ただその翼は、姫を解き放つ為に(その三)
──放っておけば、破滅してしまう。負けても、彼女は周りを巻き込んで
滅びの道を歩んでいきますの。そうなれば、わたし達がやる事は一つ……
ロキちゃんに、微笑んでもらう事ですの!それこそ、わたしの願い──!
滅びの道を歩んでいきますの。そうなれば、わたし達がやる事は一つ……
ロキちゃんに、微笑んでもらう事ですの!それこそ、わたしの願い──!
第六節:窮地
狂気の“魔術”を身につけてしまったロキちゃんは、なおも黒き龍を従え
わたし達を睨め付けますの。奇しくも、彼女は射撃・白兵……更に魔術。
そう、わたし達が扱っている凡そ全ての“戦法”を操る事が出来ますの!
わたし達を睨め付けますの。奇しくも、彼女は射撃・白兵……更に魔術。
そう、わたし達が扱っている凡そ全ての“戦法”を操る事が出来ますの!
「今更貴女達の躯が大きくなったって、この力は止められないわ!」
「いいえ、止めますの……絶対に!」
「必ず止めてみせるんだよ。さぁ、勝負だもん……フォイエルッ!」
「行きます、せあああああっ!!」
「いいえ、止めますの……絶対に!」
「必ず止めてみせるんだよ。さぁ、勝負だもん……フォイエルッ!」
「行きます、せあああああっ!!」
ですけど、それで怯んではいられませんの!クララちゃんが、すかさず
束縛の為の光弾を撃ち出して、ロキちゃんを絡め取ろうとしますのッ!
それを追う様に、アルマお姉ちゃんはハンマーを構えて突撃しますの!
束縛の為の光弾を撃ち出して、ロキちゃんを絡め取ろうとしますのッ!
それを追う様に、アルマお姉ちゃんはハンマーを構えて突撃しますの!
「あは、アハハハハ!遅い、遅いわッ!!……ふっ!!」
「光弾を、避けた……!危ないよ、アルマお姉ちゃん!!」
「え?きゃあっ!?……し、洒落にならないですよっ!」
「あの膝、やっぱりパイルバンカーでしたの……!」
「光弾を、避けた……!危ないよ、アルマお姉ちゃん!!」
「え?きゃあっ!?……し、洒落にならないですよっ!」
「あの膝、やっぱりパイルバンカーでしたの……!」
でもスピードこそが命のロキちゃんは、光弾をあっさりとかいくぐって、
アルマお姉ちゃんの顔に左膝を叩き込もうとしましたの!先端に輝くのは
禍々しい突端。アルマお姉ちゃんは間一髪、ハンマーで退けましたの……
でも、よく見ると鎚の縁には抉られた様な痕。弾いただけでこれですの!
アルマお姉ちゃんの顔に左膝を叩き込もうとしましたの!先端に輝くのは
禍々しい突端。アルマお姉ちゃんは間一髪、ハンマーで退けましたの……
でも、よく見ると鎚の縁には抉られた様な痕。弾いただけでこれですの!
「ふん。しぶといのね、今までの誰よりも強いわ」
「当然です……あたし達には、それだけの想いがあります!」
「絶対に、ロキちゃんを光の下に戻す……それだけを願って」
「それを叶えるまで、諦めずに戦い続けますの!」
「ク、クク……クハハハ、アアハハハハ!!」
「ッ!?」
「当然です……あたし達には、それだけの想いがあります!」
「絶対に、ロキちゃんを光の下に戻す……それだけを願って」
「それを叶えるまで、諦めずに戦い続けますの!」
「ク、クク……クハハハ、アアハハハハ!!」
「ッ!?」
おぞましいオーラを纏うロキちゃんは、わたし達を再び笑いましたの。
そして、その瞬間に……わたしは見ましたの!シェードの下にうっすら
透けている、彼女の顔を!それは……哀しい微笑みに、見えましたの。
そして、その瞬間に……わたしは見ましたの!シェードの下にうっすら
透けている、彼女の顔を!それは……哀しい微笑みに、見えましたの。
「想いなんて、裏切られるの!証明して……あげるわッ!!」
「き、えた……!?」
「まずは、心臓を砕く為の……技ッ!!」
「──え?」
「き、えた……!?」
「まずは、心臓を砕く為の……技ッ!!」
「──え?」
垣間見えた表情に気を取られたのが、いけませんでしたの。瞬時に彼女の
姿は消え失せ、次の瞬間にはクララちゃんに右脚を突き込んでましたの!
深々と突き刺さっているのは、足に隠されていた剣型のアンカー……更に
ロキちゃんは、左脚の裏に仕込まれた『もう一つのパイルバンカー』で、
クララちゃんの胸を思いっきり吹き飛ばし、即座に離脱しましたのッ!!
姿は消え失せ、次の瞬間にはクララちゃんに右脚を突き込んでましたの!
深々と突き刺さっているのは、足に隠されていた剣型のアンカー……更に
ロキちゃんは、左脚の裏に仕込まれた『もう一つのパイルバンカー』で、
クララちゃんの胸を思いっきり吹き飛ばし、即座に離脱しましたのッ!!
「きゃあああっ!?」
「次は……頸椎を破壊する技よッ!!!」
「──クララちゃん!?」
「余所見は、禁物……よッ!」
「次は……頸椎を破壊する技よッ!!!」
「──クララちゃん!?」
「余所見は、禁物……よッ!」
気が付けばロキちゃんは、アルマお姉ちゃんの背後に回っていましたの。
そして、左掌を装甲の隙間へと突き刺し……放電!さっきわたしが受けた
強烈なスタンナックルで動きを止められ、そのまま“ソニックバイト”を
装甲の上から首に喰らった、アルマお姉ちゃんの悲鳴が聞こえますの!!
そして、左掌を装甲の隙間へと突き刺し……放電!さっきわたしが受けた
強烈なスタンナックルで動きを止められ、そのまま“ソニックバイト”を
装甲の上から首に喰らった、アルマお姉ちゃんの悲鳴が聞こえますの!!
「ぐ、う……ああぁあっ!?」
「最後は、喉笛を掻き斬る為の……技ッ!!!」
「──速い……ッ!?」
「最後は、喉笛を掻き斬る為の……技ッ!!!」
「──速い……ッ!?」
そこまで認識していても、わたしの躯は追い付きませんの。ここまでに、
コンマ数秒も掛かっていないのですから、仕方ないですけど……それでも
必死に抵抗を試みますが、ダメでしたの。私の胸を、一閃。そして更に、
二回、三回。そして四回!刃は二本ですから、都合八回斬られましたの。
コンマ数秒も掛かっていないのですから、仕方ないですけど……それでも
必死に抵抗を試みますが、ダメでしたの。私の胸を、一閃。そして更に、
二回、三回。そして四回!刃は二本ですから、都合八回斬られましたの。
「ひぅ、ぁあああっ!?」
「……人間を確実に殺す為、編み出した技よ!具合はどう?!」
『──────きゃあああああああああああっ!!!』
「……人間を確実に殺す為、編み出した技よ!具合はどう?!」
『──────きゃあああああああああああっ!!!』
そして、全てが終わり距離を取ったと同時に……皆の“プルマージュ”は
圧倒的且つ急所を捉えた一撃で、バーストしてしまいましたの!接合した
部分から全身に痛みが流し込まれ、同時にわたし達は地に落ちましたの。
動けなくなった三匹が堕ちてきて、土煙を舞い上げるのが見えます……。
圧倒的且つ急所を捉えた一撃で、バーストしてしまいましたの!接合した
部分から全身に痛みが流し込まれ、同時にわたし達は地に落ちましたの。
動けなくなった三匹が堕ちてきて、土煙を舞い上げるのが見えます……。
「あはは、アハハハハハ!速いわ、この空間だと思う様に動けるわッ!」
「う、く……“魔術”で、持ち前のスピードを強化していますね……」
「……本来、大きな相手との戦いには慣れっこだったのかな……」
「でも、でもまだ……諦める訳にはいきませんの!」
『Yes,sir/No problem/Ja(支援します)』
「う、く……“魔術”で、持ち前のスピードを強化していますね……」
「……本来、大きな相手との戦いには慣れっこだったのかな……」
「でも、でもまだ……諦める訳にはいきませんの!」
『Yes,sir/No problem/Ja(支援します)』
それでも、まだわたし達の“心”は折れていませんの!ボロボロになった
“アルファル”達も、その咆吼に応えて再度わたし達の躯を覆いますの。
本来は、彼女達だって辛くて動けない筈なのに……有り難い限りですの。
“アルファル”達も、その咆吼に応えて再度わたし達の躯を覆いますの。
本来は、彼女達だって辛くて動けない筈なのに……有り難い限りですの。
「……どうして、どうしてよ!諦めれば、楽になれるのよッ!?」
──────諦める方が、もっと辛いから……ですの。
第七節:宵闇
龍は堕ち、身を覆う“騎士”も最早ボロボロで変形はさせられませんの。
それでもわたし達は、決して戦う事を諦めずに立ち上がります……それを
見たロキちゃんは眼前の光景が信じられないのか、絶叫し始めましたの。
それでもわたし達は、決して戦う事を諦めずに立ち上がります……それを
見たロキちゃんは眼前の光景が信じられないのか、絶叫し始めましたの。
「何故諦めないのよ!さっさと諦めて死ねば、楽になるのよ!!」
「……それは、ロキちゃん自身が未だに諦めきれないって事かな?」
「──────ッ!?」
「……それは、ロキちゃん自身が未だに諦めきれないって事かな?」
「──────ッ!?」
クララちゃんの一言で、ロキちゃんが震えますの。そう、全てを諦めれば
苦しまないと叫ぶならば、ロキちゃん自身もそう思っているなら。自身が
生きる事を諦めていないのは、一体何故なのかって事になりますの……!
苦しまないと叫ぶならば、ロキちゃん自身もそう思っているなら。自身が
生きる事を諦めていないのは、一体何故なのかって事になりますの……!
「何処かで止めてほしい、って思っているんですね?誰かに……」
「お、思ってない!あたしはそんな事思ってないッ!!違うッ!!!」
「お、思ってない!あたしはそんな事思ってないッ!!違うッ!!!」
つまりそれは……生きていたい“心”の裏返し。幸せを取り戻して、再び
大切な人とMMSの一生を送りたい。そんな欲求から出た言葉ですの……!
大切な人とMMSの一生を送りたい。そんな欲求から出た言葉ですの……!
「わたし達が受け止めてあげます、だから苦しまなくていいですの!」
「う、煩い煩い煩いッ!!止めたければ、アタシを壊せぇっ!!」
「……来ますの!!」
「う、煩い煩い煩いッ!!止めたければ、アタシを壊せぇっ!!」
「……来ますの!!」
でも憎悪に呑まれているロキちゃんを落ちつかせなければ……その意志と
伝えたい『もう一つの事』を話す事が出来ませんの。その為にも、ここで
何としてもわたし達は勝たないといけないですのッ!例え満身創痍でも、
皆が魔剣を掲げて戦う意志を示すのは、それを分かっているからですの!
伝えたい『もう一つの事』を話す事が出来ませんの。その為にも、ここで
何としてもわたし達は勝たないといけないですのッ!例え満身創痍でも、
皆が魔剣を掲げて戦う意志を示すのは、それを分かっているからですの!
「その鎧も、剣も!躯も、全部砕いてやるわよッ!うわぁぁああ!!」
「な!?腕の銃器が、拳を覆い隠して……きゃああっ!?」
「アルマお姉ちゃん!?しま──」
「だから、遅いって言ってるでしょうッ!!!」
『き、きゃぅぅっ!?』
「な!?腕の銃器が、拳を覆い隠して……きゃああっ!?」
「アルマお姉ちゃん!?しま──」
「だから、遅いって言ってるでしょうッ!!!」
『き、きゃぅぅっ!?』
しかし全身のスラスターも不調のわたし達では、ロキちゃんの速度には
到底追いつけませんの。腕が変形したショットガンとチェインガンで、
アルマお姉ちゃんとクララちゃんの“アルファル”は微塵に砕け散り、
そして今、残ったわたしの“フィオナ”も……彼女の胸に光った輝きで
打ち砕かれましたの!隠し武器の、胸部拡散レーザーキャノンで……!
到底追いつけませんの。腕が変形したショットガンとチェインガンで、
アルマお姉ちゃんとクララちゃんの“アルファル”は微塵に砕け散り、
そして今、残ったわたしの“フィオナ”も……彼女の胸に光った輝きで
打ち砕かれましたの!隠し武器の、胸部拡散レーザーキャノンで……!
「ほら、もう諦めなさい……よぉぉぉぉぉッ!!!!」
『きゃああああぁぁぁぁあっ!!!』
『きゃああああぁぁぁぁあっ!!!』
しかしロキちゃんは飽き足らないのか、恐るべき機能を発揮しましたの。
それは、戦闘機型ヴィークルへの変形機能。四肢を折り畳み、翼を広げた
自身の周りを黒いオーラで包み込んで、そのままわたし達に強烈な突撃を
仕掛けてきましたの!それが“魔術”の効能なのか、元から有る機能かは
もう判断できません……ともあれ、それでわたし達は吹き飛びましたの。
それは、戦闘機型ヴィークルへの変形機能。四肢を折り畳み、翼を広げた
自身の周りを黒いオーラで包み込んで、そのままわたし達に強烈な突撃を
仕掛けてきましたの!それが“魔術”の効能なのか、元から有る機能かは
もう判断できません……ともあれ、それでわたし達は吹き飛びましたの。
「ほら、痛いでしょ!?苦しいでしょ、辛いでしょッ!!」
「ぅ、ぅぅ……」
「人間の我が侭なんかの為に、アンタ達は死ぬのよ!!」
「く、ぁ……」
「アタシなんかに、アタシなんかに関わるからこうなるのよ!!」
「ぃ、た……ッ」
「ぅ、ぅぅ……」
「人間の我が侭なんかの為に、アンタ達は死ぬのよ!!」
「く、ぁ……」
「アタシなんかに、アタシなんかに関わるからこうなるのよ!!」
「ぃ、た……ッ」
無惨に転がされたわたし達を確認して、ロキちゃんが人型に戻ります。
服も半分破れ、魔剣以外の装備を殆ど失ったわたし達ですが……でも、
それでもまだ立ち上がろうと、四肢のモーターへと力を注ぎますのっ。
だって、それは……彼女の“心”の叫びが、CSCを震わせるから!!
服も半分破れ、魔剣以外の装備を殆ど失ったわたし達ですが……でも、
それでもまだ立ち上がろうと、四肢のモーターへと力を注ぎますのっ。
だって、それは……彼女の“心”の叫びが、CSCを震わせるから!!
「アタシなんて要らない!アタシなんか、消えちゃえばいいのに!!」
──その、強烈すぎる自己否定。切っ掛けは、たったそれだけですの。
もうライフも残り僅かなわたし達の躯に、再びパワーが漲ってきます。
更に……決して幻ではない“純白の光翼”が、わたし達を覆いますの。
それはわたし達にも最早制御のできない、“魂”の輝きですの──!!
もうライフも残り僅かなわたし達の躯に、再びパワーが漲ってきます。
更に……決して幻ではない“純白の光翼”が、わたし達を覆いますの。
それはわたし達にも最早制御のできない、“魂”の輝きですの──!!
「わたしは……赦せないの。大切な過去を哀しんだ、貴女に眠る涙を!」
「あたしは……赦せません。大切な“妹”達が悪逆の徒にされた罪を!」
「ボクは……赦せないよ。大切な存在を否定されたと想う、その魂を!」
「……な、に?何よこれ!新しい……“魔術”!?」
「あたしは……赦せません。大切な“妹”達が悪逆の徒にされた罪を!」
「ボクは……赦せないよ。大切な存在を否定されたと想う、その魂を!」
「……な、に?何よこれ!新しい……“魔術”!?」
──そして、封じ込めてきた全ての想いが……今、弾けましたの──!!
『だからっ!!!』
皆で立ち上がった時、それは起こりましたの。わたし達の躯を包んでいた
白い光が結晶化して、武具の形を取りました。即ちそれは、剣・槍・杖!
更に、胸部鎧と部分鎧……そして外套!そして皆の背に宿るのは、純白の
翼ですの!そして残存したデータが、わたし達の周囲で名を告げますの。
“Wings of promise:Re-encoded.”と……これは“約束の翼”であると!
白い光が結晶化して、武具の形を取りました。即ちそれは、剣・槍・杖!
更に、胸部鎧と部分鎧……そして外套!そして皆の背に宿るのは、純白の
翼ですの!そして残存したデータが、わたし達の周囲で名を告げますの。
“Wings of promise:Re-encoded.”と……これは“約束の翼”であると!
『貴女を放ってはおけないッ!!!』
「この“約束の翼”に掛けて……」
「ロキちゃん、貴女を止めるんだよ」
「決して、わたし達は負けませんの!」
「うそ、よぉ……うわぁ、あああぁぁああっ!!」
「この“約束の翼”に掛けて……」
「ロキちゃん、貴女を止めるんだよ」
「決して、わたし達は負けませんの!」
「うそ、よぉ……うわぁ、あああぁぁああっ!!」
──────わたし達の想いが、一つの形になりましたの……!