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**再誕せし、哀しき神の姫(前半)
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常連・田中の車に乗る事、およそ数十分。着いたのはM市である。
ロッテ及びクララ用の保全用部品一式を店から担ぎ出して、猪刈に
破壊された神姫の修復を手伝ってもらおうと、ここを訪れたのだ。
無論金は掛かるが、そんな物を惜しんで彼女を死なせはせんッ!!
「電話をした槇野だ!夕方なのにすまんが、頼めるか!!」
「はいっ、おにーさまが待っています!はやくはやくっ!」
「つ、ツガルタイプ?……分かった、案内してくれんか?」
そうして2人と3体の神姫で飛び込んだ先は、あの東杜田技研。
出迎えてくれたのは、レインディア・バスターに跨ったツガル。
話を聞くに、Dr.CTa女史は本業の方がアップアップ気味らしい。
女史の……会社の専門分野はマイクロマシン系。神姫ばっかりを
面倒見ている訳にはいかんしな……我が侭を、心中で詫びよう。
そして通された先にいたのは、一人の若き青年技術者であった。
「電話のあった槇野さん……ですね、待ってましたよ」
「あ、いや……オレは付き添いの田中っす、こっちが」
「此方だっ!私が槇野で、患者はこのストラーフだ!」
「え?!あ、え……ってそれ所じゃないか、この娘?」
懸命な判断だ。それは兎も角“あくまたん”は無惨な姿だった。
四肢は砕け散り腰は胴体からもぎ取られ、首も横にへし曲がって
絶望の表情を浮かべたまま、凝り固まっている……悪夢の様だ。
システムは完全破損する前に止めたが、いずれ崩壊するだろう。
その前にコアレベルから修復せねば、待っているのは“死”だ。
「CSCやコアにも物理的損傷があるかもしれん、頼んだぞ」
「……マイスター。データ破損は、停止前で凡そ36%だよ」
「え!?……わかりました。マーヤ、準備はできてるかい?」
「はい!おにーさま、早くこの娘を助けて差し上げましょう」
必要なパーツ……即ち研究所に今足りてない保全用部品を渡して、
私達は精密加工室の前で待つ事となった。使用中のランプが灯る。
手術の終わりを待つ家族の気持ちとは、こういう物かもしれんな。
「クララ。お前にしか出来ぬ事とはいえ、すまなかったな」
「ボクの力で姉妹の命が救えるなら、いくらでもやるもん」
「有無……ロッテ、恐らく蘇生後はお前の力が必要になる」
「はいですの……マイスター、わたしの責任もありますし」
「責任は兎も角、間違ってはいない。あの娘も分かる筈だ」
“あくまたん”のデータ崩壊を外部から阻止し続けたクララを労い、
これから彼女と真っ直ぐ向き合う事になるロッテを、励ましてやる。
あの一件、今頃何処かで騒動になっているかもしれんが放置確定だ。
今は“あくまたん”……いや、あの神姫の無事を一心に祈り続ける。
そして、田中を一度食事に送り出し……4時間、私達は待っていた。
「槇野さん、終わりました。どうにか一命は取り留めましたよ」
「おお!終わったか!?だが、“AIPTD”はどうなった?」
「……分かりましたか。まあ逢ってみればわかります、マーヤ」
本来なら喜ぶべき報の筈だが、私も彼……Mk-Zもいい顔はせんぞ。
経緯を考えれば、生き返った“彼女”がどうなったか予想は付く。
AIPTDとは“人工知性心的外傷症候群”の略称なのだからな。
案の定、二人の神姫の口論……否。より厳密には嘆きが聞こえる。
「い、いや……人間になんて逢いたくないよぉ……!」
「でも、ずっと此処にはいられません。さ、一度……」
「嫌だ、嫌ぁ!あたし壊される、また殺されちゃう!」
マーヤと呼ばれるツガルタイプに引かれ、“彼女”が現れた。
私が用意した、破壊に強い特殊強化型フレームと琥珀色の瞳。
これらは無事、“彼女”の欠損部を補うのに一役買った様だ。
だが救命救急を最優先した為、躯の塗装は継ぎ接ぎだらけだ。
とは言え機能的には十分であり、後の処理は私が行えばいい。
最大の問題は……そう、この通り。神姫の“心の傷”なのだ。
「……また逢ったな、生き返ってくれて本当に良かった」
「あ!?あ、ああ……あなたはあの時の……やあっ!?」
私の顔を見るなり、“彼女”は逃げようと走る。無理もない。
“彼女”にとって見れば、私はトラウマの種……“人間”だ。
しかも、バトルで負けさせ猪刈の本性をさらけ出した張本人。
万が一武装していれば対人攻撃抑制コードを振り解いてでも、
私を蜂の巣にしただろうな。神姫の“心”はそれ程深い物だ。
「……待って、わたし達は一度お話がしたいんですの!」
「きゃあっ!?あ、貴女は……あの時の、天使型神姫?」
「わたしは“戦乙女”。お姉ちゃんを迎えに来ましたの」
「お姉、ちゃん……あたしが、あなた達の?……えっ?」
──────ならば“彼女”を抱きしめるのもまた、神姫なの。
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