水辺に泳ぐ女神達──あるいは入水(後半)
人が大幅に減っているとはいえ、まだまだ気温は泳ぐにふさわしい。
しかも閑散と言う程でもない程々の喧噪は、のんびり皆で水辺遊びを
楽しむには、最適な環境と言えた。早速、造波プールの側を陣取る!
しかも閑散と言う程でもない程々の喧噪は、のんびり皆で水辺遊びを
楽しむには、最適な環境と言えた。早速、造波プールの側を陣取る!
「海だぁッ!……いや、気分だけだがそれでいいのだ!どうだ、皆?」
「きゃははっ♪湯船以外で大きな水辺は、わたし久しぶりですの~♪」
「あたしとクララちゃんは初めてです……本当、海みたいですよねぇ」
「……以前に水上バスから見たけど、こうして触れるのは初めてだよ」
「きゃははっ♪湯船以外で大きな水辺は、わたし久しぶりですの~♪」
「あたしとクララちゃんは初めてです……本当、海みたいですよねぇ」
「……以前に水上バスから見たけど、こうして触れるのは初めてだよ」
パレオを腰に纏ったロッテ達は、心地よい音を奏でている水辺に立ち、
その感触を確かめている。そう、離れた所で見たりヴァーチャル空間で
感じた事はあっても、リアルに泳ぐ為の水辺は初めてなのだ……まぁ、
アルマはよく湯船で泳いだりするのだが。それはそれ、これはこれだ。
その感触を確かめている。そう、離れた所で見たりヴァーチャル空間で
感じた事はあっても、リアルに泳ぐ為の水辺は初めてなのだ……まぁ、
アルマはよく湯船で泳いだりするのだが。それはそれ、これはこれだ。
「あまり沖に往くなよ?奥の方にある排水口に巻き込まれたら事だぞ」
「……分かったんだよ、マイスター。じゃ、皆……コレで遊ぼうよっ」
「あ、それはスーパーボール!クララちゃん、持ってきたんですか?」
「うん。この間買ったけど家じゃ遊べないからね、アルマお姉ちゃん」
「じゃあそれで、ビーチバレーしますの~♪クララちゃん、ぱーす♪」
「……分かったんだよ、マイスター。じゃ、皆……コレで遊ぼうよっ」
「あ、それはスーパーボール!クララちゃん、持ってきたんですか?」
「うん。この間買ったけど家じゃ遊べないからね、アルマお姉ちゃん」
「じゃあそれで、ビーチバレーしますの~♪クララちゃん、ぱーす♪」
『そぉれっ♪』という黄色い声が、耳に届く。黄色のスーパーボールを
ビーチボール代わりに、三人が水を蹴りつつトスの応酬を繰り広げる。
弾性に富むボールでビーチバレーが出来る“妹”達の能力も驚きだが、
純粋に考えて、実に眩しい光景だ……。あの笑顔、あの水着、あの躯。
側にいてくれる彼女らの楽しそうな姿が、堪らなく愛らしいのだッ!!
浮き輪を膨らませながら、そんな事を思い……つい頬が緩んでしまう。
ビーチボール代わりに、三人が水を蹴りつつトスの応酬を繰り広げる。
弾性に富むボールでビーチバレーが出来る“妹”達の能力も驚きだが、
純粋に考えて、実に眩しい光景だ……。あの笑顔、あの水着、あの躯。
側にいてくれる彼女らの楽しそうな姿が、堪らなく愛らしいのだッ!!
浮き輪を膨らませながら、そんな事を思い……つい頬が緩んでしまう。
「んっ……アルマお姉ちゃん、パスなんだよっ……とと、んしょっ」
「はい、もう一回クララちゃん~♪……あ、大丈夫です?よっと!」
「“ゲヒルン”の副作用もあるから、辛いかな……けど楽しいもん」
「とと……なら、もう一回クララちゃんですの。今度は“深く”ッ」
「きゃっ……!?あ、あぷ……波に引きずり込まれるんだよ……!」
「はい、もう一回クララちゃん~♪……あ、大丈夫です?よっと!」
「“ゲヒルン”の副作用もあるから、辛いかな……けど楽しいもん」
「とと……なら、もう一回クララちゃんですの。今度は“深く”ッ」
「きゃっ……!?あ、あぷ……波に引きずり込まれるんだよ……!」
そう言って、何度かのリレーをしていた時だった。大きな波に蹌踉めいた
クララが倒れ込み、そのまま“引き”の汐に吸い込まれてしまったのだ!
無機物で出来ている神姫の容積比重量は、当然だが人間よりも若干重い。
ヒレ等の適切な用具が無ければ、立ち泳ぎだけで相当なパワーを要する!
しかもクララの身体能力は生来の不調もあって、決して高いとは言えぬ。
クララが倒れ込み、そのまま“引き”の汐に吸い込まれてしまったのだ!
無機物で出来ている神姫の容積比重量は、当然だが人間よりも若干重い。
ヒレ等の適切な用具が無ければ、立ち泳ぎだけで相当なパワーを要する!
しかもクララの身体能力は生来の不調もあって、決して高いとは言えぬ。
「あぶ、おぷ……ま、マイスター!助けて、たす……っ、ごぼぼ……」
「クララちゃん!マイスター、クララちゃんが!クララちゃんがッ!」
「このままじゃ沖の造波装置や排水口に巻き込まれちゃいますの!!」
「ッ──────!クララぁッ!!?……がぼ!ごぼ……ごぼぼ?!」
「クララちゃん!マイスター、クララちゃんが!クララちゃんがッ!」
「このままじゃ沖の造波装置や排水口に巻き込まれちゃいますの!!」
「ッ──────!クララぁッ!!?……がぼ!ごぼ……ごぼぼ?!」
慌てて引き返し叫ぶロッテとアルマの姿を見て、私は既に動いていた。
己でも信じられぬ速度で波へと飛び込み、流され沈み往くクララの躯を
掴む!そしてそのまま潜水する姿勢で泳いで岸を目指し、水死体の如く
打ち上げられたのだ。正直物凄く苦しかったが、無事に助かった様だ。
己でも信じられぬ速度で波へと飛び込み、流され沈み往くクララの躯を
掴む!そしてそのまま潜水する姿勢で泳いで岸を目指し、水死体の如く
打ち上げられたのだ。正直物凄く苦しかったが、無事に助かった様だ。
「ぷ、ぷはぁ……けほけほけほっ、だ……大丈夫かクララやッ!?」
「うん、計算通り……マイスターはちゃんと助けに来てくれたもん」
「こほこほッ!?ちょ、ちょっと待て!“計算通り”?……まさか」
「うん、計算通り……マイスターはちゃんと助けに来てくれたもん」
「こほこほッ!?ちょ、ちょっと待て!“計算通り”?……まさか」
クララの無事を確認した後、慌てて眼鏡……普通の品だ……を掛け直し
陣地の方を見てみる。そこには、潜水用具を完全装備したアルマの顔と
舌を出して照れくさそうに笑うロッテの顔があった……嵌められたか?
陣地の方を見てみる。そこには、潜水用具を完全装備したアルマの顔と
舌を出して照れくさそうに笑うロッテの顔があった……嵌められたか?
「お前達、よもや私が飛び込んで助けに行くと踏んで……芝居を?」
「はいですの。ごめんなさい、マイスター……でも“苦手意識”は」
「この際、無くしてほしかったんです。一緒に遊びたいですからね」
「……だから、ボクが囮になってみたんだよ。怒られる覚悟の上で」
「ば、ば……馬鹿者!決まってるだろう!……本当に何かあったら」
「はいですの。ごめんなさい、マイスター……でも“苦手意識”は」
「この際、無くしてほしかったんです。一緒に遊びたいですからね」
「……だから、ボクが囮になってみたんだよ。怒られる覚悟の上で」
「ば、ば……馬鹿者!決まってるだろう!……本当に何かあったら」
水に濡れたクララを、そっと胸元に抱いて震える……ひょっとしたら、
この時私は泣いていたかもしれんな。私の為にそこまでする健気さと、
その為に無謀を働いた彼女らに対する、僅かな怒り……そして喜びに。
この時私は泣いていたかもしれんな。私の為にそこまでする健気さと、
その為に無謀を働いた彼女らに対する、僅かな怒り……そして喜びに。
「私なぞの為にお前達を失うなんて事になったら、どうすればいい!?」
「……ごめんなさいなんだよ。でも、マイスターは泳いでくれたもんね」
「あの時は綺麗でしたの、人魚みたいで……でも、ごめんなさいですの」
「すみません……お詫びはどんな事でもしますから、怒らないで下さい」
「……ごめんなさいなんだよ。でも、マイスターは泳いでくれたもんね」
「あの時は綺麗でしたの、人魚みたいで……でも、ごめんなさいですの」
「すみません……お詫びはどんな事でもしますから、怒らないで下さい」
アルマの言葉を受けて、皆が哀願する様な瞳で私の方を見上げている。
水に濡れた髪を掻き上げ、私は告げる。一つ、勝手な無謀はしない事。
そして……私を泳がせる為に、そこまでした彼女らに対する褒美をな!
水に濡れた髪を掻き上げ、私は告げる。一つ、勝手な無謀はしない事。
そして……私を泳がせる為に、そこまでした彼女らに対する褒美をな!
「……無謀をせぬと誓うなら、今から流れるプールでたゆたうか?」
「は……はい!有り難うございます、マイスター!ロッテちゃんッ」
「はいですの♪泳ぐ様になったマイスターと、一緒に泳ぎますの!」
「人魚姫みたいなマイスターと一緒なら、ボクらも大丈夫なんだよ」
「は……はい!有り難うございます、マイスター!ロッテちゃんッ」
「はいですの♪泳ぐ様になったマイスターと、一緒に泳ぎますの!」
「人魚姫みたいなマイスターと一緒なら、ボクらも大丈夫なんだよ」
──────悪戯っ子達の夏、最後まで楽しもうね。