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えむえむえす ~My marriage story~

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ウサギのナミダ
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 トイズ・メッセンジャー本社、スタッフルームを兼ねた二階のオフィス。
 まだ朝も早く、出勤しているスタッフの数は多くない。そんな中、隅の席に腰掛けて、静かに缶入りのコーヒーを傾けるのは……髪を短く切り揃えた細身の男。
 静かな刻。
 戦場に趣く前の、ひとときの安らぎの時間。
「マンダムとか何とかグダグダしてないでとっとと行くのです!」
 そんな男の後頭部を和独辞典でぶん殴ってきたのは、六十センチの小柄な人型だ。
 背表紙ではない。
 角だ。
 既にここは、戦場なのであった。
「何スかっ! 朝の時間くらい落ち着いてコーヒー飲んだって良いじゃないッスか!」
「てめえら兵士にそんな時間はないのです。ここはもう戦場なのですよ! とっとと突っ込んでおっ死ねです! アハトアハトですよ!」
 和独辞典をぽいと放り投げ、次に構えるのは独和辞典。
 一撃目に叩き付けた和独辞典の、三割増しの厚さがある。
「キリコさーん。出る準備、出来ましたよー」
 そんな男に掛けられたのは、少年の声だ。
 レーシングパンツとジャージの上に、会社のロゴの入った細身のベスト。合わせて社名入りのメッセンジャーバッグも提げている。
 少年……武井峡次が社の所属となってしばらく経つ。いまだ研修中で独り立ちさせてもらえない身だが、それでも出発前の準備くらいは一人で出来るようになっていた。
「おう。行く行く! 支度お疲れっス、新人」
「……何飲んでるんですか? キリコさん」
 そんな少年の問いに、キリコは缶コーヒーをそっと掲げ、記されたラベルを見せてみせる。
 さっきまでの妙に軽い口調がなければ、それなりに様になる光景であった。
「独活コーヒー」
「……独活で、コーヒー?」
 世の中には豆だけでなく、ゴボウやタンポポを代用コーヒーとして焙煎する習慣があるが……それと同じ原理だろうか。
「限定品」
 それは本当に限定なのではなく、あまり売れなかったからじゃないかと思ったが、流石に先輩のやる事だ。そこまでは口に出さないでおく。
「独活のコーヒーは、苦い。飲む?」
「遠慮しときます」
 もともとのコーヒーもそこまで好きではない峡次だ。その上さらによく分からない原料で作られたコーヒーを、まだ独り立ちも出来ない仕事の前に飲む度胸はない。
「ウドの大木が何言ってるですか。新人をさっさと使えるように頑張って仕込むですよ! パンツァーフォー!」
 そして、キリコの頭に降ってきたのは和独辞典よりもさらに分厚い漢和辞典だった。
 無論、角である。
「それじゃ、行ってくるな! ノリ!」
 巨大なタンコブで身長半割増になったキリコをせき立てながら、峡次は階下の自転車置き場へと降りていく。
「はい! 気を付けてくださいね、峡次さん!」
 それを事務所のテーブルから見送るのは、身長十五センチの小さな姿。

 出掛ける峡次は実地研修。
 見送るノリは事務所での研修。

 まだまだ新人の二人が独り立ち出来るようになるのは、もう少しだけ、先のお話。


マイナスから始める初めての武装神姫

その15



 急速回避からの再照準。
 動作開始からロックオン終了まで、7カウント。
 一連の処理をチェックして、不要な動作やルーチンの最適化。
「ふぇぇ……」
 峡次さんが研修に出発して、一時間ほど。
 ずっとミドリさんの特訓を受けてますけど、ミドリさんの特訓は、最適化に次ぐ最適化。神姫の訓練に反復練習からの動作最適化が有効なのは分かってますが、要求するオーダーはものすごく厳しいです。
「甘いですよ! 7カウントもあったら相手はとっくにチビチビ神姫は三枚におろされてるですよ。5カウントで決めて、逆に相手を蜂の巣にしてやるです!」
「は、はいっ!」
 でもこれが峡次さんのお仕事のお役に立てるなら……わたしも頑張らないといけません。
 対戦車砲の取り回しが、峡次さんの自転車便のお仕事にどういう形で役に立つのかは分かりませんでしたけど……。ミドリさんがこれだけ熱心に教えてくれるんだから、きっと役に立つんでしょう。
 たぶん。
「で、でも……疲れましたぁ……」
 とはいえ、バッテリーはもう限界。
 朝出掛けるときは一杯まで充電したはずなのに。いつもなら一割くらいしか減っていない頃なのに、もう三割近くなくなってます。
 急速なバッテリー消費で、供給電圧が下がり気味なのもちょっと辛い感じが……。
「なんなのですか。へたばるにはまだ早いのですよ、チビチビ神姫! 立て! 立つんだジョーなのです!」
「ミドリさんは電力供給してるからいいかもしれませんけど……」
 多分、最適化の連続でプロセッサに負荷を掛けたのも良くなかったんだと思います。本体の熱も上がってますし、電圧の急な低下も、少し休めば落ち着くはずですけど……。
「口答えするなんて良い度胸なのです。……む」
 そんな話をしていると、事務所の電話が鳴りました。
 今日は社長の碧さんもお出かけしていてお留守です。
 いま事務所に残っているのは、わたしと、ミドリさんと……。
「マグナム! 電話なのです! とっとと出るのですよ!」
「え、俺ですかー?」
 テーブルの隅でメイドハンマーで使う機体の整備をしていたマグナムさんが、何だか嫌そうな顔をしました。
 峡次さんがわたしのパーツの細かい調整をしてくれている時に、千喜さんに声を掛けられた時と同じ顔です。たぶん、機体の細かい所を触っていたんでしょう。
「そんな事言うとミドリが電話出るですよ」
 スカートの下から伸びる電源ケーブルを大きく波打たせて、ミドリさんはさらにひと言。
「わかった! わかりましたから! すぐ出ますっ!」
 でも、ミドリさんのそんな言葉で、マグナムさんは慌てて電話に向かいました。
 ミドリさんが電話に出るの、良くないんでしょうか?
「大変お待たせいたしました! 迅速配達、トイズ・メッセンジャーでございますっ!」
「ふん。今日こそミドリのプリティートークを炸裂させてやれると思ったですのに」
「……はあ」
 どうやらミドリさんは、電話に出た事がないみたいです。
 そういえば、わたしも電話って使った事がありません。峡次さんが話している内容を、指向性マイクで拾うくらいはした事ありますけど……。
 クラスのお友達の中には、マスターの電話を代わりに受けられるキットを使っている子もいるので、そういうお手伝いもちょっとしてみたいです。
 もちろん今は、峡次さんのお仕事のお手伝いが出来るようになるのが最優先ですけど!
「まあいいです。なら、ちょっと休憩にしてやるのです。マグナム、休憩に付き合えです」
 電話のご用が終わったマグナムさんを連れて、充電ケーブルを外したミドリさんは休憩室に消えていきました。
 休憩室はミドリさんが使っている間は立ち入り禁止なので、わたしもしばらく休憩出来るみたいです。
「……ふぅ」
 事務所の机から、同じ部屋のスタッフ待機場所のテーブルに飛び移ります。
 そこにいたのは……さっきまでマグナムさんが整備していた、二人のロボットさんでした。
「あの……こんにちわ。お二人とも、初めまして……ですよね?」
 金色の細身の人も、帽子を被った丸っこい体型のかたも、面接の時のメイドハンマーで会った事がないかた達です。しかも、整備中だったからか、電源は入ったまま。
「そうだな。ミドリに研修されていたようだが、新人かい?」
「はい。先日からお世話になっています、ノリコと申します」
「私は百式だ」
「俺はマグナム」
「ええっと……マグナムさんは、SRWのかた、ですか?」
 百式さんは、わたしのライブラリの資料にありました。GFF規格で作られた、バトルホビーのかたのようです。
 でももう一人の、赤と白に色分けされた、帽子を被った丸っこいかたは、情報がありません。SRWはライブラリに登録しきれないかたがたくさんいますから、多分その関連だとは思うんですけど……。
「アイアンリーグを知らないか?」
「………?」
 ……ライブラリに該当なし。
「かつて提案された、我々のような小型ロボットを使って行うスポーツゲームだよ」
「ロボットが……スポーツ」
 百式さんが教えてくれましたけど、ちょっとイメージが沸きません。
 メイドハンマーみたいなバトルなら分かるんですけど、わたしとミドリさんとマグナムさんで、野球やサッカー……?
 ……ちょっと、無理そうです。
「神姫が生まれる前の事だからな。知らないのも無理はない」
 神姫バトルが盛んになる前に主流だったロボットバトルがSRW。その前が、GFF。
 この三つはGFFから繋がるルールと規格を使っていますから、SRWやGFFは神姫バトルのご先祖さまです。
 アイアンリーグというのも、そんなご先祖さまの一つなんでしょうか?
「今はないんですか?」
「ああ」
「どうして……?」
 SRWやGFFは、今でも神姫バトルのように盛んに行われています。だから、ご先祖さまというよりは、お兄ちゃんやお姉ちゃんといった感じなのかもしれませんけど……。
「……人が揃わなかったそうで」
 野球は、確かひとチーム九人で、対戦するなら十八人。
 サッカーは、ひとチーム十一人で、対戦するなら二十二人。
「あー」
 峡次さんが面接を受けた時に秋葉原であったメイドハンマー対決は、ひとチームで十人いるかいないかくらいでした。関東最大規模のチーム同士の対戦ってミドリさんが言っていたから、たぶんそうなんでしょう。
 神姫バトルの大会でも、二十人以上参加者がいれば、ちょっとした規模の大会って言われるくらいです。
 確かに試合のたびにそれだけの人数を集めるのは、厳しいのかもしれません。
「じゃあ、マグナムさんもスポーツロボットなんですか?」
「ああ。俺は野球ロボットだ」
 言われてみれば、左手は野球のグローブの形をしています。
 野球ロボットの肩に大口径砲が付いているのは、どうしてなのかよく分かりませんでしたけど。
「野球ロボットが……メイドハンマー」
「それが今の使命だからな」
「そうなん……ですか」
 使命……。
 わたし達神姫は、戦う事やマスターに喜んでもらうのが使命。だから、神姫バトルも戦うし、メイドハンマーもその延長です。マスターのお手伝いになるから、今の研修だって頑張れます。
 ときどきワガママを聞いてもらう事もありますけど……それだって、峡次さんが嬉しそうだから、わたしも安心して言える、なんて所があるわけで。
 でも、野球ロボットのマグナムさんは?
 アイアンリーグが一番の舞台なら、本当の使命は……。
「戦うよりもスポーツがしたい……とか、思ったりしないんですか?」
 ふと思いついたわたしの問いに。
「………?」
「………?」
 マグナムさんと百式さんは、それきり動きを止めて、黙り込んでしまいました。
「え、あ、あれ? マグナムさん? 百式さんっ!?」


 マグナムさんと百式さんは、わたしの質問に動きを止めたまま。
 メインカメラは灯ったままだから、バッテリーが二人同時に上がったわけじゃないはずですし……電圧低下なら事前警告が出るはずなんですけど。
 事務所にはわたし以外、誰もいません。ミドリさんとマグナムさんは休憩室から出てこないし、ミドリさんの休憩中に声を掛けるのは厳禁です。
 せめて、峡次さんや社長さんがいてくれればいいのに。
 どうしよう……。
「……どうしたの」
 どうすれば良いのか分からなくて困っていると、一階から百式さんが上がってきました。そうだ、百式さん、自転車の整備をしてたんだった……!
「あ、百式さん! マグナムさんと、百式さんが……」
 慌てるわたしに、女の人の百式さんはいつもの表情を変えないまま近寄って来て……GFFの百式さんを無造作に取り上げました。
「フリーズしてる。何かした?」
「あの、起動してたから、ちょっとお話を……」
 初めて会うかたでしたし、戦闘以外で起動してるGFFやSRWのかたとお話が出来る機会なんて、トイズの事務所でもほとんどない事だったから。
「……何か難しい質問、したでしょ」
「え、そんな事……」
 会話ログを遡ってみても、AIがフリーズするほど難しい質問をした覚えはありません。
「例えば、マグナム辺りに『スポーツロボットが戦って良いのか』とか」
「あ……」
 それは、しました。
 直近の会話です。
 わたしの様子に、百式さんはため息を一つ。
「GFFやSRWのロボットは、そういう難しい事考えられないように出来てるから。AIがフリーズする時もあるから、気を付けてね」
 百式さんは慣れた様子で胸部のハッチを開けて、中のスイッチをオフに。GFFの百式さんの頭頂部カメラから、淡いグリーンの輝きが消えていきます。
「ミドリさんは?」
 同じように、マグナムさんの電源もオフにします。……マグナムさん、あんなところに電源のスイッチがあるんですね。
「休憩するって、マグナムさんと休憩室に……」
「……あ、そ」
 百式さんはミドリさんが何をしているのか知ってるみたいです。小さくそう答えるだけで、それ以上わたしに何も聞こうとはしませんでした。
「あの……お二人とも、直りますかっ? もしかして、わたし……」
 AIが無限ループに陥ると、そのまま正常状態に復帰出来なくなる……なんていう話も聞いた事があります。わたしのせいで百式さんやマグナムさんがそんな事になってしまったら……。
「平気」
 泣き出しそうなわたしに、百式さんはやはり慣れた様子でGFFの百式さんとマグナムさんの電源を入れ直しました。
 二人のカメラアイに、再び明かりが灯って……。
「百式、出る!」
「正々堂々と、試合開始!」
「ほら直った」
「よ、良かったです……」
 どうやら、こういうフリーズ状態は珍しい事じゃないそうで。その都度、こうやってリセットを掛けるんだそうです。
「今の、内緒ね。またミドリさんに蹴られるから」
「はあ……」
 百式さんはいつもと変わらない表情でそう言うと、再び百式さんとマグナムさんの電源を落として電源ユニットに繋ぎました。
 どうやら、バッテリーも結構消費していたみたいです。
「マグナムが」
「マグナムさんが!?」
 蹴られるの、わたしじゃないんですか!?


「あの、百式さん」
 GFFの百式さんとマグナムさんが無事だったのを確かめた後、わたしは側の椅子に腰掛けている百式さんの名前を呼びました。
「あのお二人って……わたしたち神姫や、ミドリさんみたいに、悩んだりしないんですか?」
 百式さんは何も言いませんでしたけど、峡次さんがお話を聞いてくれる時みたいに、こちらに視線を向けてくれたので……多分、話しても良いんだと思う事にして。
「マグナムさんなんて、本当は野球ロボットなのに、今はメイドハンマーの隊員になってて……」
 GFFの百式さんや神姫のわたしは、元々がバトル用のロボットです。でも、マグナムさんはスポーツ競技用ロボットで、バトル目的に開発されたわけじゃありません。
「しないというか、出来ない」
「出来ない……?」
 よく、分かりません。
 考えるとすぐにフリーズしてしまうから、考えないって事でしょうか? でもそうすると、さっきみたいにフリーズはしないわけで……。
 ……あれ?
「あんまり難しい事、考えない方がいいよ。神姫のAIは悩めるように出来てるけど、そんなの答えなんか出ないから」
「はぁ……」
「……そもそも、ミドリだって戦闘用じゃない。でもアレ、どう見ても悩んでないでしょ」
 ……まあ、確かに。
 ドールは観賞と生活のフォローが目的だったはずですけど……戦ってるときのミドリさんは、わたし達バトル用に作られた神姫よりも楽しそうに戦っているように見えます。
 百式さんとそんな話をしていると、休憩室の鍵が開いて、中からミドリさんが出てきました。
「ああ。百式、来てたですか」
「お帰りなさい、ミドリさん」
 休憩室から戻ってきたミドリさんは、確かに元気一杯です。戦ってるのがどうかとか、悩んでる様子は全く見えません。
「さてチビチビ神姫、またOJT始めるですよ!」
「OJT?」
「お前に、地獄の、特訓をしてやる! の略です!」
「ふえぇっ!?」
 もしかして、さっきまでの特訓よりももっと厳しい特訓なんでしょうか。
 帰りまで、ちゃんとバッテリー持つかなぁ……。さっきの休憩時間の間に、充電もしておけば良かったのかもしれません。
「違う。On-the-Job Trainingの略」
「う……ミドリのOJTは地獄の特訓の略なのです! OJTって言ってみたいだけの百式とは違うですよ!」
「……別に良いけど」
 百式さんも、ミドリさんの言葉をあまり気にしていないみたいです。冷蔵庫からスポーツドリンクを一本取り出して、その場でひと口。
「さっさと行くですよ。しばらくマグナムは使い物にならないですから」
 マグナムさん、どうしたんでしょうか。
 そういえばミドリさんと一緒に入ったはずなのに、まだ休憩室から出てくる気配がありません。
「それ、ミドリさんの悪い癖。……行ってくる」
 そう言い残して、百式さんもメッセンジャーバッグを片手に出て行ってしまいました。
「悪い癖?」
「チビチビ神姫には関係ないのです。……仕様の問題なのですよ」
 呟いたミドリさんの口調は、どこかいつもと違うもの。
「それじゃ、OJT始めるです! OJT! OJT!」
 でも、次に出てきた言葉は、いつも通りのミドリさんでした。
 っていうか、OJTって言ってみたいのって、ミドリさんなんじゃないでしょうか?





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