「猫、飼いました」(2007/04/14 (土) 10:26:29) の最新版変更点
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*● 三毛猫観察日記 ●
**◆ 第一話 「猫、飼いました」 ◆
「よぉ虎太郎、約束の物を持ってきたぜ」
大学の学食で雑誌を読んでいると、アキオが話しかけてきた。
「おひさし。変なものを頼んで悪かったな。見つけるの大変だったろう?」
「いやいや、お前にはウチのサンタ子の神姫パーツでいつも世話になってるからな。
これくらい何でもないさ」
そう言いながらアキオは、ショルダーバッグから30センチぐらいの箱を取り出し、
テーブルの上に置いた。
「コイツがその神姫だ。注文通りCSチップに性格情報がインプットされてないのだぜ」
箱の中身は、犬型神姫ハウリンの素体だった。
俺の名は高槻虎太郎。去年大学に合格して上京、安アパートで一人暮らしをしている。
実家は車・家電・その他もろもろの修理工場。つまり「何でも修理屋」だ。ガキの頃から
工場を手伝っていた俺は機械いじりが得意で、稀に神姫の調整なんかもやっている。
目の前にいるのは徳田アキオ。俺と同じ大学の2年で大企業の御曹司。共に神姫同好会
(まだ三人だけ)の会員だ。入学当時の「ある事件」で知り合い、俺は神姫が嫌いなのに
強引に入会させられ…まぁこの話は別の機会にでも。
「しかし虎太郎が自分で神姫を育ててみたいって言った時は、正直、耳を疑ったぜ?」
「なんだよ、お前の影響なんだぜ?まぁ食わず嫌いのままってのもアレだしな」
「それにしても性格のインプットからやりたいなんて、エラい極端なヤツだな」
「どうせならトコトンな。上手くすれば心理学ゼミの発表に使えるかもしれないし」
これから俺がやろうとしてるのは「ネット情報が人の育成に与える影響」の実践。つまり
性格設定がされてない神姫をネットに直結し、その情報の中で偶発的に性格のインプットを
行おうというものだ。無論、ただ直結しただけでは情報を処理しきれないので、人間の
精神成長の過程を模して、それぞれの各段階ごとに対応した情報フィルターを掛ける。
その為のプログラムはもう用意してある。
「後はこの神姫にPC接続用のニードルコネクタを取り付けるだけなんだ。クレードルじゃ
転送速度とか間に合わないからね。手首から飛び出すようにするつもりだから、手間は
そんなに掛からないと思う」
「それじゃ予定通りに、半月後にはこの子の勇士が見れそうだな。小暮にも言っとくよ」
小暮君というのは、今年同好会に入ったもう一人の会員だ。
「ああ、二人で期待して待っててくれ!」
○6月1日(金)
ハウリンへのニードルコネクタ取り付けも終わり、いよいよ実験開始の日を迎えた。
部屋の隅のちゃぶ台にクレードルを置き、神姫をセットする。PCから伸びたケーブルを
手首から飛び出ているニードルに接続した。PCは既に起動している。
「頑張ってくれよ…よし、プログラム・スタート!!」
○6月3日(日)
プログラムは順調に作動中。計算では今頃3歳ぐらいの精神構成を行っている筈。
あ、七五三とかひな人形とかの用意をするべきだろうか?
○6月7日(水)
もう7歳ぐらい。俺はこの年ぐらいから親父に工場の手伝いをやらされ始めたんだ。
安心しろ我が娘、お前にはそんな苦労はさせないからな(涙
○6月15日(金)
予定通り、12歳のところまで来た。明日はいよいよ本起動の日。アキオがサンタ子を
連れて見に来る予定。あ、そういえば名前を考えていなかった…アキオの神姫、サンタ型
「サンタ子」みたいに「犬子」って名前にするのもねぇ…明日までに考えておくか。
「リューネさん、って言うんですか…早くお話をしたいですねっ!」
アキオの神姫「サンタ子(本名)」が、クレードルに横たわっているリューネの顔を
ニコニコしながら覘いている。
「サンタ子の周りの神姫って、小暮の砲台型「小春」だけだったからな。
友達が増えるから嬉しいんだろう」
「ええ、アキオさん!」得意のメイドさんスマイルでニッコリ。
「そう言えば小暮君、今日は定期検査の日だって?」
「あぁ、ホントに大変だよな…来られなくて残念がってたよ」
「そっか…」
今年入学した小暮君はIQが高い天才児。だが産まれつき体が弱く、小さい頃から入退院を
繰り返してあまり学校に行けなかった。そんな感じだから友達も居なかったらしい。だから
同好会で出合った砲台型神姫の小春は、彼にとって大切な友達となったんだ。
「まぁ月曜日に学食で顔合わせをしよう。しかし、早くサークルに昇格して部室を
貰わないとなぁ。いつまでも学食が部室代わりってのは寂しいな」
「最低条件の三人は確保したんだから後は実績か。自治会の出した昇格の条件って、
同好会のメンバーがセカンドリーグ入りすることだったよな?」
「まかせとけ!このままなら年内にはサンタ子はセカンドだぜ!」
いつの間にかアキオの傍に来ていたサンタ子が誇らしげに胸を張っている。
実際サンタ子は強い。悪魔型だけは苦手だが、それでも勝率は7割を超えている。
セカンド昇格は時間の問題だろう。
「よし…それじゃ本起動するぜ!」
「おお~遂にヤルか!」「すっごい楽しみです!」
PCのキーボードを押す指が少し震える。さて、どんな子に育っているかな…
内気な子?ヤンチャな子?怠け者?乱暴者だけはイヤだな…
さぁ、起き上がるんだ!
横たわっていたリューネが小さく震えた。そしてゆっくりと上体を起こす。
周りを見回して俺を見つけると、頼りない足取りで近づいてきた。そして目の前で
立ち止まり、涙目でこう言ったんだ。
「コタロー、ずっと逢いたかったの………アタシよ、三毛猫のミアだよ!!」
アキオとサンタ子には帰ってもらった。
とりあえず大きく深呼吸。そして自称ミアを名乗るハウリンを見る。
ちゃぶ台の上で俺を見つめているその仕草は、本当に「ミア」そっくりだ。
「ミア」というのは昔飼っていた三毛猫の名前だ。…中学の頃に死んでしまったが。
PCを操作して昔の日記データを引っ張り出す。
『ミアの観察日記』。そこには楽しかったミアとの思い出が詰まっていた。
ミアの写真。ミアの動画。ミアの成長記録。そして…ミアの遺影。
どうやらこの神姫はこのデータを読み取ってしまったおかげで、自分のことをミアの
生まれ変わりと思ってしまったらしい。
「あ、これアタシの昔の写真ね!」いつのまにか隣にミアが居た。
そして俺の背中をよじ登り、首にしがみつく。ミアの悪い癖だ。
…勿論コイツはミアじゃない。このデータをコピーしただけだ。それは解っている…
「痛いから止めろって、昔から言ってるだろ!」首を掴んで引っぺがし、PCの隣りに置く。
「調べ事してるんだから大人しくしてなさい!」
「は~い」不機嫌そうに丸まってしまった。
日記を読んでみる。
小学校の帰り道にミアを拾った事。
ミアが猫風邪をひいてしまい、心配で学校をサボった事。
発情期でうるさくて眠れなかった事。
ミアと一緒に家出をした事。
クラブ活動から帰ってくると、ミアが車に轢かれて死んでいた事。
最後のページには(完全に忘れていたが)こんな事を書いていた。
「ミアは天国にいきました。でも人間に生まれ変わって、そして僕と結婚するんだ」
目玉がでんぐり返る気がした。そしてミアが一言。
「早く人間になってコタローと結婚したいなぁ~!」
部室代わりの学食に集まる俺たち同好会の三人。
その隣のテーブルの上では、ミアとサンタ子と小春が仲良くおしゃべりをしている。
どうやら三人とも仲良しになったらしい。
「それじゃ先輩は、ミアちゃんを今まで通りの方法で育てていくんですか?」と小暮君。
「ああ、これはこれで実験結果の一つには違いないし、最終結果はまだ出てないからね」
「実験対象、ですか…」ちょっと不満そうに呟く。
「まぁまぁ、神姫の育て方なんて人それぞれだし、大切にさえすればいいんじゃね?」
「それはそうですけど…」アキオの言葉にも納得してないようだ。
「大丈夫だよ、だってコタローはミアちゃんのこと愛してるんだもん。ね~コタロー!」
急にミアが周りに聞こえるぐらいの大声で言った。(ヤメテクレ)
そして俺の方に寄ってきて、腕にほっぺたをスリスリしてくる。(ダカラヤメテクレ)
「あはっ、ミアちゃんカワイイですねぇ~、でもハウリンってよりはマオチャオみたい!」
機嫌を直した小暮君が、優しい目でミアを見つめる。
「自分の事を完全に猫だって思い込んでいるからねぇ」
「これは仮の体だから何でもいいのぉ。将来人間になってコタローと結婚するんだから」
(みんなの前で言うなぁ~~~~~~~~~!!!!)
○6月21日(木)
コンビニから帰って、とりあえずミアを胸ポケットからクレードルに移す。
するとミアは自分からニードルコネクタを接続し、ネットにダイブした。最近はネット
空間で1時間ぐらい遊ぶのが日課になっている。
もう性格の設定は終わったから、フィルタープログラムとかは起動していない。
さすがに変なHPとかはブロックするようにしてるが、基本的には本人まかせだ。
良く言えば放任主義ってところか。
○6月24日(日)
今日は小暮君と、アキオの高級マンションにお邪魔した。8月に行われる公式大会の
打ち合わせに来たのだ。と言っても大会に参加するのはアキオのサンタ子だけなのだが。
隣の部屋では、豪華な神姫用ドールハウスの中でミア達三人がお茶会ゴッコをしている。
後でミアに同じ物をねだられそうで怖い。
とりあえずサンタ子の調整も兼ねて、みんなで7月下旬に行われる三人一組の小さい
非公式大会に出ることになった。実はミアを戦わせることなんて全く考えていなかったが、
ミア本人がノリ気なのでやらせてみることにする。
○6月30日(土)
ミアが昨日の夜からダイブしっぱなしだ。心配になったので強制的に接続を切る。
何をしてたのか聞いてみると、ネットで碁の対戦をやっていたそうだ。
何でも頭を使う対戦ゲームにハマっていて、昨日は将棋をやっていたとのこと。
対戦結果を見て驚いた。殆ど全勝じゃないか…コイツひょっとして天才なのか?
○7月2日(月)
今日はネットで戦略ゲームをやっていた。これも殆ど全勝。やっぱ天才かも。
でもオマエ、ゲームのやり過ぎだ!「ゲームは一日一時間」を言い渡す。
○7月5日(木)
ミアがウィルスに感染してしまった。(セキュリティソフトは入れてあったのに)
言語関係のデータがやられた。かなり強力なヤツらしい。とりあえず機能停止させる。
○7月7日(土)
アキオの教えてくれた業者にミアを連れていって、とりあえずウィルスは駆除できた。
同じことが起こらないように、ミアにウィルスやハッキングの情報を十分に与えてみた。
あとは自分で学んでいくだろう。…これが元で自分がハッカーになったりして(笑
○7月10日(火)
このバカ、本当にやりやがった。(※添付ファイル:「WhiteHouseHP.jpg」)
一週間のダイブ禁止令を出す。少し頭を冷やしなさい!
○7月13日(金)
試験も終わり夏休みになったので、そろそろミアの武装に本腰で取り組むことにした。
アキオが用意してくれたのは素体だけだったので、今までミアは武装をしたことが無い。
俺はハウリン装備を改造するつもりで図面まで引いていたのだが、本人はどうしても
マオチャオ装備が良いといって聞かない。仕方が無いので神姫ショップで猫装備を購入、
図面も引きなおすことにした。
○7月21日(土)
明日は大学の近所にある商店街で「三人一組神姫大会」が行われる。リアルバトルだが
ペイント弾・ウレタン武器を使った模擬戦なので、そんなに危険なことは無いはず。
サンタ子と小春は準備万全だが、ミアは装備完成の遅れもあってマオチャオ装備での
訓練時間が少ない。ちょっと不安だ。当日は3対3の団体戦、ミアが足手まといに
ならなければいいが。
第二話 [[激闘!あおぞら商店街!]] へ進む
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**◆ 第一話 「猫、飼いました」 ◆
「よぉ虎太郎、約束の物を持ってきたぜ」
大学の学食で雑誌を読んでいると、アキオが話しかけてきた。
「おひさし。変なものを頼んで悪かったな。見つけるの大変だったろう?」
「いやいや、お前にはウチのサンタ子の神姫パーツでいつも世話になってるからな。
これくらい何でもないさ」
そう言いながらアキオは、ショルダーバッグから30センチぐらいの箱を取り出し、
テーブルの上に置いた。
「コイツがその神姫だ。注文通りCSチップに性格情報がインプットされてないのだぜ」
箱の中身は、犬型神姫ハウリンの素体だった。
俺の名は高槻虎太郎。去年大学に合格して上京、安アパートで一人暮らしをしている。
実家は車・家電・その他もろもろの修理工場。つまり「何でも修理屋」だ。ガキの頃から
工場を手伝っていた俺は機械いじりが得意で、稀に神姫の調整なんかもやっている。
目の前にいるのは徳田アキオ。俺と同じ大学の2年で大企業の御曹司。共に神姫同好会
(まだ三人だけ)の会員だ。入学当時の「ある事件」で知り合い、俺は神姫が嫌いなのに
強引に入会させられ…まぁこの話は別の機会にでも。
「しかし虎太郎が自分で神姫を育ててみたいって言った時は、正直、耳を疑ったぜ?」
「なんだよ、お前の影響なんだぜ?まぁ食わず嫌いのままってのもアレだしな」
「それにしても性格のインプットからやりたいなんて、エラい極端なヤツだな」
「どうせならトコトンな。上手くすれば心理学ゼミの発表に使えるかもしれないし」
これから俺がやろうとしてるのは「ネット情報が人の育成に与える影響」の実践。つまり
性格設定がされてない神姫をネットに直結し、その情報の中で偶発的に性格のインプットを
行おうというものだ。無論、ただ直結しただけでは情報を処理しきれないので、人間の
精神成長の過程を模して、それぞれの各段階ごとに対応した情報フィルターを掛ける。
その為のプログラムはもう用意してある。
「後はこの神姫にPC接続用のニードルコネクタを取り付けるだけなんだ。クレードルじゃ
転送速度とか間に合わないからね。手首から飛び出すようにするつもりだから、手間は
そんなに掛からないと思う」
「それじゃ予定通りに、半月後にはこの子の勇士が見れそうだな。小暮にも言っとくよ」
小暮君というのは、今年同好会に入ったもう一人の会員だ。
「ああ、二人で期待して待っててくれ!」
○6月1日(金)
ハウリンへのニードルコネクタ取り付けも終わり、いよいよ実験開始の日を迎えた。
部屋の隅のちゃぶ台にクレードルを置き、神姫をセットする。PCから伸びたケーブルを
手首から飛び出ているニードルに接続した。PCは既に起動している。
「頑張ってくれよ…よし、プログラム・スタート!!」
○6月3日(日)
プログラムは順調に作動中。計算では今頃3歳ぐらいの精神構成を行っている筈。
あ、七五三とかひな人形とかの用意をするべきだろうか?
○6月7日(水)
もう7歳ぐらい。俺はこの年ぐらいから親父に工場の手伝いをやらされ始めたんだ。
安心しろ我が娘、お前にはそんな苦労はさせないからな(涙
○6月15日(金)
予定通り、12歳のところまで来た。明日はいよいよ本起動の日。アキオがサンタ子を
連れて見に来る予定。あ、そういえば名前を考えていなかった…アキオの神姫、サンタ型
「サンタ子」みたいに「犬子」って名前にするのもねぇ…明日までに考えておくか。
「リューネさん、って言うんですか…早くお話をしたいですねっ!」
アキオの神姫「サンタ子(本名)」が、クレードルに横たわっているリューネの顔を
ニコニコしながら覘いている。
「サンタ子の周りの神姫って、小暮の砲台型「小春」だけだったからな。
友達が増えるから嬉しいんだろう」
「ええ、アキオさん!」得意のメイドさんスマイルでニッコリ。
「そう言えば小暮君、今日は定期検査の日だって?」
「あぁ、ホントに大変だよな…来られなくて残念がってたよ」
「そっか…」
今年入学した小暮君はIQが高い天才児。だが産まれつき体が弱く、小さい頃から入退院を
繰り返してあまり学校に行けなかった。そんな感じだから友達も居なかったらしい。だから
同好会で出合った砲台型神姫の小春は、彼にとって大切な友達となったんだ。
「まぁ月曜日に学食で顔合わせをしよう。しかし、早くサークルに昇格して部室を
貰わないとなぁ。いつまでも学食が部室代わりってのは寂しいな」
「最低条件の三人は確保したんだから後は実績か。自治会の出した昇格の条件って、
同好会のメンバーがセカンドリーグ入りすることだったよな?」
「まかせとけ!このままなら年内にはサンタ子はセカンドだぜ!」
いつの間にかアキオの傍に来ていたサンタ子が誇らしげに胸を張っている。
実際サンタ子は強い。悪魔型だけは苦手だが、それでも勝率は7割を超えている。
セカンド昇格は時間の問題だろう。
「よし…それじゃ本起動するぜ!」
「おお~遂にヤルか!」「すっごい楽しみです!」
PCのキーボードを押す指が少し震える。さて、どんな子に育っているかな…
内気な子?ヤンチャな子?怠け者?乱暴者だけはイヤだな…
さぁ、起き上がるんだ!
横たわっていたリューネが小さく震えた。そしてゆっくりと上体を起こす。
周りを見回して俺を見つけると、頼りない足取りで近づいてきた。そして目の前で
立ち止まり、涙目でこう言ったんだ。
「コタロー、ずっと逢いたかったの………アタシよ、三毛猫のミアだよ!!」
アキオとサンタ子には帰ってもらった。
とりあえず大きく深呼吸。そして自称ミアを名乗るハウリンを見る。
ちゃぶ台の上で俺を見つめているその仕草は、本当に「ミア」そっくりだ。
「ミア」というのは昔飼っていた三毛猫の名前だ。…中学の頃に死んでしまったが。
PCを操作して昔の日記データを引っ張り出す。
『ミアの観察日記』。そこには楽しかったミアとの思い出が詰まっていた。
ミアの写真。ミアの動画。ミアの成長記録。そして…ミアの遺影。
どうやらこの神姫はこのデータを読み取ってしまったおかげで、自分のことをミアの
生まれ変わりと思ってしまったらしい。
「あ、これアタシの昔の写真ね!」いつのまにか隣にミアが居た。
そして俺の背中をよじ登り、首にしがみつく。ミアの悪い癖だ。
…勿論コイツはミアじゃない。このデータをコピーしただけだ。それは解っている…
「痛いから止めろって、昔から言ってるだろ!」首を掴んで引っぺがし、PCの隣りに置く。
「調べ事してるんだから大人しくしてなさい!」
「は~い」不機嫌そうに丸まってしまった。
日記を読んでみる。
小学校の帰り道にミアを拾った事。
ミアが猫風邪をひいてしまい、心配で学校をサボった事。
発情期でうるさくて眠れなかった事。
ミアと一緒に家出をした事。
クラブ活動から帰ってくると、ミアが車に轢かれて死んでいた事。
最後のページには(完全に忘れていたが)こんな事を書いていた。
「ミアは天国にいきました。でも人間に生まれ変わって、そして僕と結婚するんだ」
目玉がでんぐり返る気がした。そしてミアが一言。
「早く人間になってコタローと結婚したいなぁ~!」
部室代わりの学食に集まる俺たち同好会の三人。
その隣のテーブルの上では、ミアとサンタ子と小春が仲良くおしゃべりをしている。
どうやら三人とも仲良しになったらしい。
「それじゃ先輩は、ミアちゃんを今まで通りの方法で育てていくんですか?」と小暮君。
「ああ、これはこれで実験結果の一つには違いないし、最終結果はまだ出てないからね」
「実験対象、ですか…」ちょっと不満そうに呟く。
「まぁまぁ、神姫の育て方なんて人それぞれだし、大切にさえすればいいんじゃね?」
「それはそうですけど…」アキオの言葉にも納得してないようだ。
「大丈夫だよ、だってコタローはミアちゃんのこと愛してるんだもん。ね~コタロー!」
急にミアが周りに聞こえるぐらいの大声で言った。(ヤメテクレ)
そして俺の方に寄ってきて、腕にほっぺたをスリスリしてくる。(ダカラヤメテクレ)
「あはっ、ミアちゃんカワイイですねぇ~、でもハウリンってよりはマオチャオみたい!」
機嫌を直した小暮君が、優しい目でミアを見つめる。
「自分の事を完全に猫だって思い込んでいるからねぇ」
「これは仮の体だから何でもいいのぉ。将来人間になってコタローと結婚するんだから」
(みんなの前で言うなぁ~~~~~~~~~!!!!)
○6月21日(木)
コンビニから帰って、とりあえずミアを胸ポケットからクレードルに移す。
するとミアは自分からニードルコネクタを接続し、ネットにダイブした。最近はネット
空間で1時間ぐらい遊ぶのが日課になっている。
もう性格の設定は終わったから、フィルタープログラムとかは起動していない。
さすがに変なHPとかはブロックするようにしてるが、基本的には本人まかせだ。
良く言えば放任主義ってところか。
○6月24日(日)
今日は小暮君と、アキオの高級マンションにお邪魔した。8月に行われる公式大会の
打ち合わせに来たのだ。と言っても大会に参加するのはアキオのサンタ子だけなのだが。
隣の部屋では、豪華な神姫用ドールハウスの中でミア達三人がお茶会ゴッコをしている。
後でミアに同じ物をねだられそうで怖い。
とりあえずサンタ子の調整も兼ねて、みんなで7月下旬に行われる三人一組の小さい
非公式大会に出ることになった。実はミアを戦わせることなんて全く考えていなかったが、
ミア本人がノリ気なのでやらせてみることにする。
○6月30日(土)
ミアが昨日の夜からダイブしっぱなしだ。心配になったので強制的に接続を切る。
何をしてたのか聞いてみると、ネットで碁の対戦をやっていたそうだ。
何でも頭を使う対戦ゲームにハマっていて、昨日は将棋をやっていたとのこと。
対戦結果を見て驚いた。殆ど全勝じゃないか…コイツひょっとして天才なのか?
○7月2日(月)
今日はネットで戦略ゲームをやっていた。これも殆ど全勝。やっぱ天才かも。
でもオマエ、ゲームのやり過ぎだ!「ゲームは一日一時間」を言い渡す。
○7月5日(木)
ミアがウィルスに感染してしまった。(セキュリティソフトは入れてあったのに)
言語関係のデータがやられた。かなり強力なヤツらしい。とりあえず機能停止させる。
○7月7日(土)
アキオの教えてくれた業者にミアを連れていって、とりあえずウィルスは駆除できた。
同じことが起こらないように、ミアにウィルスやハッキングの情報を十分に与えてみた。
あとは自分で学んでいくだろう。…これが元で自分がハッカーになったりして(笑
○7月10日(火)
このバカ、本当にやりやがった。(※添付ファイル:「WhiteHouseHP.jpg」)
一週間のダイブ禁止令を出す。少し頭を冷やしなさい!
○7月13日(金)
試験も終わり夏休みになったので、そろそろミアの武装に本腰で取り組むことにした。
アキオが用意してくれたのは素体だけだったので、今までミアは武装をしたことが無い。
俺はハウリン装備を改造するつもりで図面まで引いていたのだが、本人はどうしても
マオチャオ装備が良いといって聞かない。仕方が無いので神姫ショップで猫装備を購入、
図面も引きなおすことにした。
○7月21日(土)
明日は大学の近所にある商店街で「三人一組神姫大会」が行われる。リアルバトルだが
ペイント弾・ウレタン武器を使った模擬戦なので、そんなに危険なことは無いはず。
サンタ子と小春は準備万全だが、ミアは装備完成の遅れもあってマオチャオ装備での
訓練時間が少ない。ちょっと不安だ。当日は3対3の団体戦、ミアが足手まといに
ならなければいいが。
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