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えむえむえす ~My marriage story~

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The Armed Princess―武装神姫―
ウサギのナミダ
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「HAHAHA、婚約者の顔を見忘れたのかいマイハニー?」

「みさにゃん、誰この人……」

「知らない人」

「照れちゃって可愛いな、スィートハニーよ」

「……撃ちましょうか」


ねここの飼い方、そのじゅうに



『ピンポーン』

ソレは、そのチャイムの音と共にやってきた。
「はいは~い」
と、私は反応しながらドアを開け……
「やっ 久しぶりだねマイハ…」

バタン!

うん、何も見なかったし、何も居なかった。
「HAHAHA、確かに数年ぶりだがね。もうボクの顔を忘れたわけじゃないだろう?」
むしろ永遠に忘れていたいよ……
「お、キミがねここちゃんか。話には聞いていたけど本当に可愛いねぇ♪ このままお持ち帰りしてしまおうか!」
え!?
慌ててドアをガチャ!っと開けると、そこにはねここは居ないで、満面の笑みを浮かべた男が一人立っていたのでした……
騙されたぁ……トホホ


……で、もう嫌々家に上げて、居間で御茶を出してるのだけれど。
「みさにゃん、誰この人……?」
私に抱かれたねここが怯えつつ、そう尋ねてくる。こんなハイテンションのヤツといきなり会ったらそりゃ怖いよね。
目の前に居る男は20前後、金髪で、顔立ちはカッコよくて、全体的な風貌は美形、黙ってればいい男なんだけど……
「知らない人」
「照れちゃって可愛いな、マィスィートハニーよ」
うん、こういうヤツだから知らないことにしておきたいの。
「……撃ちましょうか」
雪乃ちゃんが真剣な表情で尋ねてくる。手には既に357パイソンが……お願いしたいけど、後始末が面倒なのよね。
「HAHAHA、みんな冗談が好きなようだね。さてと、まず自己紹介しておこうか。
 ボクは志郎=アーガイル。そこの彼女、美砂ちゃんの婚約者さっ☆」
と、髪を軽やかに掻き揚げながら挨拶してくる志郎。
「あんなの幼稚園の頃の適当な約束でしょ……何本気にしてるんだか」
ため息混じりにつぶやく私。
「フフフ、あの小さき頃の約束をきちんと覚えているなんて、やっぱりキミはボクのことが大好きなんだねっ!」
両手を挙げて、極めて大げさなモーションで喜びを表現してる……そのうち背後に花でも背負いそうね。
「あのねぇ、あれだけ毎日のように言われれば、嫌でも覚えてます……」
「ほらほら、そこの二人がよくわからない顔してるよ。ボクたちの甘~い関係を、キミの口からも説明してあげないと」
人の話聞かない所も昔のままよね……まぁいいわ。
確かにねここたちは状況が飲み込めていないみたいで、置いてきぼり食らってるわけだし。
「コイツ、つまり志郎は私の幼馴染なのよ、中学までのね。
 家が隣で両親の仲も良かったから兄弟みたいに育ったようなものなんだけど」
ほへーと関心してるねここ。あんまり関心しないで欲しいな……
「で、私が高校に入る直前にコイツがアメリカへ戻っちゃって、それ以来連絡を取らない事にしてた訳」
「すっご~い、みさにゃんにそんな秘密がっ☆」
「ねここ、それは関心の方向性が違うと思われますが……」
溜息を付きつつも冷静に突っ込みを入れる雪乃ちゃん。今日はとても頼もしく見えるわ……
「秘密ならまだあるぞ、何せボクは美砂ちゃんの初めてのオトコだからなっ!」

ビキィ!!!

場が凍りついた……いや、正確には凍ったのは私と雪乃ちゃん。
ねここは?マークが顔に出てるし、言った当人は自慢してるつもりだから。
「はじめてって、なぁに~?」
ねここが素朴な疑問をキョトンとした顔で発する。言いたくない……
「そのうちねここにもわかるよ……それにアレは事故よ、興味本位と青春の気の迷いからくる、一度だけの過ちよっ!」
ああ、言ってる自分が恥ずかしい。なんでこんなヤツと……orz
「謙遜しないで欲しいな。あの時の痛みに耐えてるキミの表情はとても美しかったよ……それに」
ギロリ!
「それ以上言ったらコロスわよ? 雪乃ちゃん、合図したら目を撃ち抜いちゃいなさい」
「了解。姉さん」
完璧に照準を合わせている雪乃ちゃん、というか武器がいつの間にか蓬莱壱式に変わってるし。
「……で、何の用があって尋ねてきたのよ。唯顔観に来ただけとか言ったら叩き出すからね」
「そうそう、ソレを伝えに来たんだ。誰も用件を聞いてくれないものでね、どうしようかと思ってたトコロなのさ」
アンタが言わないでほかの事ばかり喋ってたからでしょうに……胃が痛くなりそう。
「実はね、ボクもこの近所に引っ越してきたんだよ。」

……は?

「姉さん!? 姉さんしっかりしてください!?」
「みさにゃん死んじゃダメなのぉ!」
真っ白な彫刻のようになる私、必死にリカバリーさせようとしてくれる二人。
うぅぅ……引っ越そうかしら。

「ねぇね、さっきの初めてって何なの~? みさにゃんが傷つくような事なの?」
アレから少し経過して、少し回復した私。ねここはさっきからの疑問を無邪気に聞いてくる、う~ん……
「ある意味傷つく。処女膜が喪失される場合、出血するケースが多数存在します」
……誰よ今の声。透き通ったよく響く声だけど、遠慮という感情が抜けたような声は。
「あぁ、紹介が遅れたね。ボクの相棒の神姫、アリアだ」
ポケットから顔を出すと、その神姫、アリアはひょいとテーブルの上に降り立つ。
「アリアです。始めまして、以後宜しく」
それだけを無感動に言うアリア。アーンヴァル型なのだけれど、目が赤眼になっていて、それが独特な雰囲気を持たせてる。
「……えぇと、今の言ったことって~……」
思考が高速回転してるらしいねここ、表情が大魔神もあれよという間にどんどん変化してって……
「はい。特に強引に奪われた場合かなりの痛みを伴うと思われます」
アリアのその一言が事態を決定付けた。
ワナワナと震えるねここ……そして
「み…み……みさにゃんを傷つけたなぁああああああ!!!」
普段の癒し系の面影が完全に吹き飛んで、鬼神の如く志郎に襲い掛かるねここ!
だけどソレはアリアのディフェンスによって防がれる。
素早く反応し、ねここの手刀をしっかりとガードしたのだ。
「……マスターに危害を加えるのであれば、それ相応の報復手段を取らせて頂きますが?」
防がれても尚にらみ続けてるねここ。嬉しいけど、何時ものねここじゃない……
「アリア控えろ。……いやちょっとやり過ぎたね、失敬失敬」
一瞬だけ鋭い眼をしたかと思うと、またにへら顔に戻る志郎。
「ま、ねここちゃんもこのままじゃ治まらないだろうし……そうだね、近くのセンターで勝負するってのは?
 条件はそうだね……アリアが負けたらボクは金輪際この家の敷地に立ち入らない、どうかな」
「受けてたつのっ!」
燃える瞳で直ぐにOKを出すねここ。その心意気は嬉しいんだけど、負けた場合の条件聞いてないんじゃ……
「あぁ、ちなみにねここちゃんが負けた場合、美砂は俺の嫁確定だから」
「……えっ!?」
そう切り替えされて慌てふためくねここ。

……ほら。やっぱり、コイツはそういうヤツなのよ……


「絶対倒すんだからっ!」
「貴方に倒せますか?」
そして、山岳エリア・バトルフィールドで対峙している二人。
結局その足でエルゴまで出向いて勝負をすることに。いい迷惑よね、全く……
『アリア、Type-0の調子はどうだ』
「問題ありません、マスター」
アリアの装備はストラーフのサブアーム及びサバーカを装着、それに各部にアーンヴァル用の装甲パーツを付けてる。
素体の色もあって、白黒のコントラストが眩しい。
更に左手には素体の身長くらいはありそうな大型シールドを装備。
武器は……現段階じゃわからないかな、背部に何か装着してそうだけど。

『試合、開始』

「参ります」
言うが早いか、アリアは腰裏から素早くPHCヴズルイフを抜いて牽制射撃をかけてくる。
「そのくらいっ!」
ねここはシューティングスターを速攻で切り離して、横移動で回避。
岩だらけの山岳地帯ではシューティングスターの直線機動が全く生かせないので、付けていてもデッドウェイトになるだけ。
「……フ」
と、ダッシュをかけたアリアが目の前にまで、速いっ。
こういう地形だと脚部に強靭なサバーカを装備してる方が有利かしらね。
アリアはそのまま右手に伸縮式ロッドを展開、ねここ目掛けてフェンシングのような剣捌きで突き出してくる。
ロッド周りにはパチパチという放電現象、スタンロッドみたいね。あれに触れるだけでも結構なダメージになりそう。
ソレをねここは身体の柔軟性を生かして紙一重で回避し続け、反撃の隙を伺う。けど……
「貴方の実力はそんなものですか」
「くぅっ。このっ!」
ねここが稀に手を出してもその大型シールドで防がれてしまう。
またシールドを突き出されるだけでもねここにとっては回避の選択肢を狭められる結果になるから、左右に一気に回り込むのもしにくくて。
それに……
『ねここ、少し落ち着いて。ちゃんと相手の動きを見れば平気だからっ』
「わかってるっ!」
かなりぶっきら棒に返答するねここ。
頭に血が上ってるせいだと思う、ねここは何時もより攻撃が大振りになってる。
怒りで相手を速く倒す事ばかり考えているんだ、きっと。
でも大振りの攻撃ばかりだと隙を生み出しやすくなって……
「きゃっ!?」
ズシャアァァァァ!と土煙を巻き上げながら吹っ飛ぶねここ。
研爪で一気に深手を負わせようと突進した所に、蹴りのカウンターを貰ったのだ。
『アリアはこう見えてもアメリカマイナーリーグ(日本のセカンド相当)のトップランカーだからね。油断してると痛い目に遭うよ。
 尤も今日のねここちゃんの動き、妙に硬くて期待外れだったがね』
元凶が尤もらしく言うなっ。……まぁ、ねここの動きが精彩を欠いているのは事実なんだけど。
「みさにゃんを……あんなのに渡せない…のっ…!」
闘志と怒りに満ちた眼でアリアを睨み付けながら、そう呟くねここ。
その気持ちは嬉しいけど、今のままじゃ勝てるものも勝てない。
『……ねここ、私は勝っても負けても平気だから。 私はねここの事が大好きなんだから、何処にも行かないよ。
 ずーっと一緒にいてあげるから、何も心配しなくていいの、ね?』
そう優しく語り掛ける。
「……うんっ☆」
急に満面の笑みになるねここ。
私の過去を知ってる人間にあって心配してたんだろう、ましてやあんなセリフ言われたし……
『さぁて、さっさと片付けて帰って杏仁豆腐一緒に食べよっ』
「了解、なのっ♪」
ファイティングポーズを取り直すねここ。その動きは先程よりも軽やかになっていて。
「……フラレましたね、マスター」
『HAHAHA、アリアが勝てば問題ない。二人ともボクの嫁にしてあげるのさっ』
「……了解」
アリアの方もシールドを除去し、ファイティングポーズを取り直す。
あら、今微妙に溜息ついてたような。そしてやっぱりコイツ変態クールだわ……

「いっくよぉー!」
「行きますっ!」

二人の掛け声と共にその爪が交錯する。
サブアームは爪が大型化していて、アレで抜き手や手刀攻撃を繰り出してくる。
リーチが長い上に、懐に飛び込んでも素体から攻撃が可能なため、隙がない。
攻撃をサブアーム、迎撃を素体側と分けて行われると腕が2本しかない(普通は2本だよ)ねここでは不利になる。
やがて、ねここがサブアームがギリギリ届かないポイントに着地した瞬間

ドガァン!

パラパラと舞う土埃、それはストラーフの抜き手がいきなり伸縮して大地を抉ったのだ。猛烈な加速で。
『HAHAHA、どうかなこの威力。特製アームパンチ!』
いやパンチじゃないしソレ……
「ふぇー……危なかったの」
大きくバックステップで回避していたねここだったけど、その威力に流石に驚いたみたい。
『ねここ、撹乱して一気に行くよ!』
「うん! いっくよぉーっ♪」
配置済みだったぷちマスィーンズがフル稼働を始め、ねここの姿がブレ出す。
『アリア、来るぞ。迎撃用意』
「了解」
ズシャ、と腕から空薬莢を排莢し、新しいカートリッジをリロードするアリア。

「うっりゃぁー!」
ねここが数体に分身しながら一気に迫る! それに対してアリアも、その強烈な抜き手でカウンターを仕掛けようと……

 『試合終了。Winner,ねここ』

『……え?』
ほぼ全員の声がダブる。
『アリア,レギュレーション違反発覚。反則負』
「レギュレーション違反……?」
ジャッジAIがそう伝える。ジト目で志郎を見つめる私、でも何時もの顔のままだ。
『人間用実弾類の使用による国内法違反、失格、失格』
と、ジャッジAIが違反の理由を伝える……国内法って……つまり
「あぁ、カートリッジに実弾のをそのまま使ってたんだ。すっかり忘れてたよHAHAHA!」
と、軽やかに笑うアイツ。

「さて、今日は楽しかったよ。また明日だな、マイハニー☆」
「ふぅ、もう家には来ないんじゃなかったの?」
私たちはエルゴの店先で先程の会話の続きをしていて。
「うむ、だがご近所さんなのだし、顔を合わせる機会はいくらでもあるからな。ま、君たちの熱々っぷりを拝見させて貰ったよ」
そういわれて真っ赤になるねここ。
「じゃ、今日はこれで。……ま、それでこそ落としがいがあるってものさ」
と、ウィンクなぞしつつ去っていくヤツ。
……アイツ全部知ってて今回の騒ぎ起こしたんじゃないだろうか。意外と抜け目ないし。

「……ま、何にせよ慌しくなりそうね」
そう呟く私の頬には、ねここが嬉しそうに頬擦りをしてるのでありました。





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