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「妄想神姫:第二十七章(前半)」(2007/04/22 (日) 23:59:11) の最新版変更点
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**剣よ集え、神なる姫の元(前半)
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さていきなりだが……その娘に対し私・槇野晶は“ワタリガラス”という
印象を抱いている。誰か?魔剣匠工房“鬼奏”の刀匠・神浦琥珀の事だ。
時に神聖視され、時に主の知らぬ事を以て補佐し、戦の場へと導く霊鳥。
しかし凶兆の象徴・カラスの名を冠し、一所に留まれぬ定めを背負う者。
彼女の刃を得た神姫は、戦の栄光と戦の死を逃れる事が出来ぬとも言う。
「……これが“閃牙”。こっちが“舞剣”で……これが、“魔奏”」
「ふむ……だが、その名を大っぴらに出す訳には行かぬのだろう?」
「あったり前でしょ!アンタん家のハウリンなら乗っ取れるわよ!」
「そうか?では此方で、当座の名を考えておこうか。エルギールよ」
だが今、私はその彼女から三振り……厳密には四振りだが……の刃を、
受け取っている。無論これは、ロッテとアルマ・クララの為にある物。
“栄光と死”?上等ではないか。私の“妹達”が、それを望んだのだ。
ならば私がそれを畏れて遠ざける愚策の、一体何処に幸福があろうか?
その試練を乗り越え覆す、それ位の気概が無ければ彼女に頼みはせん!
「勝手になさいよ。必要ならあたしがテキトーに考えてもいいけど」
「いや、そこまで世話になる訳にもな……これ以降は私達の責務だ」
「……じゃ、晶ちゃん。毎度有り難う……何時か、何処かに行こう」
「そうだな、神浦琥珀にエルギールよ。今度、アキバを案内しよう」
琥珀と彼女の神姫・ジルダリアタイプのエルギールを見送って、荷物を
抱え……四振り目を、私用の引き出しに仕舞い込みつつだが……下階へ
降りる。そこには、弟二世代型の“補助アーマー”に身を包んだ三人が
この先己の相棒となる“魔剣”の到着を、今や遅しと待っているのだ。
「あ、マイスターおかえりなさいですのッ!ちゃんと届きましたっ?!」
「こらこら。そうせっつくなロッテよ……アルマとクララも落ち着けッ」
「ぅ……あたし、そんなに物欲しそうな顔してました?クララちゃん?」
「そこはちょっと自信がないんだよ、アルマお姉ちゃん……マイスター」
補助アーマー……というよりも、ミニスカート・半袖・ニーソックスと
“活動的なロリータファッション”という感の強い、ドレス姿の三人。
これが、魔剣に併せて私が作成した物その一だ。急速移動ブースターを
従来の三種全て搭載したその衣装は、瞬発力の補填と見た目の美しさを
第一に考えている。防御?当たらなければどうという事はないだろう。
「やれやれ、しょうがない娘らだ。よし、ではまずロッテ用のこれだ」
「わ~♪……これ、グリップが水平になってますの。ジャマダハル?」
「にしては刀身が長いです。距離を取った剣戟に適していますね……」
「……待って、何かを感じる。ロッテお姉ちゃん、それ抜けるかな?」
クララに促されたロッテがそっと柄を握り、念じる。その途端に鞘の
ロックが弾け、刀身が解放された。青い刀に白の唐草模様が独特だ。
だが、何より気になったのは……材質と、手に取ったロッテの挙動。
言葉を発するでもなく、暫し“閃牙”を見つめ……そして瞑目した。
「マイスター。ちょっと横に退いて下さいですの、後ろに空き缶が……」
「ん?ああすまん、すぐに……ロッテ?ライフルの様に構えてどうする」
「この剣は、こうやって使うんですの……“放て、ライナスト”ッ!!」
狙撃でもするかの様な姿勢で刃を真っ直ぐ構えたロッテ。その刃先から、
彼女の号令と共に紫電が奔り……乾いた爆音と共に、一筋の光が迸るッ!
殆ど雷その物である一撃で、堅いスチール缶の両端には風穴が穿たれた。
全く予想だにしなかった効果に、ロッテ以外は驚きを隠せない。私もだ!
「う、うわぁ……まるで、プラズマライフル並みの力ですねこれ……」
「声紋がトリガーなのは少し大変だけど、それでも十分に凄いんだよ」
「これで三点バーストでも出来れば、実用には十分だな……要修練か」
「はいですの。この“ライナスト”……使いこなしてみせますのッ!」
有無。どうやら、それが“真名”を隠すロッテ命名の愛称である様だ。
この“電力”を活かしてやる追加装備が有れば、より良いかもしれん。
興奮気味のロッテを宥めつつ、私はクララ用の“魔剣”を取り出した。
それは短めのロッドとも言うべき物で、一見して剣とは思えない代物。
だが、クララは先程以上に何かを感じ取ったのか……すぐに接近した。
「マイスター。それをちょっと、貸してほしいんだよ……大丈夫だもん」
「む?どういう事だクララ……って、宝玉が光って──────ッ!?」
クララが握った時から、既にうっすら光っていたロッド両端の翡翠。
彼女がホルダー風の鞘を解錠して取り出した時、その光は増大した!
そして光が収まった時、クララの眼前には……その、なんだ。有無。
「ハァイ、“魔奏”のマスターは君なのかい?俺はド……ぶぎゅ!?」
「貴様、その名を言うな!何処で誰が聴いているか分からんのだぞ!」
「わぁ!大丈夫ド……あわわ。ともかく、僕はミッ……ぎゃふぅ?!」
「だから見た目そのままの名はやめろ貴様!?一体全体何者だッ!!」
「……大丈夫だよ、マイスター。多分敵じゃない、これの関係者だよ」
深夜の海外通販番組の様なノリで喋る、二匹のナマモノが現れたのだ。
まず出てきたのは、紅い髪に白い肌・紅白の縞模様が印象的なピエロ。
相方は、目に黒い棒状サングラスを掛けた擬人化ネズミだ。躯も黒い。
……そう。“アレ”そっくりなのだ。流石に、名を迂闊に出せぬッ!!
クララの方はロッテの時同様、妙に落ち着き払っているが……関係者?
「兎にも角にも、貴様らは一体何なのだいきなり現れおって……」
「やあ、これは失礼お嬢さん。今回は、マスターになる彼女にね」
「わぁ、凄いやド……げふげふ。儀式を施してあげるんだね!?」
「“儀式”?なんだそれは、何の儀式をしようというのだ貴様ら」
「この……“コライセル”とのリンクを行う為の魔術刻印かな?」
「“魔導”刻印だよ!なくても使えるけど、真の力がいいだろ?」
「従来から160%もアップするんだよね!これはお買い得ッ!」
……最早何処から突っ込んで良いか分からぬ私は、このナマモノ共と
熱心に話を聞いたクララに促され、“儀式”の補助をする事になる。
と言っても、ただクララの後に立ち両手を前に掲げるだけなのだが。
「さぁ、じゃいくよ。晶さん、くすぐったいけど我慢して……それっ!」
「くぅ……う、うおおおおっ!?手が、熱……うわ、あぁぁぁぁっ!!」
「うわぁ、生命のグリッドが転写されてくよ!これが刻印の素だね!?」
「ぅ……っ、手が……腕が、躯が……熱いよ……ッ、く……刻印が……」
──とても筆舌に尽くしがたい珍妙な“儀式”は、数十秒で終わった。
私には特に傷もないが、クララの左手甲と右腕には……蔦の様な刻印が
しっかり刻み込まれている。幸いデザイン的に酷い物ではないが……。
「……礼は言うが、妙に腹が立つ。終わったなら失せろ貴様らぁっ!!」
「これでマスターの“魔術”は“魔導”に変換され……ぶぎゃぁぁぁ!」
「現実世界でも魔法使いになれるんだよね、ドナ……ピギャァーッ!?」
──────なんだったのかな、この人達?
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