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えむえむえす ~My marriage story~

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「けーくん!」
 薄暗いそこに、初めてまともな光が射し込んだ。
 半壊して片方が開かないドアをくぐりぬけ、孝也は切羽詰った様子でバトルマシンに駆け寄った。
「……何しに来たんだよ」
 恵太郎の声を無視した孝也は、それを見て絶句した。
「間に合わなかった……!」
 孝也がそう呟いたのとほぼ同時。ずるり、とアンクルブレードがアリスの手から抜け堕ちた。
 武装神姫の心臓たるCSCを白刃によって貫かれたナルは、眠っているように目を閉じている。
 それでいて、その表情は何とも幸せそうだった。
「けーくん、何でこんな事をっ!」
 孝也は普段の様子からは考えられない剣幕で恵太郎を捲し立てた。
 しかし、それが応えた様子も無い。
「お前には、関係無いだろ」
 そう冷たく言い放った恵太郎に、孝也が思わず掴みかかった。
「関係無くないだろ!……君島さんも、何でこんな事を! こんな事したって何も……」
「孝也」
 初めて、恵太郎が感情を表した。
「お前が口を出す筋合いは無いんだよ」
 寒気がするような、虚ろな威嚇。
 それは恐怖では無く、哀しさを植え付けるような威嚇だった。
「……何も、知らない人が、口を出さないで、下さい」
 君島の言葉もまた、虚ろな感情が籠っていた。
「……アリス」
「……うん」
 会話とも言えない一瞬の会話。
 アリスはカーネリアンの亡骸を一瞥すると、君島の肩に飛び乗った。
「君島さん……!」
 孝也の声を無視し、君島は壊れたバトルセンターを後にした。
 残されたのは恵太郎と孝也と、ナル。
「……孝也、先帰れ」
 恵太郎は孝也の腕を振りほどくと、ナルから目を逸らすように背を向けた。
「分ったよ」
 そう言った後、孝也はナルの頭を軽く撫でた。
 その後は、恵太郎に何も言う事無く真直ぐに出て行った。
 ただ一人、ナルを前に恵太郎は立ち尽くした。


「……ただいま」
 おかえりなさい、マスター。
 普段は聞こえる筈の声が、もう聞こえない。
 マスター、今日は少し暑かったですね。
 普段は見える筈の姿が、もう見えない。
 マスター、またコンビニ弁当ですか。
 俺の食生活を案じる声が。
 マスター、洗濯物はこまめに洗わないと後が大変ですよ。
 俺の生活態度を戒める姿が。
 マスター、明日は自分で起きてくださいね。
 俺の早起きを促す声が。
 マスター、もう朝ですよ。
 俺の目覚めを促す姿が。
 マスター、今日もがんばりましょう。
 もう、無い。
 マスター、今日の講義はフルですよ。
 大学に行っても。
 マスター、たまには野菜も食べましょう。
 食堂に行っても。
 マスター、講義は真面目に聞かないと。
 講義に出ても。
 マスター、立ち読みは駄目ですよ。
 本屋に入っても。
 マスター、次の駅で降りますよ。
 電車に乗っても。
 マスター、今日は何処に行くんですか。
 もう何処にも、いない。


「……何の用?」
 大学校舎の屋上は今が昼の休みだというのに人影は無く。
 いるのは恵太郎と君島と、そしてアリスだけだった。
「……聞き、ました。大学を、辞める、そうで」
 あれから―――ナルが死んでからもう一週間も経っていた。
「ああ、うん。そうだよ」
 手すりに靠れかかりながら恵太郎は座っている。
「何で、ですか」
 恵太郎から少し離れた所に、君島も座った。
「……神姫を持ってない人間は、ここには必要無いだろ」
 空を、見上げた。
 どこまでも青い空。そこに浮かぶ白い……まっ白い雲
「新しい、神姫を、買わない、んですか」
 君島のとなり、恵太郎のとなり、二人の真ん中にアリスは立っていた。
「新しい神姫、か」
 ふと、恵太郎がアリスを見た。
 ナルと同じ、悪魔型。
「……」
 恵太郎の指が、アリスへと伸びた。
 君島は、それを横目で眺めている。
 指が、アリスの頬に触れかけた瞬間。
 アリスは一歩後ずさった。
「……一応の予定は、ね」
 恵太郎は、暫く自身の指を眺めた後、手を頭の後ろで組んだ。
「……辞めたあと、どうする、んですか」
 君島は、アリスから恵太郎へと視線を移した。
「どこか、遠くに行きたい」
 恵太郎は、目を細めた。
「遠く、ですか」
 君島は、ただ恵太郎を見ていた。
「……部屋が、広いんだ」
 唐突に、恵太郎は言った。
「……ええ」
 しかし、君島は特に反応しない。
「ナルが、いない。たったそれだけなのに、部屋が広く感じるんだ」
 恵太郎は、空を仰いだ。
 涙が溢れない様に、空を見ながら続けた。
「それだけなのに、世界が冷たいんだ……君島、お前もそうだったのか?」
 空を見ながら、恵太郎は問いかけた。
「……ネリネが、いない、世界は、地獄」
 一瞬の間を置いて、君島は答えた。
「その地獄は、まだ、続いて、ます」
 アリスを優しく撫でながら、君島は続けた。
「カーネリアンを、殺せば、それが終わる、と、思ってました」
 恵太郎は、空を仰ぎながら耳を傾けている。
「やっぱり、地獄は、終わら、ない。あなたも、それを、味わえば、良い」
 深い憎悪の籠った声。
 そして、底なしの虚しさが混じった声。
「……可笑しな、話です」
 ふいに、君島が空を見上げた。
「ネリネを……神姫を、ただの、道具、扱いしていた、人が、それを、失った、ことで、泣く、なんて」
 薄く、君島は哂った。
「……質問は、次で、最後、です」
 前置きを置いて、君島は続けた。
「あなたが、殺した、のは、ネリネ、だけ、じゃない。他にも、神姫を、殺して、いる……どうする、つもり?」
 一瞬、恵太郎の表情に影が刺した。
「それも、もちろん分ってる。というか、そのつもりで慣れないテレビにも出たりしたんだけどね。君島以外、誰も来なかった」
「……次に、復讐しに、来た、人にも、同じ事を、するんです、か?」
「その、予定」
 日が、翳った。
「……あなたが、それを、罪滅ぼしだと、思ってる、なら、大きな、間違い」
 君島の表情から、感情が消えた。
「復讐に、来る人、は、神姫を、本当に、愛する、人。そんな、人が、神姫を、殺す事で、満足は、しない」
 その言葉に、恵太郎は固まった。
「それは、あなたの、自己満足」
 恵太郎は、力無く呟いた。
「他に……」
 だが、君島は構わず続ける。
「何も。あなたは、なにも出来ない。しては、いけない。ただ、苦しみながら、生きていく、だけ。懺悔も、贖罪も、あなたには、許されない」
 そして、最後に言った。
「あなたは、私に、神姫を、殺させた。あなたは、一体、どれだけ、馬鹿なの」
 恵太郎は、暫く俯いたままだった。
「他に……考え付かなかった」
 虚ろな声で、言葉を吐き出す。
「俺は、どうすれば良かったんだ……」
 しかし、その言葉に君島は答えなかった。
 その沈黙が、答えだった。
「……あの時点でマスターが神姫から足を洗えば良かったんじゃないですかね」
「それだと、君島達に対してどうすれば……」
「さっきも、言った、筈です。あなたは、何も、出来ない、と」
「では、額を地面に擦り付ける程の土下座は?」
「その程度で済む問題じゃ……」
「謝る、方は、それで、気が済む、でしょうが、私は、そんな、事では、許しません、よ」
「では、残った人生で全ての神姫とそのオーナーを幸せにするというのは」
「……無茶苦茶な」
「それくらい、の、覚悟、ということ、です」
「やはり、こういう事はマスター自身が見つけなければダメですね」
「……見つけられるかな。もう、ナルだっていな、い……?」
「……!?」
 その瞬間、ようやく恵太郎と君島とアリスは固まった。
 そこに居る筈の無い存在。
 そこに居てはいけない存在。
 そこに居るのは。
「……ナ、ル?」
「なんですか、マスター。まるで幽霊を見たような顔をして」
 アリスの横にちょこんと座った白髪赤目のストラーフ。
 彼女に視線を釘付けにしながら、そこにいる誰もが驚愕の表情を顔に張り付けていた。
「……な、なんで。確かに、アリスが、殺した、筈、です」
「……CSCを、刺した、のに?」
 硬直しながら、君島とアリスは顔を見合わせた。
 そして、次に恵太郎の方へと視線を移した。
「待て、待ってくれって。俺も何がなんだかわかんねぇって!」
 思わず素が出た恵太郎の言葉に、嘘は無い。
 そんな三者三様の対応を受けながら、ナルは平然と口を開いた。
「まぁ、私もあの時は死ぬかと思いました」
「確かに、殺した」
 ナルの能天気とも取れる言葉に、アリスがすかさず反応した。
「ええ、そうです。確かに、貴女は私のCSCを貫きました……タネ明かしは張本人に説明して頂きましょう」
 まるで、示し合わせたように屋上に表れたのは高野孝也その人であった。
「……こ、こんにちは~」
 空気が、凍った。
「孝也……お前、何をした」
 その直後、ゆらりと立ち上がった恵太郎は静かに言い放った。
 そして、ゆっくりと孝也に向って近寄った。
「せ、説明するから落ち着いてよ、ね?」
 その言葉に素直に従ったのかは不明だが、恵太郎は手すりに身体を預けた。話を聞く体勢だ。
 それを確認した孝也は、とりあえず胸を撫で下ろすと、咳を一つ。
「結論から言うと、クリスの力なんだ。君島さんは知らないだろうから簡単に説明するね。僕の神姫、トリスには専用装備としてナ・アシブっていう外部装甲がある。それに搭載されているシステム・ニトクリスはナノマシンによって神姫をハッキングして、感覚をかく乱するシステムがある」
 そこまで聞いて、恵太郎は事の顛末を半分ほど理解した。
「……アリスをハックして、ナルを殺したように錯覚させた?」
「そんな、事が、可能、なのです、か?」
 君島はアリスを見ながら呟いた。
 当のアリスも信じられない、と言った様子で目を白黒させている。
「ジュピシーやジルダリアの武装を原理は似た様なものだよ。やっぱりトリスとクリスの力だけじゃそこまで完璧なハッキングは出来ないからね。ロンとトロンベにも手伝って貰ったよ」
 神姫三体の演算装置を用いて行われた神姫に対するシステムハッキング。
 それが、ナルが生きているタネ明かしだと言った。
「……待て、俺も君島もナルが刺される所を見ていたぞ。システム・ニトクリスは人間もハッキング出来るってのか?」
「システム・ニトクリスで出来るのはハッキングだけじゃないよ。ナノマシンを使った光学迷彩だって出来る」
 つまりは、システム・ニトクリスによってアリスをハックしつつ、バトルマシン周囲を光学迷彩で覆い、さもナルが刺されたかのように見せかけた。
 そういう、事だ。
「……じゃあ、これは何なんだ」
 恵太郎は懐から掌大のケースを取りだした。
 そこには胸が破損したストラーフが入っていた。
「ダミーだよ。先輩達に作って貰ったんだ。現場でね」
 そこまで聞いた恵太郎は、脱力して地面にへたり込んだ。
「アリス。ハッキング、されて、いたの、に、気付き、ました?」
「全然」
 アリスは、自らの掌を見つめた。
 カーネリアンのCSCを貫いた感触がこびり付く、その掌を。
「何でだよ」
 強く、強がろうとする声が恵太郎から洩れた。
「何で、こんな事したんだよ……」
「……けーくん。けーくんがアリカちゃんを止めたのと、同じ理由だよ」
 その言葉は、暗に恵太郎を否定していた。
「けーくんの考えてる事は贖罪じゃない。君島さんの言う通り、ただの自己満足だよ」
「お前に……何が分るんだよ」
「分るよ。あら方、神姫を好きになって、神姫を好きな人の気持ちを理解して、それで神姫を殺される人の気もちを理解しようとしたんでしょ? 伊達に生まれた時から一緒にいないよ」
「……じゃあ、何で俺を止める」
「何度でも言う。けーくんは間違ってる。けーくんがやった事は、神姫が好きな人に神姫を殺させる、そう言う事だ」
「それ、は、私が、言い、ました」
「……とにかく、けーくんがした事は間違ってる。それだけは言える」
 そこまで聞いた恵太郎は、空を眩しそうに見つめた。
「他に……考え付かなかった」
「けーくん。けーくんはどうかは分らないけど、僕はけーくんの事友達だと思ってる。僕だけじゃない。裕子先輩も、裕也先輩も、茜ちゃんも……それに、アリカちゃんも」
 そこで、一旦孝也は言葉を区切った。
「だから、もっと僕たちを頼ってよ。一人で考え付かないなら、皆で考えようよ」
 孝也は笑って言った。
 でも、その笑顔は恵太郎には眩しすぎた。
「……アリス」
 君島の一声で、アリスは彼女の肩に飛び乗った。
「聞きたい、事も、聞け、ました、から、私は、失礼、します」
 その後ろ姿を見つめがら、恵太郎は暫く逡巡していたが、結局、何も言えなかった。
「孝也、さん?」
 校舎へ続く扉の前で、ふと君島は立ち止った。
「私も、アリスも、神姫を殺さずに、済みまし、た。ありがとうございます」
「……うん」
「倉内……さん。私は、もう、疲れました。だから、もう、私の目の前の、現れないで」
 それだけ言うと、君島は答えを聞かずに立ち去った。
 恵太郎と孝也と、ナルの間に沈黙が漂った。
「……孝也、話はもう終わりか」
「まだだよ」
 そう言うと、孝也は校舎へ続く扉の中に首だけを突っ込み、何かを招く動作をした。
 それから間もなく、屋上にアリカが表れた。
「じゃあ、僕は下で待ってるよ」
「マスター、私も」
 孝也とナルはアリカと二三言葉を交わすと屋上から立ち去った。
「……師匠、隣いいですか?」
 少し戸惑いがちな、それでいて強い意志の込められた言葉に、恵太郎はただ頷く事しか出来なかった。
 恵太郎の隣に腰を下したアリカは、間髪入れずに口を開いた。
「師匠、私は……」
「アリカ」
 しかし、それは恵太郎の一言で止められた。
 気まずそうにするアリカを余所に、恵太郎は言う。
「お前、聞いてんだろ。俺の事」
「……はい」
 その問いに、アリカは素直に答えた。
「……俺には、師匠なんて呼ばれる資格、無いよ」
 空を見つめ、雲を見つめ、何処かを見つめる恵太郎の言葉が、虚しく響いた。
「俺には、人に好かれる資格なんて、無いよ」
 その言葉は、アリカだけに言ったのでは無く、恵太郎の知人全員に当てた言葉だった。
「だから、さ」
 次の言葉は、アリカにとって最も聞きたくない言葉で、恵太郎にとって最も言いたくない言葉だった。
「俺を……」
「師匠!」
 今度は、アリカが止める番だった。
「人が人を好きになるのに、資格なんているんですか!? 私が師匠を師匠と呼ぶ事に、何の資格がいるんですか!? 師匠は、私とトロンベを救ってくれたじゃないですか!? それで、私には十分です!」
 半分、悲鳴にも似たその叫びは、人のいない屋上に響き渡った。
「だから……師匠を好きな事は、許してください……」
 消え入りそうなか細い声、それでいて耳に残る不思議な声。
 しかし、恵太郎は空を眺めたまま、口を開いた。
「……アリカ、一人にしてくれないか」
「嫌です」
「こんな顔してんの、見られたくないんだよ……!」
「じゃあ、下向いてます」
 それから数分、恵太郎は静かに泣いた。
「……アリカ」
「はい」
「お前の気持ちは、嬉しい。今まで、誰かにそういう風に言われた事無かったから」
「はい」
「でも、今はまだ、答えられない」
「……はい」
「だけど、絶対に答える。だから、少しだけ待っててくれるか?」
「はい……師匠」
 それが、アリカの聞いた恵太郎の最後の言葉だった。


「ナル、久しぶり……かな」
「そうなりますね、マスター」
「俺、お前を二度も殺しちゃったんだな」
「三度目は無いですよ」
「ナル、俺はどうすればいいんだろうな」
「それをこれから探しに行くんでしょう、マスター」
「……ナル、一緒に来てくれるか?」
「イェス、マスター。何処までも、何時までも」
 そして、恵太郎は姿を消した。






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