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鋼の心 ~Eisen Herz~


第12話:夜の戦場(その4)





 爆炎が闇を裂いたのは一瞬だった。

 閃光が過ぎ去ればそこはまた、深い森の闇の中。
 複合制御システム『デルタ』は“デルタ2”の自爆、自壊を確認しつつ、平行作業で“デルタ3”の自爆準備に入る。
(“デルタ2”の自爆は有効に機能したのです。ならばこれで勝てるのですよ!!)
 得体の知れないバリアを持っている“敵”に対し、デルタが有する火器は全くの無力だった。
 実のところ、デルタの性能は、単体の“神姫としては”かなり低い。
 そもそもデルタシステムは戦闘目的のシステムではないため、神姫としての射撃精度やパワーは二の次で設計されている。
 故に、神姫の性能によらない火器の性能。即ち火力と、デルタシステムの特徴である複数の視点、射線の完全な同調、そして、莫大な作業効率によるトラップワークこそが戦闘時にとりうる手段なのだ。
 だからこそ、火器は持ちうる最高のものを装備して挑んでいる。
 しかし。その火力で歯が立たないと言う事は、“敵”には射撃が通用しないと見ていい。
 少なくとも、これ以上デルタが射撃を行ったところで、どうにかなるとは思えなかった。
 しかし、交戦中に判明した事実として、格闘攻撃はある程度の有効性を持っていると判明。
 続く自爆攻撃も、有効に機能したのは確認できた。
 だがしかし。
(アレでは大したダメージは与えていないのです…)
 デルタの有する爆薬類はトラップを仕掛ける為の物であり、自爆用のものではない。
 その為、殆どは指向性の強い“クレイモアマイン”タイプで、更に、敵の攻撃などで誘爆する可能性を考慮し、収納状態での起爆方向は背後に向けられている。
 その状態で自爆したところで、正面に押さえ込んだ敵に対するダメージなどタカが知れているのだ。
(でも、それで充分なのです。衝撃と爆炎で充分な時間が稼げれば…)
 必要な時間は、デルタ3が、自らの爆薬を手に持ち変える時間。
 それはつまり、“起爆方向を押し付け”て再度自爆すれば、例え相手が何だろうと……。

「―――デルタ、ダメだっ!!」
「―――!?」

 攻撃に移る刹那。主からの声にデルタは静止する。
 それが攻撃をやめろと言う意味だと、“なんとなく”だが、理解できたのだ。
「…マスター?」
 予期せぬ事態に並列処理の優位を忘れ、1、3“そろって振り返る”デルタ。
 二つある視界の双方が、主の姿の確認に費やされたその瞬間。

 デルタ3は消滅した。






「目標、撃破」
 フォートブラッグ、ブーゲンビリアは感情の無い声でそう呟く。
 バイザー越しの視界は、1キロ離れた夜の森の中を克明に捉えていた。
 自爆を試みた神姫は、自分と同じく砲台型フォートブラッグ。
 動きが止まった一瞬を狙い、レーザー“class1”無照準照射(※1)。
 照射時間は1秒ジャスト。
 だがしかし、その一秒で、目標の神姫の上半身は完全に融解し、自らの爆薬の威力も加わり完全に吹き飛んでいた。
「上姉、無事?」
『無事? じゃ無いですわ!! 私より先にマスターの援護を優先させなさい!! このトラップを止めなければマスターの安全が確保できません!!』
 上姉、ことカトレアの叱責が通信越しに飛ぶ。
 カトレアとその主、京子の周囲には、未だ村上たちが張ったセンサートラップが作動し、京子の行動を制限している。
 だが、それを承知でブーゲンビリアはカトレアの援護を優先した。
「上姉、窮地。優先順位高」
『あ~、もう。何言ってるのか分かるけど、判らない言葉で喋るのをやめなさい!!』
「拒否」
 即答した。
 あの自爆攻撃だけは流石にマズイ。
 いかに鉄壁の防御力を誇る上姉とは言え、バリアの下の物理装甲には限度がある。
 バリアで無効化できない攻撃によるダメージはしっかりと蓄積するのだ。
 一方でマスターの方は動かなければ特に問題は無い。
 対峙していた少女は逃してしまったようだが、現状の優先順位はカトレアの窮地に比して低いと判断した。
 そんな思索の間にも砲身の冷却は終了。
『ブーゲンビリア、貴女ねぇ―――』
「次弾発射準備完了。目標指示?」
『……』
 目の前にいるわけでもないのに、上姉が眉を寄せて困ったような顔をしているのがはっきりと分かる。
 これ以上説教を続けるのが時間の無駄だと、理解しつつも納得できないのだろう。
『男の方が持っている鞄です。よく狙いなさい』
「了解」
 ブーゲンビリアは答え、照準用レーザーの照射に移行した。


「セタ!!」
 セタの狙撃により窮地を脱した雅は、その場を離れ狙撃地点で倒れていた自らの神姫を抱き起こした。
 ここまで移動する僅かの間に、雅を追い抜いていった神姫はセタを撃破してのけたのだ。
 攻防は一瞬。
 それも、一方的なものだった。
「セタ!?」
「……マス、ター」
「……っ!!」
 息を呑む雅。
(私は貴女個人を必要とはしていない、私に必要なのは強い神姫、よ……)
 一番最初。
 起動したてのセタに雅が言った言葉。
(良い主になるつもりなんて無いし、貴女に好かれようとも思わない)
 雅はそう言ってセタの主になった。
 だから、雅は……。
「セタ……」
 彼女を抱き上げる必要など、無かった筈。

 ……だった。



「サテ、如何シタモノカ……」
 セタを倒した後、アルストロメリアは上空へ退避していた。
 眼下で、自分の倒した神姫が主に回収されるのを見届ければここに用は無い。
 死んでも構わないと思いはすれど、殺さずに済むならばそれに越したことは無い。
 ストレリチア辺りは自分の事を『好戦的なバトルジャンキー』などと思っているようだが、その実、いざと言うときに非情に徹することが出来ないのは姉妹の中ではアルストロメリアだけだ。
「ぶーけヤ姉サンハモチロン。りちあデサエモ、イザトナルト容赦ナクトドメ刺シニイクモンナ……」
 案外自分が一番平和的かもしれない……。
 そんな事を思いながら手近な広場に降り立つ。
 アルストロメリアの最大の武器である機動性は、4器のエクステンドブースターによって支えられている。
 そのブースターを常に稼動させ続けることで、タイムラグ無しの回避行動が取れる事が彼女の最大の強みだ。
 だがしかし、その性質上燃料の消費は激しく、戦闘時間は10分程度が限度。
 必要の無いときは無駄に燃料を使いたくは無かった。
「マア、サッキノ戦イモスグ終ワッタシ……」
 あと1戦位は余裕で行えるだろう。
(私相手ニ5分持ツ神姫ナド居ハシナイノダカラ……)
 そんな事を考えていたからか。
 彼女はソレの接近に気付かなかった。

「ね~っ、こっこっこっこっこっこっ……!!」
「……ハイ?」
 夜の森を割く高笑い(?)に、アルスが困惑の表情を浮かべる。
「ナ、ナニ……?」
 辺りを見回すが、声の主など……。
「……居タ」
 起伏に富んだ森の中でも、一際小高いその岩の上に、一匹のアホの姿。 
「銀の翼に望を乗せて、渡る世間は鬼ばかり。港区生まれのスーパーガール美少女、美少女!! 猫仮面、惨状(←誤字)!!」
 それは、間違いなく武装神姫で、全身を鎧うのはツガル型の標準装備一式。
 背部のレールガンを雄々しく広げ、“明後日の方向に見得を切る、『目隠し』したマオチャオ”!!
「………? ………!? ………??」
 理解不能な事態に困惑するアルストロメリア。
(何故目隠シ?)
(正体を隠シテイルツモリ?)
(ッテ言ウカ。モシカシテ前、見エテ無イ?)
 様々な思考が溢れては消えるが、残った物は一つだった。
「……ばか?」
「バカじゃない。バカじゃないもん!! バカって言った方が馬鹿なんだぞ、やーい馬ー鹿、馬ー鹿!!」
 必死になって指差すが、そもそも方向が70度ぐらいずれている。
「……あのね、見てる方向が違うわよ……」
 その神姫のマスターと思しき女性が、頭痛を堪えるような表情で言う。
「はえ? こっち?」
 彼女の言葉に反応し、その場で旋回する猫型神姫。
「逆よ、逆。反対方向に100度くらい……。ああ、行き過ぎ行き過ぎ!!」
「こうか?」
「おしい、もうチョイ右」
「んにゃ?」
 マオチャオ、迷わず右ジャンプ。
「にゃ~~~~~~~っ!?」
 足場にしていた岩から落ちた。
 ―――ゴスっ!!
「痛てぇ!? 落ちた!? 落ちたよ今!! しかも何か痛そうな音とかしたし!?」
 ジタバタのたうち、大騒ぎする猫。
「………エエト……」
 取り落としたライフルなど手探りで探し(本気で前が見えてないらしい)、10秒ほどかけてそれを探し当てる。
「あった、あった。……って、折れたぁー!?」
 落ちた時に壊れたらしい。
 中ほどから真っ二つに折れたホーンスナイパーライフル。
「ああ、しかもレールガンまで砲身歪んでる(※2)!?」
 打ち所最悪だったらしい。
 背中のレールガンも砲身が歪んで使用不能になっている。
「くぅ、ネコをここまで追い詰めるとは…。貴様、中々やるな!!」
「だから、方向逆!! 逆ですわ!!」
「……ん、そうか」
 素直に頷き反対方向を向いて……。
「……あっ、ちょっとタイム」
 いきなり中断。
「……よいしょ、よいしょ」
 岩を登って、その頂上に立ち上がり……。
「銀の翼に望を乗せて―――」
「「やり直すなーーーーーっ!!」」
「ふにゃぁ!?」
 その神姫の主と同時に突っ込むアルストロメリア。
 そして、ビックリして再度岩から転げ落ちる馬鹿なネコ。
「あ~、もういい!! 覆面止め止め!!」
 そう言って目隠しを毟り取るマオチャオ。
 どうやら本気で覆面のつもりだったらしい。
「……コレガ、天海最強ノ神姫……。まやあ……?」
 なんて言うか、目の前が真っ暗になった。
「むむっ、ネコの正体を見やぶるとは、やるな貴様!! そしてそこまでだっ!!」
「……何ナノ、これ?」
「ふふふ。ネコこそは謎の覆面戦士マヤア!! 貴様の野望もココまでだ!!」
 謎とか言いつつ名乗ってる、名乗ってる。
 しかももう、覆面無いから…。
「ヤ、野望トカ言ワレテモ……」
「何だと、野望の一つも無いなら死んだほうがマシだ!!」
「死ネト言ウ!?」
「因みにネコの野望は『みのうや』の鯛焼きを、白餡、漉し餡、粒餡と連続で食べる事だ!!」
「安ッ!?」
 因みに『三直屋』のタイヤキは、一個350円の高級品である。
 彼女は主から一度に一個以上買い与えられた事は無い。
「それはさて置き、そこの悪い奴!!」
「……ワ、私……?」
 正直関わり合いになりたくないなー、という表情で嫌々答えるアルストロメリア。
「そう、そこのお前だ、お前!! よくもセタ坊をいぢめたな!! 次はこの、ネコが相手だ!!」

 戦闘総数1000以上。
 内、敗北が僅かに数回。
 天海神姫センター最強の神姫。
 通称“化け猫”。
 ………。
 “お化け”猫ではない。
 化け物猫の略称だ。

 さて。
 そう聞いてどんな神姫を想像するだろうか?
 陽気な武道家?
 クールな傭兵?
 それとも、無慈悲な狂戦士?

 どんな想像をしようとも、この手の馬鹿であるとは想像もつくまい。
 少なくとも、アルストロメリアはこんな神姫だなどとは夢にも思って居なかった。
「……モウイイヤ、撃ッチャエ……」
 そうして、アルストロメリアは引き金を引いた。






「―――雅ん!?」
「え?」
 セタに応急処置を施していたら、唐突に伊東美空が現れた。
「姉さん?」
 寄りにもよって祐一を伴って。
「な、ななな……」
 そう。
 寄りにもよって、だ。
 寄りにもよって、このタイミングで、この場所に、祐一とフェータを連れて現れてしまった伊東美空。
 彼女の神姫を狙う相手とは100mも離れていない。
「……ば、ば、ば、ば……」
「は、びばのんのん?」
「―――違うよ、黙れよ。ってか何でここに居るんだよ!? とっとと旅館に戻ってろ~、肝試しだぁ、ばかぁ!!」
 てんぱった。
 なんと言うか予想外の事態が連続して起きるので、さしもの雅もパニック状態になる。
 どうしてこの娘が絡むとペースが乱れるのだろう?
 セタとフェータの対戦などを思い出しつつ、そんな事を思い出している場合じゃないと余計にパニくる雅。
「折角人が苦労して何も知らせずにおこうと思っているのにどうして自分から棺桶に突進してくるかぁ!?」
「マスタ~、落ち着いてぇ~!!」
 分け分からなくなってジタバタ暴れる雅を必死で宥める忠犬セタ。
「姉さん、とりあえず深呼吸」
「うん」
 弟の意見に素直に頷く姉。
「すー、はー、すー、はー」
 肺の中の吸気を入れ替え、雅は顔を上げる。
「―――いい、二人ともよく聞いて(キリッ)」
「……ぷっ」
「……くっ」
 唐突に真面目な口調に戻った雅に、祐一と美空が笑いを堪えていた。



 デルタ3の反応途絶。
 デルタ1は反射的にデットウエイトと化したデルタシステムを停止させ、処理速度を本体に戻す。
 これで神姫単体の性能は戻ったが、システム全体の戦力は1割り近くにまで低下。
 もはやデルタに勝ち目が無いことは、その場の誰にも明らかだった。
(冗談じゃないのです。これだけの損害を出すなんて想定されていないのです)
(デルタ3を攻撃したのは誰なのですか?)         
(索敵に処理を振り分けて広域索敵。目標はまだ残っているのです)
 思考を展開し聴覚センサーと視覚センサーをフル活用し戦況の把握を行う。
(視界が狭いのです。これでは満足に戦えないのです)
(夜間用の増光センサーの使用、可否?)
(閃光弾に対する耐性と利便性を考慮し決行)
 3機の神姫の視界を共有していたデルタにとって、今の視界は覗き穴から世界を見ているようなものだ。
 普段なら迷わないような事にも処理を必要としてしまう不便さは、彼女にしか分からない感覚だろう。
 だがしかし。
 最大の問題はそれではなかった。
(マスターは何故止めたのですか?)
 デルタ3の撃破は確認するまでもない。
 そちらに振り返る事も無かったデルタの視界には、今も主である村上衛が映っている。
「マスター、―――っ!?」
 視界を横切る赤い線に気付いたのは、その時だった。
 村上の持つコンテナへと続く赤い線。
 可視光線では無い。神姫であるからこそ見える赤外線レーザー(※1)。
(赤外線? レーザーサイト?)
 誰かの射線が、主を狙っている。
「マスター!!」
 警告は、間に合わなかった。
「―――くっ!?」
 ボンッ。
 と、呆気ない音を立てて村上の持っていたコンテナがその機能を停止する。
 周囲に張り巡らされていたセンサーの檻も同時に消え去った。
「……」
 想定していた勝ちパターンはこれで完全に潰えた。
 もはや今の村上とデルタに、京子とその神姫をとめる術は無い。
「……万事休す、ですね……」
「マスター……」
 この状況を招いたのが他ならぬ村上である事はデルタにも否定できない。
 あそこで止めなければ確実にカトレアと名乗った神姫は撃破出来たはずなのだ(※2)。
「マス―――」
「―――村上、衛」
 デルタが問いかけるより早く、彼に声をかけたのは、敵であるカトレアだった。






 カトレア。
 村上衛のアーンヴァルを破壊し、その記憶とCSCを元に京子が作り上げたジルダリアにとって、目の前の男はマスターではない。
 かつて、“そう”であったと言う別の記憶があるだけだ。
「策は、もうお終いですね……?」
「…………」
 図星を指されると黙る。
 自分のモノではない記憶が彼の沈黙を答えとした。
「……カトレア……」
 どうして、と続けようとしても、村上にはその先は口に出せなかった。
(どうして?)
 そんな事は決まりきっている。
 神姫の個性と記憶は別物だ。
 例えばデルタにアイゼンの記憶を入れれば、アイゼンとしての思い出を持つデルタになる。
 簡単ではないが、不可能でもない。
 村上衛に出来るのならば。
 ……土方京子に出来ない訳が無い。
 彼女は、“CSCの開発に直接立ち会っている人間”だった。

「マスター。後始末は私が(※3)……。マスターはアルストロメリアと合流して目標を追ってください。位置の特定は上空で監視をしているストレリチアが……」
 そこで、カトレアは木々の合間を走ってくる人影に気付く。
「…!?」
『姉さま、目標なのです!! すぐ傍なのです!! そっちに向かっているのです!!』
 無線越しにストレリチアの声。
 木々の覆い茂る夜の森では上空からの監視は万全では無い。
 ストレリチアがフェータの存在に気付いたのはカトレアとほぼ同時だった。
「村上さん!!」
「え、村上さん?」
「祐一君!? ……それに美空さんと、……フェータさん!!」
 もちろん、祐一の肩にはアイゼンも居る。
 つまり、彼らが守ろうとした対象全てが、京子の前に姿を晒していた。






 現状を鑑みて、ストレリチアは戦慄する。
 単に無警戒な神姫を破壊するだけの簡単なミッションは、当初の予定を大きく外れ複数の神姫が入り乱れる乱戦となっていた。
「……アルス姉さま、敵なのです。早く戻るのです!!」
『無理、コッチモ忙シイっ!!』
 無線から聞こえるアルストロメリアの声に混じって彼女の耳が拾っているであろう周囲の雑音が聞こえてくる。
 しかし、その中に断続的に響く破裂音。
(発砲してる!? 戦闘中なのですか?)
「アルス姉さま!?」
『煩イ!! これハ、オ話シナガラ戦エルヨウナ相手ジャ無イノ!!』
 余裕の無い喋り方を聞けば、彼女が苦戦しているのは疑いようも無い。
(アルス姉さまが、苦戦?)
 アルストロメリアは姉妹の中では最も攻撃力が低い。
 だが、逆に最も戦闘力が高い神姫でもある(※4)。
 そんな彼女が苦戦する相手。
(天海最強とうたわれる、例のマオチャオですか…!?)
 正解である。
 だが、流石にその戦闘内容までは予測の外だった。






「…っ!?」
 驚愕したのは他ならぬアルストロメリア自身。
 フルオートの指切り点射(※5)で撃った7発の銃弾は2発当たっただけで、他は外れ。
 だが、有効打は只の一撃も無い。
 この2発とて、かわすよりも受ける方が楽と踏んでの事だ。
 装甲の表面を引っ掻く以上の戦果は無い。
「……バ、化ケ物?」
 彼女と対戦した神姫の中でも、その実力のあまりの差に気付けた一部の者が口をそろえて言った台詞を、ここで彼女も口にした。
「……クッ!!」
 中空に跳んだマヤアの着地を狙って、2丁のアルヴォからのフルオートで弾幕を張る。
 複雑に絡み合う火線はしかし、マヤアを避けるようにその脇に逸れ、あるいは弾かれる。
 いや、逆にマヤアがそうなる様に身を捌いているだけなのだ。

 一発目の銃弾は顔の脇を通過。
 二発目は走る動作のために振り上げた腕の下。
 三発目は傾斜角度の浅い部位の装甲に流され、肩のアーマーを掠めただけで効果なし。
 四発目は走る動作の中で振り上げた腕、その手の中にあるハンドガンを掠めて明後日の方向へ跳弾。
 五、六発目は彼女の脇に大きく逸れて森の中へ消えていった。
 七発目は彼女が銃を構える動作の中、その銃に弾かれて角度を変え、頬を掠めただけに終わる。

 傍から見れば、弾幕の中に頭から突っ込んでいるのに、何故か無傷だという不思議な光景。
 少し目が良ければ数発は当たった事に気が付くし。もっと目がよければその数発が完全に利いていない事も分かる。
 更に目が良ければ……。
 それが偶然でも何でも無く、単に自然な動作の中でマヤアが微かに行う回避行動の結果だと分かる。
 そして、そこまで分かった時。この神姫がどれ程の化け物なのかが理解できる……。
 この七発の処理に、マヤアはコンマ1秒もかけていない。
 それはつまり。
「銃弾ヲ、『見テカラ』避ワシテイルトデモ言ウノ!?」
 マヤア認識能力がそのレベルに達しているということでもある(※8)。
「ん~。結構見えるし、割と避わせるよ?」
「……正真正銘ノ、化ケ物ネ……」
 アルストロメリアが感じたそれは、間違いようもなく戦慄だった(※9)。







「―――なら、助けに行かないと……」
「祐一!?」
 現状を伝え、逃げるように促した雅に対し、祐一の返答はそれだった。
「……フェータを一人で逃すのは危険なのよ? 分かっているの?」
「でも、村上さんとデルタがそんなヤバイ奴の相手をしているのなら助けないと……」
 島田祐一にとって、理由はそれで充分だった。

 ここに雅の誤算が一つある。

 彼女がフェータを京子から守ると決めたのは、それが“祐一の気に入った相手”であったからだ。
 フェータが失われれば祐一が傷つく。
 ならば雅にとってはフェータを守る事は村上やデルタを守ることよりも優先される。
 もちろん、セタや自分を守ることよりも、だ。

 だから、雅は選択を誤った。

 雅がフェータを守る為に盾にしようとしたモノ全てに……。
 島田祐一は、フェータと等価の価値を見出していたからだ。

 村上もデルタも。
 雅もセタも。
 浅葱もマヤアもリーナもレライナも。
 そしてもちろん美空とフェータも。

 島田祐一は全て守るつもりでいた。






「……そちらから来てくれるとは、随分と都合が良いな?」
「……っ」
 睨まれ、睨み返す美空。
「……でもその前に、俺たちが相手だ……」
 そう言って、両者の間に割り込む祐一とアイゼン。
「……なるほど。最後の難関と言う事か?」
 自嘲気味にそう呟いて、京子はその場の全員を相手にする覚悟を決めた。
 単にフェータを奪うだけならば、他にもっとリスクの少ない方法があるだろう。
 だが、彼女はそうしない。
 それが。
 そう出来ると、四姉妹を信じているからなのか……。
 それとも。
 誰かに、自分の凶行を止めて欲しいと想っているからなのか……。

 それは彼女自身にも分からなかった。






『これで2対3なのです。不利なのです。私も降りて参戦するのですよ!?』
「下姉。駄目」
 ブーゲンビリアはそう言ってストレリチアを止めた。
 現状がこうなっては、戦力が一人増えても大した意味は無い。
 それよりも、伏兵を一人残す方を彼女は選択したのだ。
「最悪時、結果全滅」
 だが、そうなった時に僅かにでも隙が出来れば―――。
「下姉、出番」
 目的は試作型アーンヴァルの確保と、マスターである京子の無事のみ。
 ならば、自分たちの敗北ですらも、相手の油断を誘うカードと成り得る。
「尤(もっとも)……」
 ブーゲンビリアに負けるつもりなど毛頭無かった。
「……目標補足」
 さて、先ずは邪魔な死に損ないから始末するとしよう。
 ブーゲンビリアは、レーザーの目標にデルタを選んだ…。






 レーザーは光速であるが故に、発射と着弾に時差が無いも同然である。
 引き金を引いた瞬間に、命中していると言っても良い。
 だから。
『……何故!?』
 狙われたデルタが避けることはもちろん。
「…え? さっきのレーザー? ボクを狙って……?」
 それを『庇う』事など出来る筈がないのだ。
「危ない所であったな、デルタよ……」
「レライナさん!?」
「私も居るわよ?」
「リーナ?」
 こうして最後の役者が舞台に上がる。
「我の連れあいを害そうなどと不届き千万……」
 神速を誇る青の騎士。レライナが其処に居た。
「祐一、レーザー砲は私とレライナで仕留めるわ!! 貴方は其処のジルダリアを!!」
「ああ、頼む。……デルタとフェータは下がってて。アイツは……」
「……私が倒す」
 そう言って、アイゼンは副腕でカトレアを指差した。



 続く。









今回は試験的に本文中に注釈を入れてみました。
読み易くなっているのか読み辛くなっているのか、ちょっと実験。

※1
 ブーゲンビリアはレーザーサイトを持っているが、ここでは不意打ちの為に使用していない。
 測量と照星のみで1キロもの彼方に存在する神姫の腕(正確には手にした爆薬)を打ち抜いた。
 因みに人間と比して1/10サイズの神姫にとっては10キロに相当する。
 実際の(人間の)狙撃では、2キロ先に当てられれば奇跡といって言い。

※2
 目隠ししているマヤア(アホ)は背面装備の欠損を目で見ていた訳ではない。
 ダメージを受けた為(岩から落ちた)、自己診断機能が機能しその結果、レールガンのエラーを検知。
 それがマヤア自身に伝えられた結果レールガンの破損に気付いた。
 いくらマヤアがおバカでも、神姫としての機能は最上級のスペックである。

※3
 ここでブーゲンビリアが使ったのは、出力が低く完全に無害な只のレーザーサイト。
 主砲である『ユピテル』とは完全に同軸であり、この状態でトリガーを引けばポイントされている目標へレーザーが照射される。
 赤外線レーザーは低出力の内は完全に無害。
 要するにカロッテP12とかに付いているアレ。

※4
 実際にはカトレアは、バリアの下の装甲もかなりの物である為、撃破には到らなかったと思われる。
 デルタの推測は通常のジュビジーの2割り増しで計算されたものだが、カトレアはそれ以上の装甲を持つと言う事。
 この時点ではデルタはまだ、京子と四姉妹を過小評価している。

※5
 デルタ1の始末と、村上衛の無力化の事。
 当然ながら、カトレアを始めとする四姉妹にデルタの固体識別は出来ていない。
 この時点ではカトレアもブーゲンビリアも、デルタ1も自爆を切り札にすると思っている。
 実はデルタ2、3を失った時点で、デルタは四姉妹相手の戦力としては無力化されている。

※6
 攻撃力=戦闘力では無い。
 因みにここで言う戦闘力の根拠は、普通の神姫と戦う場合、彼女が最も戦果が高いという結果に基づく。

※7
 指切り点射。実在の技術。
 フルオートは引き金を引いている間、自動的に弾丸を連射するモード。
 指切り点射とは、その状態で短くトリガーを引き、数初だけ弾を出す発射方法。
 一回トリガーを引くことで3、ないしは5発の弾を発射するバーストモードとは違い、ある程度の技術が必要だが、慣れればセレクター(モード選択スイッチ)にない発射数を自在に撃つ事が出来る。

※8
 戦闘モードに入ると、マヤアは世界が遅くなったように認識する。
 自分の動きが加速される訳ではないが、ムダが皆無になる為その動きは非情に素早い。
 因みにこの状態を分かりやすく説明するなら『シューティングゲームでのタイムボタン連射』と同義。
 ゲーム内の自機の速度が変化する訳ではないが、プレイヤーの体感時間は大幅に延長される為、認識力が拡大したのと同じ結果になる。

※9
 アルストロメリアが使用している銃、PDW9は高速弾を使用している。
 アーマードコアとかやり込んだ人なら、『弾速が倍になる銃弾』と言ったら強力な武器だと分かるはず。







気がつけば、実に一月以上放置していた本編更新(爆)。
原因はね、ルーンファクトリー2なんだ。
あのゲームさぁ、ゲーム内で時間を進める方法が実時間の経過しかないからプレイ時間がかさむかさむ(笑)。

朝起きてから、まずモンスターの世話。ブラッシングして友好度を上げておく。
その後島に行き、パイナップルに水やって、岩割って鉱石採掘して9時になったら学校へ。
(パイナップルは収穫できたら収穫しちゃう。学校でタネに加工して売ると大金がっぽり♪)
授業を受けつつ、棚でアイテム整理して、剣やアクセサリー等、作れる物があるなら作る。
終わったら、残りのダンジョンから一つぐらいを作物の水やりと鉱石採取。
12時になったら学校に戻り、午後の授業、給食受領、アイテム整理を行って。
必要な物があればこのタイミングでお買い物。第2部は3時以降、雑貨屋で買い物できなくなるので大変。
後、不要な物の売却。昼のモンスターのドロップアイテムとプラチナ(必要になったら買える)は不必要なので売却。
そして3時までにもう一つぐらいダンジョンの作物の世話と鉱石採取。
3時になったらお風呂屋でリフレッシュ。
あとは6時までに最後のダンジョンで作物+鉱石。
6時以降は夜の出現モンスターが変わるので、アイテム作成に必要なドロップアイテムを狙って延々とバトル。
気に入ったものが居たら捕獲して育てる。
12時前にエスケープ2連射で家に帰りセーブしてから就寝。
翌日が嵐だったらリセットして外で寝袋。

これで大体30分。
1時間で二日しか進まないし、アイテムの作成や整理をやっていると1時間で1日なんて時も……。

一月30日で今大体5ヶ月間プレイ。
既に80時間ぐらい使っている計算に……。

ルーンファクトリー2恐るべし。


以上、挨拶でした(↑長っ)。


いや、本当の理由は前にもやった『乱戦描写が苦手』と言うALCの弱点故なんですが……。
うん、気分転換が80時間になっているのは本当なんだけど、AHAHAHAHA。




――と言う訳で現状の整理。

セタ坊:敗退―アルストロメリア相手に手も足も出ず。
デルタ:敗退―カトレア&ブーゲンビリア相手に頑張ったけど、もう無理。

ストレリチア:上空待機。
 果たして本当に出番はあるのでしょうか?

マヤア  VS アルストロメリア
 アルストロメリアだから勝負になっていると考えよう。
 ぶっちゃけ、マヤア以外なら一人でアイゼンたち全滅させかねないし、コイツ。

レライナ VS ブーゲンビリア
 『神速の騎士』対『光速のレーザー砲』
 意外と好カードかもしれない。

アイゼン VS カトレア
 今までの相手(フェータとレライナ)が相手だけに、砲撃戦型神姫のイメージが強いのですが、実はアイゼンは格闘の方が好きです。
 ようやくマトモに殴り合いをするアイゼンさんが書けますよぉ。

ってな感じで展開しようかと。
この夜の森編が終わればようやく京子さんの過去話に入れます。

過去編からは複線回収に入るので執筆は早いはず。
多分、きっと。
後は残業と休日出勤が無い事を、って、……無い訳ゃ無いな(笑)。
……せめて少ない事を祈るだけです……(切実)。



 以上。
 アルストロメリアのカタカナ語。
 その後の文章がパソコンの変換機能だと、カタカナ混じりになるのでえらい面倒。
 な、ALCでした。




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