水辺に泳ぐ女神達──あるいは入水(前半)
2037年の夏もピークを過ぎ、秋の気配が密かに忍び寄っている。
私・槇野晶も稼ぎ時に働き、また“妹”たる神姫達と共に様々な所へ
物見遊山に出かけたが……思えば“夏らしい事”は余りしていない。
そこで、私は彼女らにこんな提案をしてみる事としたのだな。有無。
私・槇野晶も稼ぎ時に働き、また“妹”たる神姫達と共に様々な所へ
物見遊山に出かけたが……思えば“夏らしい事”は余りしていない。
そこで、私は彼女らにこんな提案をしてみる事としたのだな。有無。
「なぁ、皆……八月最後の定休日、ここは一つ泳ぎにでも行かぬか?」
「え?!い、いいんですかマイスター?でも、水着なんてあります?」
「案ずるな、ちゃんと作っておいた。だからこそ、今日しかないのだ」
「……塾の宿題も終わったし、それならボクらも安心して行けるかな」
「でも……マイスター、本当に……ほんっとうに“大丈夫”ですの?」
「え?!い、いいんですかマイスター?でも、水着なんてあります?」
「案ずるな、ちゃんと作っておいた。だからこそ、今日しかないのだ」
「……塾の宿題も終わったし、それならボクらも安心して行けるかな」
「でも……マイスター、本当に……ほんっとうに“大丈夫”ですの?」
ロッテが、何度も念を押す様に私を見上げて問い掛ける……そう言えば
あの事を知っているのは彼女だけだったか。心配するのも無理はない。
だがそれ故に連れていってやらないというのは、“妹”達が可哀想だ。
あの事を知っているのは彼女だけだったか。心配するのも無理はない。
だがそれ故に連れていってやらないというのは、“妹”達が可哀想だ。
「む……正直、カナヅチが治ったとは言い難い。苦手は克服したがな」
「ふぇ?ま、マイスターって泳げないんですか?そんな印象は~……」
「……泳ぎが下手なだけであって、入水即溺死等という事はないぞ?」
「それでも意外なんだよ。インドア派でも結構動くもん、マイスター」
「歩くのはいい、走るのも蹴るのもな。だが……イマイチ泳ぎはなぁ」
「ふぇ?ま、マイスターって泳げないんですか?そんな印象は~……」
「……泳ぎが下手なだけであって、入水即溺死等という事はないぞ?」
「それでも意外なんだよ。インドア派でも結構動くもん、マイスター」
「歩くのはいい、走るのも蹴るのもな。だが……イマイチ泳ぎはなぁ」
準備をしつつも私は鼻を掻く。何故か水が苦手でな、理由は分からん。
ロッテと暮らし始めたばかりの頃は本当に酷くて、文字通り溺れたな。
今はマシだが、まだまだ自在に泳げるとは言い難い。浮き輪は必須だ。
と言う訳で愛用の浮き輪を、空気を抜いた状態でバッグへと押し込む。
……待てそこ、笑うな!?猫柄の浮き輪位、別に構わぬだろうがッ!!
ロッテと暮らし始めたばかりの頃は本当に酷くて、文字通り溺れたな。
今はマシだが、まだまだ自在に泳げるとは言い難い。浮き輪は必須だ。
と言う訳で愛用の浮き輪を、空気を抜いた状態でバッグへと押し込む。
……待てそこ、笑うな!?猫柄の浮き輪位、別に構わぬだろうがッ!!
「なら、アルマお姉ちゃんは……クララちゃん、お願いしますの♪」
「わかったんだよ。これもマイスターの為だもんね……大丈夫かな」
「いざとなったら、あたしが動きますから……って、マイスター?」
「……いや、さっきから何を相談している?皆、準備は出来たのか」
「わかったんだよ。これもマイスターの為だもんね……大丈夫かな」
「いざとなったら、あたしが動きますから……って、マイスター?」
「……いや、さっきから何を相談している?皆、準備は出来たのか」
貴様らを咎める間、ロッテ達は何事か密談をしていた様だ。気になるな。
まあ、深く追求してもしょうがない。皆が水着と足ヒレ等を用意したのを
見届け、私も替えの服やアンダー等をバッグに詰め込んで、ビルを出る。
照り付ける様な“クレイジーな”暑さを堪えつつも、ノースリーブの私は
両肩と胸ポケットに神姫を搭載するお決まりのスタイルで、電車に入る。
まあ、深く追求してもしょうがない。皆が水着と足ヒレ等を用意したのを
見届け、私も替えの服やアンダー等をバッグに詰め込んで、ビルを出る。
照り付ける様な“クレイジーな”暑さを堪えつつも、ノースリーブの私は
両肩と胸ポケットに神姫を搭載するお決まりのスタイルで、電車に入る。
「ふぅ……ミストでワンクッション置いても、この寒暖差は堪えるな」
「相変わらず、車両の冷房は殺人的に効いてるんだよ……電気の無駄」
「MMSのあたし達は何ともないですけど、マイスター大丈夫です?」
「む?少々冷えるな。ビルの居住区も結構エアコンは効かせてあるが」
「でも個人的な好みに配慮がない分、ここの方が数段寒いですの……」
「相変わらず、車両の冷房は殺人的に効いてるんだよ……電気の無駄」
「MMSのあたし達は何ともないですけど、マイスター大丈夫です?」
「む?少々冷えるな。ビルの居住区も結構エアコンは効かせてあるが」
「でも個人的な好みに配慮がない分、ここの方が数段寒いですの……」
ぼやいてもしょうがないとは理解しているが、流石にこれは肌に悪い。
極力風の当たらない席に座り、急ぎ海浜区域のレジャー施設を目指す。
夏休みの盛を過ぎた今ならば、都心と言えども混雑は若干緩和される。
案の定、たどり着いたプールの人混みはテレビで見る程多くなかった。
極力風の当たらない席に座り、急ぎ海浜区域のレジャー施設を目指す。
夏休みの盛を過ぎた今ならば、都心と言えども混雑は若干緩和される。
案の定、たどり着いたプールの人混みはテレビで見る程多くなかった。
「さて、着いたぞ皆。まず入場券を買ってと……大人一人頼めるか」
「え、え?あのお嬢ちゃん?……お父さんかお母さん、いないの?」
「馬鹿者ッ!この通り、私は子供料金ではないぞ!……それからだ」
「す、すみませんすみませんっ!……え、これは武装神姫、です?」
「え、え?あのお嬢ちゃん?……お父さんかお母さん、いないの?」
「馬鹿者ッ!この通り、私は子供料金ではないぞ!……それからだ」
「す、すみませんすみませんっ!……え、これは武装神姫、です?」
最初から子供扱いする不埒な受付嬢を喝破し、“妹”達を台へ降ろす。
彼女らの扱いがどうなっているのか、今回はリサーチしなかったのだ。
という訳で、彼女ら自身の口から自分達の処遇について聞いてもらう。
彼女らの扱いがどうなっているのか、今回はリサーチしなかったのだ。
という訳で、彼女ら自身の口から自分達の処遇について聞いてもらう。
「はいですの♪わたし達は料金とか必要ですの、受付のお姉さん?」
「え?え、えーと……持ち込みはいいですけど、水は大丈夫です?」
「はいッ。水中で胸を開いたりしなければ、なんともありません!」
「そう言う物なんですね……わ、分かりました。でも壊れても……」
「弁償はしない、だね?それ位はボクらも分かってるもん、大丈夫」
「え?え、えーと……持ち込みはいいですけど、水は大丈夫です?」
「はいッ。水中で胸を開いたりしなければ、なんともありません!」
「そう言う物なんですね……わ、分かりました。でも壊れても……」
「弁償はしない、だね?それ位はボクらも分かってるもん、大丈夫」
受付の若い娘は、神姫を知っている様だった。説明の手間が省けたな。
そう言う訳できちんと私の入場料を払い、四人で女子更衣室へと赴く。
……こら、此処からは見るなッ!!女子の着替えを覗くな貴様ぁッ!?
そう言う訳できちんと私の入場料を払い、四人で女子更衣室へと赴く。
……こら、此処からは見るなッ!!女子の着替えを覗くな貴様ぁッ!?
「マイスターの水着はセパレートタイプなんですの?ってこれは~……」
「有無、お前達と同じデザイン……というより、この水着を元にだな?」
「あたし達の水着を作ったんですね?柄や色は違ってますけど……ふふ」
「皆、お揃いなんだよ……パレオまであるもん、マイスターに感謝だよ」
「有無、お前達と同じデザイン……というより、この水着を元にだな?」
「あたし達の水着を作ったんですね?柄や色は違ってますけど……ふふ」
「皆、お揃いなんだよ……パレオまであるもん、マイスターに感謝だよ」
──────ちょっと遅い夏、精一杯堪能するよっ。