目です!
袖に入れた左手で右腕に巻いたホルスターから二枚抜いて横振りに投擲します!
その刃に当たるまでに投擲された御札が炸裂します。
「なっ!!」
流石の流さんもこれには驚いたようです。そしてそれは隙を生むのです!
「せいっ!!!!!!!」
投擲した左手で鞘を掴み勢いそのままに抜刀、炸裂の威力で跳ね上がった腕の下、脇腹を一閃します。でもこれで終わりじゃない!
「はっ!」
左手を戻して鯉口での刺突、軸をずらして石突での鞘打ち、同時に納刀し前に出ていた右脚を軸に体を反転します。その際右手でフックの掌底で彼女の背中を打ちます。更に右上半身を倒してタックル、最後に逆手抜刀での横薙ぎでトドメを。
一連の連撃、「後の先[厄払い]」。私が使う連繋の中で最も使い込んでいる技です。
「・・・ふふっ」
倒れる瞬間、流れさんは笑っていました。
流さんの得物は両腕の外側に付いた鎌状の両刃、手甲と一体になったその武器を前に眼前で上下に構えています。
(間合いは・・・あちらに分がありますね)
摺足で距離はそのままに出方を見合います。相手も迂闊には動かずに。
「ふっ!!!」
右に足を出した時、彼女の鋭い覇気と一足飛び!
左腕を前に右を引いてのそれを上体を下げて前進、刃の腹に打ち上げを!
「せいっ!」
くっ、前蹴りで追撃を牽制され仕方なく距離を取ります。
(早い)
大降りではありますがそれを操る彼女の動きは早いのです。おそらくチロルさんよりも踏み込みに躊躇がありません。
玉串を前に構え体勢を整え・・
(なっ!?)
振り上げた玉串、その榊の枝を模した先端に亀裂が入っています!
いつの間に・・・いや刃に当たった感触なんてなかったのに・・
ニヤリと笑う彼女、私の驚きを予測していたようです。
拙いですね。このトリック早く解かないと攻め手がありません。
「しゃっ!!」
「!」
攻めに戸惑った一瞬、距離を詰められます。
仕方なくその刃を打ち払いますが・・・くっ、先端だけでなく軸自体にも亀裂が入っていく・・・
(くっ、このままでは!)
玉串に沢山のヒビが入りボロボロに。多分後数撃程で折れる事でしょう。
「っ!」
「はぁぁぁ!!!」
絶え間ない連撃、上下の斬撃とその隙間を縫うローキックにどんどん追い詰められていきます。仕方ない、ここは・・タイミングと位置を考慮して仕掛けます!
「はっ!」
「そこっ!」
蹴りと斬撃の僅かな隙間に玉串を投げ付け左の刃を牽制、直後に来る右の刃をバク転で蹴り上げを。両手が地面を押す時に左手の下には仕込みの鞘、掴んで着地と同時に腰溜へと。右手を柄に横薙ぎで彼女の腰を狙います。
「ちっ!」
流石に大降りのこれを受ける気は無いらしく後退で避けられます。良し、何とか間合いは取れました。
房を前に薙刀の構えで刺突、狙うは彼女の刃です!
(秘密は腕で間違いない筈)
房を前にするのは打撃面を隠す為と仕込みの損傷を最小限にする為の二つです。
三連の突きと威力より動きを重視した軽打で彼女を攻め立てます。
(そうそう見せてはくれませんか・・)
攻めを変えた途端彼女は例の秘密を隠してしまいます。流石に一筋縄ではいきません。ですがそれも時間の問題です。彼女が秘密を使わないならそれこそ狙い目になるのですから。
数回の攻防の後始めのような状態に戻りました。
「やるね。ここまで強いとは思わなかったよ」
「貴女も強いです」
そぐわない会話と笑顔、でも互いに目線はその隙を探しています。
「でも勝たせて貰うわ。あたしの閃き、ご照覧あれ!」
両手を、掌を上にして眼前で刃を交差させての前進。速さは今迄で一番。
「はぁぁぁぁぁ!!!!!!」
その間合いの少し前で振るわれる刃!彼女程の手誰が間合いを間違える事はない筈。咄嗟に屈んで房を上に仕込みを立てて頭部を防御します。
(!?)
瞬間棚引く房、次にその一部が刻まれて宙を舞います。同時に背中の一部を斬られたようですがそれよりも気になる今の現象。
おかしい。揺れたのが振るわれた時の風としてもそれで斬裂くなど・・・剣豪や剣聖ならば可能かもしれませんがあの速度では不可能。ならばそれこそがあの武器の秘密!
互いに距離を離し構えます。
彼女も離れたのは意外です。おそらくは先程の攻撃にはチャージ距離が必要なのでしょう。
(させませんよ!)
彼女が走る体制になるまでに前進その距離を殺して刺突を。狙うは腹部、鳩尾!
「っち!」
体制を低くしていた彼女、堪らず弾かんと刃を振るわれます。
「せいっ!!」
上向きに弾かれた房、鞘の上を左手で滑り左足を後ろにスライドさせます。彼女の前で横を向いたまま柄で突きを!
「「くっ!!」」
彼女の左肩に柄が、私の脇腹に彼女の膝蹴りが決まります。更に私の左の袖が斬られています。
再度距離を離し構えを。
ダメージは負いましたが今ので判りました。
彼女の攻撃、それは刃だけではなく放たれる風こそが攻撃だったのです。
攻撃を受けた時に感じた圧力と何かを射出したような発射音。多分それで斬られたんだと思われます。
彼女も先程の構えで対峙する私達、お互い手の内も少くなってきましたしそろそろ・・・
「次で終らせるわ!」
「受けて立ちます!」
体制を低く一足での早さは彼女が上、対する私は腰溜からの抜刀術の構えを。
「「勝負!!!!」」
その全力の走りに私も前進し左手を離して抜刀せずに全力の横薙ぎを。左手は右袖の中へと。
「しゃぁっ!!」
渾身の一撃、その射程前でも房は斬裂かれボロボロに。でもそこが私の狙い目です!
袖に入れた左手で右腕に巻いたホルスターから二枚抜いて横振りに投擲します!
その刃に当たるまでに投擲された御札が炸裂します。
「なっ!!」
流石の流さんもこれには驚いたようです。そしてそれは隙を生むのです!
「せいっ!!!!!!!」
投擲した左手で鞘を掴み勢いそのままに抜刀、炸裂の威力で跳ね上がった腕の下、脇腹を一閃します。でもこれで終わりじゃない!
「はっ!」
左手を戻して鯉口での刺突、軸をずらして石突での鞘打ち、同時に納刀し前に出ていた右脚を軸に体を反転します。その際右手でフックの掌底で彼女の背中を打ちます。更に右上半身を倒してタックル、最後に逆手抜刀での横薙ぎでトドメを。
一連の連撃、「後の先[厄払い]」。私が使う連繋の中で最も使い込んでいる技です。
「・・・ふふっ」
倒れる瞬間、流れさんは笑っていました。
「いやぁ負けちゃったね」
「試合には勝ちましたけど・・・損害は大きいですよ・・・」
メンテを終えた流さんと縁側にてお茶を飲んでいます。私服に戻った彼女とこの前頂いた服に着替えた私、流石に装備のままでは落ち着けないのでしょう。私の場合は巫女服がボロボロですから。^^;
確かに勝負には勝ったのですけど私は損害は大きいのですよ・・・ぁぅー
玉串は亀裂が入ってボロボロ、仕込みは房が斬裂かれ鞘は割れるわその部分に入っていた刃は刃毀れしているわ、巫女服は斬られるわでもう大変です。暫くはメイン武装の殆どが使えない状態です。お勤めにも普通の箒を使わないといけません。
「ま、まぁそれは仕方ない・・・よね?」
「試合ですから」
申し訳なさそうな彼女、真面目ですね。
「お聞きしても良いですか?」
「ん?武器の事?良いわ説明するね」
装備の中から取り出した彼女の武器。よく見ればその手甲と刃の部分に何かスリットが見えました。
「気付いた?そこから圧縮酸素を打ち出してカマイタチ現象を起こしてるの」
「成る程」
読みは当たっていたらしいですね。あの風こそが攻撃だったと。
「驚いてたよね」
「ええ。刃に当たっていないのに斬られましたから。でも玉串を斬れるとは」
「あぁ。あれはね円柱だからなの。円柱じゃ風を受ける面が大きかったからなんだよ。その後の箒は打ち込んだ面が小さいし、断面でみれば流線型じゃない?だから折れなかったの」
納得です。要は風の抵抗率ですね。例えば飛行機の翼と交通標識、同じ強さの風を当ててもそれを受け流すような形の翼は耐えれますけど交通標識では曲がるないし折れてしまいます。それが玉串と仕込みの違いだったのです。いくら高度が高くても攻撃時の撓りと風の抵抗で破損してしまったという事、硬さを優先させ補強にと円柱にしたのが裏目に出たのですね。それにカマイタチ現象を起こせる程の速度で射出しているんですから相当の早さだったでしょうし相性が悪かったと。
「でもあたしも驚いた~。まさか御札投げてくるとは思わなかったし、爆発するし」
「奥の手ですよ。あまり使わないんですけどね」
コスト面での関係です。高いんですよ。
和気藹々ト盛り上がる私達の横でチロルさんとトルテさんは試合の話に熱中され、後ろではご主人達が何やらゴソゴソとされています。
「流~、一寸こっち来な」
古賀さんに呼ばれ流さんが退席するとご主人が来られます。
「良かったな。負けてたらお前が着る事になってたんだ」
「着る?何をですか?」
「もう直ぐ判るさ」
ニヤリ。ものすごく怪しい笑みを残して奥の部屋へと視線を送られます。
『ちょっ、マジ!?』
途端に聞こえる声。何やら焦ってらっしゃるご様子ですね、一体何を着さされているのか気になります。
「全く、始めっから言ってて欲しいわ」
「言ったら面白くねーだろ。罰ゲームってのはなって初めて判るからこそなのさ」
会話と共に戻って来られたお二人。流さんの衣装は・・・
「「「バニー」」」
チロルさん、トルテさん、私の声がハモリました。
「試合には勝ちましたけど・・・損害は大きいですよ・・・」
メンテを終えた流さんと縁側にてお茶を飲んでいます。私服に戻った彼女とこの前頂いた服に着替えた私、流石に装備のままでは落ち着けないのでしょう。私の場合は巫女服がボロボロですから。^^;
確かに勝負には勝ったのですけど私は損害は大きいのですよ・・・ぁぅー
玉串は亀裂が入ってボロボロ、仕込みは房が斬裂かれ鞘は割れるわその部分に入っていた刃は刃毀れしているわ、巫女服は斬られるわでもう大変です。暫くはメイン武装の殆どが使えない状態です。お勤めにも普通の箒を使わないといけません。
「ま、まぁそれは仕方ない・・・よね?」
「試合ですから」
申し訳なさそうな彼女、真面目ですね。
「お聞きしても良いですか?」
「ん?武器の事?良いわ説明するね」
装備の中から取り出した彼女の武器。よく見ればその手甲と刃の部分に何かスリットが見えました。
「気付いた?そこから圧縮酸素を打ち出してカマイタチ現象を起こしてるの」
「成る程」
読みは当たっていたらしいですね。あの風こそが攻撃だったと。
「驚いてたよね」
「ええ。刃に当たっていないのに斬られましたから。でも玉串を斬れるとは」
「あぁ。あれはね円柱だからなの。円柱じゃ風を受ける面が大きかったからなんだよ。その後の箒は打ち込んだ面が小さいし、断面でみれば流線型じゃない?だから折れなかったの」
納得です。要は風の抵抗率ですね。例えば飛行機の翼と交通標識、同じ強さの風を当ててもそれを受け流すような形の翼は耐えれますけど交通標識では曲がるないし折れてしまいます。それが玉串と仕込みの違いだったのです。いくら高度が高くても攻撃時の撓りと風の抵抗で破損してしまったという事、硬さを優先させ補強にと円柱にしたのが裏目に出たのですね。それにカマイタチ現象を起こせる程の速度で射出しているんですから相当の早さだったでしょうし相性が悪かったと。
「でもあたしも驚いた~。まさか御札投げてくるとは思わなかったし、爆発するし」
「奥の手ですよ。あまり使わないんですけどね」
コスト面での関係です。高いんですよ。
和気藹々ト盛り上がる私達の横でチロルさんとトルテさんは試合の話に熱中され、後ろではご主人達が何やらゴソゴソとされています。
「流~、一寸こっち来な」
古賀さんに呼ばれ流さんが退席するとご主人が来られます。
「良かったな。負けてたらお前が着る事になってたんだ」
「着る?何をですか?」
「もう直ぐ判るさ」
ニヤリ。ものすごく怪しい笑みを残して奥の部屋へと視線を送られます。
『ちょっ、マジ!?』
途端に聞こえる声。何やら焦ってらっしゃるご様子ですね、一体何を着さされているのか気になります。
「全く、始めっから言ってて欲しいわ」
「言ったら面白くねーだろ。罰ゲームってのはなって初めて判るからこそなのさ」
会話と共に戻って来られたお二人。流さんの衣装は・・・
「「「バニー」」」
チロルさん、トルテさん、私の声がハモリました。
夕飯を済ませ工房にて装備を点検します。
「ん~、玉串は完全造り直しだな。仕込みも打ち直さないとダメだな」
「そうなると、例のイベントには出れませんね」
破損した武器は結構時間が掛かるようです。巫女服は予備がありますけど武器はありませんし、諦めるしかないです。
「いや、そうでもないぞ。新装備使う」
言って横の棚から何かを取り出されます。
「これ」
「大麻ですね」
…そこの御仁、タイマではありませんよ?オオヌサと読むのです。白木の棒に和紙の房が付いた所謂お払い棒ですね。祈祷に使われる榊の枝の玉串、主にお払いに使われる大麻とその役目は似ている二つともお払い棒なのです。
「房は樹脂で造ってある。棒は高強度軽金属だ」
玉串と同じ金属製ですね。
「今までより尺があるからそのへん練習してくれ」
「はい」
軽く振ってみます。ふむ、長い分少々癖が変わりますが何とかなりそうですね。
「仕込みの代わりはこれだ」
渡されたのは一振りの刀です。その袋を解けば黒塗りの鞘と濃紺の組紐が巻かれた柄、菊を掘り込んだ鍔の直刀です。
「久しぶりですね。白玉菊花(はくぎょくきっか)」
これは私が初勝利を納めた時に使ったものです。その切味は湖幸さんの天叢雲に匹敵する程、鞘と柄の出来も良く鍔の装飾も素晴らしい一品です。その出来栄えから私はこの刀を神社に奉納する事を進言したのです。以来宮司さんのお払いと祈祷を受け刀は宝物として本田の傍らに保管されていたのです。
それを今一度振るうと思うと何とも感慨深いですよ。久しぶりに友人に会った気分です。
「しかし宜しいのですか?奉納していたものですし」
「元はお前の持ち物だ、問題なんてないよ。それに折角のイベントなんだ最高の装備をしないとな」
「ありがとう御座います。誠心誠意、粉骨砕身の意気でいきます」
意気も新たに夜は更けていきました。
クレイドルの上床に着く前に私は傍らに手を伸ばします。
一週間後、久々に手にした愛刀を抱える私は来る日に思いを馳せるのでした。
「ん~、玉串は完全造り直しだな。仕込みも打ち直さないとダメだな」
「そうなると、例のイベントには出れませんね」
破損した武器は結構時間が掛かるようです。巫女服は予備がありますけど武器はありませんし、諦めるしかないです。
「いや、そうでもないぞ。新装備使う」
言って横の棚から何かを取り出されます。
「これ」
「大麻ですね」
…そこの御仁、タイマではありませんよ?オオヌサと読むのです。白木の棒に和紙の房が付いた所謂お払い棒ですね。祈祷に使われる榊の枝の玉串、主にお払いに使われる大麻とその役目は似ている二つともお払い棒なのです。
「房は樹脂で造ってある。棒は高強度軽金属だ」
玉串と同じ金属製ですね。
「今までより尺があるからそのへん練習してくれ」
「はい」
軽く振ってみます。ふむ、長い分少々癖が変わりますが何とかなりそうですね。
「仕込みの代わりはこれだ」
渡されたのは一振りの刀です。その袋を解けば黒塗りの鞘と濃紺の組紐が巻かれた柄、菊を掘り込んだ鍔の直刀です。
「久しぶりですね。白玉菊花(はくぎょくきっか)」
これは私が初勝利を納めた時に使ったものです。その切味は湖幸さんの天叢雲に匹敵する程、鞘と柄の出来も良く鍔の装飾も素晴らしい一品です。その出来栄えから私はこの刀を神社に奉納する事を進言したのです。以来宮司さんのお払いと祈祷を受け刀は宝物として本田の傍らに保管されていたのです。
それを今一度振るうと思うと何とも感慨深いですよ。久しぶりに友人に会った気分です。
「しかし宜しいのですか?奉納していたものですし」
「元はお前の持ち物だ、問題なんてないよ。それに折角のイベントなんだ最高の装備をしないとな」
「ありがとう御座います。誠心誠意、粉骨砕身の意気でいきます」
意気も新たに夜は更けていきました。
クレイドルの上床に着く前に私は傍らに手を伸ばします。
一週間後、久々に手にした愛刀を抱える私は来る日に思いを馳せるのでした。
「バニー着なくて良かったな」
唐突の一言。
「はい。私には似合わないですよ。それに恥ずかしいです」
「確かに似合わなかったろうな。お前胸ないしな」
「!」
なんですとー!!!
「・・すまん。悪かった。だから半泣きで睨むな」
「うぅー」
む、胸の大きさなんて・・・大きさなんてー!!
唐突の一言。
「はい。私には似合わないですよ。それに恥ずかしいです」
「確かに似合わなかったろうな。お前胸ないしな」
「!」
なんですとー!!!
「・・すまん。悪かった。だから半泣きで睨むな」
「うぅー」
む、胸の大きさなんて・・・大きさなんてー!!
現在装備
巫女服 ×1
仕込み竹箒 ×1(中破)
玉串ロッド ×1(大破)
御籤箱ランチャー(改) ×1
灯篭スラスター ×2
リアユニット賽銭箱 ×1
御札スラッシャー ×14
大麻ロッド ×1
奉納刀[白玉菊花] ×1
巫女服 ×1
仕込み竹箒 ×1(中破)
玉串ロッド ×1(大破)
御籤箱ランチャー(改) ×1
灯篭スラスター ×2
リアユニット賽銭箱 ×1
御札スラッシャー ×14
大麻ロッド ×1
奉納刀[白玉菊花] ×1