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「妄想神姫:第二十九章」(2007/05/03 (木) 23:01:42) の最新版変更点
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**和の心とは即ち、居住まいに宿り
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さて……あの買い物から、数日が過ぎた。既に“個室”増設用の建材類は
私・槇野晶の元へと届いているが、実際の和室は未だに完成していない。
否。より正確には、もう間もなく完成する所だ。そう、共に頼んだ和装も
もうそろそろ仕立て上がるらしいのでな、それに併せて作っていたのだ。
「ふむ……集光ケーブルは正常と。縁側はこれでいいか三人とも?」
「あ、はいっ……それにしても今日は雨なのに、明るいんですねぇ」
「侮ってはならん、一応外とほぼ同等の光量を確保出来るのだぞ?」
「……地下暮らしだから、太陽光は重要なんだよアルマお姉ちゃん」
ベッド横のスペース奥……即ち和室の奥には、三部屋共通の“縁側”を
用意した。折角の和室なのだ、これ位は凝ってみたいのが人情だろう。
集光ケーブルも複数増設し、換気口もバイパスを設けた。これによって
若干の苦労は伴うが、地上に造る庭とさほど変わりない景観は保てる。
出来映えを確認し、クレイドルの配線を確認。間仕切りは後ハメ式だ。
設置方向と向きが限られるものの、こう言った工夫には慣れていてな。
「さて、ロッテ達や。めいめいが持ち込む家具は、決まったのか?」
「準備オッケーですの♪“基礎工事”が終わればすぐ搬入しますの」
「ふむ……クレイドル、動作試験開始……一号、OK。二号、三号も」
頼もしいロッテの声を聞きつつ、私は装着しているウェアラブルPCで
“和壱式”を初めとしたクレイドル等の神姫用電装品を、調べていく。
チェックは十分と掛からず正常終了。間仕切りを嵌め込み、完成だッ!
「よし、これで出来た……では、出かけている間に搬入しておくれ」
「お出かけなの?……あ、着物を取りにいくのかな、マイスター?」
「そうだ。予定では今日か明日らしいので、一応行ってみようとな」
「わかりましたの、楽しみにしていますの~♪さ、始めましょっ?」
ロッテが音頭を取って作業し始めたのを見届け、私は白衣を脱いで出る。
目的地は新宿の呉服屋だ。寄り道が無い分、移動はスムースに完了した。
そこでは、京美人の店主がはんなりと私を出迎えてきた。荷は……四つ。
そう。ロッテの策略により、私用の着物も一つ仕上がってしまったのだ。
「毎度、おおきに。御嬢はんらの頼んだ着物……丁度出来ましたえ~?」
「む、そうか……しかし、一つ気になるのだがな。聞いて良いか店主よ」
「なんなりと。お代はもらった分で足りますけど、どないしましたの?」
「いや……あの娘らもそうだが、私に着物は似合うのか?という点がな」
「大丈夫違います?黒髪も綺麗やし、襟足もしっかり残してはりますし」
「……では、後は“アレ”を教えてくれぬか。やはり和装は不慣れでな」
私の仕草で店主は理解したらしく、それから私は数十分の間みっちりと
“手解き”を受けた。洋装とは言え普段から布を扱っていた為なのか、
自分でも意外な程、それはすんなりと私の手に収まった。良い事だな。
ちなみに、着物を纏う際には後頭部の生え際……“襟足”がある方が、
何かとうなじ周りの見栄えが良いらしい。長髪で幸運だったな、有無。
「おおきに。また御入り用の際には、なんなりと申し付けて下さい~」
「有無、あまり頻度は高くないだろうが……その際には宜しく頼むぞ」
今後も利用する可能性は真剣に未知数なのだが、一応礼を尽くさねばな。
というわけで風呂敷に着物を包み込み、私はアキバへと舞い戻ってきた。
そして、自室に入り……彼女ら三人の小さな着物を携えて、奥へ向かう。
すると横穴には、立派な日本家屋が出来上がっていた。一時間程度でだ!
「おお、もう済んだのか。立派じゃないか!む、床の間には……魔剣?」
「……うん。やっぱりコレを飾る為のスペースは欲しかったんだよ、皆」
「えっと。後はほら、生け花とか掛け軸とかで個性を出してみました!」
「後は、この部屋に似合う着物を身につけるだけですの♪マイスター?」
落ち着いた家屋の廊下側……つまり、出口から三人が出てきて見つめる。
そうなのだ。和装を手に入れる事となった“妹達”だが、彼女らは実の所
着付け方を知らんのだ。私も同様だったが、先程店主に教えてもらった。
そう、自分自身を実験台として懇切丁寧にな。時間は喰ってしまったが、
その分付け焼き刃ながらも、一通りの事は教わった。早速それを発揮だ!
「よし、では順番に着付けてやろう。最終的には、己で覚えるのだぞ」
「あ……わ、分かりましたっ。じゃあ……お願いします、マイスター」
「う、有無……よし、動くなよ。少々キツイかもしれぬが……よっと」
「んく……っ、結構しっかり締め付けるんですね?はふぅ……んっ!」
……アルマや、頼むから半裸の状態で艶めかしい声を出さんでくれッ!
このまま引っ張って、脱がしてしまいたくなるではないか。全く……。
必要以上にドギマギしながらも、三人の着物をしっかりと着せてやる。
桃色・浅葱色・青竹色……三姉妹のパーソナルカラーに準えた逸品だ。
「さ、どうだ。着付け終わったぞ……って、何か不満そうだなロッテや」
「マイスターも和服を着てくださいのッ!きっと出来上がってますの♪」
「う゛ぁ……お、覚えていたのかッ!少々恥ずかしいが、待っていろ?」
だがその美貌を検分する暇もなく、私自身も着物を纏うハメになった。
……洋服を脱ぐ背中に、6つの視線が突き刺さる……肌が燃えそうだ。
だが、此処で止めては余計に恥ずかしい。習った手法を活かし、着る。
「さ、ど……どうだお前達。これで一緒だぞ……似合っているな、有無」
「……褒めても、何も出ないんだよマイスター?……でも、嬉しいかな」
「ふぇ、そ……そうですか?何だか躯がぴしっとしてくる感じですっ!」
「そこは雰囲気って物がありますの、アルマお姉ちゃん。にしても……」
ロッテの言葉で、お互いがお互いを見合い……そして、ゆっくりと私の
肩へ登ってきた。普段の派手なジャンプではなく、腕の橋を渡ってだ。
そして、三人で左肩に腰掛けて……思わぬ事を囁きかけてきたのだな。
「マイスターの黒髪、紫紺のお着物にぴったり似合っていますの……♪」
「そう、ですね……結い上げた黒髪も、何時も通りとっても艶やかです」
「な゛!ほ、褒めても何も出ないぞお前達……!?ドキドキ、するぞ?」
「居住まいが何時もと違うから、ボクらもマイスターも余計に……かな」
──────まずは形から。そして澄んだ心を育むんだよ。
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