山と森の台、響く神の音(後半)
まずは信州名物・蕎麦を昼食に供する為、国宝・松本城の方へと赴いた。
流石に他の有名な城程ではないが、なかなか風情があって良い天守閣だ。
その正門近くには、よい蕎麦屋が幾つか有ると聞く。その一店を訪ねた。
人当たりの良さそうな所謂“おばちゃん”が、私達を座敷へと案内する。
流石に他の有名な城程ではないが、なかなか風情があって良い天守閣だ。
その正門近くには、よい蕎麦屋が幾つか有ると聞く。その一店を訪ねた。
人当たりの良さそうな所謂“おばちゃん”が、私達を座敷へと案内する。
「もし、ざるを……二人前もらおうか。出汁は小分けに、四人前頼もう」
「四人……?そっちのお人形さんまで食べるのかい、こりゃ珍しいねぇ」
「まぁ、普通ではないがな……?それより灯、お前は何を食べるのだ?」
「あ、ええと……ミニセット一つ。この娘らの分は、いらないのですな」
「あら、可哀想じゃない~?ああいいのよ、ここはおばさんに任せてっ」
「四人……?そっちのお人形さんまで食べるのかい、こりゃ珍しいねぇ」
「まぁ、普通ではないがな……?それより灯、お前は何を食べるのだ?」
「あ、ええと……ミニセット一つ。この娘らの分は、いらないのですな」
「あら、可哀想じゃない~?ああいいのよ、ここはおばさんに任せてっ」
灯が『ぅ゛ぁ゛~……』と止めるのも聞かず、おばちゃんは勝手に注文を
書き換えて、厨房へと入っていってしまった。肝心な所で押しが弱いな。
まぁ、この速度で進化を続けていくのならば何れは克服出来よう。有無。
書き換えて、厨房へと入っていってしまった。肝心な所で押しが弱いな。
まぁ、この速度で進化を続けていくのならば何れは克服出来よう。有無。
「なぁ、喰えるのか灯よ?先程、存分にトマトバーガーのセットを……」
「……ですなぁ……頑張りますが、厳しいのですな……う、う゛ぁぁッ」
「ご、ごめんなさい姉様!私達も人間の食事が出来たら、こんな事にっ」
「そーよ、そういえばなんで貴女達は物が食べられるのよ~!?きー!」
「さぁさぁ晶さん、貴方が洗いざらい吐いて!どうして食べられるの!」
「……ですなぁ……頑張りますが、厳しいのですな……う、う゛ぁぁッ」
「ご、ごめんなさい姉様!私達も人間の食事が出来たら、こんな事にっ」
「そーよ、そういえばなんで貴女達は物が食べられるのよ~!?きー!」
「さぁさぁ晶さん、貴方が洗いざらい吐いて!どうして食べられるの!」
私は一つ観念して、己が“妹”達に降りかかった因縁を解説してやる。
東杜田技研において修理を受けた際に得た、“特別な機能”である事。
欲しいからと言って一朝一夕に備わる機能ではなく、偶然であった事。
そして当然、私が頼んでも実装してもらえるかは五里霧中である事を。
それを聞いて、灯達は納得した様なしない様な微妙な表情で反芻する。
東杜田技研において修理を受けた際に得た、“特別な機能”である事。
欲しいからと言って一朝一夕に備わる機能ではなく、偶然であった事。
そして当然、私が頼んでも実装してもらえるかは五里霧中である事を。
それを聞いて、灯達は納得した様なしない様な微妙な表情で反芻する。
「マイクロマシンの……うぅんッ。晶ちゃんのコネは広いですなぁ」
「存外に狭い気もするがな。そう言う訳で、あまり期待はするなよ」
「え?それって、どういう事?渡りを付けてくれるっていうの!?」
「ここまで話しておいて無理だから諦めろ、では無体だろうからな」
「もしもOKだったら、一緒に名物でも食べ合いっこしますの~♪」
「存外に狭い気もするがな。そう言う訳で、あまり期待はするなよ」
「え?それって、どういう事?渡りを付けてくれるっていうの!?」
「ここまで話しておいて無理だから諦めろ、では無体だろうからな」
「もしもOKだったら、一緒に名物でも食べ合いっこしますの~♪」
但しロッテ達が食事機能を得たのはあくまで“実験”だ。ここが肝要。
無論、了承してもらえるか等分かった物ではない。あくまでも礼儀だ。
もし話が進んだとしても、私の手を通るかは分からないしな……そして
未曾有の蕎麦タイムは唐突に訪れ、存分に私達を蹂躙していった……!
無論、了承してもらえるか等分かった物ではない。あくまでも礼儀だ。
もし話が進んだとしても、私の手を通るかは分からないしな……そして
未曾有の蕎麦タイムは唐突に訪れ、存分に私達を蹂躙していった……!
「……けふ、貴様が彼処で断れれば!こんな事にはならなかった!」
「そ、そうは言ってもあの勢いはなかなか……けぷ、難しいですぞ」
「あぅ~……もうおなか一杯ですの~……クララちゃん、大丈夫?」
「ボクはキャパシティがそろそろ限界かな……アルマお姉ちゃん?」
「風味があって美味しかったですね~♪ごめんなさい、ミラさん達」
「う、羨ましくなんて無いんだから!本当、なんだから……うぅ~」
「そ、そうは言ってもあの勢いはなかなか……けぷ、難しいですぞ」
「あぅ~……もうおなか一杯ですの~……クララちゃん、大丈夫?」
「ボクはキャパシティがそろそろ限界かな……アルマお姉ちゃん?」
「風味があって美味しかったですね~♪ごめんなさい、ミラさん達」
「う、羨ましくなんて無いんだから!本当、なんだから……うぅ~」
とどのつまり、アルマ以外は腹一杯になってしまい暫く動けなかった。
アルマめ、明らかに普段の倍近く平らげたが……蕎麦に心躍ったのか?
そして私達は重い腹を引きずって市街周遊バスに乗り、郊外の浴場へと
赴いた。チケットを買って受付で事前説明をし、神姫と共に入浴する。
アルマめ、明らかに普段の倍近く平らげたが……蕎麦に心躍ったのか?
そして私達は重い腹を引きずって市街周遊バスに乗り、郊外の浴場へと
赴いた。チケットを買って受付で事前説明をし、神姫と共に入浴する。
「……はぁ~♪サウナと露天風呂、如何です。温泉じゃないですけどっ」
「遠くに見える八ヶ岳は綺麗で、風呂もそこそこ良い。お前達はどうだ」
「ひからびちゃいます……いえ、神姫だからひからびはしないんですが」
「熱気浴は、精密機械のボクらには初めての経験なんだよ。大丈夫かな」
「だいじょぶ!何度かきた私達が保証するわよ!この通……あうッ!?」
「イリンさん!?“簀の子”の隙間に脚引っかけたら危ないですの~!」
「遠くに見える八ヶ岳は綺麗で、風呂もそこそこ良い。お前達はどうだ」
「ひからびちゃいます……いえ、神姫だからひからびはしないんですが」
「熱気浴は、精密機械のボクらには初めての経験なんだよ。大丈夫かな」
「だいじょぶ!何度かきた私達が保証するわよ!この通……あうッ!?」
「イリンさん!?“簀の子”の隙間に脚引っかけたら危ないですの~!」
慌てて私と灯はイリンを抱き起こす……こら貴様、見るんじゃないッ!?
汗だくな乙女の肌など見るな!ほら、あっちを向いていろッ!全く……。
まぁ灯の言う通り、風呂が浅間や白骨等の“温泉”でないのは残念な所。
しかし大自然を望める場所での風呂と言うだけで、私達には十分だった。
汗だくな乙女の肌など見るな!ほら、あっちを向いていろッ!全く……。
まぁ灯の言う通り、風呂が浅間や白骨等の“温泉”でないのは残念な所。
しかし大自然を望める場所での風呂と言うだけで、私達には十分だった。
「冷却水は十分に補給しろよ、お前達や。オーバーヒートしたら、事だ」
「は~いですの~♪んぐ、んぐ……んぐっ。ぷぁ~、生き返りますの♪」
「なんかロッテちゃん、親父っぽいわよ?でもお風呂上がりの水だしね」
「水分で“生き返る”感覚、っていうのがよく分かるんだよ……はふぅ」
「はぁ~……ティニアさん、この後はパイプオルガンなんでしたっけ?」
「は~いですの~♪んぐ、んぐ……んぐっ。ぷぁ~、生き返りますの♪」
「なんかロッテちゃん、親父っぽいわよ?でもお風呂上がりの水だしね」
「水分で“生き返る”感覚、っていうのがよく分かるんだよ……はふぅ」
「はぁ~……ティニアさん、この後はパイプオルガンなんでしたっけ?」
遠くに霞む山並みを眺めつつ皆で水分を取り、ついでに気合いの入った
衣装に着替える。私は東京から持ってきた、一張羅の白い衣装を着る。
まさか着る事になるとは思わなかったが……ロッテ達“私の妹達”にも
秋物の試作品を改造した、少々深い色合いの“お揃い”を着せてやる。
灯も黒っぽいドレスに着替え、ミラ達もそれに倣って“お色直し”だ。
衣装に着替える。私は東京から持ってきた、一張羅の白い衣装を着る。
まさか着る事になるとは思わなかったが……ロッテ達“私の妹達”にも
秋物の試作品を改造した、少々深い色合いの“お揃い”を着せてやる。
灯も黒っぽいドレスに着替え、ミラ達もそれに倣って“お色直し”だ。
「お邪魔しますの~……うわ、おっきいですの……ッ!?」
そしてパイプオルガンのあるホールに入った時……私達の誰もがロッテと
同じ感想を抱いた。それは“灯の妹達”である三人にしても同じらしい。
灯は無粋なボイスチェンジャーを、着替えた時から外している。それは、
神姫に荘厳で純粋な音を聞かせたいという、灯なりの思いやりの様だな。
同じ感想を抱いた。それは“灯の妹達”である三人にしても同じらしい。
灯は無粋なボイスチェンジャーを、着替えた時から外している。それは、
神姫に荘厳で純粋な音を聞かせたいという、灯なりの思いやりの様だな。
「成程、これが現物か……音はCD等で時々聞くが、ナマは初めてだ」
「そろそろ始まるみたいですな、神姫の皆は吃驚しない様……お願い」
「あ、はい姉様……皆、吃驚するわ──────ッ!?来たぁ……!」
「う、わぁ……!躯がビリビリ痺れて、音が全身に飛び込んできます」
「く……神姫の素体には、なかなかヘヴィな神の音なんだよ……!!」
「でもこれ……とっても、とっても……綺麗な音ですの……ふふっ♪」
「そろそろ始まるみたいですな、神姫の皆は吃驚しない様……お願い」
「あ、はい姉様……皆、吃驚するわ──────ッ!?来たぁ……!」
「う、わぁ……!躯がビリビリ痺れて、音が全身に飛び込んできます」
「く……神姫の素体には、なかなかヘヴィな神の音なんだよ……!!」
「でもこれ……とっても、とっても……綺麗な音ですの……ふふっ♪」
──────神々しい音で皆、浄められていく気がするね。